イバラ の山 8 月 3 週
◆▲をクリックすると長文だけを表示します。◆ルビ付き表示▲
★じゆうなだいめい
○いえでかっているきもののこと
○小さいころから大切にしているもの
○しばさぶろうは、よろこんで(感)
◆
▲
【1】しばさぶろうは、よろこんでくまもとの学校へはいりました。べんきょうをはじめました。
けれども、おとうさんのいったとおり、がいこくのことばはたいへんむずかしいのでした。【2】がいこくの先生が、がいこくのことばでおしえてくれるのです。さっぱりわかりません。いまのように、字引もありません。
【3】しばさぶろうは、やっぱり、いやになりました。
「学校をやめて、うちへかえって、ひゃくしょうをしよう。」
【4】先生のところへいって、「学校をやめさせてください。」といおうとしました。けれども、しばさぶろうがいうまえに、先生からさきにききました。
【5】「しばさぶろうくん。元気がありませんね。どうしたのです。」
「はい。その……。」
と、しばさぶろうは、なみだがでそうになりました。
【6】じっと、こらえているうちに、ふと、先生のつくえの上のしゃしんが目につきました。ぶらんこにのっている、がいこくの子どものしゃしんです。先生の子どもにちがいありません。
【7】はっとして、しばさぶろうはいいました。
「先生は、とおいがいこくから、ひとりで、日本へきてさびしくありませんか。」
【8】すると、先生はにっこりとしていいました。
「そうですね。ときどき、子どものことを、ゆめに見ます。でも、日本では、すぐなおる病気にかかっても、みんな死にます。わたしひとりのことなどかんがえておられません。はやく日本のみなさんに、ながいきをしていただきたいのです。」
【9】ああ、なんとりっぱな、先生のことばでしょう。
しばさぶろうは、いっぺんにこころがかわりました。もううれしくてなりません。∵
【0】「そうだ。べんきょうがむずかしいなんていっていてはいけないんだ。はやくよいおいしゃさんになって、日本のみなさんにながいきをしてもらわなければならない。」
つよく、そう思いました。
(二反長半(にたんおさなかば)編 白木茂著 「美しい話・いじんの心」より)