1研究者をめざす多くの人は、「何を研究するか」(what)が一番大切だと思うかもしれないが、その前に「どのように研究するか」(how)という問題意識の方がより重要だと私は考える。
2科学的な発想や思考、問題を見つけるセンスから始まって、理論的な手法や実験的な手技に見られる基本的な勘所は、すべての分野に共通している。3その意味で、「どのように研究するか」という考え方や方法論をしっかり身につけておけば、どんな分野の研究でもできることになる。
4逆に、「何を研究するか」のみを重視すると、ある分野の知識を蓄えたあとで研究分野を変えた時に、一からやり直しになるかのような気がしてしまいがちである。5その結果、同じ分野に安住することになり、新しい発想や異分野からの知見を取り入れることに、二の足を踏むことになりかねない。だから、まず「どのように研究するか」を十分に体得した上で、「何を研究するか」を考えた方が良い。
6大学や大学院で始めた研究が、将来のライフワークとなる研究分野と一致したとしたら、それはとても幸運なことだが、そうでなくともがっかりすることはない。7その過程で、「どのように研究するか」をまなぶことができたとしたら、それは研究者の卵として最大の財産になるに違いない。
8「どのように研究するか」は、言い換えれば模倣の段階である。そして、「何を研究するか」は、創造の段階に対応する。すでに述べたように、この順番が大切だ。「一に模倣、二に創造」である。
9幅広く科学の知識を吸収し、研究の仕方や考え方を確実に模倣した上で、専門的な分野で創造的な研究に進むことが望ましい。ただし、模倣するにしても、受身になって情報に触れるだけでは身につかない。0自分で吸収しやすいようにかみ砕く必要がある。そのためには、やはり自分なりに考えなくてはならない。
大学で講義の内容を一方的に説明するのでは学生を受身にさせているだけなので、私はできるだけ学生に質問を投げかけて、講義中に考えてもらうようにしている。ところが、学生に質問すると、オウム返しに同じ質問が返ってくることがしばしばある。
たとえば、「フェヒナーの法則といって、感覚として感じる大きさは刺激の強さの対数(注・累乗の逆算法のひとつ。例えば一〇
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