ツゲ2 の山 10 月 3 週
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○自由な題名
○野山に出かけたこと
★イヌが聞きわける音は(感)
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【1】イヌが聞きわける音は、魚の聞きわける音よりも広い範囲のように思えます。わたくしたちが注意してもほとんど聞くことのできない遠くの音にイヌは耳をそば立てて、吠えることがあるのは、みなさんも知っていることでしょう。
【2】フォックス先生は直径三ミリほどのスチールのボールを三センチくらいの高さから床に落として実験しましたが、人間にやっと聞こえる距離の四倍も遠い距離でも、イヌには、ボールの落ちる音が聞こえることを確かめました。【3】これはイヌがわたくしたちが聞きわけられる音よりもずっと弱い音を聞きわけるということですが、わたくしたちにはあまり高くて聞くことのできない音も聞きわけることがわかりました。【4】サイレント笛といわれる笛は、わたくしたちには聞こえない高い音も出せますが、口笛のようにこれを吹いてイヌをよぶ訓練もできます。また、楽器の奏でる音の中には、わたくしたちには聞こえない高い音がふくまれていますが、イヌはこれを聞きわけることもできるのです。
【5】ソビエトのパブロフ先生はお腹のすいたイヌに肉を食べさせる数秒前にベルの音を聞かせることをくり返しましたが、三十回くり返すと、イヌが肉のにおいをかいだり、みたりしないうちに、音を聞いただけで口の中によだれが出てくることをみつけました。【6】イヌののどにゴムの管を入れておきますと、よだれが管を通ってしずくになって出てきます。このしずくを目盛のついたガラスびんの中にうけ入れると、よだれの分量を測ることができます。【7】音を聞かせては肉を食べさせることをくり返しますと、音を聞くとすぐによだれが出てくるだけでなく、その分量もだんだんに増えていくことがわかりました。このやり方は条件づけといいます。【8】わたくしたちも、お腹のすいたお昼時に、学校の授業の終わりを告げるベルの音を聞くと、自然に口の中につばがでて来たりしますが、これと同じことと思えます。∵
【9】このやり方でイヌにピアノのある音を聞かせてから、その音を出した鍵盤からずっと離れた鍵盤の音を聞かせてみましたところ、はじめの音ではよだれがでてくるのに後の音では止まってしまったのです。【0】イヌにとって二つの音は同じ音ではなく、ちがう音として明らかに区別されたわけです。はじめの音はごちそうの出る合図ですが、それとはちがう後の音は合図にはならなかったのです。イヌは鍵盤のひとつひとつの音を区別できるばかりではなく、その四分の一の高さのちがいでも聞きわけることができます。もちろん、わたくしたち人間も、ことにバイオリンをひいたり、フリュートを吹いたりする人たち、また、それらの楽器を調律する人たちは、これよりももっとわずかな音の高さのちがいをも聞きわけられます。
(「動物とこころ」 小川隆著 大日本図書より)