シオン2 の山 7 月 2 週
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○自由な題名
○うれしかったこと
★いちばんすきなあそび、にちようび
○七夕(たなばた)
○六人きょうだいの(感)
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【1】六人きょうだいの、下から二ばんめ。
わたしは、あまたれでなき虫のすえっ子でした。
それに、うまれたときから、めんどうをみてくれた、お手つだいのばあやが、わたしを、たっぷりあまやかしてしまったのです。
【2】ころんでないたら、にいさんたちが、ころばしたのだろうと、ばあやは、にいさんをしかりました。
ひとりでおきたら、「おお、つよいこと、つよいこと。」と、ほめました。
にいさんたちにしてみると、おもしろくないことばかりでした。【3】にいさんたちがころんでも、「気をつけるんだよ。」とか、「おとこの子のくせに、なくなんて。」と、せりふが、まるでちがいましたから。
そこで、いまいましいにいさんたちは、だれもいないるすになると、わたしをいじめました。
【4】雨だれポッツリさん
ポッツリ ポッツリ ポッツリさん
と、いううたを、かえうたで、
あまたれ ポッツリさん
と、うたいはやしては、からかいました。そうして、わたしのほっぺたに、ポッツリと、雨がふりはじめると、それっと、うたは、ますます元気づいてきます。
【5】なさけなくてかなしくて、わたしの目からポツリポツリおちるしずくは、やがて、とめどもない大雨になってしまうのでした。
ある雪の日など、にわにつくった雪の馬にのせてくれたままどっかへいってしまったことがあります。【6】高い馬のせなかから、小さなわたしは、おりられません。
「にいさん、にいさぁん。」
よんでも、きてくれないので、ながいこと、馬の上にのっかっていたことがあります。白い白い雪の馬が、夕やけでももいろになるまで──
【7】そんなことがあったのに、ある日、またまた、わたしはにいさんにだまされたのです。にわには、雪がいっぱいでした。長ぐつをはいて、外へでたわたしに、大きいにいさんがいいました。
「あっ、ゆびわ!」
【8】なんのことかしら。見ると、にいさんは雪の上をゆびさしています。∵
「ほら、きれいなゆびわが、おちてる!」
「えっ、どこ?」
びっくりすると、にいさんはゆびさして、
「ほら、そこ、そこにあるじゃないか。」
【9】そこといったって、見えやしません。わたしは、むちゅうで、ゆびさされたところへかけよりました。そのとたん、足もとの雪がバシャン! とおっこち、わたしはふかいふかいあなの中にころげおちてしまいました。【0】おとしあなでした。シャベルであなをほって、あなの上に、小えだや、まつの葉をかぶせて、雪をかけておいたのです。そこへ、おいでおいでと、ひとをおびきよせて、うまくおっことしたのです。
雪まみれになって、わたしはようやくおきあがりました。まあ、なんてふかいあなでしょう。せいもとどかないあなです。頭の上に青い空があるばかり……、
ひどいよう、にいさんのいじわる!
もう、はんなきでした。
「うえーん、だしてよう。」
よんだのに、見えないところで、にいさんがわらっています。
うれしそうな声で、わらっています。
大きいにいさんのほかに、小さいにいさんの声もします。にいさんたちは、こんな大きなあなをふたりでほってひとりはかくれて、わたしのおちるのを見てたのです。
頭の上に、にいさんのにくらしいとくい顔が、ちらとのぞいて、きえました。
「ほらふきうそつきものがたり」(椋鳩十(むくはとじゅう)編 フォア文庫より)