シオン の山 7 月 2 週
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○自由な題名
○うれしかったこと
★いちばんすきなあそび、にちようび
○七夕(たなばた)
○ウミガメの産卵
 世界中を簡単に旅することができなかった昔の人々にとって、ウミガメが毎年決まった季節になると海岸にやってきて卵を産んでいく様子は、神秘的だったことでしょう。そんなウミガメから、竜宮城(りゅうぐうじょう)という夢のような話が生まれたのかもしれません。
 では、日本にやってくるウミガメには、どんな種類があるのでしょうか。日本列島は四季がはっきりしているので、季節によって気温や海水温が大きく変わってきます。その中で、日本に卵を産みにくるのは、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイなどのカメです。関東地方より南の海岸で卵を産むアカウミガメは、春になると日本近海に姿をあらわします。アオウミガメは、屋久島より南で卵を産み、タイマイは沖縄本島より南で卵を産みます。
 産卵場所となる海岸の沖には、オスがメスより一ヶ月も前に来て待っています。やがてメスがやってくる時期になると、オスたちはメスのあとをついてまわるとともに、オスどうしで激しく争い、メスを奪い合います。かんだり、ぶつかったり、オールのような足ではたいたりと、とても迫力があり、水族館でゆったり泳いでいるときの姿からは想像もつかないほどです。その後、オスは産卵場所のまわりの海から姿を消します。メスは近くの砂浜に上陸して産卵します。
 お風呂やプールに入ると、体が軽く感じられます。それは、水の中につかっているものには浮力が働くからです。海中のウミガメは、浮力のおかげで重さが陸上にいるときよりもずっと軽くなります。しかし、浮力の働かない陸上では自由に体を動かすことができません。海から上がって卵を産むときには、外敵から自分や卵を守ることもできなければ、すばやく逃げることもできません。そのため、産卵をひかえたメスは、夜になってから用心深く砂浜に上陸し、安全を確かめてから産卵にとりかかるのです。∵
 アカウミガメは、左右の後ろ足を交互にシャベルのように使って、大きな穴を掘り、一回に百個ほどの卵を産みます。一頭のメスは、夏の産卵期の間に多いときで六回くらい卵を産みます。
 では、ウミガメは危険をおかしてまで、どうして陸に卵を産むのでしょう。ウミガメは、陸上で生活できるように進化してきた爬虫類の仲間です。爬虫類は乾いた場所でも体の水分が外へ出ていかないように、丈夫なウロコのような皮膚で体をおおっています。卵も、水中に産む魚類や両生類のものと違い、鳥類の卵のように殻に包まれています。ウミガメの卵は、殻を通して息をしており、水中だと息ができずに死んでしまうのです。このため、ウミガメは一生の大部分を海で暮らすようになった今でも、卵だけは陸に産みにくるのです。
 ウミガメのひとりごと、「わたしも、本当は、海でウミたいわあ」。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(Κ)