テイカカズラ2 の山 2 月 2 週
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○自由な題名
○雪や氷、なわとび
★なみだがぽろり、何かを育てたこと
○うその作文
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【1】わたしの「そり」は、ケッサクだというので、うしろのけいじばんにはりだされました。わたしは、うれしいような、こそばいいような気もちで、ときどきうしろをながめます。毎朝学校へくるのが、なんだかよけいうれしくなりました。
【2】「ケッサクがうまれたら、『そり』とはりかえることにしよう。」
ある日、先生がそういわれたので、それからというものは、作文についてのねつがいっそうあがりました。みんな、手につばするようないきおいで、もりもり作文を書きました。
【3】つぎつぎと、ケッサクがうまれました。
なかでも、中石タツエという女の子の作文は、なんかいもはりだされました。
「まどからふいてきた風が、わたしのよみかけの本のベージを、ポイポイめくる。」
などという書きぶりには、先生も一字一字に赤マルをつけ、すばらしいといって、くびをかたげてほめます。【4】わたしも、気のきいた書きぶりに、すっかりかんしんしました。
しかし、いくらがんばっても「そり」からあと、わたしにはケッサクがでないのです。
わたしは、だんだんあせってきました。
やっと、わたしに二かいめのケッサクがうまれました。【5】それは、冬休みのしゅくだいに書いた「初ゆめ」という作文です。
わたしののったそりが、そのまま、川をこえ、山をこえ、空にのぼり、おとぎの国をつぎつぎと見てまわる。そのうちに、どうしたことか、コマのようにまいはじめ、キリキリまいおちると目がさめた――というゆめのおはなしです。
【6】先生は、
「男の子らしいいさましいゆめを見たね。ことにおわりのほうの書きぶりはすばらしいよ。」
と、赤ペンでひひょうを書いてくれました。
でも、これはまったくのうそなのです。
【7】正月一日のばん、しゅくだいの「初ゆめ」のことをおもいだし、ようしとおもってねたのですが、朝、目をさましてみると、なんにも見ていません。ひとばんじゅうさむかったような気がしましたが、これも、ねぐるいして、ふとんからとびだしていたからでしょう。【8】「初ゆめ」なんて気のきいたものは、いくら頭をひねくってみてもおもいだしません。
しかし、ケッサクを書いてはりだしてほしかったわたしは、いか∵にもすばらしいゆめを見たように、うそを書いたのです。【9】「キリキリコマのようにまいおちる」というのも、いつかどこかのザッシで見たよその子の作文を、まねして書いたのです。
先生は、みごとにだまされました。
友だちも、どうやらだまされたようです。
でも、じぶんは、だますわけにはいきません。
【0】「このまえの詩といい、こんどの作文といい、きしくんは『そり』ばかり書くね。きみは『そり』がすきだから、ケッサクがうまれるんだ。」
そういってほめる先生のことばを、わたしは顔をうつむけてきいていました。
きっと、耳のつけねまで赤くなっていたでしょう。
そのあくる日のことです。
じゅぎょうがおわって、うちへかえろうとカバンをしまっていると、中石タツエがそっとそばへよってきました。
「あの『初ゆめ』のことやけど、あんたほんとにあんなゆめを見たの?」
ドキンとしたわたしは、タツエの顔をにらみつけました。
「見たさ。見たから書いたんや。」
「そんならいいけど……。」
タツエは、あっさりくびをふると、きょうしつからでていこうとしました。
「なんや、タツエ、はっきりいえ。」
「いえ、もういいの。……ただ、なんやしらんつくったようなおはなしやとおもっただけ……。」
「なに、つくったはなし? すると、おれがうそを書いたというんやな!」
「うそとまではいわんけど……。」
「いや、たしかにうそといった。おれも男や、そんなわる口いわれて、だまってはおれん。……ようし!」
わたしは、けいじばんの作文をもぎとると、いきなりビリビリとやぶりました。
びっくりしたタツエは、青くなってわたしになんべんもあやまりました。
わたしは、なんにもいわず、二つにさいた作文を、さらにこまかくこまかく、やぶりすてました。
『はずかしかったものがたり』「うその作文」(岸武雄)より