セリ2 の山 1 月 3 週
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○自由な題名
○寒い朝、体がぽかぽか
★(感)ちゃんばらごっこのけが
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【1】はたけは、麦をかりとったあとで、すっぺりとしていました。わたしは、いっしょうけんめいはしりました。みなもおってきます。
ところが、そのうち、わたしは、足のうらがあつくてたまらなくなりました。【2】そのころのわたしたちは、みんなはだしでしたから、夏の日ざしにやけた土は、ちょうどすなはまとおなじように、あつかったのです。
それで、わたしは、はしりながら、草がすこしかたまってはえているようなところをえらんで、ふむようにしました。
【3】(しめた、これならあつくないぞ。)
そうおもいながら、五、六ぽもいったでしょうか。お神明さんは、すぐそこです。
そのとき、
「あいたあっ!」
右足のうらに、ひどいいたみをかんじて、わたしはとびあがりました。きりでもズブリとさしとおしたようなかんじです。
【4】一ぽ、二ほ、たたらをふむと、土の上にころがりました。かずまくんやいくおくんたちは、すぐにとんできました。
「どうした。」
「へびか。」
わたしは、しりもちをついたまま、右足を見ました。なにか、つきささっています。【5】くぎです。赤くさびた、五寸くぎです。ブッスリとはいりこんでいます。いたみが頭のしんまでつきとおります。
「すぐにぬいてしまわなきゃなんねえど。」
かずまくんは、そういうと、いきなりわたしの足をかかえ、つきささっているふるくぎをつかむと、おもいきりつよく、グイとひきぬきました。
【6】「ああっ!」
おもわずひめいをあげましたが、もうそのときには、くぎはとれていました。
「三センチぐれえも、へえってたな。」
いくおくんが、まゆをひそめてわたしを見ています。わたしは、りょう手でその足くびをにぎりしめました。【7】ちがすこしでてきましたが、ぬいたあとはすぐふさがりそうにも見えます。
「あるけるか。たってみろよ。」
左足に力いれて、そっとたってみました。いたみはたしかにかんじますが、つまさきをちょっとつけるようにすれば、あるけないこともなさそうです。∵
【8】「かたなをつえにすればいい。」
いわれたとおりやってみると、いかにもちゃんばらでやられたゆうしのような気になりました。
ちゃんばらごっこは、それでちゅうし。みんなでお神明さんのまえで、しばいごっこなどをして夕方まであそび、家へもどるときには、もうそのけがのことは、ほとんどわすれていました。
【9】さて、これですんでいればなんということもなかったのですが、つぎの日になって、この足が、いたみだしたのです。赤くはれだした足のうらは、すこしずつ、いたみをましてきました。
【0】しかられるかもわからないとおもったわたしは、いつかいたみがひくことをねがって、こらえていましたが、どうにもこうにも、がまんしきれなくなりました。ズキンズキンと、ほねでもきられるようないたさです。
たぶん、その夕方だったでしょう。足をおさえてころげているのを、兄かあねが見つけ、母にしらせました。母は、いそいでやってくると、赤くはれた足のうらを見るなり、さけびました。
「なにをしたんだえ、この足は。」
わたしは、いたみになみだをながしながら、けがをしたときのことをはなしました。とたんに、母は、いきなりわたしのほおを、パシッとたたきました。
「なんで、すぐさまいわなんだがや!」
『いたずらわんぱくものがたり』「ちゃんばらごっこのけが」(かつおきんや)より