1見かけは科学のようだが実は科学ではない「ニセ科学」が蔓延している。代表的な例として血液型性格判断やマイナスイオンを挙げれば、なるほどその手の話かと合点がいくかたも多いのではないだろうか。2念のため述べておくと、前者は心理学の調査によってとっくに否定されており、また、いわゆるマイナスイオンが体によいという科学的根拠はほぼ皆無と言ってよい。
もちろん、この手のニセ科学が今に始まったわけではないが、最近の状況は以前よりはるかに深刻に思える。3大手電器メーカーがこぞって参入したマイナスイオン・ブームなど、熱に浮かされていたとでも表現するしかなかろう。
あるいは、水に「ありがとう」と声をかけると雪の結晶に似たきれいな結晶ができ、「ばかやろう」と声をかけるときれいな結晶はできない、という説はどうだろう。4そのようにして撮影したと称する結晶の写真集はベストセラーになった。
話だけなら単なるオカルトとしか思えないが、写真があまりに印象的なためか、これを「科学的事実」と信じ込んでしまう人は意外に多いらしい。5しかも、これが多くの小学校で言葉の大切さを教えるための道徳教材として使われているのだから、笑ってすますわけにはいかない。言葉づかいは水に教わるようなものではないはずなのだが。
こういったニセ科学は、あくまでも「科学」として受け入れられていることを強調しておきたい。6いや、それどころか、もしかすると多くの人にとって、ニセ科学のほうが科学よりも「科学らしく」見えているのかもしれない。
たとえば、「プラスは体に悪く、マイナスはよい」などという白黒二分法的な考えかたは、本来、科学から最も遠いところにある。7科学者に「プラスとマイナスのどちらが体にいいですか」と尋ねたとしても、返ってくるのは「マイナスといってもいろいろあるし、少量なら体にいいものだとしても、量が多すぎれば悪いだろうし……」といった歯切れの悪い答えであるに違いない。
8一方、パブリックイメージとしての科学は、そのようなあいまいな返事をせず、「さまざまな問題に対してきちんと白黒つけてくれる」ものなのではないだろうか。ところが、実はこれはニセ科学
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