エニシダ の山 3 月 3 週
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★じゆうなだいめい
○この一年、新しい学年
★みよこちゃんは(感)(できるだけ自由な題名で)
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【1】みよ子ちゃんは、このあいだから、こっそりおもいつづけていることがあります。
――いっちゃおうかな……と、夜になるとおもいます。でも、ちょっとはずかしくって、いえないのです。けれど、きょうは星のとくべつにきれいな夜でした。【2】そこで、みよ子ちゃんは、とうとう、おねだりしたのです。
――ね、おとうさん、おねがい。
ほほう……と、おとうさんは、めずらしそうにふりむきました。
――あれ、とって。
みよ子ちゃんは、空にたくさんある星をゆびさしました。
【3】あははは。おとうさんはわらって、
――あれは、だめ、星だもの。
みよ子ちゃんのかおはクシャンとゆがんで、べそをかきました。どうして星ならだめなのかしら。
おにいちゃんなんか、あんな高いところをとんでるトンボでも、ひょいとつかまえてくるのに……。
【4】――あれはね、とってもとおいところにあってとても大きいんだ。
けれどもみよ子ちゃんには、おとうさんのせつめいなぞ耳にはいりません。おもいつづけていたことを、やっといったのに、あははは、とわらわれちゃったんですからね。
【5】みよ子ちゃんはだまって家をでていって、うしろの丘にのぼりました。空の星に、いっそうちかくなった気のするところです。そして、そこにしゃがんでなきはじめました。
エーンエンエンエン
【6】大きななみだが、ポタンポタンとおっこちて、土(つち)にすいこまれてゆきます。すると、そのへんでへんな音がするのです。
コボン、コボ、コボ、ポコン
みよ子ちゃんはきみがわるくなって、なきやみました。【7】そしてたちあがったとたん、ポウン……と、足もとの土(つち)がはねのけられて、みょうないきものがかおをだしました。
――えへへ、ぼく、モグラだよ。
モグラなんて、しりません。∵
【8】けれどモグラのほうは、いっこうにへいきでつづけました。
――みよ子ちゃんが、あんまりなみだをおとすんで、ぼくの家のまえの道ね、そこの天井がゆるんじまうんでね。
――あら、ごめんなさい。
――みよ子ちゃんはあやまりました。
【9】――だって、わたし、そんなところにおうちや道があるなんて、気がつかなかったんだもの。
するとモグラは、みじかい手をふって、いやいや、べつにあやまってもらわないでも……。そこでふたりは、はなしはじめました。【0】そしてみよ子ちゃんが星のことをいうと、モグラは、なあんだ、といったかおつきでいうのです。
――ようがす。
それからくるりとまわれ右、五分もしないうちに、また穴からかおをだすと、
――これですよ、かけらしかとれませんでしたがね。
ひょいとさしだしたのは、土(つち)のかたまりです。こんな土(つち)なんて、と、みよ子ちゃんがうけとらないでいると、モグラはいうのです。
――だってこの地球も、星の一つなんですよ。空のむこうからみれば、あおく光って、くるくるまわってるんです。
へええ、そうなの、と、みよ子ちゃんはおもいました。
「ぽけっとにいっぱい」『星をもらった子』より(今江 祥智)フォア文庫