a 長文 4.1週 sa
長文が二つある場合、音読の練習はどちらか一つで可。
「また、止まってる。」
 お母さんが部屋へやに入ってきました。二年生のときの絵や作文、写真しゃしんなどがいろいろなところから出てくるたび、わたし片付けかたづ の手を止めてしまいます。
「ちょっと思い出にひたっていただけ。」
言い訳い わけをしましたが、つくえの上には、たくさんのプリントや本や教科書が山のようになっています。
「思い出もいいけれど、これじゃあ夜までかかっても終わらお  ないわよ。」
大丈夫だいじょうぶ大丈夫だいじょうぶ。ちゃんと終わるお  って。」
「そう。桃子ももこおばちゃんたちとお食事しょくじに行くから早く終えお てね。」
 春休みなので、親せきの桃子ももこおばちゃんたちと夕飯ゆうはんを食べに行く約束やくそくをしています。それも、わたし大好きだいす なイタリアンだというではありませんか。もし、終わらお  なくて、行けなくなったら大変たいへんです。わたしきゅう心配しんぱいになって、次々つぎつぎ要らい なそうなプリントをゴミ箱  ばこ捨てす 始めはじ ました。
 すると、プリントにまじって、クラスのひとみちゃんがかいたイラストが出てきました。ひとみちゃんは、絵が上手で、いつもアニメの主人公しゅじんこうなどをかいてくれるのです。うまいなあ。あっ、また手が止まった。わたしは、はっとして、片付けかたづ 続けつづ ました。教科書をまとめてかべ本棚ほんだな移しうつ 、ノートは押入れおしい の中に入れました。テストは百点のと九十点のを上にして、はこにしまいました。
 つくえの上の山がだいぶ片付いかたづ てくると、今度こんどは細かいものが目につき始めはじ ました。下の方が欠けか てしまったキラキラの鉛筆えんぴつのキャップや、切れてしまったうさぎのヘアゴム、キティちゃんのメモの切れはし。どうしてこんなものをとってあったのだろうというものばかりです。まったく、要らい ないものはちゃんと捨てす てよね、と自分に言いたくなりました。
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 つくえの上がきれいになり、本棚ほんだなにも新しい教科書を入れるスペースができると、わたしはすがすがしい気分になってきました。まるで、だれか他人たにん部屋へやに来たような感じかん がします。その上、勉強べんきょうもがんばりたくなってきたから不思議ふしぎです。やっぱり大事だいじなのは環境かんきょうだなとわたしは思いました。これで、おばちゃんたちとのお食事しょくじにも行けそうです。

言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会 φ)
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長文 4.1週 saのつづき
 むかし、田んぼにはナマズやドジョウなどの生き物い ものがたくさんすんでいました。しかし、戦後せんご、これらの生き物い もの急速きゅうそく減っへ てしまいました。その原因げんいんの一つは、田んぼの水路すいろがコンクリートなどで固めかた られたために生き物い ものがすみにくくなったことです。もう一つの原因げんいんは、田んぼに、強い農薬のうやくがまかれたためにやはり生き物い ものがすみにくくなったことです。
 田んぼには、いねを弱らせてしまう虫が発生はっせいします。たとえば、ウンカです。梅雨つゆのころ、雲に乗っの て中国からやってくるウンカは、日本の田んぼで数を増やしふ  いねしる吸っす てつぎからつぎへと枯らしか  てしまいます。ひどいときは、田んぼのいね全滅ぜんめつしてしまうほどです。今年もウンカの大発生はっせいか。ウンカ悪いわる なあなどと言ってはいられません。またヨコバイも、いね病気びょうきをうつすやっかいな虫です。農薬のうやくをまくことで、一時てき害虫がいちゅうの力を抑えおさ 増えふ 方を横バイよこ  にすることはできますが、虫たちが農薬のうやく抵抗ていこうせい持ちも 、やがて前よりも農薬のうやくに強くなってしまうという問題もんだいがあります。 
 また、農薬のうやくをまいたあと、ぎゃくにウンカが大発生はっせいしてしまうこともあります。その理由りゆうは、農薬のうやくによって、ウンカやヨコバイを食べるクモやアメンボなどの天敵てんてき減っへ てしまうからです。
 そこで、農薬のうやく使わつか ないでいね育てるそだ  方法ほうほうがいろいろと考えられてきました。その一つは、小ブナを田んぼに泳がせるおよ   ことで、害虫がいちゅうを食べてもらったり、草取りくさと 手伝ってつだ てもらったりする方法ほうほうです。草取りくさと 農家のうかにとってはたいへんな重労働じゅうろうどうですが、コイやフナが田んぼを泳ぎおよ まわっていると、水がかきまわされてにごるので、雑草ざっそうが生えにくくなるのです。小ブナのおかげで、農薬のうやくもほとんど使わつか ずにすみます。 
 田んぼにアイガモを飼っか て、害虫がいちゅうを食べさせるという方法ほうほうもあります。アイガモは、いね天敵てんてきであるウンカのたまごまで食べてし
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まうので、殺虫さっちゅうざい不要ふようです。雑草ざっそうは、水かきでけられたり、食べられたりして、生えてこなくなります。その上、アイガモのふんは、とてもいい肥料ひりょうになるので、化学かがく肥料ひりょうをやらなくてもすむのです。まさに一石二鳥。アイガモを使うつか 方法ほうほうはいかがですか。「あ、いいカモ!」

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(κ)
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a 長文 4.2週 sa
 ねむって冬をこす動物どうぶつ――くまやかえるの冬みん――

 冬のころ、はたけや、にわの土をほりかえすと、中から、かえるやとかげなどがでてくることがありますね。
 いいきもちでねていたところを、おこされたといわんばかりに、目をぱちくりさせて、あわててまた土の中にもぐりこみます。
 かえるや、とかげは、こうやって、冬のあいだ、土の中でねむっているのです。
 長い冬のあいだじゅう、ずっとねむりとおすなんて、ずいぶんねぼうですが、これは、どういうわけなのでしょう。
 かえるやとかげは、まわりの温度おんどにつれて、からだの温度おんどがかわるという、きみょうなせいしつをもっています。ですから、冬になってあたりがさむくなると、じぶんたちの体おんも、きゅうにさがるのです。
 そうなると、もう、かつどうすることができません。あたたかいあなや土の中にもぐって、じっとしているのです。こきゅうも、ゆるやかになり、のめぐりも、ほとんどとまっているといってよいくらいです。たべものは、もちろんたべません。
 はんぶん死んし だようなようすで、冬をこすのです。これを、冬みんといいます。
 このほかに、りすや、やまねなども、冬じゅう、木のほらでねむってすごします。
 小さな動物どうぶつばかりではありません。おどろいたことに、あの大きなくまも、冬じゅう、あなの中でねむっているのです。
 これは、かえるや、とかげのように、からだがひえるためではありません。冬になると、ありや、かになど、くまの大すきなたべものが、そのへんにいなくなるし、木のみなどもなくなりますから、秋のうちに、たくさんたべておいて、冬のあいだは、あなにはいって、じっとしているわけなのです。

(「世界せかいふしぎめぐり三年生」より抜粋ばっすい
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a 長文 4.3週 sa
 たびをする草や木のみ――たんぽぽややしのみ――

 みなさんは、もう学校でならって、知っているでしょうか。植物しょくぶつのたねのなかには、たびをするものがあるのですよ。
 いろいろのたねがたびをしますが、いちばんたのしそうなのは、たんぽぽの空中りょ行でしょうね。
 春、たんぽぽの花がさききってしまうと、花びらがちったあとに円いわたのような白いものがのこります。
 やがて風がふくと、一本一本のわた毛が、ふわり、ふわりと、空にまいあがるのです。そのわた毛の下には、ひとつずつ、たねがついています。
 きもちよさそうに、空をとんでいったたんぽぽのわた毛は、風しだいで、たんぼのあぜにおりたり、みなさんのおうちをのぞいて、にわにおりたりします。
 そして、そこの地面じめんにこしをおろして、あくる年の春、めをだし、花をさかせるのです。
 海をたびする植物しょくぶつには、やしのみがあります。やしのみは、みなさんの頭くらいあります。
 海岸かいがんなどに生えていますので、海の中におちたものが、ふわりふわりと、海のたびをして、遠い遠いしまにながれつき、そこで、めをだすことがあります。
 人間のきものなどにくっついて、はこばれるのは、いのこづち、ぬすびとはぎなどの草のみです。
 みなさんが、きれいな花をとろうとおもって、やぶの中にはいると、きものにいっぱいついて、なかなかとれない草のみがあるでしょう。それが、いのこづちや、ぬすびとはぎのみなのです。こうして、ほうぼうへつれていってもらって、めをだすばしょをみつけるのです。
 きみじかなのは、ほうせんかのたねでしょう。
 花がちって、あとにみができます。みなさんが、たねをとろうとおもって、ちょっと手をかけでもすると、パチンと、すごいいきおいで、かわがはじけて、中のたねは、四方八方へ、とびちってしまいます。
 ひとところへ、たくさんのたねがおちたのでは、めがでてから、おたがいに、ようぶんをとりっこしたり、太陽たいようのひかりをうけられないものができたりしますから、できるだけ、いきおいをつけて、遠くへちらばってとぶのです。
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 てっぽううりも、これとおなじようなことをします。
 たまはじきだけというきのこも、なん万こという胞子ほうしのはいっているたねを、音をたててはじきだします。
 それでは、このように、じぶんの力でりょ行できない木のみ――たとえば、かきのみなどは、どうするのでしょうか。
 これらのみは、鳥にたべてもらって、ふんといっしょに地面じめん落ちお て、めをだします。かきのみや、なんてんのみなどが、じゅくして、うつくしく色づくのは、鳥にはやくたべてもらいたいからだといえましょう。
 こうしてみると、植物しょくぶつのたねのたびは、たのしいハイキングや、遠足ではなくて、めをだすばしょをさがしてあるく、ひっこしなのですね。

(「世界せかいふしぎめぐり三年生」より抜粋ばっすい
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a 長文 4.4週 sa
長文が二つある場合、読解問題用の長文は一番目の長文です。
 大昔おおむかしの鳥の祖先そせんは、ほかの動物どうぶつと同じように四本足を使っつか て歩いていました。長い年月のあいだに、前足がつばさ進化しんかし、今のように空を飛べると  ようになったのです。鳥は、爬虫類はちゅうるい仲間なかまから進化しんかしてきたので、トカゲの前足の骨組みほねぐ と鳥のつばさ骨組みほねぐ は、たいへんよくており、この二つをくらべると、前足がつばさ変わっか  たことがよくわかります。また、前足だけではなく、体をおおっている羽毛の一部いちぶつばさ変わりか  ました。風に向かっむ  進むすす と、何まい重なっかさ  風切羽かざきりばねによって、鳥は体を空中に浮かせるう   ことができます。
 しかし、つばさだけがいくら立派りっぱでも、飛ぶと ことはできません。つばさ動かすうご  部分ぶぶん大事だいじです。鳥のむねほねには大きな出っ張りで ぱ があり、船底ふなぞこのような形をしています。そこに、つばさをはばたかせる筋肉きんにくがついています。鳥のむね筋肉きんにくは、たいへん発達はったつしており、この筋肉きんにくの力で大きなつばさをはばたかせることができます。
 自由じゆうに空を飛ぶと ためには、体が重くおも てはいけません。普通ふつう、体を作っているもので、いちばん重いおも のはほねです。そこで鳥のほねは、竹のように中が空洞くうどうになっていたり、スポンジのようにスカスカになっているなど、体を軽くかる するための工夫くふうが見られます。しかし、スカスカのほねといっても、すぐ折れお てしまうような弱いものではなく、たいへんかたくて丈夫じょうぶにできています。
 また、体全体ぜんたい軽くかる するために、ほねの数も少なくなっています。あごのほね一緒いっしょになって、くちばしに変わりか  ました。がないため、鳥は食べ物た ものをすべて丸のみにしてしまいます。「のみ」にするのは、だけではなかったということです。ただ、そのままではたいへん消化しょうか悪いわる ので、おなかの中で食べたもの砕くくだ ことができるようになっています。その役目やくめをするのが砂肝すなぎもです。砂肝すなぎも砂嚢さのうとも呼ばよ れ、その名のとおりすなが入っています。砂粒すなつぶによって
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食べ物た ものをすりつぶすのです。
 変わっか  ているのはくちばしだけではありません。背骨せぼねの数も少なくなっていて、しかもぼうのようにまっすぐです。首が自由じゆう動くうご のに比べくら て、背骨せぼね自由じゆう動きうご がほとんどできません。づくろいをする鳥を見ると、体全体ぜんたいをひねることができないので、首だけをぐるりとうしろに回しています。しかし、そのおかげで、空を飛ぶと ときに体が安定あんていする上、離着陸りちゃくりく衝撃しょうげきから体全体ぜんたい守らまも れるようになったのです。
 体を軽くかる しなくてはいけない一方で、鳥は飛ぶと ために多くのエネルギーを必要ひつようとし、どんどん食べ物た ものを食べなくてはなりません。そこで鳥は、食べてすぐエネルギーに変わるか  ような食物しょくもつをとるようになりました。多くの鳥は草食ではなく肉食です。植物しょくぶつせいのものを食べる鳥もいますが、種子しゅし果実かじつなど、すぐにエネルギーになるものを食べます。
 鳥は、少しでも体を軽くかる するために、もう一つ工夫くふうをしています。それは、フンをためこまないということです。もし、鳥が便秘べんぴになったら大変たいへんなことです。フンのおもさで飛べと なくなってしまうからです。公園などでハトにフンをかけられてハッと驚いおどろ ても、「フン!」などと憤慨ふんがいせずに、「フーン、飛ぶと ためには仕方しかたがないのだな」と優しくやさ  理解りかいしてあげましょう。

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(κ)
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長文 4.4週 saのつづき
 冷蔵庫れいぞうこがまだあまり普通ふつう家庭かていにはなかったころ、冷蔵庫れいぞうこには、どくがあって危険きけん物質ぶっしつ使わつか れていました。この物質ぶっしつは、液体えきたいからガスに変わるか  ときに周りまわ 冷やすひ  性質せいしつ持っも ていました。
 しかし、このように危険きけん物質ぶっしつを、家庭かていにおく冷蔵庫れいぞうこ使うつか わけにはいきません。そこで、何かいい方法ほうほうはないものかと、研究けんきゅうが行われました。その結果けっか、フロンという新しい物質ぶっしつが見つかりました。
 フロンは、色も匂いにお もない物質ぶっしつで、安定あんていした性質せいしつ持っも ています。性質せいしつ安定あんていしているということは、ほかのものといっしょにしても、ほとんど反応はんのう起こさお  ないということです。また、燃えるも  こともないので、火事かじ心配しんぱいがありません。さらに、簡単かんたん液体えきたいにしたりガスにしたりできるので、取り扱いと あつか も楽です。そして、安くやす 作ることができるのも、大きな長所ちょうしょでした。
 こうして、フロンは「20世紀せいき最大さいだい発明はつめい」として歓迎かんげいされ、世界中せかいじゅう使わつか れるようになっていきました。フロンは、まさに時代じだいのフロンティア(最前線さいぜんせん)でした。
 日本では特にとく 精密せいみつ機械きかいの工場で、部品ぶひん洗うあら のに使わつか れました。普通ふつうの水にはゴミやほこりが溶けと こんでいるため、精密せいみつ機械きかいの工場では使えつか なかったのです。
 しかし、こんなに長所ちょうしょばかりがあると思われたフロンに、意外いがい欠点けってんがあることがわかってきました。地球ちきゅうの上空にあるオゾンそうを、フロンが破壊はかいするということがわかってきたのです。
 フロンの長所ちょうしょである安定あんていした性質せいしつが、ぎゃく欠点けってんにもなっていたのです。フロンは壊れこわ にくく、ほかのものと反応はんのうもしないため、そのままガスとなって空気中に出て行きます。そして空の高いところまで行くと、太陽たいようの強力な紫外線しがいせんによって初めてはじ  分解ぶんかいされることになります。そのときに、フロンから出た塩素えんそがオゾンそう壊しこわ ていくのです。
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 オゾンそうは、太陽たいようの強力な紫外線しがいせんから地球ちきゅう上の生き物い もの守っまも ているバリアのようなものです。このバリアが壊さこわ れると、紫外線しがいせん地球ちきゅう上に降り注ぎふ そそ 生き物い ものに大きながい与えあた ます。こうして、ヒーローだったはずのフロンは、いつの間にか悪者わるものになってしまいました。
 しかし、人間が破壊はかいしたものは、人間の手によって修復しゅうふくできるはずです。オゾンそう破壊はかいすることは、人間にとってオーゾン(大損おおぞん)ですから、今、世界中せかいじゅうでオゾンそう守るまも 対策たいさく進めすす られています。

「フロンさん、元気出してね。きみ悪いわる わけじゃなく、たまたまオゾンくんなか悪かっわる  ただけなんだから。」
「うん、フロン、がんばる。フロンでも(ころんでも)ただでは起きお ないわ。」
「そう。オゾンくんも、だんだん元気が出てきたようだから。」
「オイゾンも、これからがんばって、紫外線しがいせんからみんなを守るまも でごわす。」
 フロー、フロー、オゾン!

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(τ)
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a 長文 5.1週 sa
長文が二つある場合、音読の練習はどちらか一つで可。
「ゴホッ、ゴホッ、エッヘン。」
 お母さんがひどい風邪かぜを引きました。せき鼻水はなみず、それにねつもあるのです。昨日きのうから寝込んねこ でしまいました。それで、仙台せんだいのおばあちゃんが手伝いてつだ に来てくれました。でも、おばあちゃんは、年をとっているし、うちの台所だいどころ慣れな ていないので、お母さんの代わりか  を一人でやるのは大変たいへんです。だから、ぼくは学校から帰ると、朝お父さんに言われたとおり、お手伝い てつだ をすることにしました。
 ぼくは、おばあちゃんが洗濯せんたくものを入れに二かいへ行っている間、赤ちゃんの美咲みさきのめんどうを見ることにしました。美咲みさきは、普段ふだん機嫌きげんがいいのですが、お母さんがかまってくれないので、ぐずぐず泣いな てばかりいます。ぼくは、美咲みさきのベッドのところへ行って、ぬいぐるみを見せたりガラガラを鳴らしたりしました。
 しばらく遊んあそ でいると、美咲みさきはスースーとはなを鳴らして眠りねむ 始めはじ ました。そこで、ぼくは、つぎ仕事しごと取りかかりと    ました。おばあちゃんが取り込んと こ 洗濯せんたくものをたたむのです。下着したぎやシャツ、美咲みさき肌着はだぎなど、いろいろなものがあります。ぼくは、まるでお店屋みせやさんのような手つきでどんどんたたんでいきました。中には、形が複雑ふくざつでむずかしいものもあったけれど、どうにか工夫くふうしてたたみました。
「しょうちゃん、味見あじみをしてちょうだい。」
と、おばあちゃんが味見あじみ用の小皿こざらをぼくにわたしました。煮物にもののいいにおいがただよっています。
「うん、ちょっとうすいかな。」
 ぼくは、小皿こざら返しかえ ながら言いました。煮物にものの中のニンジンは、ぼくが切ったものです。
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 食事しょくじがすんで、おさら洗うあら のもぼくがやりました。洗剤せんざい残っのこ ていたら体によくないので、しっかりとすすぎました。それが終わるお  と、おばあちゃんと一緒いっしょにお風呂ふろに入ってきた美咲みさきに、パウダーをつけたりふく着せき たりする仕事しごとです。風呂ふろ大好きだいす 美咲みさきは、とてもうれしそうに元気いっぱい手足を動かしうご  ています。だから、そでに手を通すだけでも一苦労ひとくろうでした。ようやく身支度みじたくができると、散らばっち   たバスタオルやおむつを片付けかたづ て、湯冷ましゆざ  飲まの せます。
「しょうちゃん、ありがとう。よく手伝ってつだ てくれるのねえ。三年生っていうのは、こんなにいろいろできるんだね。」
 寝るね 前に、おばあちゃんが感心かんしんしたように言いました。ぼくは、今日は遊びあそ をがまんして、がんばってよかったなと思いました。

言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会 φ)
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長文 5.1週 saのつづき
 すなにうずまった町――おそろしいさばくのあらし――

 わたしたちのすんでいる日本には、山があって、また野原があって、木が青あおとしげり、きれいな水がながれています。
 ところが、この地球ちきゅう上には、木も生えなければ花もさかないし、水もない、さばくというところがあります。
 さばくというと、みなさんは、はてしなくつづく、たいらな砂原すなはらをかんがえるかもしれませんが、かならずしも、そうではありません。
 さばくには、大きな砂山すなやまが、なみのうねるようにつらなっていたり、大小の石や岩がつみかさなっていたり、ごつごつした岩はだがあらわれていたりして、たいらな砂原すなはらはすくないくらいです。
 さばくのりょ行で、こまるのは、あついことです。日かげはないし、すなはやけているし、太陽たいようのでているあいだは、とても、あるいてなどいられません。
 へディンは、夜のうちにあるいて、昼まは、すなにあなをほり、その中にねることにして、たびをつづけていきました。
 昼まのあつさにひきかえて、さばくの夜は、はんたいに、ぐっと温度おんどがさがります。ときには、れいよりもひくくなり、しもがふることさえあります。
 ですから、さばくをりょ行する人たちは、たいてい毛おりのきものをきて、毛おりのぬのを頭にまいています。
 これは、昼まは、つよい日ざしをさけ、夜は、さむさをふせぐためなのです。
 さばくでは、すなあらしというのも、おそろしいものです。
 いままでしずかだったさばくに、とつぜん風がふきだすと、砂ぼこりすな   で、まえをあるいている、なかまのすがたも、まったくみえなくなるほどです。
 さばくに砂山すなやまがおおいのは、このすなあらしのためにできたものですが、その砂山すなやまもひとつところにとまっていないで、どんどんうごいていきます。
 へディンがしらべたところによると、タクラマカンのさばくでは一年のあいだに、五十メートルも砂山すなやまがうごいていたということで
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す。
 そのために、むかし、タクラマカンさばくの西のはしにさかえていた、たくさんの町が、すなの下にうずまってしまいました。
 このすなの下にうずまった町については、ふるくから、いろいろとふしぎなことがつたえられていました。
 そこには、たくさんの金やぎんがうずまっているのだが、だれひとりもちかえったものがいない。というのは、このさばくには、おそろしい王がいて、人びとが金やぎんをさがしだしてよろこんでかえろうとすると、道をまよわせて、金やぎんをもとのところへかえすまでは、さばくをでることをゆるさないというのです。

(「世界せかいふしぎめぐり三年生」より抜粋ばっすい一部いちぶ調整ちょうせい
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a 長文 5.2週 sa
 地球ちきゅうは音よりはやい――地球ちきゅう運動うんどう――

 むかし、キリスト教の教会では神さまかみ  世界せかいをお作りになったとき、人間のすんでいる地球ちきゅうをまん中にして、太陽たいようや、月や、星が、そのまわりをまわるようにしたのだとおしえていました。そして、そのころは、すべての人が、そうしんじていたのです。
 コペルニクスは、長いあいだ、星をかんそくして、
(それはちがう。太陽たいようはうごかないでいて、地球ちきゅうや、月や、そのほかの星が、太陽たいようのまわりを、ぐるぐるまわっているのだ。)
と、かんがえましたが、なかなかそれをいいだすことができませんでした。というのは、そのころの教会の力は、たいそうつよくて、もしも、教会のおしえにそむくことをいったら、どんなひどいめにあわされるかしれなかったからです。
 けれども、コペルニクスは、ゆうきをだして、じぶんの正しいとしんじていることを本にしようとけっしんしました。が、その本ができあがったとき、コペルニクスは、びょうきで死んし でしまいました。
 そのあと、コペルニクスのかんがえをせつめいしてあるいたブルーノという学者がくしゃは、火あぶりにされ、さんせいする本を書いたガリレオは、さいばんにかけられました。
 このとき、ガリレオは、むりやりに、じぶんのかんがえをとりけさせられましたが、
「それでも、地球ちきゅうはうごくのだ。」
と、つぶやいたということです。
 こうして、地球ちきゅうがうごくというかんがえは、教会のきびしいはんたいにあいながらもだんだんにみとめられてきたのです。今では、地球ちきゅうがうごいているということは、だれでも知っている、あたりまえのことですが、むかしは、こんなにもたいへんなことだったのですね。
 さて、地球ちきゅうはこのように太陽たいようのまわりをまわっているのですが、ひとまわりするのに、およそ三百六十五日かかります。
 わたしたちが、ふだん一年とよんでいるのは、この、地球ちきゅう太陽たいようをひとまわりする時間をいっているのです。
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 それでは、地球ちきゅうは、どれくらいのはやさで、走っているとおもいますか。
 おどろいてはいけませんよ。一時間に、およそ十万キロというはやさで走っているのです。特急とっきゅう「ひかり」が、いちばんはやく走っているときで、一時間に二百二十キロ、音よりはやいといわれるジェット機    きでも、一時間に千三百キロくらいのはやさですから、地球ちきゅうのはやさとは、とてもくらべものになりませんね。
 わたしたちは、そんなにはやく走っている地球ちきゅうの上にいて、よくたおれないものだと、ふしぎにおもいますね。それは、地球ちきゅうには、引力といって、ものをひきつける力があって、人間をひっぱっているから、たおれないのです。

(「世界せかいふしぎめぐり三年生」より抜粋ばっすい一部いちぶ調整ちょうせい
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a 長文 5.3週 sa
 牛のお通りで電車がとまる――牛をうやまうインドの人――

 町のまん中で、なにかじけんがあったのでしょうか。いままで走っていた電車がとまってしまいました。自動車じどうしゃも、うごきません。
 人ごみをのぞいてみますと、牛が二頭、一頭は電車のせんろに、一頭はそれとならんで、のんきな顔つきで、ねそべっています。
「こまったなあ。はやくどいてもらわなくては、通ることができない。」
と、電車の車しょうも、自動車じどうしゃのうんてん手も、こまった顔です。
 つなをつけてひっぱるとか、ぼうでおいはらったらよいとおもいますが、だれも、そんなことをしようとおもわないようです。
 そのうちに、牛はゆっくりとおきあがって、町の大通りを、さんぽでもするように、のそのそとあるいていきました。電車も、自動車じどうしゃも、なにごともなかったようにうごきだしました。
 これは、日本のはなしではありません。インドのカルカッタという町での、できごとなのです。
 インドでは、こういったことはたびたびみられます。インドの人たちは牛をたいへんだいじにします。だいじにするというよりも、牛を、神さまかみ  が、かりにすがたをあらわしたものだとおもってうやまうのです。
 ですから、カルカッタの町にはなん百頭という牛が野ばなしで、まい日、のそのそとあるきまわっています。
 町の人たちは、まい朝、その牛に、たべものをささげます。
 ときには、牛が店さきのたべものなどを、しっけいすることもありますが、それでも、おこって牛をおいはらうようなことは、けっしてしません。牛が、通り道にねころんで、通りをふさいだりしていても、牛がうごきだすまで、のんびりと、まっているのです。
 インドでは、たいていの人がヒンズー教というおしえをしんじていますが、ヒンズー教のしんじゃたちは、牛ほどやくにたつ動物どうぶつはないとおもっているのです。

(「世界せかいふしぎめぐり三年生」より抜粋ばっすい
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a 長文 5.4週 sa
長文が二つある場合、読解問題用の長文は一番目の長文です。
 シベリアやアラスカといった、さむさの厳しいきび  地方で暮らすく  人々は、古くから、人やもの運ぶはこ ために、犬ぞりを使っつか てきました。シベリアン・ハスキーやサモエド、アラスカン・マラミュートといった種類しゅるいの、さむさに強く、力持ちちからも の犬たちにそりを引かせるのです。これらの犬たちは、ふさふさした毛と厚いあつ 脂肪しぼう持っも ているため、北極ほっきょくこおりの上で眠っねむ ても平気へいきです。また、長い距離きょりを走っても耐えた られる、すぐれた体力の持ち主も ぬしです。
 なかでもハスキー犬は、探検たんけん家ピアリーやアムンゼンによる北極ほっきょく南極なんきょく探検たんけん使わつか 有名ゆうめいになりました。また、ドッグレースや犬ぞりレースで、いつも優秀ゆうしゅう成績せいせき収めおさ ていました。
 あるとき、アラスカのノームという町に、ジフテリアという恐ろしいおそ   病気びょうきがはやりました。現在げんざいでは多くの国で予防よぼう接種せっしゅが行われているので、ジフテリアはほとんど流行りゅうこうすることがありません。しかし、当時はまだ、おおぜいの人が死ぬし こともある怖いこわ 病気びょうきでした。ジフテリアの症状しょうじょう抑えるおさ  には、ワクチンというくすり必要ひつようですが、この時ノームの町では、ワクチンがそこをついてしまいました。あまりに患者かんじゃが多かったからです。このままでは、人々がどんどん死んし でしまいます。
 ノームの町からアラスカしゅう政府せいふがあるアンカレッジに、助けたす 求めるもと  連絡れんらくが入りました。すぐにでも、ワクチンを送らおく なければなりません。しかし、その時はとても天気が悪くわる もう吹雪ふぶき続きつづ 飛行機ひこうき飛ばすと  ことができません。自動車じどうしゃでさえ走れないようなひどいあらしです。ワクチンをラクチンに運べるはこ  ような状況じょうきょうではありませんでした。
 「そうだ。犬ぞりで運ぼはこ う。」政府せいふは、そう決断けつだんしました。そして、すぐさま村々に連絡れんらくが行きました。ただちに二十の犬ぞりチームが、ワクチンを届けるとど  ために準備じゅんびをしました。
 外は、マイナス五十にもなる厳しいきび  さむさと、荒れ狂うあ くる 吹雪ふぶき
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す。この中を、二十の犬ぞりチームは五日間かけて走り通し、ワクチンは無事ぶじにノームに届けとど られたのです。このおかげで、数百人のいのち救わすく れました。
 このときの働きはたら をたたえて、ハスキー犬の銅像どうぞうが、ニューヨークのセントラル・パークに立てられています。また、この出来事できごと記念きねんして、毎年、世界せかいでいちばん難しくむずか  いちばん長い犬ぞりレースがアラスカで行われるようになりました。このレースは、アンカレッジからノームまでを人間一人と犬たち十数ひきで走るレースです。ふつう、ゴールするのに三週間くらいかかるそうです。
 犬たちのがんばりも相当そうとうなものですが、人間の根性こんじょうもたいしたものです。こんなに大変たいへんなレースの後では、犬たちに号令ごうれいをかけ続けつづ た人間の声もしわがれて、きっと「ハスキー・ボイス」になってしまうことでしょう。
 寒いさむ 地方で使わつか れる犬ぞりのほかに、日本にもさまざまなそりがあります。有名ゆうめいなところでは、エビぞり、ひげそり、のっそり、ごっそり、もっそり、こっそり、ひっそり、げっそり、などです。

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(τ)
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長文 5.4週 saのつづき
 哺乳類ほにゅうるいの赤ちゃんは、母親からミルクを与えあた られて育ちそだ ます。動物どうぶつのミルクの成分せいぶんは、みな同じではなく、それぞれに特徴とくちょうがあります。たとえば、オランウータンやチンパンジーなどは、母親がいつも子供こどものそばにいてミルクを与えるあた  ことができる生活をしているので、ミルクは薄くうす たんぱく質    しつ脂肪しぼうが少なくなっています。
 ところが、ライオンなどの狩りか に出かける動物どうぶつは、母親が何時間も留守るすにするため、その間は子供こどもにミルクを与えるあた  ことができません。長時間子供こどものおなか満たしみ  ておく必要ひつようがあるので、ミルクは濃くこ たんぱく質    しつ脂肪しぼうをたくさん含んふく でいます。
 また、寒いさむ 地方や水中にすむ動物どうぶつは、体温たいおんをうばわれないように、皮膚ひふの下にたくさんの脂肪しぼうをたくわえています。この仲間なかまであるアザラシやアシカのミルクはとても濃くこ 脂肪しぼうがたくさん含まふく れています。
 クジラやイルカの赤ちゃんは、水中でミルクを飲みの ますが、まだ赤ちゃんなので長時間もぐっていることができません。そこで、短いみじか 時間でもたくさんの栄養えいよう取れると  ように、やはり濃いこ ミルクになっています。
 人間のおなかなかには、たくさんの細菌さいきんがすんでいて、その中には役に立つやく た ものと病気びょうきのもとになるものがあります。赤ちゃんのおなかなかにも、生まれて間もなく、さまざまな細菌さいきんがすみつきはじめます。母乳ぼにゅうには、赤ちゃんにとって役に立つやく た 微生物びせいぶつ増えるふ  ための成分せいぶんや、病気びょうきのもとになる細菌さいきん増やさふ  ないようにする成分せいぶんが入っていて、赤ちゃんの健康けんこう保つたも 大きなやく割りわ 果たしは  ています。
 赤ちゃんが生まれて間もないころの母乳ぼにゅうは、初乳しょにゅう呼ばよ れています。人間の体には、外から入ってきた病気びょうきのもとを撃退げきたいするための免疫めんえきというシステムがありますが、生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ免疫めんえき十分じゅうぶん持っも ていません。初乳しょにゅうには、お母さんが
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持っも ている免疫めんえき物質ぶっしつがふくまれていて、それが赤ちゃんの体の中で吸収きゅうしゅうされて、いろいろな病気びょうきから赤ちゃんを守っまも ているのです。

 おっぱいには、このようにいろいろなものがいっぱい入っています。
 しかし、赤ちゃんが大きくなり、自分でご飯 はんが食べられるようになると、やがて赤ちゃんは自分の力で生きていくようになります。
 そこで、「おっぱいさん、グッパーイ」となるわけです。

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(κ)
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a 長文 6.1週 sa
長文が二つある場合、音読の練習はどちらか一つで可。
「やった! 跳べと た。」
 高田さんが跳べと たとき、クラス中のみんながざわめきました。高田さんはそのまま動きうご ません。じっと立っています。女子が何人かかけよりました。うれしそうな声をあげながら、高田さんのかたをゆすったり、背中せなかをたたいたりしています。やっと、高田さんが顔をあげてこちらを向きむ ました。
「みんな、ありがとう。」
 とても小さな声で、あまり聞きとれませんでしたが、確かたし に口がそう動きうご ました。だれからともなく拍手はくしゅ起こりお  ます。パチパチパチパチ。このクラスで最後さいご体育たいいく授業じゅぎょう、ずっと跳び箱と ばこ跳べと なかった高田さんがついに跳んと だのです。クラスのだれもが待ち望んま のぞ でいた瞬間しゅんかんでした。
 跳び箱と ばこ授業じゅぎょうは、二月に入ってから始まりはじ  ました。みんなが大はしゃぎでだんを上げている中で、高田さんは何跳んと でも、跳び箱と ばこにまたがって止まってしまうのでした。
「まだ、跳べと ないの。」
と言う人もいました。跳ぶと 前に、
「ドッスーン。」
などとからかう人もいました。もし、ぼくが高田さんだったら、とっくに、できないと言って投げ出しな だ てしまったことでしょう。
 しかし、高田さんは、あきらめませんでした。何も何挑戦ちょうせんしていました。放課後ほうかご、先生と練習れんしゅうしている日もありました。その姿すがたに、それまで冷やかしひ   たり笑っわら たりしていた人も、だんだん応援おうえんするようになったのです。
 やがて体育たいいくつぎ種目しゅもくになりましたが、特別とくべつに高田さんのために跳び箱と ばこ用意よういされました。高田さんは、毎回黙々ともくもく 練習れんしゅうしていました。クラスでいちばん早く七だん跳べると  ようになった川上くんが、何もアドバイスしていました。
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踏み切りふ き 大事だいじだから。そう、もう一回やってみて。」
 また、女子は声をそろえて、
惜しいお  !」
「もう少し!」
と声をかけました。先生の出るまくは、もうないくらいでした。
 チャイムが鳴って、体育たいいくの時間が終わりお  ました。みんなで高田さんを取り囲むと かこ ようにして、体育館たいいくかんをあとにしました。高田さんの顔は、まだ真っ赤ま かだけれど、何だか輝いかがや ているように見えました。やればできる。がんばればできないことなんかない、という声がどこからか聞こえてくるようでした。

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長文 6.1週 saのつづき
 地球ちきゅうと月のひっぱりっこ――みちしおひき潮  しお――

 春になると、みなさんのなかには、おとうさんやおかあさんにつれられて、しおひがりにいく人もあることでしょう。
 しおひがりは、たのしいものですね。
 ふだん水のあるときには、貝がみえないのに、しおがひくと、くまでで、ちょっとかいただけで、いくらでも、貝がでてくるのですからね。
 海の水は、へいきんして一日に二かいずつ、みちたり、ひいたりしています。それは、まるで、海がゆっくりといきをしているみたいです。
 どうして、こんなことがおこるのでしょうか。
 しおのみちひは、月や太陽たいようが、海の水をさかんにひっぱるために、おこるのです。
 地球ちきゅう運動うんどうのところで、引力のことをお話ししましたが、地球ちきゅうばかりでなく、太陽たいようでも月でも、そのほかの星でも、すべてのものはたがいにひっぱりあっています。引力は大きなものほどつよいのですが、近くにあるものは、小さくても、遠くにあるものより、つよく引力をはたらかせます。
 たとえば、太陽たいようの引力は、月よりはるかに大きいのですが、地球ちきゅうからのきょりがずっと遠いので、海の水をひっぱる力は、小さな月のほうが、太陽たいようより二ばい半もつよいのです。
 ですから、しおのみちひは、おもに月の引力のためにおこるとかんがえて、さしつかえありません。
 月のひっぱる力は、近いところにあるものほどつよくはたらきます。ですから、地球ちきゅうの上で、月とむかいあっているところには、月の引力がいちばんつよくはたらき、海の水が月のほうへひっぱられてもりあがり、みちしおとなります。これにたいして、地球ちきゅうの上で月と反対はんたいのがわにあるところは、月からいちばんはなれているので、月の引力はいちばんよわくなっていますが、ここでは、月とはんたいのほうこうに、地球ちきゅうの遠心力がつよくはたらいているので、月とはんたいのほうへ海の水がもりあがって、やはり、みちしおとなります。
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(「世界せかいふしぎめぐり三年生」より抜粋ばっすい
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a 長文 6.2週 sa
 家ちくといっしょにテントのたび――モンゴルの人のくらし――

 わたしたちのくらしかたは、まず家をつくって、そこにおちついてくらします。
 学校へいくのも、おつとめにでるのも、その家からです。
 よほどのことがなければ、ひっこしはしません。
 ところが、村ぜんたいが、いつもひとところにおちついていないで、家をもって、あちこち、ひっこしてあるく人たちがいます。
 モンゴルの人たちが、そうです。
 モンゴルは、あつささむさのちがいが、たいへんはげしいところで、しめりけがすくなく、土地がひじょうにかわいています。
 そのため、さばくやひろい草原がひろがっており、おおくの人びとが、牛、うま、らくだ、ひつじ、やぎなどをかってくらしています。そして、いつも水や草のあるところをさがして、つぎつぎとひっこしてあるくのです。
 ふつう一けんの家で、ひつじを二、三百頭、牛を五十頭、馬を二十頭くらいもっています。ですから、村全体ぜんたいがひっこすとなると、たいへんなさわぎとなります。
 しかし、家は、ごくかんたんなもので、おりたたみができますから、たいしてせわはありません。
 やなぎの木をくみあわせて、ほねぐみをつくり、それにひつじの毛がわを、すっぽり上からかぶせただけのすまいです。この家のことを、パオといっています。
 パオは、くみたても、とりはずしも、二、三時間でできてしまうたいへんべんりな家です。
 モンゴルの人たちのたべものは、おもに、ひつじや牛のちち、にくなどです。朝は、チャオミイといって、ひつじのちちをいれたお茶に、いったあわをいれてたべます。夕はんは、ゴリルといって、ひつじのにくに、うどんをまぜてにたものです。そして、一日のうちに、なんかいもお茶をのみます。このお茶は、ひつじの毛がわととりかえて、手にいれます。
 ねんりょうには、ひつじや牛のあぶらのほか、牛のふんをかわかしたものをつかっています。パオも、ひつじの毛がわでつくったものです。

(「世界せかいふしぎめぐり三年生」より抜粋ばっすい
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a 長文 6.3週 sa
 遠くへたびをする鳥――わたり鳥のいろいろ――

 春になると、つばめが南の国からとんできて、家ののき下などにすをつくるのを、みなさんは知っていますね。
 そこの家の人たちは、
「ああ、ことしもまた、つばめがやってきた。よくわすれないで、くるもんだ。かわいいものだな。」
といって、じぶんの子どもが、長いたびからかえってきたように、かわいくおもうものです。
 つばめは、くるそうそう、どろをくわえてきては、もとあったすの手いれをして、やがて、そこにたまごをうみます。
 ひながかえると、こんどは、せっせとえさをさがしてきて、ひなをそだて、秋になると、大きくなった子つばめをつれて、また南の国へかえっていきます。
 南の国って、いったいどこでしょう。
 おどろいてはいけませんよ。フィリピンとかインドネシアとか、海をこえた、遠くのほうなのです。
 これとはんたいに、秋になると、北の国から日本にやってきて、冬のあいだじゅういて、春にかえっていく鳥もあります。
 がんや、かもなどが、そうです。
 これは、どこからくるのかというと、ずっと北のほうの、シベリアとか、カムチャッカという、さむいところからです。
 夏のあいだじゅう、そこで、ひなをそだてて、秋に日本へやってくるのです。
 このように、遠くからたびをしてくる鳥を、わたり鳥といっていますが、そのうちで、つばめのように夏のあいだ日本にいる鳥を、夏鳥といいます。
 そして、がんや、かものように、冬のあいだいる鳥を冬鳥といっています。
 冬鳥には、このほか、つる、つぐみ、まひわなどがあります。
 ほととぎすやかっこう、つつどり、おおるり、さんこうちょう、ぶっぽうそうなどは、夏鳥です。
 うぐいすも、春になると、町の近くにやってきます。けれど、これは、夏のあいだ山にすんでいて、冬になると、あたたかい海べや野原にでてきて、そこでひなをうみ、春のあいだ、平野へいやにすんでいるのです。
 うぐいすのほかにも、ひよどりや、もずなどは、山と平野へいやのあいだだけを、いったりきたりしているのです。
 こうしてみると、たいていの鳥がたびをしているみたいですね。
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 それでも、ひとつところにいて、どこにもたびをしない鳥も、いることはいます。
 みなさん、ごぞんじでしょう。
 すずめ、からす。これは、たしかに、一年じゅう、わたしたちの目のまえをとんでいますね。

(「世界せかいふしぎめぐり三年生」より抜粋ばっすい一部いちぶ調整ちょうせい
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a 長文 6.4週 sa
長文が二つある場合、読解問題用の長文は一番目の長文です。
 コロンブスの時代じだい、人々はまだ、地球ちきゅうが丸いとは思っていませんでした。そのころ、ヨーロッパ諸国しょこくは、貿易ぼうえきを行いキリスト教を広めるため、さかんに船で東方にあるアジア進出しんしゅつ目指しめざ ていました。この時代じだいを大航海こうかい時代じだい呼んよ でいます。
 イタリア生まれのコロンブスは、東を目指すめざ 人々とは異なること  考えを持っも ていました。かれは、地球ちきゅうが丸いことを信じしん ていました。アフリカの南をまわってアジアを目指すめざ よりも、大西洋たいせいようを西へ進んすす だほうが、ずっと早くアジアにたどり着ける   つ  はずだと考えたのです。もう一つ、コロンブスに航海こうかい決心けっしんさせたものがあります。それは、マルコ・ポーロの「東方見聞ろく」でした。そこに書かれていた、黄金の国ジパング(日本)は、ヨーロッパの人のあこがれのまとでした。かれはスペインの女王の援助えんじょ受けう 、サンタ・マリアごう乗っの て、西回りでアジアに行く計画を実行じっこうすることになりました。
 このとき、コロンブスが要求ようきゅうしたことは、もしインドを見つけたらそのたからの十分の一を自分がもらうこと、発見はっけんした土地の総督そうとくになること、スペインの貴族きぞくになることなどでした。当時、遠洋えんよう航海こうかいには莫大ばくだい資金しきん必要ひつようでした。このため、イギリスやフランスは、コロンブスの提案ていあん受け入れるう い  ことができませんでした。コロンブスにとってもスペインの女王にとっても、航海こうかいは大きな賭けか だったのです。
 サンタ・マリアごう乗組のりくみいんたちは、地図にも載っの ていない未知みち海域かいいきへと航海こうかいに出ました。そして、二か月以上いじょう航海こうかいて、ようやく陸地りくちを見つけることができたのです。コロンブスの考えでは、そこはアジアのはずでした。
 地球儀ちきゅうぎを見るとわかりますが、ヨーロッパから西に向かっむ  大西洋たいせいよう横断おうだんすると、巨大きょだいアメリカ大陸    たいりくにぶつかります。アメリカ大陸    たいりく越えこ て広い太平洋たいへいよう横断おうだんしなければ、アジアに
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到着とうちゃくすることはできません。実際じっさい地球ちきゅうは、コロンブスが考えているより、ずっと大きかったのです。
 アメリカ大陸    たいりく存在そんざいを知らなかったのですから、コロンブスが新大陸しんたいりくをアジアだと思ったのも無理むりはありません。コロンブスは、上陸じょうりくした島々しまじまに名前をつけ、スペインの領土りょうどとしました。
 当時、インドという言葉ことば漠然とばくぜん アジア全体ぜんたい指すさ 言葉ことばとしても使わつか れていました。アメリカ大陸    たいりくにもともと住んす でいた人々を、コロンブスはインドの人という意味いみでインディオスと呼びよ ました。
 スペインに帰ったあと、かれ発見はっけんはたいへんな評判ひょうばんになりました。かれは一生、自分が発見はっけんした陸地りくちをアジアだと信じしん ていたそうです。
 コロンブスのタマゴの話は有名ゆうめいです。この話を聞いて、ある人が同じようにタマゴを立てようとすると、タマゴはうまく立たずに、コロン。その人はブスっとしていたそうです。はい、縮めちぢ て言うと、コロン。ブス。

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(κ)
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長文 6.4週 saのつづき
 七五三というのは年のことですが、実際じっさいは六さいや四さいお祝い いわ をすることがあります。七五三の年は、数え年というもので、実際じっさいの年より一つか二つ上になります。どうしてこういう年の数え方をするのでしょう。
 今は誕生たんじょう日がくると一つ年をとる満年齢まんねんれい普通ふつうです。しかし、むかしはそうではありませんでした。新しい年がくると、みんないっせいに一つ年をとったのです。
 お年玉というのは、もともと年のたましいのことで、お正月に年のたましいであるおもちを食べて、年を一つとったというわけです。
 この数え年の考え方は東洋とうようのもので、西洋せいようではむかしから今のような満年齢まんねんれいの数え方でした。西洋せいようでは、赤ちゃんが生まれてきたときから、年齢ねんれいを数えます。しかし、日本では、お母さんのおなかにいるときから赤ちゃんの年齢ねんれいを数えるため、生まれた瞬間しゅんかんに一さいとしました。もし、十二月三十一日に生まれたとしたら、その赤ちゃんは生まれたときにもう一さいです。そして、つぎの日に元旦がんたん迎えるむか  と、すぐに二さいになるのです。
 だれもが同じ一月一日に一つ年をとるというのは、それだけ年が改まるあらた  お正月の意味いみが大きかったからなのかもしれません。
 今の満年齢まんねんれいの数え方になったのは、だい世界せかい大戦たいせん後のことです。生まれた日から数える満年齢まんねんれいの考え方は、それなりに正確せいかく実用じつようてきです。しかし、お正月におもちを食べていっせいに年をとった古き時代じだいのやり方には、等しくひと  いのち大事だいじにする文化ぶんかがあったように思えます。
 お正月は、お雑煮ぞうにのおもちを食べながら、モチっと日本の文化ぶんかについて考えてみるのもいいかもしれません。

 七五三は、三さいさいさいお祝い いわ をします。どうして、年齢ねんれいじゅんに三五七と言わないかというと、つぎのようなことがあるからです。
「えーと、そろそろうちの子も、あれだな。あの三五、えーと三五……」
「十五でしょ」
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 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(α)
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