シオン の山 7 月 3 週
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○自由な題名
○お父さんやお母さんとあそんだこと

○暑い日
★父が母国をはなれたあと(感)
 【1】父が母国をはなれたあと、母は三人の育ちざかりのむすこをかかえ、けんめいに生きてきました。「牛乳とやさいをうる店がちかくにないから、あなたがやってみては。お金は用だてます。」と、しんせつな友人がすすめてくれ、家のすぐそばに小さな店をひらきました。【2】もうけはみじめなほどすくないのですが、ともかく毎日いくらかでもお金がはいってくるのは助かります。
 それでもときには、あすのお金にもこまることがありました。そこでロベルトとリュドビグの兄弟は、アンデルセンの童話そっくりのアルバイトをしました。【3】町かどに立って、通行人にマッチのわけうりをし、銅貨をいくまいか、かせいだのです。
 ロベルトとリュドビグが、ほこらしげにその日のうりあげを母にわたすのをみたとき、アルフレッドは、どれほどじぶんをなさけなくおもったかしれません。【4】からださえじょうぶなら、兄たちにけっしてまけてはいませんのに……。
 アルフレッドが気をうしなってたおれた数日後の雪の日には、こんなことがありました。
 【5】店から昼食のしたくにかえった母が、ロベルトに一まいの硬貨をわたし、「パンとすづけにしんをかってきてちょうだい。それでおひるをすませましょう。」とたのみました。
 【6】ロベルトは二つへんじででかけていったのですが、いつまでももどってきません。
「どこまでいったのかしら……。」
 しびれをきらした母が、ドアをあけると、そこにロベルトが立っていました。そまつながいとうを雪でぐっしょりぬらし、青ざめてふるえながら。
【7】「ぼく、お金を雪のなかにおっことしたんだ。いくらさがしてもみつからなくて……。」
 十二さいの、父ににてがっしりしたからだのロベルトがなきじゃくりました。硬貨をしまったポケットにあながあいていたのです。【8】母の、なかみのとぼしいさいふのことをおもって、ロベルトは、きっと、とほうにくれてしまったのでしょう。
(かわいそうに、ロベルト兄さん……。)
ベッドのなかのアルフレッドは、心でよびかけました。
【9】(ひるごはんくらい、たべなくてもへいきなのに……。)
「おばかさんねえ……。」
 ロベルトをだきしめて、母がわらいました。∵
「雪のなかに貯金したとおもえばいいじゃない。」
「そうさ。」
と、リュドビグ。
【0】「でも、雪がとけたとき、フレイのやつがさきに貯金をみつけなきゃいいけどなあ。」
 フレイというのは、リュドビグのけんかなかまなのです。
 みんな、おもわずふきだしました。
 それから母と子の四人家族は、ひとさらずつのスープを、フーフーふきながらのみ、ほかになんにもたべなくても、心はみちたりていました。たがいのあたたかい理解と愛情とユーモアでむすばれていましたから。
 
(「ノーベル」大野進著より)