0エニシダ の山 3 月 4 週
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★自由(じゆう)な題名(だいめい)
○清書(せいしょ)
○石鹸の起源
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【1】今から五千年くらい前の古代ローマの時代、「サポーの丘」というところにあった神殿では、いけにえの羊を焼いて神に捧げるという習わしがありました。この羊の脂がしたたり落ちて木の灰に混じり、土(つち)に染み込んでいきました。【2】この土(つち)が汚れをよく落としたことから、石鹸として使われるようになったといわれています。英語で石鹸のことを「ソープ」といいますが、これは、この丘の名前の「サポー」から来ているそうです。
【3】また、同じころ、現在のイラクのあたりで栄えていたメソポタミア文明でも、石鹸の作り方がわかっていたようです。シュメール人が残した粘土の板には、くさび形(がた)文字で、木の灰にいろいろな油を混ぜて煮ると石鹸ができると書いてあります。
【4】このことからもわかるように、石鹸は、動物や植物の油を、灰汁などのアルカリ性の液体で煮ると作ることができます。灰汁というのは、植物の灰を水に溶かしたその上澄みです。【5】しかし、アルカリ性の液だけでも汚れはいくらか落とせることから、人々は洗濯には灰汁を使うことが多かったようです。
【6】日本に石鹸が入ってきたのは、室町時代の終わりごろです。鉄砲などと同じように、石鹸はポルトガル人が持ってきたものです。しかし、高級品だった石鹸は、身分の高い人たちだけのものでした。【7】一般の人々は、洗濯には、ムクロジという木(き)の実やサイカチという木(き)の実のさや、そして灰汁を使っていました。
ちなみに、ムクロジの木(き)の実の種はかたく、お正月のはねつきの羽のおもりに使われています。【8】この実の外側の皮を水につけてもむと、泡が出て石鹸のように使えたのです。
こんなに古い歴史を持つ石鹸ですが、だれでも気軽に洗濯に使うことができるようになったのは、日本では明治時代の後半になってからです。∵
【9】手を洗うとき、私たちも古代ローマのいけにえの羊に、感謝しなくてはなりませんね。
「ヒツジさん、石鹸のもとになった感想をひとこと。」
「まあ、セッケン(世間)ではそう言っているけどね……。」
「いけにえは、もうこりごりですか。」
「そうぷ。」【0】
言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 τ