シオン2 の山 9 月 1 週
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○自由な題名

★かぞくみんなの好物、すきなゲーム
○おじいちゃんおばあちゃん
○うちにはいると、おかあさんは(感)
 【1】うちにはいると、おかあさんは、ヤッちゃんをおふろにいれてくれました。
 あついくずゆをたべて、ヤッちゃんは、ふとんにはいりました。
 すると、もうねてしまったとおもっていたチイちゃんが、むくむくおきあがりました。
【2】「おにいちゃん、さむかった?」
 そういいました。チイちゃんは、もうおこった顔をしていませんでした。
「さむかったさあ。こごえて死んでしまいそうだった。」
「ごめんね。」
 チイちゃんにあやまられて、しかたなくヤッちゃんは、にこっとわらいました。
【3】「へいきさ、おふろにはいったから。あのね、チイちゃん、あの手ぶくろ、さがしたんだけど、見つからなかったんだ。」
「ふーん、そうなの。でも、いいや、ぼくがまんする。」
 ヤッちゃんは、なんだかチイちゃんがかわいそうになりました。【4】それで、つくりばなしをすることにしました。
「うーんと、あのね、あの手ぶくろ、じつは、なくしたんじゃなくて、かしてやったんだよ。」
「かしてあげたって、だれに?」
「あのね、小人にさ。」
「小人? ほんとう?」
【5】「うん、ほんとうだよ。夕がた雪がふってきたろ。おにいちゃんがうちへかえろうとおもって、あるいてくると、もしもしってよぶんだ。だれかなって見ると、小人じゃないか。小さい、小さい、とっても小さい、雪の小人。まっ白いふくをきてね、白い三かくぼうしをかぶった、小人が天からふってきた。」
【6】「ほんとう? それ、ほんとうのはなしなの?」
「ほんとうとも。小人が五人、おにいちゃんのかたに、ぽんと立って、おねがいです、おねがいですっていうじゃないか。なんだいっていうとね、すみませんが、その手ぶくろをかしてくれませんか、そういった。」
【7】「へへえー、小人が、そんなこといったの!」
「うん。それで、どうしてってきくと、じつは……、ぼくたち天からふってきたので、とまる家がないんです。どうか、しばらく、その手ぶくろ、かたっぽうおかりできませんでしょうか。」
【8】「へえー、そんなこといったの。手ぶくろかたっぽうだけ……。ははあ、わかった。その小人、手ぶくろにはいってねるんだ。ゆびのところに、ひとりずつ。そうだ、きっと。それで、どうしたの、おにいちゃん。」∵
【9】「それでね、チイちゃんの手ぶくろだけど、ぼくかしてあげちゃったのさ。」
「ふーん、そうだったの。その小人よろこんだ?」
「よろこんだとも……。大よろこびさ。」
「じゃあ、かしてあげて、よかったね。でも、その小人、どこにすんでいるんだろう?」
【0】「さあね……、雪の中にあなをほって、すんでいるんじゃないか……。」
「春になって、あったかくなったら、手ぶくろかえしてくれるかなあ。」
「もちろんさ……。」
 そういうと、ヤッちゃんは、ことんと、ねむってしまいました。
      ☆
 それから一か月半ばかりたって、あたたかい日が五、六日つづいて、雪がとけはじめました。雪がとけてどろんこ道になりました。
 ある日、ヤッちゃんのうちの、おとなりの犬が、赤いきれをくわえて、ふりまわしてあそんでいました。
 それを見て、チイちゃんが、大声をあげました。
「ぼくのだっ、ぼくの手ぶくろだ。ゾウの手ぶくろがかえってきたあ。」
 それは、チイちゃんの手ぶくろでした。
「わあーい。小人にかした手ぶくろだあーい。小人が、かえしてくれたんだあ。」
 チイちゃんは、大よろこびしました。
 手ぶくろは、長いあいだ雪の下にあったので、ちぢんで、小さくなっていました。それに、おとなりの犬がふりまわしたからでしょう、ところどころあながあいて、もうつかえなくなっていました。
 それでも、チイちゃんは、その手ぶくろを、小人にかした手ぶくろだといって、いつまでも、だいじにしていました。

「ほらふきうそつきものがたり」(椋鳩十(むくはとじゅう)編 フォア文庫より)