a 長文 10.1週 00u
 コンピュータは、あることを覚えおぼ させれば一度いちど間違いまちが なく記憶きおくします。しかし、生き物い ものはそうではありません。
 記憶きおく実験じっけんで、ネズミを、ブザーが鳴っな たときにレバーを押すお えさをもらえるような仕組みしく はこ入れい ておきます。ネズミは、ブザーとレバーとえさ関係かんけい気がつくき   まで、なんかい何百回なんびゃっかい試行錯誤しこうさくご繰り返しく かえ ます。そして、やがて、ブザーが鳴っな たときにレバーを押せお ばよいのだということを記憶きおくします。正しいただ  やり方  かた覚えるおぼ  までに、間違っまちが やり方  かたなんかい繰り返しく かえ 失敗しっぱいすることが必要ひつようなのです。
 生き物い もののこの記憶きおく仕方しかたは、実はじつ 生きるい  ために役立っやくだ ています。もし、ブザーとレバーの関係かんけい記憶きおくした人間にんげんが、ブザーのかわりにサイレンが鳴りな 、レバーのかわりにボタンが置いお てあるような場所ばしょ置かお れたとすると、人間にんげんはブザーとレバーの関係かんけいから類推るいすいして、サイレンとボタンの関係かんけいにやがてすぐに気がつくき   でしょう。しかし、機械きかいは、いつまでたってもブザーとレバーの関係かんけいから新しいあたら  考えかんが 移るうつ ことができません。
 生き物い ものは、高等こうとうになるほど曖昧あいまい記憶きおく仕方しかたができるようになります。わたしたちは、あるひとべつふく現れあらわ ても、それが同じおな ひとだということがわかります。もし記憶きおくが、機械きかいのように正確せいかくなものであったなら、違うちが ふくているひと違うちが ひとだと思っおも てしまうでしょう。そのような記憶きおくでは、生き物い もの変化へんか激しいはげ  世界せかいなか生きい 続けるつづ  ことができなかったはずです。数多くかずおお 失敗しっぱいを通して とお  覚えるおぼ  ところに、生き物い もの記憶きおく秘密ひみつがあるのです。

 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい Σ
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a 長文 10.2週 00u
 ヘレンは一さいはんのころ、重いおも 病気びょうきで、見えみ なくなり、みみ聞こえき  なくなりました。こえ出すだ ことはできましたが、ひとはなし聞こえき  ないため、正しくただ  話すはな こともできませんでした。そのために、ひと思っおも ていることをうまく伝えつた られずに、毎日まいにち癇癪かんしゃくをおこしてはあばれ、まるで動物どうぶつのように手づかみて   でものを食べるた  というような生活せいかつぶりでした。家族かぞくひとたちは、いったいこの将来しょうらいどうなってしまうのだろうと、むねがつぶれる思いおも でした。 
 ぽかぽかとおひさまがほほえむ四月しがつのはじめ、運命うんめいがやってきました。サリバン先生せんせいは、にわ井戸いどからみずをくみ、ヘレンのをとって、そのつめたいみずをかけました。
 ヘレンはおどろいてをひっこめました。そのをまたとって、サリバン先生せんせいみずをかけました。なんかそうするうちに、ヘレンは気持ちよきも  さそうに、をのばしたままにしました。そこで先生せんせいは、ヘレンの手のひらて   ゆびでこう書きか ました。
 「w a t e rウォーター」 
 ウォーター、そう、みずのことです。ヘレンは不思議ふしぎそうなかおをしています。そこで、サリバン先生せんせいもう一度  いちど、そのみずをかけました。そして、すぐにまた、「water」と書きか ました。ヘレンは、考えかんが ているようすです。さらに先生せんせいが、ヘレンのみずをかけたところ、ヘレンがうなずいたのです。すかさず、先生せんせいは「water」と書きか ました。すると、へレンが、先生せんせい探りさぐ あて、同じおな ようになにかをその書こか うとしました。 
 「わかってくれたのね」サリバン先生せんせいは、むね高鳴りたかな をおさえつつ、ヘレンのをとり自分じぶんかお持っも 行きい 、ほおをなぞらせたあと、くちびるにあてがいました。それから、ゆっくりとそしてはっきり、発音はつおんしました。 
「ウ、ォーター」 
もう一度  いちど言いい ました。
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「ウォーター」 
すると、ヘレンもまねをするようにくちびるを少しすこ うごかしました。いきともこえともつかないかすかなおとがヘレンのくちからました。 
 こののことをサリバン先生せんせい一生いっしょう忘れわす なかったでしょう。見えみ みみ聞こえき  ず、くちもきけなかったヘレンが、生まれう  てはじめて言葉ことばにふれた瞬間しゅんかんです。ヘレンは、ふくをびしょぬれにしながら、なんみずにさわり、先生せんせいをとって、文字もじらしきものをその書きか 、くちびるを動かしうご  ました。サリバン先生せんせいも、よろこびのなみだみずでぐしゃぐしゃになりながら、「ウォーター」「ウォーター」と繰り返すく かえ のでした。

 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(φ)
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a 長文 10.3週 00u
 今、地球ちきゅう上には、百五十万種類しゅるい超えるこ  生物せいぶつがいます。そのうちの八十万種類しゅるい昆虫こんちゅうで、四十万種類しゅるい動物どうぶつで、残りのこ の三十万種類しゅるい植物しょくぶつです。もし、世界せかいが十種類しゅるい生物せいぶつの村だったら、五種類しゅるい昆虫こんちゅうで、三種類しゅるい動物どうぶつで、残りのこ の二種類しゅるい植物しょくぶつということになります。昆虫こんちゅう種類しゅるいがずいぶん多いということがわかります。もしかすると、昆虫こんちゅうがこの地球ちきゅうでいちばん元気よく暮らしく  ていると言えるのかもしれません。そう言えば、ゴキブリなどは、元気のかたまりのようです。
 生物せいぶつは、やく三十おく年前に原始げんしてき生物せいぶつから進化しんかしてきました。進化しんか過程かてい絶滅ぜつめつした生物せいぶつ含めるふく  と、今の生物せいぶつ種類しゅるいの百ばい、一おく五千万種類しゅるいもの生物せいぶつがいたと推定すいていされています。
 どの生物せいぶつも自分が生きるのに都合つごうのよい形をしています。例えばたと  、キリンは首が長いので、遠くにいるてきを見つけたり、高い木のえだを食べたりすることができます。ゾウははなが長いので、自分のはなをホースがわりにしたり、はなを手のように使っつか たりすることができます。三グラムしかないジネズミは、自分の小ささをうまく生かして生きています。逆にぎゃく 百三十トンもあるクジラも、自分の大きさをうまく生かしていきています。このジネズミとクジラがシーソーをしたとすると、つりあいを取ると ためには、一頭のクジラの反対はんたいがわに、四千万びき以上いじょうものジネズミがぶらさがらなければなりません。これぐらい違いちが のある生物せいぶつがそれぞれ、自分の長所ちょうしょを上手に生かして生きているのです。
 このように多くの種類しゅるい生物せいぶつがいる理由りゆうを、むかしは、神様かみさまが作ったからだと考えていました。しかし、いくら神様かみさまでも、百五十万種類しゅるいもの生物せいぶつを作るのは大変たいへんです。それでも、むかしの人は、神様かみさまならそういう神業かみわざができると考えていたのです。
 十八世紀せいきに、ゾウの化石かせき研究けんきゅうした学者がくしゃが、生物せいぶつの中には既にすで 絶滅ぜつめつしたものがあるということを発見はっけんしました。ラマルクは、この
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考えを発展はってんさせて、生物せいぶつしゅ変化へんかするというせつ述べの ました。例えばたと  、キリンは、高いところに生えているを食べるために、首を長く伸ばしの  ているうちに、今のようなキリンになったと言うのです。
 しかし、このせつには重大じゅうだいな弱点がありました。確かたし に一頭のキリンの一生に関して かん  言えば、高いところのを食べようとしているうちに、だんだんと首が長くなるということは言えるかもしれません。しかし、その首の長さがそのまま子供こども受け継がう つ れるかどうかということはわかりません。
 みなさんのお父さんやお母さんが子供こどものときにしっかり勉強べんきょうしてくれたおかげで、あなたは生まれつき何でも知っていたということになれば、これほどいいことはありません。しかし、実際じっさいには、あなたはあなたでまた最初さいしょからお父さんやお母さんがしたのと同じ勉強べんきょうをしなければなりません。こういうことを見ると、親の獲得かくとくした能力のうりょくがそのまま子供こども受け継がう つ れるということはないようです。
 ラマルクのせつ批判ひはんする学者がくしゃは、つぎのような実験じっけんをしました。まず、ネズミのしっぽを短くみじか 切ってしまいます。ネズミにはかわいそうですが、しっぽだけなのでいのちには別状べつじょうがなかったというところが少しほっとするところです。このしっぽを切ったネズミから生まれたネズミのしっぽも、また短くみじか 切ってしまいます。このようにして、何だいもしっぽを短くみじか 切ったにもかかわらず、生まれる子供こどもはいつもしっぽの長いネズミでした。
 しかし、この実験じっけんは、ラマルクのせつ批判ひはんするにはあまり確かたし なものとは言えませんでした。なぜなら、ネズミは自分から進んすす でしっぽを短くみじか しようとしたのではなく、無理矢理むりやりしっぽを短くみじか させられたからです。この実験じっけんのために何びきものネズミのしっぽを切った学者がくしゃは今ごろ、「しっぽの実験じっけんはしっぽい(失敗しっぱい)だったなあ」と思っているかもしれません。
 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(Σ)
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a 長文 10.4週 00u
 梅雨つゆ季節きせつになるとよく見かけるみ   カタツムリ。まるでシャワーを楽しむたの  ようにあめなかをのんびりと散歩さんぽしています。カタツムリはむしではありません。うみ住むす かい仲間なかまなのです。むかし々、カタツムリはみずなか住んす でいました。ですから、りく上がっあ  生活せいかつするようになったいまでも、あめ降るふ 大好きだいす なのです。からっとさわやかに晴れは にち暑いあつ だい苦手にがてです。しかし、からがあるから、からからに乾いかわ てしまうことはありません。暑いあつ は、木の葉こ はくさかげ隠れかく てじっとしています。梅雨つゆ季節きせつにあれだけよく見かけるみ   ことができたカタツムリが、なつになるとすっかり消えき てしまうのはそのためです。カエルやヘビが冬眠とうみんするように、カタツムリはなつのあいだ、ひたすら眠りねむ 続けつづ ます。そしてあきになりあめ多くおお なってくると、眠りねむ から覚めさ 活動かつどう開始かいしするのです。
 動物どうぶつ昆虫こんちゅうにはオスとメスの区別くべつがあります。けれども、カタツムリにはオスもメスもありません。一ひきのカタツムリがオスの役目やくめとメスの役目やくめをするのです。だから、どのカタツムリも大人おとなになるとたまご生みう ます。一かい産卵さんらんでニ十から六十たまご生みう ますが、一つのたまご生むう のには十ぷんから二十ぷんもかかります。たまごからかえったカタツムリの赤ちゃんあか   は、生まれう  たときからからがあります。

 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(ω)
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a 長文 11.1週 00u
 都会とかいられるカラスは、ハシブトガラスとハシボソガラスの二種類しゅるいです。名前なまえのとおり、くちばしが太くふと 、「カアカア」と澄んす こえ鳴くな のがハシブトガラス、くちばしが細くほそ 、「ガアガア」と濁っにご こえ鳴くな のがハシボソガラスです。
 カラスは、高いたか 鉄塔てっとうなどのうえ作りつく ます。都会とかいでは、針金はりがねのハンガーやビニールぶくろなどを使っつか 作りづく をすることもあります。
 カラスは雑食ざっしょくせいで、果物くだもの昆虫こんちゅう小動物しょうどうぶつなど、いろいろなものを食べた ます。都会とかいでは、カラスがゴミをあさる姿すがたがよくられますが、カラスがなまゴミのなかから好んこの 食べるた  のは、油分あぶらぶん多いおお 唐揚げからあげやポテトチップスなどです。
 カラスは、食べ物た もの一度にいちど 全部ぜんぶ食べた てしまわずに、余っあま ぶんあないしした隠すかく 習性しゅうせいがあります。このため、なにをどこに隠しかく たかを記憶きおくしておかねばならないので、カラスのあたまがよくなったのだと言わい れています。
 人間にんげんからはあまり好かす れていないカラスですが、ひなのうちから育てるそだ  と、ひとにもよくなつきます。から落ちお ひなにミルクやドッグフードをやっているうちにすっかりひとになつき、くち開けあ えさ待つま ようになったというはなしもあります。
 ゴミをあさって散らかしち   たり、人間にんげん襲っおそ たりするのは困りこま ますが、カラスも本当はほんとう 人間にんげん嫌わきら れたいわけではないのです。人間にんげんがカラスの気持ちきも 理解りかいするところカラスタートすれば、カラスとうまく共存きょうぞんできるかもしれません。

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a 長文 11.2週 00u
 藤原道長ふじわらのみちながは五番目の子だったので、父のくらいである摂政せっしょう関白かんぱく継ぐつ ことができるとはだれも思っていませんでした。しかし、子供こどものころから負けず嫌いま  ぎら で、気が強く、またきものすわったところのある道長は、のちに強運きょううん手伝ってつだ て、事実じじつ上、天皇てんのう以上いじょう権力けんりょく持つも 摂政せっしょう関白かんぱくくらいにつき、全盛ぜんせいをきわめました。そして、ほこらしげに「この世  よをばわがとぞ思う望月もちづきのかけたることもなしと思えば」(この世  よわたしだと思うよ。今日の満月まんげつのように欠けか ているところがないと思えば)という歌をよみました。権力けんりょくをほしいままにした道長は、莫大ばくだい財産ざいさん持っも ていたので、それを生かし、貴族きぞく文化ぶんか平安へいあん文化ぶんかをささえました。漢詩かんし和歌わか絵巻物えまきもの、そしてかな文字による文学は、この時代じだいに大きく発展はってんしました。紫式部むらさきしきぶの「源氏物語げんじものがたり」や清少納言せいしょうなごんの「枕草子まくらのそうし」などもこの時代じだい作品さくひんです。
 さて、子供こどものころの道長はどんなふうだったのでしょう。兄たちとともに父の前に呼ばよ れた時のことです。父兼家かねいえは、できのよい公任きんとうという自分のいとこの息子むすこを引き合いに出し、「お前たちは、公任きんとうのかげもふめんぞ」と叱咤しった激励げきれいしました。兄たちは、うなだれて聞いていましたが、道長だけは、「あいつのかげなんか、たのまれてもふむもんか。わたしだったら、顔をふんづけてやる」と言ったそうです。なんという負けん気ま  きの強い性格せいかくでしょう。 
 また、道長は十七さいの時、仕えつか ていた天皇てんのう発案はつあん肝試しきもだめをしました。雨のふりしきる真っ暗ま くらな夜、怖いこわ 話を聞いた後、天皇てんのうは、そこにいた三人にそれぞれ違うちが 場所ばしょに一人でいってくるように言いました。の二人はおそるおそる出かけたと思ったら、すぐに「ぶきみな声が聞こえた」とか「怪物かいぶつが出た」などと叫びさけ ながら舞い戻っま もど てきました。道長はと言うと、指示しじされた大極殿だいごくでんという場所ばしょに一人で行き、証拠しょうことしてはしらの木を小刀でけずりとってきたのです。ま
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さか、一人で行けるまいと思った天皇てんのう翌日よくじつ調べしら させてみると、削り取っけず と 木片もくへんはぴたりとはしらのえぐれた部分ぶぶんに合いました。天皇てんのうはその勇気ゆうきにおどろきました。 
 このように、積極せっきょくてき怖いこわ もの知らずの道長は、人生を前向きまえむ に生きるすべを幼いおさな ころから知っていたかのようです。だからこそ、強運きょううん呼び込むよ こ ことができたのでしょう。父の後を継いつ だ一番上の兄道隆みちたかは、関白かんぱくになったものの伝染病でんせんびょう亡くなっな   てしまいました。その兄の後を継いつ つぎの兄道兼みちかねもまた同じ伝染病でんせんびょうで、関白かんぱくになってたった一週間でいのち落としお  ました。時の天皇てんのうはそのあとの関白かんぱく決めるき  のに迷っまよ ていました。すると、天皇てんのうの母が、自分の弟でもある道長を強く推薦すいせんしました。
 出世しゅっせする道は長いと思っていた道長でしたが、三十さいのころには政府せいふ第一人者だいいちにんしゃとなっていました。「望月もちづき」の歌は道長が五十三さいのころに詠んよ だものです。

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(φ)
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a 長文 11.3週 00u
 さかなかおにはえらがあります。さかなが水の中で呼吸こきゅうができるのは、このえらのおかげです。
 人間にんげんはい使っつか からだの中に酸素さんそ取り込みと こ ます。いき吸い込むす こ ときに酸素さんそ取り入れと い 吐くは ときに二酸化炭素にさんかたんそ捨てす ています。これをはい呼吸こきゅう呼びよ ます。それに対して たい  さかなはえらを使いつか ます。これをえら呼吸こきゅう呼びよ ます。
 水の中にはたくさんの酸素さんそがとけていますが、目で見ることはできません。砂場すなば使うつか ふるいがありますが、ふるいをえらだと想像そうぞうしてみます。そして、石は酸素さんそ砂粒すなつぶは水です。砂場すなばすなをふるいにかけると、ふるいの上には石だけがのこって砂粒すなつぶはサラサラとこぼれ落ち   お ます。さかなは口から水を飲み込みの こ 、えらから吐き出しは だ ていますが、えらというふるいで酸素さんそだけをからだの中に取り込むと こ のです。えらが酸素さんそ選んえら でいるわけです。
 しかし、えらが取り込めると こ  酸素さんそは、水の中にとけているものだけです。空気の中からは取り込めと こ ません。ですから、さかなは水のそとでは呼吸こきゅうができません。
 水の中の酸素さんそが足りなくなると、さかな水面すいめんに出て口をぱくぱくさせることがあります。これは、空気を吸っす ているのではなく、水面すいめん近くちか の水に空気を混ぜま 吸っす ているのです。
 人間にんげんも、お母さん かあ  のおなかにいる一ヶ月かげつ目のころにエラのようなものがあります。これは、むかし人間にんげんが水の中にいる生物せいぶつだったころの名残りなご だと言わい れています。

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(ω)
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a 長文 11.4週 00u
 清作せいさくは一さい半の時に、いろりに落ちお て、左手に大やけどを負いお ました。悲鳴ひめいを聞いて、外で野良のら仕事しごとをしていた母シカが驚いおどろ てかけつけた時には、清作せいさくの手は、やけどで開くひら ことができなくなっていました。一八七七年、福島ふくしまけん猪苗代湖いなわしろこのそばにある小さな村でのできごとです。
 当時の医療いりょうでは、やけどでくっついたゆびをもとの通りに戻すもど 手術しゅじゅつ不可能ふかのうでした。何けん医者いしゃをたずね、遠い町の医者いしゃに、
残念ざんねんだが、この子の手はなおらん」 
と言われた時、シカは声をあげて泣きな ました。 
 まだ幼いおさな 友達ともだちは、清作せいさくの手を見てからかいました。清作せいさくはものをつかむことも、自由じゆう動かすうご  こともできない左手をくやしがって、一人泣くな こともありました。しかし、学校にあがってからは、たいへん熱心ねっしん勉強べんきょうし、だれにも負けま ない成績せいせきをおさめたのです。
 父親が大酒おおざけ飲みでの  働かはたら ないため、たいへん貧しかっまず   清作せいさくのうちでは、どんなに優秀ゆうしゅうでも上の学校へ進学しんがくさせる余裕よゆうがありませんでした。子供こども清作せいさくにとっては、母のシカしか頼るたよ 人がいなかったのです。しかし、ちょうど清作せいさくのいる小学校に巡回じゅんかいに来ていた小林先生が、清作せいさく勉強べんきょうに対する たい  熱意ねついを知り、清作せいさく進学しんがく助けたす てくれたのです。
 また、先生はアメリカ帰りの高い技術ぎじゅつ持つも 医師いし紹介しょうかいじょうを書いてくれました。大変たいへんお金のかかる手術しゅじゅつ必要ひつようでしたが、先生や学校の友達ともだちがお金を出し合ってくれて、清作せいさく手術しゅじゅつ受けるう  ことができました。ついに、ゆびが一本一本離れはな 、ものをにぎれるようになったのです。 
 清作せいさくは、直してくれた医師いし恩人おんじんの小林先生らに感謝かんしゃしながら、心に誓っちか たことがありました。 
 「一生治らなお ないと思っていた左手が、医学いがくの力で治っなお た。わたし将来しょうらい医者いしゃになって、自分のように苦しむくる  人々を助けたす たい。それが
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わたし恩返しおんがえ だ」 
 この清作せいさく少年こそが、のちの野口英世ひでよです。その献身けんしんてき研究けんきゅうぶりは、まさに寝るね 間も惜しむお  ほどだったそうです。留学りゅうがく先のアメリカでは、「日本人はいつ眠るねむ のだ」と他国たこく学者がくしゃ驚かおどろ せるほどのもう勉強べんきょうをし、その生涯しょうがい医学いがく研究けんきゅうにささげたのです。

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(φ)
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a 長文 12.1週 00u
 記憶きおくには、さまざまな種類しゅるいがあります。トランプの「神経しんけい衰弱すいじゃく」の記憶きおくにあたるものは「短期たんき記憶きおく」です。これは必要ひつようのある短いみじか あいだだけ覚えおぼ ているものです。そのときにだけ必要ひつよう記憶きおくをいつまでも覚えおぼ ていると、あたまの中が余分よぶん記憶きおくでいっぱいになってしまいます。役目やくめ終わっお  たらすぐに忘れわす ていけるのが、この記憶きおく特徴とくちょうです。
 手続きてつづ 記憶きおく」と呼ばよ れるものは、からだで覚えるおぼ  といった種類しゅるい記憶きおくです。練習れんしゅうして乗れるの  ようになった自転車じてんしゃには、なん年たっても心配しんぱいなく乗れの ます。水泳すいえいやスキーなどもからだが覚えおぼ ているので、言葉ことば説明せつめいできなくても自然しぜんとからだが動いうご ていくものです。
 言葉ことば意味いみ数字すうじ関係かんけいなど、ふだんつくえ勉強べんきょうするものは「意味いみ記憶きおく」です。また自分じぶんだけの時間じかん場所ばしょによって作らつく れる、つまり思い出おも でにあたるものは、「エピソード記憶きおく」です。
 更にさら 「プライミング記憶きおく」というのもあります。これは自分じぶんでも知らし ないあいだ覚えおぼ ている記憶きおくのことです。たとえば、「シカを十かい言っい て」と言いい 相手あいてが「シカ、シカ、シカ、……」言い終わっい お  たあとに、「サンタクロースが乗っの ていたものは」と聞くき と、つい「トナカイ」と答えこた てしまうようなものです。答えこた はソリなのですが、シカという言葉ことばが気がつかないうちに記憶きおく残っのこ ているので、シカにたトナカイと答えこた てしまうのです。
 人間にんげん単純たんじゅん生物せいぶつから進化しんかしてきましたが、記憶きおくの中で進化しんか最ももっと 早いころからあったものは手続きてつづ 記憶きおくです。そのあと、意味いみ記憶きおく短期たんき記憶きおくが生まれ、最後さいご作らつく れた記憶きおくがエピソード記憶きおくです。ただ、エピソード記憶きおく仕組みしく ができあがるのは、三、四さいころです。ですから、一さいのお誕生たんじょう日に初めてはじ  歩いある て、みんなに手をたたかれたというようなエピソードは、記憶きおくとしては残っのこ ていないのです。 言葉ことばの森ちょう作成さくせい委員いいんかい α
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a 長文 12.2週 00u
 よるみち歩いある ていると、なにかが黙っだま てついてきます。あなたが止まると  と、それも止まりと  ます。あなたが歩きある はじめると、またどこまでもついてきます。
 もちろん、キツネやお化け ば などではありません。夜空よぞら明るくあか  輝くかがや もの、それはおつきさまです。
 つきがついてくるのは、電車でんしゃ乗っの ていても同じおな です。電車でんしゃまどから見るみ と、いえ電信柱でんしんばしらは、どんどん後ろうし 飛びと 去っさ ていきます。遠くとお 見えるみ  やまも、近くちか 家々いえいえほどではありませんが、少しすこ ずつ後ろうし ほう動いうご ていくように見えみ ます。しかし、そら浮かぶう  つきやま越えこ まち越えこ 電車でんしゃなかのあなたについてくるように見えみ ます。
 いえ電信柱でんしんばしらやまつき。これらを比べくら 違うちが のは、電車でんしゃからの距離きょりです。つまり、遠くとお のものほど、動かうご ないように見えるみ  のです。
 つきは、わたしたちの地球ちきゅうを三十ぐらい並べなら たほどさきにあるそらのかなたに浮かんう  でいます。ですから、地球ちきゅううえ少々しょうしょう移動いどうしたくらいでは、つき位置いち変わらか  ないように見えるみ  のです。
 もちろん、つきよりもっと遠くとお 太陽たいようでも、同じおな ことが言えい ます。あなたがどんなに動いうご ても太陽たいようはついてきます。しかし、太陽たいようはまぶしすぎて、あまり見上げるみあ  ことはありません。やはり、よる明るいあか  つき一緒いっしょについてくるところにこそ、不思議ふしぎさがあるのでしょう。
 地球ちきゅうつきの四ばい大きおお さです。したがって、もし、つきうえ歩きある ながら地球ちきゅう見るみ と、つきよりも四ばい大きいおお  青くあお 美しいうつく  地球ちきゅうがついてきます。つき地球ちきゅうのツキあいは、遠くとお ても深いふか ものなのです。

「ねえ、どうしてついてくるの?」
「だって、ツキだから。」
「では、もし太陽たいようだったら?」
「やっぱり、ついて行き   い タイヨウ。」
甘えん坊あま  ぼうなんだね。」
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 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(α)
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a 長文 12.3週 00u
やまんばのにしき3
 そこで、いろりのをどんどんもやし、でっかいなべにくまのすまし汁   じるこさえ、もちいれて食っく た。まず、そのうまいこと、ばんばは、腹いっぱいはら    になったと。
「やれ、ごちそうだったこと。そんではおら、これでむらへかえらしてもらうから。」
 ばんばがそういうと、やまんばは、
「なに、そんなにいそぐことはねえ。ここにはてつだいもいねし、二十一にちほどてつだっていってくれや。」
といった。
 しかたなくあきらめて、あかざばんばは、みずくんだり、やまんばのあしもんだり、きょう食わく れるか、あすこそ食わく れるかとおもいながら、はやいもので二十一にちたってしまった。
 そこで、ばんばはおそるおそる、
いえでもしんぱいしてるべから、かえりたいども。」
というと、
「なんとやっかいかけたな。いえのつごうもあるべから、かえってくれ。なんのれいもできんが、にしきを一ぴきくれてやる。これは、なんぼつかっても、つぎのには、またもとどおりになっている、ふしぎなにしきだ。むらひとたちには、なんにもねえどもだれもかぜひとつひかねよに、まめでくらすよに、おれのほうでをつけてやるでえ。」
やまんばは、そういうと、がらに、
「がら、がら、ばんばをおぶっていってやれ。」
といいつけた。
「なに、おら、あるいてかえるから。とんでもねえ、おぶさるなんて。」
 ばんばは、あわててをふったが、がらはすっとんできて、ばんばを、ひょいとせなかへのせ、
え、ふさいでれ。」
といったかとおもうと、みみのあたりにすうすうかぜがふいていく。
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とんと、地面じめんにおろされて、をあけてみれば、そこはなんと、ばんばのいえのまえであった。
「がら、がら、よってやすんでいけ。」
といったときには、もう、がらのすがたはなかった。
 ばんばがいえなかへはいろうとすると、
 なんまんだあ なんまんだあ
 なんまんだあ なんまんだあ
と、おきょうをあげるこえがする。それにまじって、おうえ、おうえ泣くな こえもして、どうやら、だれかが死んし だようだ。ばんばはたまげて、
「だれか死んし だかやえ。」
とはいっていった。すると、
「ひえ、ゆうれいだ。たましいがかえってきたど。」
と、あつまっていたむらじゅうのもんが、えむいたり、ひっくりかえったり、でかさわぎになった。
「ゆうれいなものか。おらだ、あかざばんばがいまもどったど。」
「ほんとか、ほんとにばんばは、生きい ているだか。」
 むらしゅうは、泣いな てよろこんだと。
 そこで、ばんばは、
「さあさあ、やまんばのにしきをやるべ。」
と、むらじゅうにやまんばのにしきを、きってはわけ、きってはわけ、じぶんの手もとて  には、ほんのすこししかのこさなかったと。しかし、つぎのになってみると、ばんばのにのこったにしきは、もとどおりになっていたそうな。
 むらひとたちは、みたこともないにしきを、ふくろにしてさげたり、はんてんにしたり、おおよろこびでいえたからにしたと。
 そして、それからというもの、むらひとたちは、かぜもひかず、みんな、らくにくらしたということだ。
 とっぴんぱらりのぷう
 
日本にっぽんむかし話   ばなし1(松谷まつたにみよ子  こ講談社こうだんしゃあおとり文庫ぶんこ
 666564636261605958575655545352515049484746454443424140393837363534 
 
a 長文 12.4週 00u
 暑かっあつ  なつ終わりお  近づきちか  涼しいすず  かぜ吹きふ 始めるはじ  ころ、よるになるとむしたちのこえ聞こえき  てきます。そんなむしたちの鳴き声な ごえは、あき到来とうらい知らせし  てくれます。
 生まれつきう    日本語にほんご使っつか ているひとは、自然しぜんおと左脳さのう聞きき ます。左脳さのう言葉ことば理解りかいするのうですから、むしおとこえのように聴こえき  ます。これに対して たい  英語えいごなど欧米おうべい言葉ことば使っつか ているひとは、自然しぜんおと右脳うのう聞きき ます。右脳うのう音楽おんがく感じるかん  のうですから、むしおと雑音ざつおんにしか聴こえき  ないそうです。
 コオロギ、キリギリス、スズムシ、マツムシ、ウマオイ、カンタン、クツワムシなど、あき鳴くな むしにはいろいろな種類しゅるいがいますが、大きくおお  分けるわ  とコオロギるいとキリギリスるい分けわ られます。うえからて、右羽みぎばねうえにして鳴くな のがコオロギるい左羽ひだりばねうえにして鳴くな のがキリギリスるいです。「みぎ」という漢字かんじひだり半分はんぶん消すけ とコオロギの「コ」というに、「ひだり」というひだり半分はんぶん消しけ て、たてのぼう少しすこ 伸ばすの  とキリギリスの「キ」というになります。これが覚えおぼ かたです。
 コオロギるいには、コオロギやカネタタキむしがいます。キリギリスるいには、クサキリ、クツワムシ、ウマオイなど、たくさんのむしがいます。どちらの種類しゅるいも、鳴きな ばね持っも ているのはオスだけです。なぜなら、むし鳴くな のはメスを呼ぶよ ためだからです。また、自分じぶん縄張りなわば のオスに知らし せるために鳴くな こともあります。
 コオロギは、「コロコロ」と鳴いな たり、「リーンリーン」と鳴いな たりします。スズムシは、そののとおりすずのように、「リンリン」と鳴きな ます。「ガチャガチャ」とうるさく鳴くな のはクツワムシ。まるでスイッチがオンになったように「スイッチョン」と鳴きな 始めるはじ  のはウマオイ。「リーリーリーリー」と簡単かんたん鳴きな かたをするのはカンタンです。いろいろな音色ねいろ楽しむたの  ことができるあき草原くさはらは、まさに地球ちきゅうのコンサート会場かいじょうです。
 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(Λ)
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