ミズキ の山 8 月 2 週
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○自由な題名
○学歴社会

○cat and mice(感) 英文のみのページ(翻訳用)
Although we had a cat, there were mice in our house. At night when it was very quiet and the lights were out and we were in our beds, we could hear the mice when they came out of their holes and ran about over the wood floor of our kitchen, and even in our own bedroom. If we listened carefully we could hear their squeaks, and we enjoyed listening to them.
I thought it was very good to have these small shy things in our house. They were thieves and they had to steal their food, but yet they were a family, just as we were a family. As they were living in our house with us I was fond of them.
Sometimes at night, when I listened to the mice, I could feel that my brother Krikor was listening to them too. We slept in the same room and his bed was beside mine so that we were very close. If I was awake and he was awake I could feel that he was awake because it was different when he was asleep. When I knew he was awake, I sometimes said, "Do you hear them, Krikor?" And Krikor said, "Don't talk. They will start to play now."
"Moog", the word for mouse in our language, is not a scientific name, but means a small living thing, quick. and easily frightened. If a child is small and shy, he is sometimes fondly called by this name. When we speak of mice in our language we think of them as shy and playful. We do not think of them as dangerous to our health or as thieves of our food. They do take a little food here and there and sometimes we find their dirt on the floor, but this is the worst we can say about them. None of us got ill because of the mice, and Krikor said that if mice became ill they would die before they made us ill. He was not ill either.
Once or twice we saw our cat with a mouse it caught. We saw how the cat played with a mouse and then ate it. We understood that something living was being killed and yet we felt this was all right. Cats were fond of eating mice and it was the mouse's business to keep out of the way of cats.
A cat was a living thing like a mouse, only of another family and of another size and they were both intelligent. It was right for the cat to use its intelligence to catch a mouse and it was right for the mouse to use its intelligence to keep out of the cat's way. It was really quite an honest business. If the cat caught the mouse, it was because the cat was specially clever, perhaps because it was very hungry.
This is the only intelligent way to look at the problem. It is useless to feel sorry for the mice and feel that cats are bad. If you think about it, you will find that it is not easy for a cat to catch a mouse. To feel sorry for the mouse is quite wrong.

★吉川(きつかわ)のパスは(感)
 【1】吉川(きつかわ)のパスは蹴った者の意思がのり移ってでもいるかのように、全力疾走中の宗介(そうすけ)の右足に吸い付いてきた。宗介(そうすけ)はただそのボールをエンドラインぎりぎりまで持ち込んでセンターリングを上げればよかった。【2】反対方向から走り込んできたフォワードの連中がへディングなりダイレクトなりでシュートを決めてくれるのだった。
 (中略)
 秋の都大会では決勝まで進み、延長戦でも決着がつかなかったのでペナルティーキック合戦にまでもつれこみ、結局準優勝に甘んじた。【3】大会中の目立った選手がベストイレブンに選ばれたのだが、やはり優勝チームから選出される者が多く、技術的には優勝チームの同じポジションの選手を上回っていた吉川(きつかわ)は選にもれた。
 【4】冬に例年にない走り込みをして、今年こそは優勝を、と団結を強めていたのだが、三年の夏休みを前にした暑い午後、宗介(そうすけ)はコーチの浅野に退部を申し出た。【5】前日、夏休みの練習計画が浅野から発表されたのだが、毎日朝九時から夕方六時まで練習メニューが決められ、休日は一日もなかった。吉川(きつかわ)という天才的な選手を得て、都大会優勝は今年を逃しては当分無理だ、と読んだ浅野の決意の表われた計画表であった。
 【6】宗介(そうすけ)の学業成績は、もう少し頑張れば進学校といわれる都立高校に手が届く程度のものだった。ドリブルしながらフェイントをかけるとき、どうにもならない生来(せいらい)の体の硬さをよく知っていたので、サッカープレイヤーとして一人前になれないことは分かっていた。【7】夏の練習に参加すれば受験勉強ができなくなる。
「退部します。お世話になりました」
 すでに練習が始まっている校庭の花壇の前で、トレーニングウエア姿の浅野に向かって宗介(そうすけ)は頭を下げた。
【8】「冗談はよせ」
 浅野は首にかけたホイッスルをタバコでもすうように口にくわえた。よく陽(ひ)に焼けた狭い額の皺の中から大粒の汗が湧いていた。
「本気です。辞めさせて下さい」∵
 【9】チームメイトたちが円陣キックをしながらこちらを注目していたので、宗介(そうすけ)は今度は頭を下げなかった。
「ああやって懸命に練習している仲間を裏切るのか」
 【0】浅野は花壇のひまわりの茎をつかんだが、語尾の震えとともに折りとってしまった。
「自分の生き方を自分で決めただけです」
 青く高い夏空の下で、中学三年の宗介(そうすけ)はためらうことなく言い切った。
 浅野は手にした大輪のひまわりを乾いた地面に叩きつけ、円陣の方に歩み去った。黄色い花びらが宗介(そうすけ)のズボンの裾に散った。
 右ウイングの自分が抜けても、実力にほとんど差のない二年生の補欠を補充すれば、チーム全体の力は落ちない。誰にも相談せずに退部を決めた宗介(そうすけ)があくまで個人的な問題なのだと自らを納得させていたのにはこんな状況判断があったからだった。しかし、事態は彼の予想しなかった方向に広がってしまった。
 宗介(そうすけ)が辞めたのを知った三年生のレギュラーたちが翌日から次々に退部を申し出るようになってしまった。宗介(そうすけ)よりもはるかに成績のよいゴールキーパーの菅井やハーフの堀田までもが受験勉強を理由に辞め、夏休みの前日になって残った三年生のレギュラーは吉川(きつかわ)一人になってしまった。
 学校の花形クラブであるサッカー部の三年生の大量退部は職員会議の話題にもなったようだが、理由が受験勉強に専念したい、という至極(しごく)まっとうなものだったので、校長や教頭も口をつぐんだままだった。
 一学期の終業式を終えて校門を出るところで、宗介(そうすけ)はユニフォーム姿の吉川(きつかわ)に呼び止められた。吉川(きつかわ)は照れたように目を細めながら自転車置場の方に手招きした。
「おれはさあ、頭もよくねえし、板前にでもなっておふくろの店手伝うしかねえんだけど、サッカーやりてえんだ」∵
 スレート屋根の下の日陰はひんやりしていた。吉川(きつかわ)はスパイクの裏のアルミピンで柱を蹴りながら下を向いて話していた。
「都大会のベストイレブンになれたら、私立高校のサッカー部に特待生で入れるかと思ってな。おれはさあ、そう思ってサッカーやってきたんだ。板前になる前にサッカーで花咲かしてみたくてな。おれの、夢だな。あの小せえ店に入る前に、夢くらい見たっていいと思ってな」
 吉川(きつかわ)は下を向いたままいつの間にか泣いていた。乾いた砂の上に落ちる涙は夕立の雨つぶよりも大きかった。
「悪いな」
 宗介(そうすけ)はもっとこの場に適した言葉を見つけられない自分にいらだった。いっそ殴ってくれたら、このいらだちも解消するのに、と思った。
「いや、いいんだ。ただ、おれのグチも聞いてもらいたくてさ。気にすんな。おまえ、いいウイングだったよ」
 吉川(きつかわ)は顔を洗うように両手で涙を拭くと、そのまま走って行って新しいチームのシュート練習に加わった。
 宗介(そうすけ)は砂の上に残る吉川(きつかわ)の涙の跡をしばらく見つめていたが、やがて大きな深呼吸とともに靴で消し、校庭を振り返らずに校門を出た。
 
 (南木(なぎ)佳士(けいし)の文章による)