1青い空をジェット機が飛んでいくのを見て、「樋口さん、どうしているかなあ」と考える。
樋口さんが引っ越していったのは、つい先月のことだ。何度も同じクラスになった親友だから、一緒に卒業したかったけれど、それはできなかった。2お父さんの仕事の都合で、ハワイに行ってしまったのだ。
同じ日本の中ならともかく、海を越えた遠くにまで行ってしまうというのは、正直実感が持てなかった。驚きすぎて「ハワイってどこのハワイ?」などと言ってしまったほどだ。
3樋口さんも不安でいっぱいだったようだ。
「言葉が通じないんだから、きっと新しい友達なんてできないよ……。」
引っ越す前、ふだんは明るい彼女がそんな弱音を吐いていたことが、今でも忘れられない。
4なんとか樋口さんを元気づけたくて、私は自分がハワイに旅行したときのことを話してあげた。本当は、それはずっと小さいころの話で、記憶はかなりあいまいだった。けれども、私はよいイメージばかりを思い浮かべて、明るく自信満々に次から次へと話をした。
5言葉は通じなくても、ハワイの人は「アロハ」の言葉ですぐに打ち解けてしまう。体も心も大きい人が多くて、すごく安心できる。それに食事がおいしい。ハワイの料理は、見た目も豪快で華やかだし、飽きることがない。6何よりハワイは、日本の夏と違って、じめじめ蒸し蒸ししない。からっとしていてとても気持ちがよい。そんなところで、しかも、毎日きれいな海で泳げるなんて最高だ。
「それにね、ハワイでも日本語を勉強している人がいっぱいいるんだよ。」
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