テイカカズラ の山 1 月 2 週
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○自由な題名
○新学期、冬休みの思い出
★寒い朝、学校からの帰り道

○カブトムシやクワガタの生活する(感)
 【1】カブトムシやクワガタの生活する雑木林では、ミヤマカミキリ、ノコギリカミキリなどの大型の種(しゅ)から、サビカミキリの仲間の小さな種(しゅ)まで、さまざまなカミキリムシが生活しています。【2】細い枯れ枝の一部に小さな孔があいていたり、木のかじりくずがもりあがってでていれば、たいていは、カミキリムシがいるか、でたあとと見てよいでしょう。
 このような枯れ木は、樹皮があっても中は完全に食いあらされ、かんたんに折れてしまいます。【3】カミキリムシの幼虫は、樹の皮の部分だけのこして、中を食べてトンネル状にしてしまいます。その一部に白いイモムシが入っているので、ちょうど、鉄砲の中に弾をこめたように見えるので、鉄砲虫ともよばれます。
 【4】このような食べ方をしますから、ヒトがだいじに育てている樹木についたとなると、やはり害虫にされてしまいます。たとえば、シロスジカミキリの幼虫はイチジクの樹をよく食べます。子どもがイチジクの実をとりに樹に登ると、枝の中が、がらんどうで折れてしまうことがあり、やはり嫌われる資格は、じゅうぶんにあります。
 【5】キボシカミキリ、クワカミキリ、トラフカミキリなどは、クワにつくので養蚕家は嫌います。クロカミキリ、マツノマダラカミキリはマツにつきますから、一時、マツの立ち枯れの原因として大さわぎされました。【6】このような状態は、森林の害虫とよばれてもしかたのない面もありますが、そうではない見方もできます。
 前に枯れ木に多いといいました。枯れた木が、そのまま林の中にごろごろしていると、後から新しい木の芽がでるのをじゃますることになります。【7】枯れ木はなるべく早く分解して、新しい木を生やしたほうが、森林にとってはぐあいのよいことです。枯れ木を食べる昆虫は、この枯れ木や倒木の分解を早める働きをします。ようするに森林の中のそうじ屋になるのです。
 【8】この点では、けっしてわるい虫ではありません。林の樹木の∵若返り、つまり森林の若さを保つ働きをしています。同時に、この幼虫たち、あるいは成虫も、トリや小さなケモノの食べ物にもなりますから、森林の自然の一部としてのぞくことはできません。
 【9】マツの害虫と考えられているマツノマダラカミキリについても、おもしろいことがわかっています。たしかに、このカミキリムシの幼虫はマツの材部を食べあらします。この点は害虫とよばれてもしかたのないことです。【0】ところが、生きている樹木についた幼虫は、中心の材部を食べても、樹皮と材部のあいだにある、水や養分の通る管のあるところは、あまり食べないものです。
 というのは、ここを早く食べてしまうと、樹が弱るのも早くなって、自分の食べ物をだめにしてしまう危険性があるからです。ようするに、なるべく樹自体は長生きさせながら、あまり植物の成長に関係しない場所を食べているのです。ですから、マツの中でカミキリが少しばかり食べても、それほど急に、樹がだめになることはありません。

 (「いい虫わるい虫」奥井一満() 日本少年文庫より)