タラ の山 6 月 3 週
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○自由な題名
○家族(かぞく)の長所


★怪我の功名(感)
怪我の功名

 【1】「怪我」は傷のことなんだけど、ここでは、あやまちとか過失の意味をさすんだ。「功名」はてがらとかよい結果のこと。つまり、失敗をしたのにそれがかえってよい結果になった、ということ。また、なんの気もなくやったことが、たまたまよい結果になった、ことでもある。
 【2】――Oさんは、でかけようとして玄関をでた。バス停の近くまでいったところで、財布をわすれたことに気づいた。あわてて家にもどり、財布をもってでてきたが、バスはいったあとだった。つぎのバスは、十五分たたないとこない。【3】「だいじな約束なのに、これじゃ、おくれてしまう」
 Oさんは、わすれ物したことをぼやいていた。つぎのバスに乗って、交差点まできた時だ。パトカーやら救急車がきて、大さわぎだった。窓から見たOさんはびっくりした。【4】乗りおくれたバスがダンプカーと衝突している。けが人もでたようだった。
 「いやあ、よかったあ。もしわすれ物をしていなければ、あのバスに乗って。いまごろ……。」Oさんは、ほーっと大きな息をついた。
 【5】こんなできごとを「怪我の功名」というんだ。
 ドライ・クリーニングの方法を世界ではじめて見つけたのも、さいしょは失敗からだった。見つけた人は、フランス・パリの仕たて屋、ジョリー・ベランさんだ。【6】ドライ・クリーニングとは、水を使わないで、物質をとかす液体を使ってせんたくする方法だ。一八四八年のある日、ベランさんはテーブルのランプをひっくり返してしまった。ランプのオイルがテーブルにこぼれ、奥さんがせんたくしたばかりのテーブルクロスを、ひどくよごしてしまった。
【7】「まいったなあ。うちのやつが帰ってくるまでに、きれいにしておこう。」
 べランさんは、よごれたテーブルクロスを手にとった。見ると、オイルがこぼれた方がまっ白で、きれいになっている。これはどういうことか。【8】べランさんの頭に、ひらめくものがあった。∵
「きっと、ランプオイルには、布をきれいにする力があるのだ。」
 それからべランさんは、実験をくり返し、クリーニングの方法をマスターしたのだ。【9】そして仕たて屋をやりながら、ドライ・クリーニングのしごともうけてやるようになった。
 テーブルクロスにオイルをこぼしたばかりに、ベランさんはとっても大きな発見をしたのだ。【0】

 「常識のことわざ探偵団」(国松俊英著 フォア文庫)より