黄ウツギ の山 10 月 3 週
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○自由な題名
◎土


★第二次大戦は(感)
 第二次大戦はデモクラシーとファシズムの戦争だった。これがいまの歴史教育の基本である。こんな大嘘はない。
 あの戦争ではアメリカとソ連が手を結び、同じ側に立ったのである。アメリカがデモクラシーであることに異論はないが、スターリンのソ連をデモクラシーと言ったら、噴飯ものである。
 第二次大戦をデモクラシー対ファシズムの構図にしたのは、アメリカの戦時プロパガンダである。プロパガンダは事実である必要はない。嘘でも何でも、目的を達成すればいいのである。アメリカはこのプロパガンダで戦争の正当性を主張し、デモクラシーの価値を守るための戦いだと言って国民の士気を鼓舞し、目的を達したのだ。
 では、第二次大戦はどういう戦争だったのか。アルタルキーの国と非アルタルキーの国の戦争だったのである。
 アルタルキーの国とは、近代産業を支えるための天然資源を自国内や植民地内に持っている国のことである。逆に非アルタルキーの国はそのための天然資源を持っていない国をいう。
 あの戦争をアルタルキーの国対非アルタルキーの国のぶつかり合いと見ると、全体像がはっきりする。
 アメリカ、イギリスはもちろん、ソ連もフランスもオランダも、いわゆる連合国側に入る国はすべてアルタルキーの国である。それに対峙した日本もドイツもイタリアも非アルタルキーの国である。アルタルキーの国はブロック経済で関税を高くし、非アルタルキーの国を締めあげた。しかし、関税を高くするぐらいは耐えられた。すると、今度はアルタルキーの国は非アルタルキーの国に天然資源を売らないとなった。航海条約が破棄され、貿易が遮断された。こうなってはたまらない。ついに爆発して戦争になった。これが事実である。ところが、デモクラシー対ファシズムの戦争というアメリカの戦時プロパガンダを鵜呑(うの)みにして、歴史教育は行われている。デモクラシーとファシズムとでは、明らかにデモクラシーが善であり、ファシズムが悪である。従って、ファシズムの側にくくり込まれた日本は悪者ということになる。
 (中略)
 いま約百六十か国の独立国が国連に加盟している。こんなに独立国が増えたのは戦後のことで、しかもそのほとんどは有色人種の国である。これは日本がアメリカとがっぷり組んで横綱相撲を取った結果なのだ。
 連合国側に与(くみ)した白人国家は有色人種の国を独立させる意志はなかった。事実、戦後日本が東南アジアから引き揚げたあと、イギリス、フランス、オランダなどは軍隊を送り、もう一度東南アジアの国々を植民地にしようとした。
 だが、それはできなかった。東南アジアの人びとが、日本の勇敢な戦いの前に敗北する白人たちを目(ま)の当たりにして、白人に有色人種が勝てることを知り、敢然と抵抗したからである。
 ビルマやフィリピンは日本の統治下で日本の協力のもとに独立した。その波はインドからアフリ力に及び、そして独立した有色人種国家が国連などで活躍するのがアメリカの黒人を勇気づけ、市民権獲得となっていった。
 つまり、すべての人類は平等とする波が起こったのは戦争の結果であり、その起点となったのは日本なのである。
(「致知」九十七年二月号 渡部昇一氏の文章より)