ヘチマ の山 1 月 3 週
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○自由な題名
○寒い朝、体がぽかぽか
★まさかソフィーは(感)
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【1】まさかソフィーは、世界をわかりきったものだと思っている人の仲間ではないよね? これはわたしにとって切実な問題なのです、親愛なるソフィー。だから念のため、想像のなかで二つ、体験をしてみましょう。
【2】さあ、想像してみて。ソフィーは森を散歩しています。突然、行く手に小さな宇宙船を見つけます。宇宙船の上には一人の小さな火星人がよじ登ってソフィーをじっと見おろしている……。
さあ、そんな時、ソフィーなら何を考えるだろう? 【3】まあ、それはどうでもいいとして。でも、自分を異星人みたいに感じたことはない?
ほかの惑星の生物にでくわすなんて、そんなにありそうなことではない。ほかの惑星に生命が存在するかどうかもわからないし。【4】けれども、ソフィーがソフィー自身にでくわす、ということはあるかもしれない。ある晴れた日、ソフィーがソフィー自身をまったく新しく体験してはっとする、ということは。ちょうど森を散歩している時なんかにね。
【5】わたしっておかしなもの、とソフィーは考える。わたしはなぞめいた生き物、と……。
ソフィーはまるで何年もつづいたいばら姫の眠りから目覚めたように感じる。わたしはだれ? ソフィーはたずねる。ソフィーは自分が宇宙のある惑星の上をごそごそ動きまわっているということは知っている。【6】でも宇宙とはなんだろう? なんであるのだろう?
もしもソフィーがこんな自分に気がついたなら、ソフィーは自分自身をさっきの火星人と同じくらいなぞめいたものとして発見したことになるのです。いえ、宇宙からやってきたものを見てびっくりするほうが、まだましなくらいだ。【7】ソフィーはソフィー自身をとびきりおかしなものとして、とっくりと深く感じるのです。
わたしの話についてきている? ソフィー。もう一つ想像の体験をしますよ。
ある朝、パパとママと小さなトーマスが、そう、二つか三つの男の子です、キッチンで朝食を食べている。【8】ママが立ちあがり、流し台のほうに行く、するとそう、突然パパが天井近くまでふわっと浮かびあがる。
トーマスはなんて言ったと思う? たぶんパパを指さして、「パ∵パが飛んでる!」と言うでしょう。
もちろんトーマスはびっくりだけど、どうせトーマスはいつもびっくりしています。【9】パパはいろいろおかしなことをするから、ちょっとばかり朝食のテーブルの上を飛ぶなんて、トーマスの目にはべつにたいしたことには映らない。パパは毎日へんてこな機械でひげをそるし、しょっちゅう屋根に登って、テレビのアンテナをあちこちひん曲げる。【0】かと思うと、自動車に首をつっこんで、カラスみたいにまっ黒になって出てくる。
さて、こんどはママの番です。ママはトーマスの声に、何気なくふり返る。ソフィーは、キッチンのテーブルの上を飛びまわるパパを見て、ママがどう反応すると思う?
ママの手からジャムのガラスビンが落ち、ママはびっくり仰天してけたたましく叫びます。パパがいすに戻ったあと、ひょっとしたらママは医者に診てもらわなければならないかもしれない。(パパがテーブルマナーを守らなかったばっかりに、とんだ大騒ぎだ。)
どうしてトーマスとママの反応はこんなにちがうのかな? ソフィーはどう思う?
これは「習慣」の問題です。(このことば、メモして!)ママは人間は飛べないということをとっくに学んでいる。トーマスは学んでいない。トーマスはまだ、この世界では何がありで何がありではないか、よく知らない。
でもソフィー、この世界そのものは、どうなっているんだったっけ? こんな世界はありかな? 世界もパパのように宇宙空間にふわふわと漂っているんじゃなかったっけ……。
悲しいことに、わたしたちはおとなになるにつれ、重力の法則になれっこになるだけではない。世界そのものになれっこになってしまうのです。
わたしたちは子どものうちに、この世界に驚く能力を失ってしまうらしい。それによって、わたしたちは大切な何かを失う。