黄ウツギ の山 12 月 3 週
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○自由な題名
◎根
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★私は、特に小売業に(感)
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私は、特に小売業に詳しいのですが、小売りの店頭から見て、いまこうやればうまくいくということが三つあります。(1)明るい、(2)女性とクチコミ中心、(3)本物志向がそれです。
いま、暗い店は売れません。店内の地上一メートルのところで二千ルックスの明るさの売り場がよい、とアドバイスしています。三、四年前までは一千ルックスで十分でした。だが、いまは千五百ルックス以下ではがくんと売れ行きが落ちます。暗い店はだめなのです。
去年、私はたくさん本を出しました。私の本はほとんどが数万部以上はたちまち売れます。ところが、一冊だけ売れない本がありました。『死中に活路を』(日本実業出版刊)という本です。バブル崩壊から立ち直った二十人の話に私のコメントを入れたもので、いい本なのですが、一万数千部出たところで止まってしまいました。題名にある「死中」という言葉がいけなかったようです。
「女性とクチコミ」「本物志向」につきましてはあとで詳しく触れますが、これに「明るさ」を加えた三つが、これからうまくいくための欠かせない要素である、そういう流れがある、ということです。
経営環境の今後の流れがどうなるかも押さえておきましょう。
日本の景気がよくなるには二つのポイントがあります。一つは土地の値段が下げ止まること、もう一つは個人消費が上向くことです。
土地の値段は向こう十年は下げ止まらない、というのが私の意見です。いや、二十年かかるかもしれません。
銀行の頭取さんの知り合いが何人かおり、時折一緒に食事しながら話をします。そういう場では、本音が出ます。そこでわかるのですが、みなさん、私と同じように考えているのです。
そもそもバブル経済になったのは、土地の値段があがったからです。それが崩壊したのですから、後遺症の後始末がきちんとつかないと、土地の値段は下げ止まらない、というのは簡単にわかることです。きちんと後遺症を処理するには、最終的に銀行が責任をすべてとらなければなりません。
いまは住専処理の方向に一つの線が出てきたところです。それで終わりではありません。住専が処理されたら、次はゼネコンです。ノンバンクです。これらの後遺症をひとつひとつ片づけていくと、最後は銀行に行き着きます。銀行の後遺症がきちんと処理されて、はじめてバブルの後遺症は完全に解消するのです。
銀行の頭取さんの多くは「私もサラリーマン経営者だから、任期中にバブルの処理などやりたくない」という気持ちを抱いています。どうしても先へ先へと延ばすことになります。だから、バブルの始末が銀行に回ってきて、最終的に処理されるのは早くて十年、ことによったら二十年かかる、というのは順当な見方なのです。
(「致知」九十七年二月号 船井幸雄氏の文章より)