シオン2 の山 9 月 2 週
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○自由な題名
○家族でどこかへ出かけたこと
★何かを作ったこと、とくいなこと
○いたかったこと
○わたしは、そのとき(感)
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【1】わたしは、そのとき一つのわるだくみをかんがえついたのです。
「ところで、ヘイキチ、まんじゅうをくいたくねえか。」
わたしがいうと、ヘイキチは、あんのじょう目をかがやかしました。
「そりゃあ、くいてえさ。」
【2】「だったら、バスのしりにのれよ。そして、県道にでるちょっとてまえの、ダルマ屋のところでおりるんだ。ダルマ屋へいくと、おじさんが、よくバスにのった、かんしんだ。おまえはゆうきがあるぞって、ダルマまんじゅうを一つくれるぞ。」
【3】「えっ、ほんとうかあ。」
ヘイキチは、からだをのりだしました。
「ああ、ほんとうとも。あそこのおじさんは、元気な子どもが大すきなんだ。」
わたしは、わらいたくなるのをがまんして、まじめな顔でいいました。【4】ヘイキチをだますことなんか、わけはありません。たべもののことをもちだせば、すぐくいついてきます。というわけで、ヘイキチはうそともしらず、バスのうしろにのったのですが、そのかっこうったらありませんでした。まるでヤモリがしがみついてるようでした。
【5】ところが、どうしたわけか、ヘイキチはいつまでたってももどってきませんでした。あほうのヘイキチのことですから、もしかしたら、県道にでるまえにバスからおりそこなったのではないかしら。【6】のりおりの人がなくて、バスは、ていりゅうじょをいくつもとまらずに、とおくのほうまでいってしまったのかもしれない。そうおもうと、わたしはきゅうにふあんになってきました。そこで、わたしはダルマ屋かし店へいってみました。【7】もし、主人に見つかって、「おまえだな、ヘイキチにでたらめをいってそそのかしたのは。」と、とっちめられてはいけないので、そっと店の中をのぞいてみました。さいわいなことに主人もいませんでしたが、ヘイキチのすがたも見あたりませんでした。
【8】さては、やっぱり……そうおもうと、むねがどきどきしてきました。しんぱいになったわたしは、ヘイキチをさがしに県道をあるいていったのです。しょうてんがいをはずれると、道は田んぼのあいだをどこまでもつづいていました。【9】だが、そのどこにも、ヘイキチのすがたは見えなかったのです。
(ヘイキチののろまめ!)∵
わたしは、じぶんがうそをいって、ヘイキチをとんだめにあわせたこともわすれて、へイキチのへまをうらみました。
【0】秋の日が、まっかなホオズキのように、ゆく手の山の上にしずもうとしていました。風がつめたくなってきました。ススキのほが、ぎんいろにかがやきながらゆれていました。(中略)
日はすっかりくれて、くらくなってしまいました。わたしはこわくなりました。なきたいのをいっしょうけんめいこらえていそぎました。ぱたぱた、だれかがうしろからついてくるような気がしましたが、ふりかえると、だれもいませんでした。まっくらな道があるだけでした。わたしは、ぞっとしました。
だから、町のあかりが、とおくのほうにちらちら見えたときは、ほんとうにほっとして、おもわずかけだしてしまいました。
うちでは大さわぎして、わたしをさがしにいこうとしているところでした。そこへ、わたしがもどっていったので、おかあさんは、ほっとするとどうじに、かんかんになっておこりました。
「みんなにしんぱいをかけて、このばかが……。」
と、おかあさんは、わたしの頭をいやっていうほどたたきました。そのいたいのなんのって、おもわずなみだがあふれたほどです。いや、もしかしたら、それは、やっと家にもどれたという、よろこびのなみだだったかもしれません。
そのとき、わたしはなみだごしに、ヘイキチを見つけたのです。ヘイキチは、わたしを見ながら、にたにたわらっているではありませんか。
(おれがあんなにしんぱいしてたのに、おれが、あんなにわるいことをしたとこうかいしてたのに、ああ、なんてことだ。とうのヘイキチが、のんきな顔をしてうちにいたなんて。こんちきしょう!)
わたしは、わっとなきだしながら、ヘイキチめがけてむしゃぶりついていきました。ところが、わけをしらないおかあさんは、わたしがただヘイキチにわらわれたので、おこったのだとおもったのでしょう。ますますわたしをしかりつけました。
あとできいたのですが、ヘイキチはこわくなって、百メートルもいかないうちにバスをおりてしまったのだそうです。そうしたら、ちょうどろじで、紙しばい屋がやっていたので、見てしまったというのです。
なんのことはありません。わたしはじぶんがついたうそに、だまされたようなものです。まったくばかなはなしです。
「ほらふきうそつきものがたり」(椋鳩十(むくはとじゅう)編 フォア文庫より)