ススキ の山 12 月 3 週
◆▲をクリックすると長文だけを表示します。ルビ付き表示

○自由な題名
○もうすぐクリスマス(お正月)


★その日から(感)
 【1】その日から、アインシュタインの、核廃絶と戦争反対への努力がはじまりました。
「われわれは、戦争には勝ちました。けれども平和を勝ちとったわけではない。」
 【2】博士はまず、アメリカ国民に対して、こう忠告します。
 原子力は、人間の手にあまるほど危険な力です。つぎの戦争で使われたら、世界は破滅するでしょう。【3】だから、ぜったいに戦争が起こらないように努力しなければなりません。アメリカ人は、世界に先がけて原子兵器のひみつをにぎった国民として、このことをぜひ自覚してほしいとうったえたのです。
 【4】博士は、終戦直後にできた、国際連合の原子力委員会の会長を引き受けました。一九四六年には国際連合に、世界政府をつくることを提唱します。つまり、世界から国境をなくし、国家どうしの争いを永久になくそうというのです。
 【5】けれども、そのときすでに、ソ連をはじめ世界各国で、アメリカに負けじと、核開発競争がはじまっていました。
 こうなると、アメリカもだまってはいられません。一九四八年、トルーマン大統領によって、こんどは「水爆(水素爆弾)」の開発が命令されました。
 【6】核開発合戦はいよいよ過熱し、世界はアメリカ側とソ連側にわかれて、にらみあうようになりました。
 人間のおろかさに、博士は深く胸をいためました。そして、あるときたずねてきた日本人の記者に、「敗戦国日本の国民には、心から同情します。【7】けれども、勝った国々もいま、それ以上に苦しい道を歩んでいるのです。」と、しみじみ語りました。博士は、原子力発電所をはじめとする、原子エネルギーの平和利用についても、かなり慎重な考えをもっていました。
 【8】一九四五年『アトランティック=マンスリー』という雑誌に∵は、つぎのように書いています。「……原子力が将来、人類に大きな恵みをもたらすとは、いまのわたしには、考えにくいのです。原子力は脅威です。」
 【9】人間は、原子力を発見できたのに、どうして、それを管理できないのでしょう、ときかれると、「それは、政治が物理学よりむずかしいからですよ。」と、皮肉をこめて、答えています。【0】
 
(「アインシュタイン」岡田好恵著より)