シオン の山 7 月 1 週
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○自由な題名
○けがをしたこと
★おふろ、ぎりぎりセーフ
○プールで遊んだこと
母が四年生だったころ
【1】「あら、なつかしい。」
 母が声をあげました。おばあちゃんの家を改築することになって、荷物の整理に行ったときのことです。母の手には、手紙の束が握られていました。色とりどりの便箋や封筒、かわいらしいメモ帳の切れ端などがたくさん出てきました。
【2】「昔は、携帯やメールなんかなかったでしょう。だから、こんなふうに手紙を交換していたのよ。」
と母が言います。するとおばあちゃんが笑いながら、
「毎日学校で会う友だちともやり取りしていて、よくそんなに書くことがあるものだと思ったわ。」
と言いました。
 【3】母は少し恥ずかしそうでしたが、私は見せてもらうことにしました。手紙のほとんどは、今でも家族ぐるみでつきあいのある母の同級生からのものです。特におもしろかったのは、四年生のときにダジャレに夢中になっていたころの手紙です。
【4】「大沢先生のおおさわぎ」「そんなシャレやめなシャレ」「体育行く?」
などと書いてあり、大沢先生らしい太った男の人のイラストがありました。さらに、
「真衣子、まーいい子。」
と母の名前を使ったダジャレもありました。
 【5】そのほかに、秘密の手紙もありました。封筒の表書きに「真衣子へ。だれにも見せないでね」とあったので、私は少しどきっとしました。封筒の中には、色あせた水色のびんせんが入っていて、小さな字でぎっしりと文が書いてありました。
 【6】私はそれを読みたかったけれど、母はこれはだめ、とさっとかくしてしまいました。私はきっと好きな子の話が書いてあるのだな、と思いました。私だってもう四年生だからわかるのになあ。
 【7】おばあちゃんは、箱のほこりを払いながら、∵
「ママはね、小学生のころは、とてもおとなしかったのよ。授業参観に行ってもほとんど発言しないような子でね。」
と驚くようなことを言いました。今の母からは全く想像できません。
【8】「ねえねえ、いつから今みたいにうるさくなったの?」
と聞くと
「あなたが生まれてからかしらねえ。」
と、おばあちゃんが答えました。私は、人間って変わるものだなと心の中で思いました。母は知らぬ顔で、昔の本を束ねています。
 【9】私は、もし子どものころの母と今、同じクラスだったら、私たち、仲良くなるかなあと考えました。なんとなく、好みも似ていそうだし、話も合いそうだなと思います。私は楽しくなってきて、
「おはよう、真衣子。」
と聞こえないようにつぶやいてみました。【0】

(言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 φ)