a 長文 1.1週 00e
 いまから六おくねんくらいまえうみには、クラゲやゴカイなどの仲間なかま三葉虫さんようちゅうのような節足動物せっそくどうぶつがくらしていました。からだがたくさんの細胞さいぼう作らつく れていると、体中からだじゅう細胞さいぼう分裂ぶんれつさせて自分じぶん子孫しそん作るつく わけにはいかなくなります。そこで、ひとつの細胞さいぼう自分じぶんからだのすべての情報じょうほう入れい て、その細胞さいぼう情報じょうほうにしたがって分裂ぶんれつしていき、おや同じおな かたちになるような方法ほうほう子孫しそん残すのこ ようになりました。これがたまごのはじまりです。
 最初さいしょ生命せいめい生まれう  たのはうみなかでした。生物せいぶつ長いなが あいだうみなか進化しんかをつづけ、最初さいしょたまごうみなか生まれう  ました。水中すいちゅう産みつけう   られたたまごは、まだかたいから持たも ず、やわらかいゼラチンしつ中心ちゅうしん細胞さいぼう守っまも ているだけでした。 
 最初さいしょりく進出しんしゅつした生命せいめいは、こけのような生物せいぶつですが、やがて、水辺みずべからいろいろな生物せいぶつ上陸じょうりくしていくようになりました。ゴカイやミミズの仲間なかま、クモやサソリの仲間なかま、カタツムリの仲間なかまなどが、みずからはなれて陸上りくじょうでくらすようになります。クモやサソリの仲間なかまからは、やがて昆虫こんちゅうもあらわれ世界中せかいじゅう広がりひろ  ました。それら動物どうぶつたちは、みんなたい中心ちゅうしん硬いかた ほねがないので、脊椎動物せきついどうぶつ呼ばよ れています。みずなかではなく、りく最初さいしょたまご産むう ようになったのは、こうした脊椎動物せきついどうぶつでした。空気くうきちゅう乾燥かんそうしないように比較的ひかくてき硬いかた から守らまも れたたまごは、丸かっまる  たり細長かっほそなが  たり、いろいろなかたちをしていました。 
 いぬねこ人間にんげんなどの哺乳類ほにゅうるいは、脊椎動物せきついどうぶつ呼ばよ れ、からだ中心ちゅうしん硬いかた 骨格こっかく持つも 動物どうぶつです。うみなか進化しんかしたさかななかから、やがてりく上がるあ  ものが現われあら  、それらがいま地上ちじょう脊椎動物せきついどうぶつ祖先そせんになったと考えかんが られています。
 最初さいしょりく上がっあ  たのは、カエルなどの両生類りょうせいるいでした。カエルは、陸上りくじょう歩きある はい呼吸こきゅうすることができますが、からだ乾燥かんそうには
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弱くよわ 水中すいちゅうたまご産みう 、オタマジャクシとして成長せいちょうします。
 この両生類りょうせいるいなかから、からだがもっと乾燥かんそう強くつよ 水辺みずべから離れるはな  ことのできる動物どうぶつ進化しんかしてきました。それが爬虫類はちゅうるいです。爬虫類はちゅうるい地上ちじょう本格ほんかくてきたまご産んう 最初さいしょ脊椎動物せきついどうぶつです。そのころの陸地りくちには植物しょくぶつがおいしげり、乾いかわ 場所ばしょでもたまご産めるう  昆虫こんちゅうなどの脊椎動物せきついどうぶつ大いにおお  栄えさか ていました。陸地りくちでもうまく生活せいかつできて、子孫しそん残すのこ ことができれば、草食そうしょくでも肉食にくしょくでも食べるた  ものは豊富ほうふにあるのです。 
 そんな爬虫類はちゅうるい仲間なかまから、やがて恐竜きょうりゅうわたしたち哺乳類ほにゅうるい先祖せんぞ出現しゅつげんしてくるのです。 

 でも、りくみずあいだにすんでいるカエルは、ときどき、「やっぱりみずなかにカエルかなあ」と思うおも ときがあるそうです。

 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい 
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a 長文 1.2週 00e
 十五のとき、信玄しんげんは、おとうさんといっしょに、はじめて、戦争せんそうにでかけました。
 しかし、てきが、しっかりしろをまもっているので、なかなか、しろをせめおとすことができません。そのうち、ゆきがどんどん、ふってきました。
 おとうさんは、あきらめて、じぶんのくににひきかえすことにしました。
 すると、信玄しんげんは、おとうさんにないしょで家来けらいたちをあつめて、
 「このゆきで、てきも、せめてこないとおもって、ゆだんしているだろう。そのすきに、せめこめば、きっと、せめおとせるにちがいない。」
 そういって、てきしろにむかい、ゆだんしているてきしろを、せめおとしてしまいました。
 それからも、信玄しんげんは、いく戦争せんそうをしましたが、一も、まけたことがありませんでした。
 そして、とうとう、謙信けんしん信玄しんげんは、川中島かわなかじまというところでたたかうことになりました。
 しかし、どちらも、つよいものどうしです。なんたたかっても、なかなか、勝負しょうぶがつきません。
 あるとき、謙信けんしんは、ウマにのり、かたなをふりあげて、いきなり信玄しんげん陣地じんちに、せめこんでいきました。
 信玄しんげんかたなをぬくひまもありません。もっていた軍配ぐんばいで、やっと、謙信けんしんかたなをうけとめました。
 「えいっ、えいっ。」
 謙信けんしんは、なおも、はげしく、きりかかります。謙信けんしんかたなが、信玄しんげんかたにあたって、がながれました。
 そのとき、信玄しんげん家来けらいが、かけてきて、謙信けんしんののっているウマのおしりを、びしりと、やりでたたきました。
 「ヒヒーン」
 ウマは、おどろいて、にげだしました。
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 こうして、謙信けんしんは、とうとう、信玄しんげんをうちとることができませんでした。
 やがて、信玄しんげんは、ほかのくに戦争せんそうをはじめました。
 信玄しんげんくには、山国やまぐにです。しおや、さかなは、よそのくにから、はこんでこなくてはなりません。そこで、あいてのくにでは、とちゅうのみちをふさいで、しおやさかなを、信玄しんげんくににはこべないように、してしまいました。
 謙信けんしんは、そのはなしをきいて、信玄しんげんを、のどくにおもいました。そして、あいてのやり方  かたに、すっかり、はらをたてました。
 「生きい ていくのにひつような、しおやさかなをたべさせないようにするなんて、なんという、ひきょうなやり方  かただろう。
 わしと信玄しんげんとは、てきどうしだが、だまってはいられない。よし、すぐに、こちらからおくってやろう。」
 そういって、じぶんのくにから、しおやさかなを、どっさり、信玄しんげんのところへおくってやりました。

 (大石真
 「子どもこ  聞かき せるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ
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a 長文 1.3週 00e
 生徒せいとたちは、たがいにをつけあって、だれがどろぼうをするのかたえずちゅういしていました。すると、わかりました。おなじなかまのひとりです。
 「どろぼうといっしょに勉強べんきょうするなんて、いやなことだ。先生せんせいにそうだんして、あいつをおいだしてもらおう。」
 なんにんかの生徒せいとたちが、そういって、こっそり盤珪ばんけい先生せんせいのところへいきました。
 「先生せんせい、このあいだから、なんも、ものがなくなるのです。こっそりしらべてみると、どろぼうは、わたしたちのなかまのひとりです。どうか、そのどろぼうを、学校がっこうからおいだしてください。おねがいです。」
 「そうか。よしよし、そんなわるい生徒せいとがいるのか、よし、わかったぞ。」
 盤珪ばんけい先生せんせいは、生徒せいとたちに、そういいました。
 それから二、三にちして、また、ものがなくなりました。
 しかも、盤珪ばんけい先生せんせいは、いっこうに、その生徒せいとをやめさせるようすもありません。
 生徒せいとたちは、また先生せんせいのところにいって、いいました。
 先生せんせい、どうしてどろぼう生徒せいとをおいだしてくださらないのですか。わたしたちは、あいつがいるために、安心あんしんして勉強べんきょうすることもできません。もし、先生せんせいが、どうしても、あの生徒せいとをやめさせてくださらないとおっしゃるなら、わたくしたちのほうで、もうやまをおりようとおもいます。」
 すると、盤珪ばんけい先生せんせいは、
 「そうか、みんながやまをおりるか。それなら生徒せいとを、ひとりのこらず、ここへよんできておくれ。」と、いいました。
 (やっと、先生せんせいは、われわれのいうことをきいてくださったな。みんなのまえで、あのどろぼう生徒せいとをおいだすつもりなんだな。)
 生徒せいとたちは、そうおもいました。
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 やがて、生徒せいとが、のこらずあつまりました。
 どろぼう生徒せいとも、しらんかおをしてきました。すると、先生せんせいがいいました。
 「このなかに、ひとのものをぬすむ、わるい生徒せいとがいるということだ。そして、その生徒せいと学校がっこうから、おいだしてほしいとたのみにきたものがいる。もし、わたしが、その不良ふりょう生徒せいとをおいださないなら、じぶんたちが学校がっこうをやめて、でていくといってきた。
 でていくがいいだろう。もともと、わたしはそのようにただしい生徒せいとたちに教えるおし  ことはなにもないのだ。わたしが教えおし たいのは、ひとのものをこっそりぬすむような、わるいこころをもっている生徒せいとだけでいいのだ。どろぼうをするような生徒せいとを、いつまでも教えおし て、ただしい人間にんげんにしたいのだ。もしそれができたら、わたしはまんぞくだ。もうなにもいうことはない。」
 生徒せいとたちは、しんとしてしまいました。

 (今西祐行
 「子どもこ  聞かき せるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ
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a 長文 1.4週 00e
 香りかお マツタケあじシメジ」という言葉ことばにあるように、わたしたち日本人にっぽんじんは、あきになるとマツタケを楽しみたの  たいと感じかん ます。マツタケご飯 はんに、土瓶どびん蒸しむ やきマツタケ、貴重きちょう高級こうきゅうあじねん一度いちど味わっあじ  て、こころからだ元気げんきになるようです。また、ふだんからシイタケ、エノキダケ、シメジ、ヒラタケ、マイタケ、エリンギなど、お料理りょうり欠かか せない素材そざいとなるきのこもあります。このように身近みぢか存在そんざいであるきのこは、いったいいつごろから食べた られるようになったのでしょう。
 高松たかまつの このみねに かさ立てた 
 みちさかりたる あきのよさ
 万葉集まんようしゅう収めおさ られたうたです。「かさ立てた て」はマツタケがカサを広げひろ てはえている様子ようす、「あき」はマツタケの香りかお のことです。このうたられるように、日本人にっぽんじん少なくともすく    奈良なら時代じだいにはきのこを食べた ていたと考えかんが られます。更にさら 平安へいあん時代じだいには、貴族きぞくたちのあいだで、季節きせつをいろどる文化ぶんかてき行事ぎょうじとしてマツタケりが行わおこな れたそうです。
 きのこは、光合成こうごうせいをしている植物しょくぶつ違っちが て、ひかりがなくても生きい ていくことができます。むかしは、はな咲かせさ  ない植物しょくぶつであるシダやコケの仲間なかま考えかんが られていたこともありますが、いま菌類きんるいとして植物しょくぶつ動物どうぶつとは違うちが 生物せいぶつだとされています。
 植物しょくぶつ動物どうぶつは、食べた たり食べた られたりすることでつながり、バランスが保たたも れています。植物しょくぶつひかりから栄養えいようぶつつくり出す   だ 生産せいさんしゃ役割やくわり果たしは  ています。動物どうぶつは、ほかの生物せいぶつ食べた 栄養えいよう吸収きゅうしゅうする消費しょうひしゃ役割やくわり果たしは  ています。その植物しょくぶつ生産せいさん動物どうぶつ消費しょうひがうまく流れなが ていくように、消費しょうひ切れき なかったものを分解ぶんかいするのがきのこたち菌類きんるい役割やくわりです。
 きのこは、「大きなおお  にはえる小さなちい  子どもこ  」ではありません。自然しぜんかいなかでは、植物しょくぶつ動物どうぶつとならぶような大きなおお  存在そんざいなので
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す。そう思うおも と、おなべのなかでぐつぐつ煮えに ているエノキやシメジが「自然しぜん大切たいせつにするんだよ」と語りかけるかた    ように思えおも てきます。 

 同じおな ように見えるみ  きのこにも、いろいろな性格せいかくがあります。のんきなエノキ、まじめなシメジ、じっとマツタケ、おいシイタケ、筋肉きんにくもりもりマッシュルーム。

 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい μ
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a 長文 2.1週 00e
 幸之助こうのすけは、自転車じてんしゃをやめました。そして、知り合いし あ ひとをたよって、電燈でんとう会社かいしゃにはいり、工夫こうふになりました。ものおぼえのよい幸之助こうのすけは、三ねんもすると、すっかり電気でんきのことをおぼえてしまいました。そして、せっせとお金 かねをためて、こんどは、じぶんで電気でんきをはじめました。
 電気でんきといっても、長屋ながやをかりて、かんたんな機械きかい買いか いれ、電燈でんとうのソケットをつくったのです。
 でも、もともとわずかなお金 かねしかありませんでしたし、ソケットは、おもったように売れう ませんでした。
 (こまった、こまった。このままでは、せっかく買いか いれた機械きかいも、売っう てしまわなければ、あしたから、たべていけないじゃないか……。)
 幸之助こうのすけは、あるがくれるのも気づかき  ずに、うでぐみをしてかんがえこんでいました。すると、となりのいえから、おかあさんと子どもこ  が、なにかしきりにいいあっているこえがきこえてきました。
 電燈でんとうをこっちへおくれよ。ほんがよめないよ。」
 「おかあさんだって、このしたてもの、どうしても、こんやじゅうに、しあげなけりゃならないんだもの、電燈でんとうがいりますよ。おまえが、こっちへきて、勉強べんきょうすればいいじゃないか。」
 たった一つ、へやにさがっている電燈でんとうを、おかあさんと子どもこ  がとりあいっこしているのでした。
 そのころは、どこのいえでも、一つか二つの電燈でんとうを、あっちへひっぱり、こっちへひっぱりして、つかっていたのです。電燈でんとうせんをふやすには、とてもたかいお金 かねがいりました。
 幸之助こうのすけは、そのとき、ふとかんがえました。
 (もし、一つの電燈でんとうせんから、かんたんにもう一つのせんをひけるようにできたら……。そうだ、ソケットをくふうして、ふたまたにすればいいじゃないか。ふたまたソケットをつくってみよう。)
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 あくる日   ひから、幸之助こうのすけはいっしょうけんめい、ふたまたソケットをつくりはじめました。
 「ほう、これはべんりなもんだな。」
 ふたまたソケットは、どこのいえでもよろこばれ、とぶように売れう ました。そして、幸之助こうのすけ工場こうじょうは、どんどん、大きくおお  なっていきました。
 むかし、自転車じてんしゃではたらいたことも、むだにはなりませんでした。ソケットのつぎに、幸之助こうのすけは、自転車じてんしゃにつける電池でんちのランプをつくって、またおおもうけをしたのです。

 (今西祐行
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a 長文 2.2週 00e
 「すまないなあ。おれの給料きゅうりょうがやすいから、おまえにくろうをかけるなあ。」
 「いいえ、そんなこと。」
 「ぬう機械きかいができたら、ふくをつくるのも、ずいぶんらくになるだろうな。」
 「ええ、そうすれば、こんなにかたもこらないでしょうし。それにねえ、あなた。もし、そんな機械きかい発明はつめいしたひとは、大金持ちおおがねも になれるんですって。」
 「ふーん、じゃあ、ひとつ、そいつを発明はつめいしてみるか。」
 ハウは、じょうだんでなく、そういいました。
 びんぼうのために、学校がっこうへいけなかったハウは、もう、びんぼうはこりごりでした。つまや子どもこ  には、らくをさせてやりたいとおもいました。
 ハウは、さっそく、機械きかい研究けんきゅうに、とりかかりました。
 しかし、ちょっとかんがえたのでは、かんたんにできそうでしたが、どうしてどうして、なかなかむずかしいことでした。
 またたくまになんねんもたちました。だが、ハウのミシンは、できませんでした。
 ハウは、つとめをやめて、ミシンの発明はつめいにうちこんでいました。ハウは、あけてもくれても、ミシンのことばかりかんがえました。
 いとのつかいかたや、はりのかたち、はりのうごかしかた……。いろいろ、くふうしてみましたが、なかなか、うまくいきませんでした。
 ハウは、研究けんきゅうにゆきづまって、ぼんやり、つまのはり仕事しごと手もとて  を、ていました。
 「おまえにらくをさせてやろうとおもったのに、かえってびんぼうさせちゃったなあ。」
 「いいのよ。あなたの成功せいこうをしんじているんですもの。」
 「ぼくは、ゆうべ、こんなゆめをたよ。ぼくは、土人どじんにつかまっちゃったんだ。土人どじん酋長しゅうちょうが、はやくミシンをつくれ、つくらないと、ひとつきだぞって、ぼくののまえに、やりをつきつける
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んだよ。」
 「ほほほ、あなたが、いつも、はやくミシンをつくらなければっておもってるから、そんなゆめを見るみ んですわ。」
 「しかも、そのやりのさきにあながあいているんだよ。」
と、ハウはわらいました。ところが、そのわらいが、きゅうにハウのかおからきえたのです。
 「あっ、そうだ!」
 ハウは、仕事場しごとばへとんでいきました。
 ハウはいままで、りょうはしがとがったはりのまんなかに、あなをあけて、いとをとおしていたのです。
 だが、ゆめのなかのやりのはさきのように、はりのさきに、あなをあけたらどうだろうと、かんがえたのです。
 ハウは、さっそくためしてみました。

 (長崎源之助
 「子どもこ  聞かき せるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ
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a 長文 2.3週 00e
 わらをたばねたたわしでは、なかなかたるのすみっこがうまくあらえません。ほそいぼうのさきでほじくっては、またわらでこすって、みずをながすのです。はまっかにはれあがって、かじかむし、なかなかうまくいきません。
 (なにか、もうすこしいいものは、ないかな。)
 正左衛門しょうざえもんは、たるあらいをするたびに、かんがえました。あるとき、あらなわを、なんほんもみじかくきりそろえて、たばねてみました。しかし、あまりうまくいきませんでした。わらくずが、やけにこまかくたくさんでます。
 「たばねただけではだめだ。なにかでしっかりしばって、くずれないようにしなければ。」
 そして、かんがえたのは、垣根かきねたけをしばってある、シュロなわでした。正左衛門しょうざえもんは、たばねたわらを、シュロなわで、ぐるぐるまきに、かたくしばりつけました。あらなわのたばは、くずれなくなりました。
 (そうだ、シュロは、こんなにつよいのだ。なにも、たわしは、わらでなければならないことは、ないはずだ。シュロをたばねてみてはどうだろう。そうすれば、わらくずもつかないじゃないか。)
 正左衛門しょうざえもんは、さっそく、シュロばかりのたわしを、つくってみました。二つ三つつくって、なかまの小僧こぞうさんにも、つかってもらいました。
 「こりゃ、なかなかいいたわしだ。わらくずがくっつかなくて、らくちんだよ。だが、どうもすこしこしがよわいな。たるのつぎめや、すみっこがうまくいかないや。」
 ともだちがいいました。そこでこんどは、シュロを針金はりがねでしばって、シュロのさきをブラシのようにみじかくしました。この針金はりがねでしばるしばりかたをくふうするには、ずいぶん時間じかんがかかりました。そして、さいごにしあげたのは、二ほん針金はりがねのあいだに、みじかいシュロのをならべ、針金はりがねをぐるぐると、ねじったものでした。すると、まるでシュロの毛虫けむしのようなものが、できました。
 「なんだいそれは。なにをつくってるんだい。」
 なかまがてわらいました。すると正左衛門しょうざえもんは、その毛虫けむし
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りょうはしをもって、二つにおりまげてつなぎました。
 「なーるほど。」
 みんな感心かんしんしました。
 みごとにできました。わらくずはでないし、たるのすみずみまでブラシがきいて、たるあらいが、とてもらくになりました。正左衛門しょうざえもんは、そのかたちがカメににているので、かめのこだわしとまえをつけて売りう だしました。かめのこだわしは、日本にっぽんだけでなく、アメリカ、中国ちゅうごくやインドにもどんどん売れう て、正左衛門しょうざえもん大金持ちおおがねも になりました。

 (今西祐行
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a 長文 2.4週 00e
 「あの二人ふたりはまるでみずあぶらのようだ」というたとえは、なか悪いわる ことを表すあらわ のに使わつか れます。この言い方い かたでもわかるように、みずあぶら相性あいしょう悪くわる 、まったく混じりま  合いあ ません。ドレッシングは、よくふって使いつか ますが、しばらくおいておくと、またみず部分ぶぶんあぶら部分ぶぶん分かれわ  てしまいます。 
 ですから、あぶら汚れよご がついてしまったとき、みずだけでは洗い流すあら なが ことができません。あぶらは、みず溶けと ないからです。反対はんたいに、みず溶けと やすい汚れよご 、たとえば醤油しょうゆ水性すいせい絵の具え ぐのようなものは、簡単かんたんみずだけで洗い流すあら なが ことができます。みず溶けると  ということは、みずをつなぐことができるということです。みず溶けると  汚れよご は、みずといっしょに洗い流さあら なが れていくのです。 
 そこで、みずだけでは落ちお ない汚れよご のとき、わたしたちは石鹸せっけん使いつか ます。では、どうして石鹸せっけん使うつか と、あぶら汚れよご 落とすお  ことができるのでしょうか。 
 これには、みずともあぶらとも仲よくなか  できる、石鹸せっけん性質せいしつ大きなおお  役割やくわり果たしは  ています。石鹸せっけんは、みず溶けると  部分ぶぶんと、あぶら溶けると  部分ぶぶん両方りょうほう持っも ています。このように、みずともあぶらともをつなぐことができる性質せいしつ持つも ものを「界面かいめん活性かっせいざい」といいます。石鹸せっけん成分せいぶん一方いっぽうあぶらをつなぎ、もう一方いっぽうみずともをつなぐので、あぶらみずなか溶けと あぶら汚れよご 洗い流さあら なが れていくのです。 
 みなさんが日ごろひ  食べた ているマヨネーズも、この界面かいめん活性かっせいざい働きはたら 作らつく れているのです。マヨネーズは、たまごの黄身きみサラダ油   ゆおも成分せいぶんですが、あぶらはそのままではうまく混じりま  合いあ ません。しかし、たまごの黄身きみなか含まふく れている「レシチン」という成分せいぶん界面かいめん活性かっせいざいとなり、黄身きみ水分すいぶんあぶらをうまく混ぜ合わま あ せるのです。そして、あのなめらかなマヨネーズができあがるというわけです。
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 なか悪いわる ひとたちのあいだ入っはい て、「まあそう言わい ずに仲良くなかよ やろうよ」とうまくまとめることができるひとは、「まるで石鹸せっけんみたいにえらいひとだ」とほめてあげることができるかもしれません。

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a 長文 3.1週 00e
 ソクラテスが、ただしいことを、わかいひとたちにとくので、わるい役人やくにんたちは、ソクラテスのことを、にくむようになりました。学者がくしゃたちも、ソクラテスのひょうばんをねたむようになりました。
 「ソクラテスを、このままにしておいたら、たいへんなことになる。」
 「わかいひとたちは、みんな、ソクラテスのでしになってしまうかもしれない。」
 そこで、役人やくにんたちは、ソクラテスをろうやにおしこめ、とうとう死刑しけいにすることにきめました。
 ソクラテスのでしや、ともだちは、それをきいて、とても、しんぱいしました。
 「なんとかして、ソクラテスをたすけることは、できないものだろうか。」
 すると、ひとりが、いいました。
 「いいことがある。ろうやの番人ばんにんに、お金 かねをあげれば、にがしてくれるということだ。」
 「それでは、わたしたちで、お金 かねをあつめて、番人ばんにんにわたして、ソクラテスをにがしてもらうことにしよう。」
 みんなは、よろこんで、いいました。
 そして、クリトンという、でしが、ソクラテスにあいに、ろうやにいくことになりました。
 クリトンが、ろうやのなかに、はいっていくと、ソクラテスは、まだ、ねむっていました。
 (こんな、りっぱな先生せんせいを、アテネの人びとひと  は、どうして、ころそうとするのだろう。)
 そうかんがえて、クリトンのむねは、いっぱいになりました。
 そのとき、ソクラテスが、をさましました。
 「クリトン。こんなはやく、どうして、きたのかね。」
 ソクラテスが、いいました。
 「先生せんせい。たいへんです。あした、先生せんせいは、死刑しけいになることにきまったのです。」
 でも、ソクラテスの顔色かおいろは、かわりません。
 「それで、みんなで、そうだんして、先生せんせいをたすけだすことに
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したのです。みんなで、お金 かねをあつめて、わたしがもってきました。このお金 かねを、ろうやの番人ばんにんにやれば、番人ばんにんは、先生せんせいをにがしてくれます。
 先生せんせい、どうか、わたしといっしょに、ここをにげてください。」
 「なに、わたしに、にげろというのか?」
 ソクラテスは、おこったように、いいました。
 「わたしはこれまで、くにできめたきまりは、まもらなくてはいけないということを、おおぜいのひとたちに、はなしてきた。それなのに、じぶんが、死刑しけいになるからといって、くにがきめたことをやぶってもいいだろうか。そんなことは、わたしには、できない。
 わたしは、いままで、ただしいとおもったことをいい、ただしいとおもったことをおこなってきた。いまのわたしにとって、いちばんただしいことは、くにのきまりにしたがって、死ぬし ことなのだ。」
 クリトンは、じっと、ソクラテスのかお見つめみ  たまま、だまってしまいました。ソクラテスのほおには、赤みあか がさし、には、かがやきがられました。ちからづよい、あかるいこえではなしてくれたソクラテスのことばは、クリトンのむねをゆすぶりました。

 (大石真
 「子どもこ  聞かき せるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ
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a 長文 3.2週 00e
 李広りこうは、トラをさがしながら、どんどんやまおくへはいっていきました。七日七夜(なぬかななよ、やすみもしないで、トラをさがしました。けれども、トラのすがたは見えみ ません。
 「ああ、いったい、おとうさんをころしたトラは、どこへいってしまったのだろう。」
 八めのことです。李広りこうはふかい谷間たにまにおりていきました。がくれたのもわすれておくへおくへとはいっていきました。そのはずです。そらにはまんまるのおつきさんがでていて、あたりはまるでひるのようにあかるかったのです。
 しばらくすると、ウマがぴっとみみをたててとまりました。
 見るみ と、とおくの木かげこ  に、大きなおお  大きなおお  、トラが、こちらをむいて、ねそべっています。
 「あっ、ついにいたぞ。おとうさんをころしたトラにちがいないぞ。」
 李広りこうは、いちばん大きなおお  をぬいてゆみにつがえました。そして、じりじりとウマをすすめてちかづきました。
 ウマをすすめると、トラも気がついき   て、うごいたようにおもえました。
 「よし、いまだ。」
 李広りこうは、ちからいっぱいゆみをひきしぼり、トラの(のあいだをねらって、はなちました。
 みごとにめいちゅうしました。一ほんで、トラはうごかなくなったようです。
 「おとうさんのかたきをとったぞ。」
 李広りこうは、ウマからとびおりると、かたなをかまえて、トラのところへかけつけました。
 ところが、どうでしょう。トラだとばかりおもっていたのはかたいいわです。いわが、木かげこ  をとおしてさしてくるつきひかりで、トラそっくりに見えみ たのです。しかし、おどろいたことに、は、かたいいわに、まちがいなくつきささっていました。
 李広りこうは、ざんねんにおもうより、かたいいわがささったこと
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がふしぎでなりませんでした。李広りこうは、いわにむかって、もう一度  いちどゆみをひいてみました。しかし、は、カチンとおとをたてて、はねとんでしまいました。李広りこうが、にくいにくいトラだとおもいこんでいたからこそ、いわにもがささったのです。

 (今西祐行
 「子どもこ  聞かき せるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ
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a 長文 3.3週 00e
 そのころのロシアは、イギリスやオランダなどのくにとくらべて、いろんなところがおくれていました。
 なかでも、大帝たいていのいちばんのしんぱいは、ロシアにふねがあまりないことでした。ものをはこぶ大きなおお  汽船きせんも、いくさをする軍艦ぐんかんもほとんどないのです。
 (こんなことでは、ロシアは大きくおお  はなれぬ。ゆたかなくにになれぬ。)
 大帝たいていはまず、ふねをつくることに、いっしょうけんめいになりました。外国がいこくからふねのだいくをよんできて、さかんにふねをつくらせました。
 でも、なんねんかたつと、かんがえなおしました。
 (外国がいこくじんに、まかせっぱなしでは、いつまでたっても、ロシアじんは、じぶんでふねをつくることはできない。
 ふねだけでなくほかのことでも、外国がいこくじんをよんできいていてはほんとうのことはわからない。われわれが外国がいこくへいって、じかにまなんでくるほうがはやい。
 よし、できることなら、わしもふなだいくになって、ふねのつくりかたぐらい、おぼえてこよう。)
 大帝たいていは、このことを家来けらいにはなしました。
 「とんでもございません。大帝たいていはロシアをせおってたたれる、たいせつなお方 かたです。いくら勉強べんきょうのためとはいえ、ふなだいくになられることは、おひかえください。」
 家来けらいたちはとめましたが、大帝たいていはききません。
 それどころか、さっさとオランダやイギリスなどへいくひとたちをきめてしまいました。そして、二ひゃくにんほどのこれらのひとのなかに、こっそり、大帝たいていまえをかくしてはいりました。
 「よいか。これからは、わしはピョートルミハイロフというロシアの兵隊へいたいじゃ。大帝たいていなどとよんではならぬぞ。」
 「はい。かしこまりました。大帝たいてい。」
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 「これこれ、だから、をつけろというのだ。」
 こうして大帝たいていたちが、オランダへいったのは一六九七ねん大帝たいていの二十五さいのときです。
 「なるほど。オランダは、世界せかいでもひょうばんのうみくにといわれるだけあって、なかなかさかんなくにだ。よし、まず、このオランダの造船ぞうせんしょふなだいくになろう。」
 大帝たいていはしんぱいする家来けらいたちとわかれて、こっそり、ふなだいくのでしになりました。
 (中略ちゅうりゃく
 まもなく、ピョートル大帝たいていのちからで、ロシアはみちがえるほどりっぱなくにになったことは、いうまでもありません。

 (神戸淳吉
 「子どもこ  聞かき せるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ
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a 長文 3.4週 00e
 いまから五せんねんくらいまえ古代こだいローマの時代じだい、「サポーのおか」というところにあった神殿しんでんでは、いけにえのひつじ焼いや かみ捧げるささ  という習わしなら  がありました。このひつじあぶらがしたたり落ちお はい混じりま  つち染み込んし こ でいきました。このつち汚れよご をよく落としお  たことから、石鹸せっけんとして使わつか れるようになったといわれています。英語えいご石鹸せっけんのことを「ソープ」といいますが、これは、このおか名前なまえの「サポー」からているそうです。 
 また、同じおな ころ、現在げんざいのイラクのあたりで栄えさか ていたメソポタミア文明ぶんめいでも、石鹸せっけん作り方つく かたがわかっていたようです。シュメールじん残しのこ 粘土ねんどいたには、くさびがた文字もじで、はいにいろいろなあぶら混ぜま 煮るに 石鹸せっけんができると書いか てあります。 
 このことからもわかるように、石鹸せっけんは、動物どうぶつ植物しょくぶつあぶらを、灰汁あくなどのアルカリ性    せい液体えきたい煮るに 作るつく ことができます。灰汁あくというのは、植物しょくぶつはいみず溶かしと  たその上澄みうわず です。しかし、アルカリ性    せいえきだけでも汚れよご はいくらか落とせるお   ことから、人々ひとびと洗濯せんたくには灰汁あく使うつか ことが多かっおお  たようです。
 日本にっぽん石鹸せっけん入っはい てきたのは、室町むろまち時代じだい終わりお  ごろです。鉄砲てっぽうなどと同じおな ように、石鹸せっけんはポルトガルじん持っも てきたものです。しかし、高級こうきゅうひんだった石鹸せっけんは、身分みぶん高いたか ひとたちだけのものでした。一般いっぱん人々ひとびとは、洗濯せんたくには、ムクロジというやサイカチというのさや、そして灰汁あく使っつか ていました。 
 ちなみに、ムクロジのたねはかたく、お正月 しょうがつのはねつきのはねのおもりに使わつか れています。この外側そとがわかわみずにつけてもむと、あわ石鹸せっけんのように使えつか たのです。 
 こんなに古いふる 歴史れきし持つも 石鹸せっけんですが、だれでも気軽きがる洗濯せんたく使うつか ことができるようになったのは、日本にっぽんでは明治めいじ時代じだい後半こうはんになってからです。
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 洗うあら とき、わたしたちも古代こだいローマのいけにえのひつじに、感謝かんしゃしなくてはなりませんね。 

「ヒツジさん、石鹸せっけんのもとになった感想かんそうをひとこと。」
「まあ、セッケン(世間せけん)ではそう言っい ているけどね……。」
「いけにえは、もうこりごりですか。」
「そうぷ。」

 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい τ
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