00エニシダ の山 1 月 3 週
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★じゆうなだいめい
○寒い朝、体がぽかぽか


○生徒たちは、たがいに(感)
 【1】生徒たちは、たがいに気をつけあって、だれがどろぼうをするのかたえずちゅういしていました。すると、わかりました。おなじなかまのひとりです。
 「どろぼうといっしょに勉強するなんて、いやなことだ。先生にそうだんして、あいつをおいだしてもらおう。」
 【2】なん人(にん)かの生徒たちが、そういって、こっそり盤珪(ばんけい)先生のところへいきました。
 「先生、このあいだから、なん度も、物がなくなるのです。こっそりしらべてみると、どろぼうは、わたしたちのなかまのひとりです。【3】どうか、そのどろぼうを、学校からおいだしてください。おねがいです。」
 「そうか。よしよし、そんなわるい生徒がいるのか、よし、わかったぞ。」
 盤珪(ばんけい)先生は、生徒たちに、そういいました。
 【4】それから二、三日して、また、物がなくなりました。
 しかも、盤珪(ばんけい)先生は、いっこうに、その生徒をやめさせるようすもありません。
 生徒たちは、また先生のところにいって、いいました。
 【5】「先生、どうしてどろぼう生徒をおいだしてくださらないのですか。わたしたちは、あいつがいるために、安心して勉強することもできません。もし、先生が、どうしても、あの生徒をやめさせてくださらないとおっしゃるなら、わたくしたちのほうで、もう山をおりようとおもいます。」
 【6】すると、盤珪(ばんけい)先生は、
 「そうか、みんなが山をおりるか。それなら生徒を、ひとりのこらず、ここへよんできておくれ。」と、いいました。
 【7】(やっと、先生は、われわれのいうことをきいてくださったな。みんなのまえで、あのどろぼう生徒をおいだすつもりなんだな。)
 生徒たちは、そうおもいました。∵
 やがて、生徒が、のこらずあつまりました。
 【8】どろぼう生徒も、しらん顔をしてきました。すると、先生がいいました。
 「このなかに、ひとの物をぬすむ、わるい生徒がいるということだ。そして、その生徒を学校から、おいだしてほしいとたのみにきた者がいる。【9】もし、わたしが、その不良生徒をおいださないなら、じぶんたちが学校をやめて、でていくといってきた。
 でていくがいいだろう。もともと、わたしはそのようにただしい生徒たちに教えることはなにもないのだ。【0】わたしが教えたいのは、ひとの物をこっそりぬすむような、わるい心をもっている生徒だけでいいのだ。どろぼうをするような生徒を、いつまでも教えて、ただしい人間にしたいのだ。もしそれができたら、わたしはまんぞくだ。もうなにもいうことはない。」
 生徒たちは、しんとしてしまいました。

 (今西祐行())
 「子どもに聞かせるえらい人の話」(実業之日本社)