a 長文 7.1週 i
 キンコーンカンコーン、キンコーンカーンコーン。
 チャイムがなるのと同時にどうじ 、ぼくは教室きょうしつのドアを飛び出しと だ ました。今日きょうの中休みは、校庭こうてい鬼ごっこおに   をすることにしていました。少しすこ でも長いなが 時間じかん遊びあそ たかったので、一番乗りいちばんの 校庭こうていにかけつけるつもりでした。
 ぼくの教室きょうしつは三かいです。ドアを飛び出しと だ 右へ曲がりま  階段かいだんまで全速力ぜんそくりょく走りはし ます。階段かいだんまえきゅうブレーキをかけると、キキキキーと上履きうわば 廊下ろうかにこすれる音がしました。まるで自分じぶんが車になったような気分きぶんです。
 ここまではぼくが一番いちばんです。うしろに、ヒロトとフミヤが続きつづ ます。これは負けま ていられないぞ。ぼくは、こころの中で思いおも ました。
 ぼくは、階段かいだんを二だん抜かしぬ  降りるお  ことにしました。二かいまでは順調じゅんちょう飛ばしと  ました。ところが、二かいから一かい降りるお  途中とちゅうで、階段かいだん踏み外しふ はず てしまいました。一瞬いっしゅんなに起きお たのかわからないまま、ぼくは踊り場おど ばまで転がりころ  ました。
「いてえ。」
 ぼくはこし押さえお  ながら起き上がりお あ  ました。ヒロトとフミヤは心配しんぱいそうにぼくのかおのぞき込み   こ ながら、
大丈夫だいじょうぶ? が出てるよ。」
言いい ます。ずきずき痛いいた 足をふと見てみるとひざからが出ていました。
「あーあ、これじゃ、保健ほけんしつ行きい だな。ちょっと行っい てくるよ。」
ぼくはそう言っい て、一かいにある保健ほけんしつ向かいむ  ました。ぼく一人で行こい うと思っおも たのに、ヒロトとフミヤもついてきました。
「あら、どうしたの? 怪我けが?」
保健ほけんしつの田上先生は、ぼくとすっかり仲良しなかよ です。どうしてかというと、ぼくはしょっちゅう怪我けがをして保健ほけんしつ行くい からです。
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階段かいだんでこけちゃった。」
ぼくは恥ずかしは   そうに言いい ました。
「気をつけないと、ほんとうに危ないあぶ  のよ。階段かいだん走らはし ないこと。かお怪我けがしなくてよかったね。かっこいいかお台無しだいな になっちゃうわよ。」
と、先生は優しくやさ  注意ちゅういしました。怪我けが消毒しょうどくするときは、とてもしみて、悲鳴ひめいをあげそうになりました。でも、格好かっこう悪いわる ので我慢がまんしました。怪我けがをしたのはぼくなのに、ヒロトとフミヤも、なんだかいたそうなかおになっていました。
「ごめんな。遊べあそ なくなっちゃったな。」
言うい と、二人とも、
「いいよ。また、明日あしたやろう。」
言っい てくれました。明日あした転ばころ ないように、もう一度  いちど階段かいだんをかけおりるぞとぼくは思いおも ました。

言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい ω)
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a 長文 7.2週 i
 かがみをつかっておもしろいことをしてみましょう。あなたのかお正面しょうめんから大きくおお  写っうつ ている写真しゃしん用意よういします。それから、のまんなか、はなくち通るとお かお中心線ちゅうしんせんうえかがみ立てた ます。写真しゃしん半分はんぶんかがみ映っうつ たその半分はんぶんとを合わせるあ   と、片方かたほうがわだけからできた左右さゆう対称たいしょうかおになります。かがみ向きむ 変えるか  と、もう片方かたほうがわでも同じおな ことができます。
 右側みぎがわだけでできたかお左側ひだりがわだけでできたかおとでは、かなりちがった印象いんしょう受けう ます。大きおお さやほっぺたのかたちなど、みぎひだりでは意外いがい大きくおお  異なっこと  ているのです。
 かおだけではありません。ひとからだは、左右さゆう対称たいしょう思えおも ますが、実はじつ 少しすこ ちがっていて、手足てあしながさや筋肉きんにくのつきかたなども同じおな ではないのです。
 ひとがまっすぐに歩くある のは当たり前あ  まえのようですが、実はじつ 周りまわ 景色けしき確かめたし  ながらからだ向きむ をコントロールしています。そのため、視界しかいのきかない吹雪ふぶきのときなど、ただやみくもに進んすす でいくと、弱いよわ あしほう少しすこ ずつ曲がっま  ていってしまいます。そして、長いなが 時間じかん歩いある たあげく、結局けっきょく最初さいしょ同じおな 地点ちてんにもどってしまうこともあるのです。
 内臓ないぞうでは、みぎひだりはもっとちがいます。たとえば心臓しんぞうからだ少しすこ 左側ひだりがわにあります。赤ちゃんあか   くときに、お母さん かあ  自然しぜん赤ちゃんあか   あたま心臓しんぞう近くちか にくるようにきます。赤ちゃんあか   お母さん かあ  のおなかのなかにいるとき、お母さん かあ  心臓しんぞうおとをずっと聞いき ていたので、このおと聞くき 安心あんしんするのかもしれません。
 みぎひだり違いちが は、普段ふだん生活せいかつでも役に立ちやく た ます。例えばたと  野球やきゅうをするとき、みぎ利きき ひとは、左手ひだりてでボールをキャッチし右手みぎてでボールを投げな ます。リンゴのかわをむくときは、左手ひだりてでリンゴを支えささ 右手みぎて包丁ほうちょう動かしうご  ます。人間にんげんからだは、みぎひだり違いちが をうまく生かしい  ているのです。

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 ここで一句いっく
「ウインクを 両目りょうめでしたら ただのまばたき」

 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(α)
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a 長文 7.3週 i
 あくるとしはるに、なたねはきいろいきれいなはなをさかせました。はながちって、みがなりました。
 そのみをあつめて、きんじろうはあぶらやさんへもっていきました。
「あぶらやさん。このなたねのみを、あぶらととりかえっこしてくれませんか。」
と、たのみました。すると、あぶらやさんは、
「おお、きんじろうさんのつくったなたねのみだね。よしよし。」
と、しんせつに、あぶらととりかえてくれました。

「こんどは、もうじぶんのあぶらだもの。おじさんだってしからないだろう。」
 きんじろうは、よるのくるのが、まちどおしくてなりません。あんどんにあぶらをいれて、あかりをつけてほん読みよ ました。
 ところが、おじさんは、やっぱりこわいかおして、
「きんじろうや。おまえはいったい、なにになるつもりじゃ。ひゃくしょうになるのに、べんきょうはいらないんだよ。あしたはあさはやくから、のらへいくのだ。はやくねなさい。」
「はい。」
と、きんじろうは、またあかりをけさなければなりません。やっぱりきんじろうは、べんきょうができませんでした。

「ああ、ひゃくしょうは、どうして、べんきょうをしてはいけないのだろう。そんなことはない。」
思いおも ました。
 けれども、おじさんにめいわくをかけてはいけません。
「そうだ。やまへいくみちや、たんぼへいくみちで、ほん読もよ う。」
 くわをかつぎながら、また、しばをかつぎながら、きんじろうはほん読みよ ました。

二反長半(にたんおさなかばへん 白木しらきしげるちょ 「美しいうつく  はなし・いじんのこころ」より)
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a 長文 7.4週 i
 チョコレート、キャンディー、ケーキなど、甘いあま お菓子 かし思い浮かべるおも う   だけで幸せしあわ 気分きぶんになれるひと多いおお でしょう。それらのお菓子 かし作るつく のに大切たいせつなのが砂糖さとうです。しかし、砂糖さとうにはほかにもいろいろな働きはたら があります。

 その働きはたら のひとつに、カビや微生物びせいぶつ増殖ぞうしょくするのを防ぐふせ というものがあります。カビや微生物びせいぶつ湿っしめ たところ、つまり、水分すいぶんのあるところが好きす です。砂糖さとうは、食べ物た もの水分すいぶん周りまわ をおおって、微生物びせいぶつやカビの働きはたら をにぶらせます。ジャムや果物くだもの缶詰かんづめなどがそのれいです。果物くだものはほうっておくと傷んいた だり腐っくさ たりしますが、砂糖さとうとともに調理ちょうりすることで長期間ちょうきかん保存ほぞんすることができます。

 水分すいぶん抱え込むかか こ 砂糖さとう性質せいしつは、生クリームなま    卵白らんぱく泡立てあわだ にも一役ひとやく買っか ています。クリームやたまごたんぱく質    しつ水分すいぶん砂糖さとう抱え込むかか こ ことによって、あわがくずれるのを防ぎふせ 、またあわ同士どうしがくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリームを作るつく のには、砂糖さとう欠かか せないのです。
 にく煮込むにこ ときにも、その働きはたら 発揮はっきされます。調理ちょうりするまえした準備じゅんびにく砂糖さとうをすりこんでおくと、軟らかくやわ   煮るに ことができます。それは、砂糖さとうにくたんぱく質    しつ持つも 水分すいぶんにくなかにとどめておくからです。

 あまさを作り出すつく だ 調味ちょうみりょうというイメージの強いつよ 砂糖さとうですが、実際じっさいには水分すいぶん結びつきむす   やすい性質せいしつわたしたちの生活せいかつなかでいろいろな役割やくわりをはたしているのです。
 働き者はたら もの砂糖さとうは、えんした力持ちちからも なので、決してけっ  「えっへん!」といばっているわけではありません。しかし、ダイエットをさけぶひとたちからは、かたき扱いあつか されています。「えっ? へん? 一生懸命いっしょうけんめい働いはたら ているのに……。」砂糖さとうからそんなこえ聞こえき  てきそうです。

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「カビくんは、どうして砂糖さとう苦手にがてなの。」
「だって、砂糖さとうってサ、トウっても甘いあま んだもん。」

  言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(σ)
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a 長文 8.1週 i
 明日あしたは、神社じんじゃお祭り まつ があります。天王様てんのうさま呼ばよ れているお祭り まつ です。おじいちゃんが子どものころからずっと続いつづ ているお祭り まつ だそうです。毎年まいとし、子どもたちは、水色みずいろ法被はっぴ神社じんじゃ集まりあつ  ます。わたし友だちとも  も、天王様てんのうさまをとても楽しみたの  にしています。
 神社じんじゃからは、お囃子はやしふえの音が聞こえき  てきました。明日あした練習れんしゅうをしているのです。太鼓たいこの音もドンドンとおなかのそこ響きひび ます。兄ちゃんにい   が、
「ちょっと見てこよう。」
言うい ので、わたしもついていくことにしました。
太鼓たいこ、たたいてみるか。ほれ。」
 そうこえをかけられて振り向くふ む と、お父さん とう  友だちとも  の中村さんがいました。兄ちゃんにい   は、
「え、やっていいの? やらせて、やらせて。」
と、大喜びよろこ でバチを貸しか てもらいました。
「ドン、ドン、ドン」
 お兄ちゃんにい   は三かい、大きく打ちう ました。中村さんは、
「もっと思い切っおも き てたたかないと、いい音は出ないぞ。それ、もう一かい。」
言いい ました。兄ちゃんにい   もう一度  いちどうでを大きく上げて打ちう ました。
「ドーン、ドーン」
 今度こんどはおなかに響くひび 音です。ほかのおじさんも、
「うまいなあ。明日あした、たたいてみるか。」
笑っわら ています。褒めほ られたお兄ちゃんにい   は、ちょっぴり得意とくいそうです。
 しばらく打っう 満足まんぞくしたのか、
お前 まえもやる?」
と、わたしにバチを手渡してわた てくれました。お兄ちゃんにい   みたいに上手に
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できるかなあと心配しんぱいでしたが、わたし思い切りおも き 打っう てみました。
「ドーン。」
 自分じぶんでもびっくりするくらいいい音がでました。
「おお、こりゃすごいぞ。」
 おじさんたちが拍手はくしゅしてくれました。
ふえ吹いふ てみるから、ちょっと合わせあ  てみろ。」
 そう言っい て、赤いかおのおじさんがふえを口に当てあ ました。お囃子はやしのメロディーは小さなころから聞いき ているので、どこで太鼓たいこ打つう かも知っし ています。
「ピーピピーピピーピ」
「ドンドン」
 わたしは、思い切りおも き 打ちう ました。メロディーに合わせあ  て、
「ドドン、ドドン、ドンドン」
続けつづ ます。
「うわあ、楽しいたの  。」
 いつのまにかとてもいい気分きぶんでたたいていました。いつまでもたたいていたい気分きぶんでした。
 お母さん かあ  は、よくわたしのことを恥ずかしは   がりやだと言いい ます。わたしもそうだと思っおも ていました。でも、恥ずかしは   がりやのわたしはどこかへってしまったみたいでした。

言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい ω)
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a 長文 8.2週 i
 日本にっぽん世界一せかいいち漫画まんが王国おうこくとよばれています。大人おとな向けむ のものまでふくめると、一年間ねんかんに七おくさつ以上いじょう漫画まんが出版しゅっぱんされています。漫画まんがをもとにして、アニメーションや映画えいがやテレビ番組ばんぐみもたくさん作らつく れ、いろいろなくに言葉ことば翻訳ほんやくされて、世界中せかいじゅう人気にんき集めあつ ています。
 では、漫画まんがは、いつの時代じだいからあったのでしょうか。いちばん古いふる 漫画まんがは、いまから八百年はっぴゃくねんほどまえにかかれたと言わい れています。それは、京都きょうと高山寺こうざんじというお寺 てらにある、「鳥獣ちょうじゅう人物じんぶつ戯画ぎが」というです。
 そのなかには、人真似ひとまねをして遊ぶあそ 動物どうぶつたちがかかれています。始まりはじ  は、動物どうぶつたちの川遊びかわあそ かわ飛びこむと   ウサギや、泳ぐおよ サル。ウサギに背中せなか流しなが てもらって、気持ちよきも  さそうなサルもいます。べつには弓矢ゆみや練習れんしゅうをしたり、相撲すもうをとって遊んあそ だりするカエルやウサギの様子ようすがかかれています。カエルに投げ飛ばさな と  れて、ひっくりかえったウサギのそばで、見物けんぶつのカエルたちがおおわらいしているもあります。カエルのほとけさまにおきょうをあげているサルのお坊さんぼう  もあります。どの動物どうぶつ生き生きい い 描かえが れ、今にもいま  なかから飛び出しと だ てきそうです。
 このむかし漫画まんがには、セリフがかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。しかしなかには、いま漫画まんがたところもあります。たとえばいま漫画まんがでは、すばやい動きうご をあらわすためにせん何本なんぼんもひき、スピードのている様子ようすをあらわします。鳥獣ちょうじゅう人物じんぶつ戯画ぎがなかにも、同じおな ようなかきかたられるのです。
 こんなむかしから、漫画まんが楽しんたの  でいた日本人にっぽんじん。これからも、たくさんの名作めいさく生まれう  多くおお ひと愛さあい れていくことでしょう。
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 漫画まんがは、世界中せかいじゅうマンガできる、日本にっぽんたからです。しかし、漫画まんががわかりやすいので、多いおお ほんマンガ、漫画まんがなら読むよ という生活せいかつ続けつづ ていると、次第にしだい 読むよ ちから低下ていかしてきます。多いおお ほん読むよ 一方いっぽうで、漫画まんが楽しくたの  読みよ 漫画まんが読み方よ かたについてもマンガできるくににしていきましょう。

 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(γ)
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a 長文 8.3週 i
 しばさぶろうは、よろこんでくまもとの学校がっこうへはいりました。べんきょうをはじめました。
 けれども、おとうさんのいったとおり、がいこくのことばはたいへんむずかしいのでした。がいこくの先生せんせいが、がいこくのことばでおしえてくれるのです。さっぱりわかりません。いまのように、字引じびきもありません。
 しばさぶろうは、やっぱり、いやになりました。

学校がっこうをやめて、うちへかえって、ひゃくしょうをしよう。」
 先生せんせいのところへいって、「学校がっこうをやめさせてください。」といおうとしました。けれども、しばさぶろうがいうまえに、先生せんせいからさきにききました。
「しばさぶろうくん。元気げんきがありませんね。どうしたのです。」
「はい。その……。」
と、しばさぶろうは、なみだがでそうになりました。

 じっと、こらえているうちに、ふと、先生せんせいのつくえのうえのしゃしんがにつきました。ぶらんこにのっている、がいこくの子どもこ  のしゃしんです。先生せんせい子どもこ  にちがいありません。
 はっとして、しばさぶろうはいいました。
先生せんせいは、とおいがいこくから、ひとりで、日本にっぽんへきてさびしくありませんか。」
 すると、先生せんせいはにっこりとしていいました。
「そうですね。ときどき、子どもこ  のことを、ゆめにます。でも、日本にっぽんでは、すぐなおる病気びょうきにかかっても、みんな死にし ます。わたしひとりのことなどかんがえておられません。はやく日本にっぽんのみなさんに、ながいきをしていただきたいのです。」

 ああ、なんとりっぱな、先生せんせいのことばでしょう。
 しばさぶろうは、いっぺんにこころがかわりました。もううれしくてなりません。
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「そうだ。べんきょうがむずかしいなんていっていてはいけないんだ。はやくよいおいしゃさんになって、日本にっぽんのみなさんにながいきをしてもらわなければならない。」
 つよく、そう思いおも ました。

二反長半にたんおさなかばへん 白木しらきしげるちょ 「美しいうつく  はなし・いじんのこころ」より)
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a 長文 8.4週 i
 寝よね うとしたら、ブーンというおとがして、あわてて灯りあか をつけたことがありませんか。そして、小さなちい  がどこにいるか見つけよみ   うとしたことがあるでしょう。
 日本にっぽんではむかし防ぐふせ ために蚊帳かやという道具どうぐ使っつか ていました。これは、一ミリメートルほどの細かいこま  あみでできている四角いしかく テントのようなもので、部屋へやなか四方しほうから吊りつ 下げるさ  ようになっています。網目あみめ細かいこま  ので、なかはいれませんが、涼しいすず  かぜ通すとお ことができます。むかし日本人にっぽんじんは、多いおお 暑いあつ なつよるを、蚊帳かやなか風鈴ふうりんおと聞きき ながら涼しくすず  過ごしす  たのです。 

 しかし、昭和しょうわ後期こうきになると、殺虫さっちゅうざい下水道げすいどう普及ふきゅうした結果けっか自体じたい少なくすく  なり、蚊帳かや次第にしだい 使わつか れなくなっていきました。 
 ところが、いま、この蚊帳かや再びふたた 注目ちゅうもくされています。蚊帳かやは、電気でんき薬品やくひん使わつか ないてんで、人間にんげんにも地球ちきゅうにももちろんにも優しいやさ  道具どうぐだと考えかんが られるようになってきたのです。 

 日本にっぽんは、マラリヤの被害ひがい悩まさなや  れるアフリカ諸国しょこくにたくさんの蚊帳かや送っおく ています。これによって多くおお 子供こどもたちのいのち助かったす  ているそうです。日本にっぽんではほとんど使わつか れることのなくなった蚊帳かやも、世界せかいではだい活躍かつやくをしているのです。日本人にっぽんじんのこれからの役割やくわりは、より安くやす より安全あんぜん蚊帳かや世界中せかいじゅう広めるひろ  ことではないでしょうカ。

「ブーン。」
「あ、や。蚊帳かや入ろはい う。」
「しまった。蚊帳かや入らはい れたカ。ヤーン。」

 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(α)
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a 長文 9.1週 i
 今日きょうは、お母さん かあ  かみ切っき てもらう日です。ぼくたち兄弟きょうだいは、お母さん かあ  かみ切っき てもらうことを、ママ床屋とこや呼んよ でいます。いつもママ床屋とこやなので、ぼくは一床屋とこやさんへったことがありません。
準備じゅんびできたよ。ひとりずつおいで。」
 お風呂場ふろばからお母さん かあ  こえ響きひび ます。ママ床屋とこやは、お風呂場ふろばでおみせ開くひら のです。なつ暑いあつ のではだかでちょうどいいけれど、ふゆのママ床屋とこやはぶるぶる震えふる てしまいます。
 ぼくは急いいそ ふく脱ぎぬ 、お風呂場ふろば飛んと でいきました。お母さん かあ  は右手にバリカンを持ちも 、ぼくを見るとにっこりしました。
「さあ、切ろき うか。下を向かむ ないで、ちゃんとまえを見ててね。」
 そう言いい ながら、バリカンのスイッチを入れました。ウイーンウイーンと、バリカンの音が耳の近くちか 聞こえき  ます。ときどき髪の毛かみ け引っ張らひ ぱ れるので、ぼくは、
「いてっ。」
と、まるでカメのようにくびをすくめます。お母さん かあ  は、
「だめだめ。まっすぐにしていないと、へんなところを切っき ちゃうよ。」
言いい ます。バリカンに刈らか れた髪の毛かみ けが、パサリパサリとぼくのかた背中せなかにくっつきます。そのうち、ちくちくと刺しさ てきます。からだ中かゆくてたまりません。
「ああ、もう限界げんかいだあ。」
と、ぼくが我慢がまんできなくなるころ、後ろうし かみのカットが終わるお  のです。
「できた、できた。じゃあ、今度こんど前髪まえがみ。さ、こっち向いむ て。」
 ぼくは、くるりと振り向きふ む ました。目をつぶり、動かうご ないようにいき止めと ます。
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「はい、終わりお  頑張っがんば たね。」
 ぼくは目を開けあ ました。お母さん かあ  は、少しすこ 離れはな てぼくを眺めなが ています。ぼくが動いうご たからへんなところを切っき てしまったのではないかと心配しんぱいになります。
「うん。いいんじゃない。床屋とこやさんじゃないのに、なかなかうまいよね。」
と、お母さん かあ  言いい ました。ぼくはほっとしました。
 シャワーで洗い流すあら なが と、ちくちくしたのが取れと てすっきりしました。くもったかがみをごしごしと手で拭いふ て、ぼくのかお映しうつ てみました。いつもと違うちが ぼくのかおです。自分じぶんでもなかなか格好いいかっこう  なと思いおも ました。

言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい ω)
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a 長文 9.2週 i
 そのときでした。
「こらっ、おまえなんかに、みずをのまれてたまるもんか。きたならしい。むこうへいってしまえ。」
 きんじょのおとこがたけのぼうで、こじきをおいはらいました。
 ガンジーは、もう、がまんができませんでした。
「おじいさん、まって。ぼくが、くんであげるよ。」
 ガンジーは、いそいでみずをくみあげると、こじきをやさしくつれもどしてきました。

「ぼっちゃん、ありがとうございます。」
 としよりのこじきは、ぽろぽろなみだをこぼしながらも、さもおいしそうにみずをのみました。やせたいぬも、ぺちゃぺちゃみずをのむと、さもうれしそうにガンジーのかおあげるのでした。
 ガンジーは、みんながじぶんをているのに気がつくき   と、まっかになって、いえへかけこみました。

 ゆうごはんのあとで、ガンジーは、おとうさんにきょうのはなしをくわしくしました。ガンジーのおとうさんは、インドで高いたか くらいについているやくにんでした。そのおとうさんは、にこにこすると、
「おお、おまえは、よいことをしてくれた。かわいそうなひとをたすけるのは、人間にんげんのつとめなんだ。よいことをするのに、しりごみしていてはいけない。よくやったね。きょうのおこないは、ゆうきがあって、りっぱなものだ。おまえは、よわむしでもなければ、いくじなしでもないのだ。大きくおお  なっても、ただしいことをするそのゆうきをなくしてはいけない。」

 いつも、じぶんをいくじなしだとばかり思っおも ていたガンジーは、はじめてそうでないことがわかりました。そして、むねが、すーっとあかるくなるのでした。

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a 長文 9.3週 i
「おや。」
 ファーブルは、びっくりして立ちどまりた    ました。とりのすが、あったのです。すのなかには、青空あおぞらのようないろをした、うつくしいたまごが六つ、おぎょうぎよくならんでいました。
「すばらしいなあ。」
 ファーブルは、むねがわくわくしました。

 すのなかから一つとりあげると、そっとポケットへいれました。うれしくてうれしくてたまりません。そのまま、いけのほうへいちもくさんにかけだしました。
 けれど、それからしばらくたつとファーブルは、ふーふーいきをきって、また、すのところへはしってかえりました。そして、さっきのたまごを、だいじそうにポケットからとりだしたのです。
「ごめんね。」
 ファーブルは、たまごをそっと、もとのところへならべてやりました。

「ごめんね。おまえは、ノビタキってまえのとりなんだってね。そして、はたけのわるいむしをたいじして、おひゃくしょうさんをたすける、いいとりなんだってね。ぼく、いまいけのそばで、きょうかいのぼくしさんにそれをおそわったの。ちっともしらなかったんだもの。ごめんね。」
 ファーブルはそういうと、ぴょこんと、とりのすにあたまをさげるのでした。
 ピーチク、ピーチク……。
 たまごのように、まっ青  さお大空おおぞらでは、ひばりがしきりにないていました。

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a 長文 9.4週 i
 たまごはニワトリから生まれう  ます。そのニワトリはたまごから生まれう  ます。さてどちらがさきなのでしょう。
 たまごをうむ動物どうぶつは、ニワトリばかりではありません。サケ、マス、カエル、カメ、ヘビ、トカゲ、ハト、キジ、ダチョウ、それにちち子どもこ  育てるそだ  カモノハシも、たまごをうみます。サケとマスのたまごは見分けみわ がつかないほどよくにていますが、サケのたまごからはサケが、マスのたまごからはマスが、まちがいなくうまれマス。たまごは、その動物どうぶつ生命せいめい宿しやど たカプセルなのです。
 とりがたまごをうみ、それをひなにかえすには、なんにちもかかります。そのあいだ親鳥おやどりは、外敵がいてきからたまごをまもるために、いろいろな工夫くふうをします。
 高山こうざんにすむライチョウは、ハイマツのなかをつくり、枯れ草か くさでわからなくしててきをあざむきます。川原かわらにすむコアジサシは、石ころいし  見分けみわ のつかないようなたまごを小石こいしうえにうみます。コウノトリは、高いたか うえをつくり、てき近づくちか  のをふせぎます。このように親鳥おやどりたちは、一生懸命いっしょうけんめいたまごを守っまも ています。
 では、たまごから子どもこ  になるまでの変化へんかをいろいろな動物どうぶつでくらべてみましょう。メダカは水中すいちゅう生活せいかつをするさかなです。カエルはみずりく両方りょうほう生活せいかつします。ニワトリはりくだけで生活せいかつします。このように、メダカもカエルもニワトリも、生活せいかつする場所ばしょはちがうし、おやになったときの大きおお さやかたちもちがいますが、たまごのなか育つそだ ようすをくらべてみると、よくにたところがあります。

 ニワトリがさきか、タマゴがさきか。
「ニワトリさん、お先に さき どうぞ。」
「いえいえ、タマゴさんこそお先に さき どうぞ。」
「では、いっしょにそろって。」
「わたしたち、ニタワマトゴリ。」

 言葉ことばもり長文ちょうぶん作成さくせい委員いいんかい(Κ)
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