ツゲ の山 11 月 1 週
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○自由な題名
◎いたずらをしたこと
★わたしの好きな食べ物、たまごやきを作ったこと
いとしのイタリアン
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【1】「ごはんですよ。」
キッチンから、お母さんの声がしました。ソースを煮込むので、そのにおいでとっくにメニューはわかっています。だから本当は勉強していることになっているけれど、ぼくは気もそぞろで、今か今かと部屋のドアを開けて待っていたのです。
【2】和食、中華、洋食、エスニック、日本では外国に行かなくても、各国の料理が楽しめます。お店で食べるだけでなく、いろいろな食材が売られているので、家でも食べることができます。なんて幸せなのだろうと、ぼくはごはんのたびに思います。
【3】ぼくが特に好きなのは、イタリアンです。オリーブオイルとガーリックの香りや、トマトの酸味、複雑なハーブの味わいなどがぼくの五感を刺激します。中でもパスタ類は特別で、何もない時は、めんをゆで、オリーブオイルとパルメザンチーズだけで食べられるくらいです。
【4】今夜は、野菜もたっぷり入れたスペシャルミートソースです。ぼくは、フォークにスパゲティを巻きつけながら、うっとりと、
「どうしてこんなにおいしいのかなあ。本当に毎日でも食べたいよ。」
と言いました。
【5】すると、
「啓介は、お母さんのおなかにいるときから、スパゲティが好きだったからね。」
実はこの話は、毎回繰り返されるのですが、お母さんは話したことなど、すっかり忘れて、まるでそれが初めてのようにいつも不思議そうに語ります。
【6】「お母さんはずっと和食党だったのに、どういうわけか、啓介がおなかにいるとき、調子が悪くてもミートスパゲティだけは食べられたの。毎日でもいいくらいに。」
そこで決まって、妹ののり子が、
「その話、何回も聞いた。」
と言います。∵
【7】半分くらい食べた時点で、お母さんが立って、おかわりの分のめんをゆで始めます。ぼくは、たくさん食べるので、二回に分けないとめんが伸びてしまうからです。
「アル・デンテでお願いね。」
ちょっと生意気に、そうオーダーします。
【8】ぼくは、ちょっと固めのゆであがりが好みです。最初は、柔らかいものだと思っていたのですが、いとこのお姉ちゃんといっしょにビストロに行った時、「絶妙な歯ごたえ」のアル・デンテという状態が最高なのだと教えてもらったのです。
【9】友だちに人気があるのは、焼肉、お寿司、カレーというラインナップで、イタリアンなどという子はあまりいません。でも、本当においしいので、いつかイタリアンシェフになって、子どもにも人気のあるお店を作りたいと思っています。そんなことを考えながら、ぼくはおかわりしたお皿を両手で受け取りました。【0】
(言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 φ)