エニシダ の山 1 月 3 週
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★じゆうなだいめい
○寒い朝、体がぽかぽか
★ひろいせかいに(感)(できるだけ自由な題名で)
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【1】ひろいせかいにでられたうれしさに、ユラは、からだじゅうウーンとのばして、花のひらくようにひらいたのです。ところがね、おわんのようにまるいぼうしのかわりに、ユラのは四角、まっ四角なのです。【2】ユラは、となりにうかんでいるなかまにたずねました。
――ねえきみ、ぼく、まるくならないんだよ。
するとそのクラゲは、ユラをながめて、おおごえをあげました。
――おやおや、ほんとだ。おーい、みんな、みてごらん。へんなのがいるぜ。
【3】たちまち、なん十ぴきものクラゲたちが、ゆらゆらゆらとなみにのってきて、ユラをかこみました。
――へんなの。
――まるくないぜ。
――ぼくらとちがってらあ。
――クラゲじゃないわ。
ユラぼうやは、びっくりしました。
【4】――ちがうよ、ぼく、クラゲだよ。ほら、足も手もみんなとおなじだけあるし、いろもこえも、おなじじゃないの。
――だって、まるくないぜ。
――四角いクラゲなんてみたことないや。
そこでみんなこえをそろえて、アッハッハとわらうのです。
【5】ユラはもう、なにもいえなくなり、そのまま海のあおいろのなかにとけてしまいたいとおもいました。あぶくのように、シュンときえたほうがいいなとさえおもいました。けれど、どちらもできぬこと。【6】ユラはだまって、なかまからはなれました。そして、ちいさななみ、大きななみにゆられながら、その夜は、ひとりでねむりました。
あくるあさから、ユラはいっしょうけんめいに、じぶんのなかまをたずねてまわりました。
【7】まず、イカのところでききました。
――ね、ぼく、あんたのなかまなの?
――じょうだんじゃなぃ。四角いイカなんているものか。イカは三角にきまってる。一角おおいよ。それに、きみは、ぼくみたいにはやくおよげないじゃないか。∵
【8】そういうとイカは、ロケットみたいにシュウッと水をふくむと、さっとおよいでいってしまいました。ふうん、と、ぼうやはまたゆられてゆきます。
こんどはタコ。
――ね、ぼく、あんたのなかまかしら?
【9】――なんだって。そんな白いタコなんているかい。それに足のかずだってちがうし、だいいち、このイボイボがないじゃないか。
そういうと、タ()コはプウウッとスミをふっかけて、いってしまいました。
【0】だめかなあ……ぼうやはスミをふきとりながら、またゆらゆらとはなれてゆきます。
つぎはナマコ。
――ね、ぼく、あんたのなかまだね。
――フフフフ、きみ、足が長すぎますよ。ほら、ぼくらは、もっとずんぐりしてるんだよ。
そういいながら、ヨタヨタと、からだじゅうであるいていってしまいました。
クラゲのぼうやは、しかたなく、もとのところへもどるほかはありませんでした。
けれど、みんなもなかまにいれてくれません。ユラはひとりぽつんとはなれて、ゆらゆら、ゆられていました。
ユラは、できるだけまるくなろうとやってみました。ぜんぶの足をつっぱって、あたまをまるくおしてみたり、プーンと、おもいきりふくれてみたり、岩にかどっこをゴツンとぶつけてみたり……でも、どうしても、まるくならないのです。その夜も青い三日月が、空にかかっていました。
ひとりぼっちのユラは、三日月にきいてみようとおもいました。
――ね、お月さま、ぼく、どうしてまるくならないのかしら……。
お月さまは、なにもこたえない。ただ、きれいにしずかに光っています。でも、あおい光をあびていると、ユラはとてもなつかしい気もちになって、ひとりでに、おいのりしたくなるのでした。
「ぽけっとにいっぱい」『四角いクラゲの子』より(今江 祥智)フォア文庫