ケヤキ の山 2 月 3 週
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★じゆうなだいめい
○バレンタインデー、もうすぐ春が
★先生は(感)(できるだけ自由な題名で)
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【1】先生は、
「もういい、もういい。どうも、はじめてで、じじょうがわからなくて、気のどくをしたのう。さあ、そこにすわれ。」
といって、もうしわけなさそうに、ぼくを見つめるのでした。
【2】それから、先生は、じぶんのべんとうをはんぶんずつにわけて、
「さあ、たべろ。なあにえんりょするな。人間ちゅうもんはなあ、いいか、どんなにつらいことがあっても、けっしてへこたれるんじゃあねえぞ。」
と、やさしくいってくれるのでした。
【3】そういわれれば、いわれるほど、ぼくは、
「ううっ!」
といって、しゃくりあげてなきました。
しゃくりあげながらも、先生から、もらったおべんとうをたべていました。
わけてくれたおかずのしおじゃけも、こうやどうふのにしめも、おいしくておいしくて、みんなたいらげました。
【4】ところが、そのあたりから、ゆめがさめはじめたようでした。
――おまえは、うそをついて、先生のべんとうをたべたのだ。
どこからか、そんな声がきこえます。
――いや、あれはゆめの中のぼくで、ほんとは東北の少年なんだ。
そんな、べんかいもきこえました。
【5】しばらくすると、
――まあいいや、とにかく、こんどのあたらしい先生から、やさしい声をかけてもらって、べんとうをわけてもらったのは、ぼくだけなんだから。
と、いばった声もきこえました。
【6】――いや、おもいちがいをした源(げん)ちゃんが、わるいのだ。源(げん)ちゃんのくそぼうずめ。
こんどは、源(げん)ちゃんのせいにした声もでてきました。
とにかく、ぼくは、おもいあまってしまいました。∵
【7】そのおもいあまった気もちは、うちにかえってからも、つづいていました。
つぎの日になりました。
先生にあうのが、こわくなりました。
――いっそ、ずる休みするか。
と、おもいました。
でも、ぼくのうちは、かんしがきびしくて、とてもだめです。
【8】――ええ! どうにでもなれ。
ぼくははんぶんやけっぱちになって、しぶしぶと学校にいったのです。
やっぱり、おもっていたとおりでした。
ぼくは、一時間めに、しょくいん室によびつけられました。
【9】いがぐり頭のぎょろめの前沢先生は、ぼくを、にらみつけて、
「代田(しろた)! よくも、おれをだましたな。」
そういうなり、げんこつで、
「ゴツン」「ゴツン」
と、ぼくののうてんを、力いっぱいなぐりました。
「いたたっ!」「いたたっ!」
【0】目から火のでるほどのいたみが、ずしんと、からだぜんたいにひびいてきました。
でも、ぼくは、声をだしませんでした。
もちろん、なきもしませんでした。
いや、かえって、この「げんこつ」で、むねの中のもやもやが、すうっと、きえていくのがわかりました。
「ほらふきうそつきものがたり」『げんこつゴツン』(代田昇)より