a 長文 1.1週 se
 1「ここは通れません。」 
と菅原(すがわら)君(くん)が道をふさぎました。下校する時、いつも一組の菅原(すがわら)君(くん)はまちぶせして私(わたし)にいじわるをします。バスを降り(お )て、うちまでの道がずっといっしょなので、毎日帰りに会ってしまいます。 
 2オナモミの実(み)をたくさんポケットに入れていてそれをぶつけてきたり、たて笛(ぶえ)のふくろをふりまわしたり、本当に毎日いやなことをします。ランドセルと背中(せなか)の間にトカゲを入れられたり、わきに下げている給食(きゅうしょく)用のコップをとられたりもしました。3帽子(ぼうし)を上にひっぱって、ゴムをぱちんといわせるのなんかしょっちゅうです。私(わたし)は、とても悲しく(かな  )なるけれど、がまんして走って通り過ぎ(とお す )ます。そしてうちに着い(つ )て、お母さんの顔を見ると涙(なみだ)がぽろぽろ出るのでした。 
 4でも、お母さんは、 
「菅原(すがわら)君(くん)はさやかとお友だちになりたいからそういうことをするのよ。今度(こんど)、いっしょに遊ぼ(あそ )うと言ってみたら?」 
などとにっこり笑う(わら )のです。いっしょに遊ぶ(あそ )だなんて絶対に(ぜったい )いや! 私(わたし)は心の中でそう思いました。5そして、にくらしい菅原(すがわら)君(くん)の顔を思い浮かべる(おも う   )とくやしい気持ち(きも )でいっぱいになりました。 
 十二月のはじめ、風の冷たい(つめ  )日でした。私(わたし)は靖子(やすこ)ちゃんや典子(のりこ)ちゃんたちと五、六人で、公園でゴムとびをしていました。夢中(むちゅう)で遊ん(あそ )でいると、そこへ菅原(すがわら)君(くん)たちがやってきました。6私(わたし)は楽しかった気持ち(きも )が一気にしぼむ感じ(かん )がしました。思ったとおり、菅原(すがわら)君(くん)たちは列(れつ)に並び(なら )もしないで、じゃまするようにゴムにむかって走って来ます。そして、わざと、ピンとはったゴムにひっかかるまねをしました。7その時、ゴムを持っ(も )ていた私(わたし)は思わず向こう(む  )側(がわ)の典子(のりこ)ちゃんに、 
「まきつけちゃおう。」 
と呼びかけ(よ   )ました。そして、菅原(すがわら)君(くん)たちを伸ばし(の  )たゴムでぐるぐる巻き(ま )にしたのです。菅原(すがわら)君(くん)たちはギエッと変(へん)な声を出しました。
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8身動(みうご)きができなくなった菅原(すがわら)君(くん)を見て、私(わたし)はなんだかおかしくなって笑い(わら )出してしまいました。みんなもゲラゲラ笑い(わら )ました。ぐるぐる巻き(ま )にされた菅原(すがわら)君(くん)たちも、 
「ごめんなさあい。」 
と笑っ(わら )ています。そのあとはなぜか仲良く(なかよ )なって大勢(おおぜい)でゴムとびをしました。 
 9その日をさかいに、菅原(すがわら)君(くん)は帰り道のいじわるをぴたりとやめました。会っても、「おう」と言うだけで何もしてきません。それどころか、 
「おまえ、今日遊べる(あそ  )?」 
と誘っ(さそ )てくるようになったのです。いつかお母さんが言ったことは本当だったのだなあと私(わたし)は思いました。0

(言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会 φ)
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a 長文 1.2週 se
 1ワインはグレープジュースですが、姿(すがた)をかえたグレープジュースであることを、みなさんはよく知っていますね。グレープジュースはあまいのにワインはアルコールの味(あじ)がします。時間がたつと変化(へんか)するこのような現象(げんしょう)を、発酵(はっこう)とよんでいます。
 2しかし、どうして発酵(はっこう)がおこるのだろう? パストゥールの問題(もんだい)はここにありました。
 当時の最も(もっと )偉大(いだい)な学者(がくしゃ)たちも、グレープジュースはどんな生物(せいぶつ)のたすけもかりずに自然(しぜん)にアルコールにかわると主張(しゅちょう)していました。3ところがパストゥールは、グレープジュースそのものが自然(しぜん)に発酵(はっこう)することはけっしてないと主張(しゅちょう)しました。べつの役者(やくしゃ)が舞台(ぶたい)に登場(とうじょう)しているはずである、とかれはいうのです。4この役者(やくしゃ)はたいへんに小さいため、顕微鏡(けんびきょう)でしか見ることができないもので、かれは酵母(こうぼ)とよびました。
 パストゥールは、密封(みっぷう)してあたためたグレープジュースは発酵(はっこう)しないことを証明(しょうめい)してみせました。5酵母(こうぼ)が作用しなければ、ジュースはワインにはなれないのです。酵母(こうぼ)はジュースの中にふくまれる糖(とう)を食べながらものすごいいきおいで繁殖(はんしょく)します。糖(とう)を、アルコールと炭酸(たんさん)ガスに分解(ぶんかい)します。6つまり、アルコールというのは、小さな生物(せいぶつ)による糖(とう)の消化(しょうか)作用の結果(けっか)なのです。
 病気(びょうき)の問題(もんだい)とはちがうじゃないか、とみなさんはいわれるかもしれません。ところが、ワインにも病気(びょうき)があるのです。7すっぱくなったり、くさって味(あじ)がかわったりすることです。発酵(はっこう)がひとりでにおこると信じ(しん )ているかぎり、ワインに病気(びょうき)があることや、まして、その病気(びょうき)と戦う(たたか )ことができるなどと、だれも考えてみないでしょう。
 8ところがパストゥールは、これらの病気(びょうき)は、いろいろな酵母(こうぼ)が酵母(こうぼ)自身(じしん)をやしなうためにワインを変化(へんか)させることが原因(げんいん)であることをしめしました。
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 9パストゥールは、こうして発酵(はっこう)にはそれぞれのとくべつな酵母(こうぼ)があって、ワインを酢(す)にかえたり、牛乳(ぎゅうにゅう)をチーズに、麦芽(ばくが)をビールにかえるはたらきをするのだということを証明(しょうめい)したのです。0
 
 「細菌(さいきん)と戦う(たたか )パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社(かいせいしゃ)
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a 長文 1.3週 se
 1果物(くだもの)をお皿(さら)にのせたまま長いあいだ放(ほう)っておいたり、死ん(し )だ動物(どうぶつ)をそのままにしておくと、くさったにおいがしてくることは、知っていますね。2パストゥールは、このにおいの原因(げんいん)が、微生物(びせいぶつ)あるいは細菌(さいきん)(ギリシア語でmicros「小さい」という意味(いみ))とよばれる、小さな生き物(い もの)のしわざであることをつきとめています。
 3この生物(せいぶつ)は、独特(どくとく)な性質(せいしつ)をもっており、酸素(さんそ)があると死ん(し )でしまうか「眠れる(ねむ  )森の美女(びじょ)」のように眠っ(ねむ )たままでいます。4ところが、いったん酸素(さんそ)がなくなるときゅうに元気づいて、どんどんふえはじめます。
 5パストゥールは、新しい生物(せいぶつ)を発見(はっけん)したのです。それは、酸素(さんそ)を必要(ひつよう)としない生物(せいぶつ)でした。
 6有機(ゆうき)体(生物(せいぶつ))は、みな何百万もの微生物(びせいぶつ)をすまわせています。7有機(ゆうき)体が生きているあいだは、その細胞(さいぼう)は空気を必要(ひつよう)としているので、これにたえられない微生物(びせいぶつ)は、眠っ(ねむ )た状態(じょうたい)になっています。生物(せいぶつ)が死ぬ(し )と、空気が細胞(さいぼう)にはこばれてこなくなります。
 8こうして酸素(さんそ)という脅威(きょうい)からときはなされた微生物(びせいぶつ)は、まるで王子のキスで目ざめた「眠れる(ねむ  )森の美女(びじょ)」のように、目をさましはじめます。9成長(せいちょう)していくにつれて、酵母(こうぼ)がグレープジュースをワインにかえてアルコールのにおいをさせるように、この微生物(びせいぶつ)はまわりの組織(そしき)を少しずつこわして、悪臭(あくしゅう)をはなちます。0
 
 「細菌(さいきん)と戦う(たたか )パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社(かいせいしゃ)
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a 長文 1.4週 se
 伝書(でんしょ)バトは、信頼(しんらい)のおける郵便(ゆうびん)配達員(はいたついん)のようです。伝書(でんしょ)バトに届け(とど )てもらう手紙は、足につけた小さな筒(つつ)の中に入れたり、背中(せなか)にくくりつけたりします。伝書(でんしょ)バトは、託さ(たく )れた手紙を、遠く離れ(はな )た相手(あいて)のもとへ届ける(とど  )ことができます。二百キロメートルぐらいの距離(きょり)を飛ぶ(と )のが普通(ふつう)ですが、時には千キロメートルも離れ(はな )た場所(ばしょ)まで飛ぶ(と )こともあります。千キロメートルというと、だいたい東京から北海道、又は(また )東京から九州(しゅう)ぐらいまでの距離(きょり)になります。これほど離れ(はな )た相手(あいて)先に、間違わ(まちが )ずにたどりつける能力(のうりょく)にはおどろきます。
 しかし、こんなに優秀(ゆうしゅう)な伝書(でんしょ)バトにも弱点があります。それは、いつも同じ届け先(とど さき)にしか手紙を運べ(はこ )ないことと、あまり重い(おも )ものは運べ(はこ )ないことです。伝書(でんしょ)バトがめざすのは、手紙のあて先に書かれた住所(じゅうしょ)ではなく、自分が生まれたハト小屋(ごや)です。つまり、伝書(でんしょ)バトの手紙の配達(はいたつ)は、帰巣(きそう)本能(ほんのう)を利用(りよう)したものなのです。
 地図も持た(も )ずに何百キロも離れ(はな )た地点に正確(せいかく)にたどりつくのは、人間にとっては、たいへん難しい(むずか  )ことです。伝書(でんしょ)バトは、なぜ自分の巣(す)のある場所(ばしょ)に迷わ(まよ )ずに帰ることができるのでしょう。かつては、地上に見える目印(めじるし)と、太陽(たいよう)の場所(ばしょ)、それに地球(ちきゅう)の磁気(じき)をたよりに飛び(と )、夜になると星を目印(めじるし)に進む(すす )のだろうと言われてきました。最近(さいきん)の研究(けんきゅう)によると、伝書(でんしょ)バトの方向(ほうこう)感覚(かんかく)は、すぐれた嗅覚(きゅうかく)のおかげでもあると言われています。
 遠くからでも、迷わ(まよ )ずに自分の巣(す)に帰ることができるハトの性質(せいしつ)を、大昔(おおむかし)から人間は知っていました。古代(こだい)エジプトでは、漁船(ぎょせん)が伝書(でんしょ)バトを使っ(つか )て、漁(りょう)の成果(せいか)を海から陸(りく)に知らせていたそうです。一度(いちど)放た(はな )れた伝書(でんしょ)バトは、休むことなく何百キロも飛び(と )続ける(つづ  )ため、電話やメールがない時代(じだい)は、最も(もっと )速い(はや )通信(つうしん)手段(しゅだん)でした。
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近代(きんだい)にいたるまで、伝書(でんしょ)バトは、軍事(ぐんじ)用や報道(ほうどう)用の通信(つうしん)手段(しゅだん)として数多く使わ(つか )れてきました。また、離れ(はな )小島(こじま)などの輸送(ゆそう)が難しい(むずか  )地域(ちいき)に、薬(くすり)や血清(けっせい)を運ん(はこ )で、医療(いりょう)の手助け(てだす )をしていた伝書(でんしょ)バトもいました。
 現在(げんざい)では、通信(つうしん)手段(しゅだん)として伝書(でんしょ)バトが利用(りよう)されることはほとんどなくなり、スポーツとしてのハトのレースが開催(かいさい)されている程度(ていど)です。本来、帰巣(きそう)本能(ほんのう)にすぐれているハトですが、近年になって、レースに出たハトが戻っ(もど )てこないことがだんだん増え(ふ )てきました。優秀(ゆうしゅう)なはずのハトが、なぜか途中(とちゅう)で迷子(まいご)になってしまうのです。この原因(げんいん)は、はっきりとはわかっていませんが、携帯(けいたい)電話などの電磁波(でんじは)が影響(えいきょう)しているという説(せつ)があります。また、ハトの品種(ひんしゅ)改良(かいりょう)を行なった際(さい)、スピードばかりを重視(じゅうし)して、方向(ほうこう)感覚(かんかく)がにぶってしまったのではないかとも言われています。
 それにしても、伝書(でんしょ)バトの郵便(ゆうびん)配達(はいたつ)には、ガソリンなどの燃料(ねんりょう)は一切使わ(つか )ないし、切手も不要(ふよう)です。ごほうびに豆(まめ)をいくつか与えれ(あた  )ば満足(まんぞく)してくれる伝書(でんしょ)バトは、環境(かんきょう)にやさしい、すばらしく優秀(ゆうしゅう)な郵便(ゆうびん)配達員(はいたついん)ではないでしょうか。
 ハトと同じように身近(みぢか)な鳥に、スズメやカラスがいます。どうして伝書(でんしょ)スズメや伝書(でんしょ)カラスがいないかというと、スズメに手紙をつけると重く(おも )て前にすずめないからです。また、カラスに手紙をつけると、途中(とちゅう)でゴミ箱(  ばこ)に寄り(よ )、手紙のことを忘れ(わす )てしまうからっす。

 言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(κ)
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a 長文 2.1週 se
1「もうお肉取っ(と )てもいい?」 
 十月に入るころから、ぼくのうちでは日曜日の夕飯(ゆうはん)はほとんどなべ料理(りょうり)です。毎週となると、あきるのではないかと思われそうですが、なべ料理(りょうり)と言ってもいろいろあるのであきることはありません。2ぼくのお父さんは九州(きゅうしゅう)の博多(はかた)の出身(しゅっしん)なので、 
「やっぱり水炊き(みずた )が一番うまいな。」 
と、いつも胸(むね)を張っ(は )ています。やわらかい鶏(とり)肉と、ものすごくおいしいスープを味わう(あじ  )とぼくもそうだなあと思います。 
 でも、今夜はお姉ちゃんがリクエストした「かいせんキムチなべ」です。3かいせんというのは、海でとれる魚や貝のことですが、ぼくのうちでは「かいせん」の時も豚(ぶた)バラ肉をいっしょに入れます。お母さんに聞いた話では、キムチなべにもいろいろな辛(から)さがあって、大人でもヒーヒー言うくらい辛(から)い本場のチゲなべから、中辛(ちゅうから)マイルドなキムチなべまでランクがあるそうです。4うちは、ぼくがまだあまり辛(から)いのは食べられないので中辛(ちゅうから)マイルドですが、五年生になったら、辛口(からくち)に挑戦(ちょうせん)したいと思っています。
 5なべをやると、部屋(へや)中があたたかい蒸気(じょうき)に包ま(つつ )れて、エアコンもいりません。暑がり(あつ  )のお姉ちゃんは、半そでになってしまうくらいです。なべに材料(ざいりょう)を順番(じゅんばん)に入れたり、煮え(に )たものを教えたりする人を「なべ師(し)」というそうですが、うちのなべ師(し)はお父さんです。6お父さんはみんなに、 
「長ネギはまだだ。いいと言ってからだ。」 
「白菜(はくさい)がとろとろになったぞ。」 
「豆腐(とうふ)をくずさないように取れよ(と  )。」 
「そのはまぐりは、身(み)が取れ(と )ているぞ。」 
「よし、そろそろ雑炊(ぞうすい)だな。」 
などと指図(さしず)します。7その様子(ようす)はちょっといばっていて、まるで会社の部長(ぶちょう)とか社長みたいです。でも、お父さんの言うとおりにやる
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と絶対(ぜったい)失敗(しっぱい)しないのでプロだな、と思います。 
 なべ料理(りょうり)の時は、いつもの夕飯(ゆうはん)よりみんなおしゃべりな気がします。8ぼくがそう言うと、お母さんは、 
「一つのなべをみんなでつつくから、連帯(れんたい)感(かん)が生まれるのよ。」 
と言いました。その時ちょうどおねえちゃんが、
「見て、この白菜(はくさい)も連帯(れんたい)感(かん)が生まれてるよ。」 
と、キムチのスープで赤くなった白菜(はくさい)をつまみあげました。9それは、はしっこがつながっていて、ぼくの家族(かぞく)と同じく四切れが万国旗(こっき)のように連なっ(つら  )ていました。お母さんはあせって、 
「連帯(れんたい)感(かん)が大事(だいじ)!」 
とごまかしました。湯気(ゆげ)の向こう(む  )でお父さんも笑っ(わら )ていました。0

(言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会 φ)
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a 長文 2.2週 se
 1パストゥールは炭疽(たんそ)菌(きん)のいる血液(けつえき)を一滴(いってき)だけとって、これを尿(にょう)の中で培養(ばいよう)しました。数日後、この培養(ばいよう)液(えき)からまた一滴(いってき)だけとって、二番めの培養(ばいよう)液(えき)の中におとしました。
 そして数日後、またおなじことをくりかえしました。
 2いちばん最初(さいしょ)の一滴(いってき)の血液(けつえき)は毎回うすめられているのですから、この作業(さぎょう)をなんどもくりかえしていけば、最初(さいしょ)の一滴(いってき)の中にいた微生物(びせいぶつ)はとうぜん消え(き )てしまうはずです。
 3パストゥールは、このようにして二十回もうすめてきた培養(ばいよう)液(えき)から、ほんの一滴(いってき)だけとって動物(どうぶつ)に注射(ちゅうしゃ)しました。すると、動物(どうぶつ)はたちまち炭疽(たんそ)病(びょう)にかかることがわかりました。4最初(さいしょ)の培養(ばいよう)液(えき)も、最後(さいご)の培養(ばいよう)液(えき)も、病気(びょうき)をおこさせる力はおなじなのです。うすめるたびに炭疽(たんそ)菌(きん)が繁殖(はんしょく)したにちがいありません。そうでなければ、最後(さいご)の培養(ばいよう)液(えき)は何百倍(ばい)にも弱まっているはずですから。
 5こうして、この小さな棒状(ぼうじょう)のものが、炭疽(たんそ)病(びょう)の原因(げんいん)だということがわかりました。
 もし環境(かんきょう)をかえたら、炭疽(たんそ)菌(きん)はどのような反応(はんのう)をしめすのでしょう。
 6パストゥールは、ニワトリが炭疽(たんそ)病(びょう)にかかっている羊(ひつじ)といっしょにいても、決して(けっ  )病気(びょうき)にならないこと、また、ニワトリの体温(たいおん)が高いことを知っていました。7そこで、数羽のニワトリを氷(こおり)につけてひやしてから、炭疽(たんそ)菌(きん)をあたえてみました。どうなるか想像(そうぞう)してみてください。
 8しばらくすると、ニワトリはみんな病気(びょうき)にかかったのです。
 パストゥールはすぐに反対(はんたい)の実験(じっけん)をしてみました。
 ウサギは炭疽(たんそ)病(びょう)にかかりやすい動物(どうぶつ)です。9何匹(びき)かのウサギをあたたかいお湯( ゆ)につけて体温(たいおん)をあげてみました。するとどうでしょう、ウサギは病気(びょうき)にかからなかったのです!0
 「細菌(さいきん)と戦う(たたか )パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社(かいせいしゃ)
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a 長文 2.3週 se
 1そのころ、パストゥールは、ニワトリのコレラを研究(けんきゅう)していました。かれは犯人(はんにん)が8の字のかたちをした細菌(さいきん)であることをつきとめていました。毎日準備(じゅんび)したスープの中で、この細菌(さいきん)を培養(ばいよう)することができたからです。
 2一八七九年の夏の休暇(きゅうか)をパストゥールは故郷(こきょう)のアルボアですごしました。パリに帰ってきたとき、培養(ばいよう)液(えき)のことをすっかり忘れ(わす )ていたことに気がつきました。何週間も放っ(ほう )たままにしていたのです。3かれは助手(じょしゅ)にそれをすてるように命じ(めい )ましたが、ふと思いなおしてともかくニワトリに注射(ちゅうしゃ)してみるようにいいました。細菌(さいきん)はひょっとしたら、まだ毒性(どくせい)をもっているかもしれません。
 ところがどうでしょう。ニワトリは、コレラにかかりませんでした。4実験(じっけん)をくりかえして、こんどは新しいとても強力な培養(ばいよう)液(えき)を注射(ちゅうしゃ)してみました。するとおどろいたことに、ほかのニワトリは病気(びょうき)になったのに、古い培養(ばいよう)液(えき)を注射(ちゅうしゃ)しておいたニワトリは、病気(びょうき)にかかりませんでした。
 5長いあいだにやしなわれた直感(ちょっかん)と、知識(ちしき)と、それに偶然(ぐうぜん)も味方(みかた)して、パストゥールはその生涯(しょうがい)でもっとも重大(じゅうだい)な発見(はっけん)をすることになったのです。
 パストゥールは、ジェンナーの天然痘(てんねんとう)のワクチン接種(せっしゅ)から百年ののちに、新しいかたちの予防(よぼう)接種(せっしゅ)法(ほう)を発見(はっけん)しました。6古くなったコレラ菌(きん)の培養(ばいよう)液(えき)を注射(ちゅうしゃ)されたニワトリは、この病原菌(びょうげんきん)のはいっている新しい培養(ばいよう)液(えき)に抵抗(ていこう)することができたのです。この発見(はっけん)によって、医学(いがく)全体(ぜんたい)が新しく生まれかわることになりました。
 まず獣医(じゅうい)たちがパストゥールの仕事(しごと)を絶賛(ぜっさん)しました。
 7ニワトリコレラを克服(こくふく)したかれは、ふたたび炭疽(たんそ)病(びょう)に興味(きょうみ)をしめしました。ニワトリコレラで幸運(こううん)がかれにあたえてくれたことを、こんどは自分の力でやってみるのです。しっかりとした方法(ほうほう)で、培養(ばいよう)液(えき)の毒性(どくせい)をやわらげようとしました。
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 8炭疽(たんそ)菌(きん)のはいっている培養(ばいよう)液(えき)を、摂氏(せっし)四十三度(ど)で八日間加熱(かねつ)したあとならば、この培養(ばいよう)液(えき)を羊(ひつじ)、ウサギ、モルモットに注射(ちゅうしゃ)しても、動物(どうぶつ)は発病(はつびょう)しません。これらの動物(どうぶつ)の体は、弱められた細菌(さいきん)によって予防(よぼう)されたのです。9この弱められた細菌(さいきん)は、いわば、もとの仲間(なかま)をうらぎって体の味方(みかた)をする、二重(じゅう)スパイの役割(やくわり)をえんじました。ですから、あとになって「猛毒(もうどく)」な炭疽(たんそ)菌(きん)を注射(ちゅうしゃ)しても、平気(へいき)でいることができるのです。0
 こうしてパストゥールは、動物(どうぶつ)に炭疽(たんそ)病(びょう)のワクチンを接種(せっしゅ)する方法(ほうほう)を見つけだしました。
 
 「細菌(さいきん)と戦う(たたか )パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社(かいせいしゃ)
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a 長文 2.4週 se
 約(やく)六千五百万年前に恐竜(きょうりゅう)が絶滅(ぜつめつ)すると、哺乳類(ほにゅうるい)が急速(きゅうそく)に繁栄(はんえい)しはじめました。最初(さいしょ)の哺乳類(ほにゅうるい)は、今のネズミに似(に)ていました。哺乳類(ほにゅうるい)は、体温(たいおん)を一定(いってい)に保つ(たも )しくみを体の中に持っ(も )ていたので、いろいろな環境(かんきょう)で暮らす(く  )ことができ、多くの種類(しゅるい)に分かれていきました。
 アフリカでは、サルの仲間(なかま)である霊長(れいちょう)類(るい)が、さまざまな進化(しんか)をしていきました。その中でも、森の中で暮らし(く  )ていた霊長(れいちょう)類(るい)が、私(わたし)たち人類(じんるい)の祖先(そせん)だと言われています。彼ら(かれ )は、果物(くだもの)などを食べて、一日のほとんどを木の上で過ごし(す  )ていました。木の上は食料(しょくりょう)がたくさんあり、猛獣(もうじゅう)から身(み)を守る(まも )のにも都合(つごう)がよく、暮らし(く  )やすい場所(ばしょ)だったと考えられます。
 森の木の上に住ん(す )でいた霊長(れいちょう)類(るい)が、どのようにして人類(じんるい)の祖先(そせん)に進化(しんか)したのでしょう。これについては、次(つぎ)のような説(せつ)があります。
 ちょうどこのころ、火山が活発(かっぱつ)に活動(かつどう)し、大きな地震(じしん)が起こり(お  )、アフリカ大陸(たいりく)を南北に貫く(つらぬ )「アフリカ大地溝(ちこう)帯(たい)」が形成(けいせい)されました。富士山(ふじさん)よりも標高(ひょうこう)の高い、長い山脈(さんみゃく)ができたことによって、その東側(ひがしがわ)はだんだん乾燥(かんそう)し、もともとジャングルだった場所(ばしょ)が草原に変わっ(か  )ていきました。
 草原で生きていくために、霊長(れいちょう)類(るい)は木から下りなくてはなりませんでした。豊か(ゆた )な森と比べる(くら  )と、草原は食料(しょくりょう)が少ない上、猛獣(もうじゅう)にも見つかりやすく、おそわれる危険(きけん)がありました。獲物(えもの)をつかまえたり、敵(てき)をいち早く見つけて逃げる(に  )ためには、より遠くを見渡す(みわた )必要(ひつよう)があったのでしょう。草原で生活を始め(はじ )た霊長(れいちょう)類(るい)は、二本足で立って歩き始め(はじ )ました。これが人類(じんるい)の祖先(そせん)です。
 直立二足歩行を始め(はじ )たことで、人類(じんるい)の祖先(そせん)は、ほかのサルとは明らかに違う(ちが )道を歩み始め(はじ )ました。彼ら(かれ )は、自由(じゆう)になった前足を
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手として使う(つか )ことができるようになりました。今から三百万年前の猿人(えんじん)、アウストラロピテクスは、石器(せっき)を使っ(つか )ていました。これが道具(どうぐ)の始まり(はじ  )です。また、約(やく)五十万年前の原人は、火を使っ(つか )て生活していたことがわかっています。その後に出現(しゅつげん)した旧(きゅう)人のネアンデルタール人は、死者(ししゃ)を埋葬(まいそう)する習慣(しゅうかん)がありました。
 約(やく)四万年前に生活していた新人のクロマニヨン人は、現在(げんざい)の人類(じんるい)とほとんど変わら(か  )ない姿(すがた)をしていました。彼ら(かれ )はすでに言葉(ことば)を話し、協力(きょうりょく)して狩り(か )や漁(りょう)をして暮らし(く  )ていたのです。クロマニヨン人は、ナイフ、刀などの石器(せっき)や、美しく(うつく  )彫刻(ちょうこく)された骨角(こっかく)器(き)を作り、槍(やり)や弓矢を発明(はつめい)して集団(しゅうだん)で狩り(か )を行なっていました。わなをしかけることで、マンモスやシカなどの巨大(きょだい)な獲物(えもの)もつかまえることができました。彼ら(かれ )の暮らし(く  )ていた洞くつ(どう  )には、今も、狩り(か )の成功(せいこう)を祈っ(いの )て描い(えが )たと思われる動物(どうぶつ)の絵が残っ(のこ )ています。
 このように、アフリカ大地溝(ちこう)帯(たい)の東側(ひがしがわ)の厳しい(きび  )環境(かんきょう)が、人類(じんるい)の祖先(そせん)を生み出しましたが、西側(にしがわ)ではどうだったのでしょうか。食料(しょくりょう)が豊富(ほうふ)なジャングルの中で暮らし(く  )てきた霊長(れいちょう)類(るい)は、現在(げんざい)まであまり変わら(か  )ない姿(すがた)を保っ(たも )てきました。これが、ゴリラ、チンパンジー、ボノボなどの、人類(じんるい)と最も(もっと )似かよっ(に   )た生物(せいぶつ)とされている類人猿(るいじんえん)です。
 人間は木から下りることによって、サルと分かれました。しかし、今でも昔(むかし)の時代(じだい)が懐かしく(なつ   )なることがあります。公園の木を見るとふと登り(のぼ )たくなったり、木の上でキャッキャッと叫ん(さけ )でみたくなったりするのはそのためです。

 言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(κ)
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a 長文 3.1週 se
1「ハッピバースデートゥーユー。」 
お誕生(たんじょう)日が来るたび、私(わたし)はお母さんから自分の生まれた時のお話を聞きます。毎年同じ話を聞いても、なぜかまた聞きたくなるのです。お母さんは、 
「あなたが生まれたときはねえ。」 
となつかしそうな顔をします。2そして、 
「なかなか逆子(さかご)がなおらなくて、逆子(さかご)体操(たいそう)をいっしょうけんめいしたけれど、直前までなおらなかったの。でも、生まれそうになっておなかが痛く(いた )なって病院(びょういん)に行くと、なぜかくるっとなおっていたのよ。」 
と笑い(わら )ます。3私(わたし)は、赤ちゃんがおなかの羊水(ようすい)の中でくるっとシンクロナイズドスイミングみたいにまわっているのを想像(そうぞう)します。 
 ときどき、お父さんも話に入ってきて、 
「あの時は初めて(はじ  )の体験(たいけん)だったから、お父さんもあたふたしたよ。4お母さんは痛い(いた )、痛い(いた )と言うし、呼び出し(よ だ )ベルを押し(お )てもお医者(いしゃ)さんがなかなか来てくれないし。 生まれてきちゃったらどうしようと生きた心地がしなかったよ。」 
などと早口でまくし立てます。5その様子(ようす)を見ると本当にあせっていた様子(ようす)が想像(そうぞう)できます。 
 おばあちゃんにも聞きました。 
「それがねえ、いとこのけいちゃんやしんちゃんと比べ(くら )ても、信じ(しん )られないくらい大きな産声(うぶごえ)だったのよ。6おばあちゃんたちは廊下(ろうか)で今か今かと待っ(ま )ていたのだけれど、厚い(あつ )分べん室の扉(とびら)をつきぬけるような元気なオギャーだったわよ。」 
と大笑い(おおわら )していました。7そして 
「先生や看護(かんご)師(し)さんが、もう目をあいてますよと言ったのも忘れ(わす )られないわねえ。」 
と付け加え(つ くわ )ました。すると、お母さんたら 
「そうそう。それからね、生まれたとたん、ぴゅーっとオシッコしたんだったわ。」 
などと言うのです。8私(わたし)はこの話だけははずかしいので、いやだ
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なあと思います。 
 去年(きょねん)まではあまりわからなかったけれど、今はこんな風に私(わたし)の生まれたときの話をみんなが覚え(おぼ )ていてくれて、聞かせてくれるというのは幸せ(しあわ )なことだなあと思います。9そして生まれたとき、みんなに見守ら(みまも )れていたのだなあとあたたかい気持ち(きも )になります。ときどき、お父さんやお母さんに反抗(はんこう)したり、わがままなことを言ったりしてしまう私(わたし)ですが、この話を思い出すと、やっぱりお父さんとお母さんの子でよかったなあと思います。0

(言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会 φ)
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a 長文 3.2週 se
 1パストゥールは狂犬病(きょうけんびょう)の研究(けんきゅう)からはじめました。年に千人くらいの人しか死な(し )ないのですが、狂犬病(きょうけんびょう)は、おそろしい病気(びょうき)です。
 なぜこの病気(びょうき)を選ん(えら )だかというと、狂犬病(きょうけんびょう)はだれもが疑わ(うたが )ない伝染病(でんせんびょう)であったことと、この病気(びょうき)が人間の病気(びょうき)である前に犬、オオカミ、キツネ、猫(ねこ)、ウサギなどの動物(どうぶつ)の病気(びょうき)だったからです。2もちろん人間の体をつかって実験(じっけん)することなどできませんが、狂犬病(きょうけんびょう)だと動物(どうぶつ)を使っ(つか )た実験(じっけん)ができるのです。
 しかしこの選択(せんたく)によって、大きな問題(もんだい)にぶつかることになりました。3狂犬病(きょうけんびょう)の原因(げんいん)となっている微生物(びせいぶつ)は、顕微鏡(けんびきょう)ですら見ることができないほど小さなものだったのです。それはろ過( か)性(せい)のウイルスとよばれるもので、つまり、もっとも目のこまかいろ紙も通ってしまうウイルスなのです。
 4パストゥールは病原菌(びょうげんきん)を見ることができないまま研究(けんきゅう)をつづけることになりました。もっと悪い(わる )ことには、このウイルスは、大きな細菌(さいきん)のようにじゃがいもやスープや尿(にょう)の中で培養(ばいよう)することができません。5動物(どうぶつ)の体だけが繁殖(はんしょく)できる場所(ばしょ)でした。あきらめたほうがりこうかもしれません。でも、「幸運(こううん)は大胆(だいたん)な人にほほえむ」ということばをみなさんはもう知っていますね。
 パストゥールは犬小屋(こや)をつくって、つぎつぎと犬に狂犬病(きょうけんびょう)をうつしていきました。6狂犬病(きょうけんびょう)にかかった犬の脳(のう)をすこしとっては、つぎの犬の脳(のう)に注射(ちゅうしゃ)するのです。
 十日後、この犬はあわを吹い(ふ )て、はげしくほえはじめ、そしてもがき苦しん(くる  )で、死ん(し )でいきました。そのあとは、今までの方法(ほうほう)を採用(さいよう)しました。7微生物(びせいぶつ)を培養(ばいよう)して、ひとつの培養基(ばいようき)から、他(た)の培養基(ばいようき)へ微生物(びせいぶつ)をうつしていくあのやり方です。こうして、狂犬病(きょうけんびょう)の培養基(ばいようき)をいつでも手に入れることができるようになったのです。
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 つぎに、ウイルスを弱める方法(ほうほう)を見つけなければなりません。8害(がい)のないものにするのですが、病気(びょうき)から動物(どうぶつ)の体を守る(まも )ことができるものでなければなりません。かれは、むずかしいけれども効果(こうか)的(てき)な方法(ほうほう)をとりいれました。犬のウイルスをサルにうつすと、狂犬病(きょうけんびょう)がすこし軽く(かる )なるのです。9このサルから病原(びょうげん)ウイルスをとって、またべつの犬にうつします。するとこの犬は毒性(どくせい)の強い狂犬病(きょうけんびょう)のウイルスに対して( たい  )も免疫(めんえき)になります。反対(はんたい)に犬の狂犬病(きょうけんびょう)をウサギやモルモットにうつすと、もっと毒性(どくせい)の強い狂犬病(きょうけんびょう)になりました。
 0パストゥールはまもなく、自分の実験(じっけん)室で、とても弱いものからたいへん危険(きけん)なものまで、いろいろな強さの狂犬病(きょうけんびょう)ウイルスを持つ(も )ことになりました。一八八四年八月、公式(こうしき)の委員(いいん)会でパストゥールは、毒性(どくせい)を弱めた狂犬病(きょうけんびょう)ウイルスで免疫(めんえき)になった二十三匹(ひき)の犬は、猛毒(もうどく)なウイルスを注射(ちゅうしゃ)しても狂犬病(きょうけんびょう)にかからず、免疫(めんえき)にされなかった犬は、ほとんど狂犬病(きょうけんびょう)にかかったことを説明(せつめい)しました。
 見えないウイルスを自由(じゆう)にあやつることが可能(かのう)になったこの研究(けんきゅう)は、画期的(かっきてき)なものでした。
 
 「細菌(さいきん)と戦う(たたか )パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社(かいせいしゃ)
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a 長文 3.3週 se
 1事件(じけん)がおこったのは、今から約(やく)百年前の一八八五年七月六日のことでした。二日前に狂犬病(きょうけんびょう)の犬にかまれたかわいそうな犠牲(ぎせい)者(しゃ)が、かれらの実験(じっけん)室につれてこられました。ジョゼフ=メイステルという少年です。
 2パストゥールははじめ少年の治療(ちりょう)をことわりました。かれの方法(ほうほう)は、まだ治療(ちりょう)に使える(つか  )ような段階(だんかい)ではなかったからです。しかし、友人のビュルパン医師(いし)とグランシェール医師(いし)が、かれを説得(せっとく)しました。なにもしなくても少年はまちがいなく死ん(し )でしまいます。3それは治療(ちりょう)してもしなくても、これ以上(いじょう)悪く(わる )なることはないということでした。
 パストゥールは決心(けっしん)しました。四十年という長い研究(けんきゅう)のあと、パストゥールはついに人間にたどりつきました。
 4狂犬病(きょうけんびょう)はかならず死ぬ(し )病気(びょうき)でした。
 しかし、パストゥールにとっては都合(つごう)のよいこともありました。それは、狂犬病(きょうけんびょう)の犬にかまれてから、実際(じっさい)に狂犬病(きょうけんびょう)の症状(しょうじょう)があらわれるまでに一か月くらい時間がかかることです。5この一か月のあいだに、パストゥールはジョゼフ少年に、毒性(どくせい)の弱いウイルスを接種(せっしゅ)して予防(よぼう)し、次に(つぎ )接種(せっしゅ)するもう少し強いウイルスに対し( たい )、免疫(めんえき)にすることができます。
 6七月六日の夜に、グランシェール医師(いし)は、できるだけ弱めた脊髄(せきずい)液(えき)をつかってワクチンを接種(せっしゅ)しました。それから毎日すこしずつ強いものを接種(せっしゅ)していきました。十日め、もっとも毒性(どくせい)の強い狂犬病(きょうけんびょう)ウイルスを接種(せっしゅ)しました。
 7このときの不安(ふあん)がどんなに大きいものだったか、みなさん、想像(そうぞう)することができますか。
 この病原(びょうげん)ウイルスは、とても毒性(どくせい)が強いので、それだけでも少年の命(いのち)をうばってしまうはずです。8しかし、さきに少年の体内にはいった病原(びょうげん)ウイルスのあとを追っ(お )てはいりこんだ、この強い
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狂犬病(きょうけんびょう)ウイルスは、目的(もくてき)をかえてしまいました! 9殺さ(ころ )ないで、ぎゃくに少年を守っ(まも )たのです。症状(しょうじょう)があらわれるはずであった八月ごろには、ジョゼフ少年の体は病気(びょうき)に対して( たい  )抵抗(ていこう)できる状態(じょうたい)、つまり免疫(めんえき)になっていました。0
 
 「細菌(さいきん)と戦う(たたか )パストゥール」(ブラーノ=ラトゥール)偕成社(かいせいしゃ)
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a 長文 3.4週 se
 時計が動く(うご )には電池が必要(ひつよう)なように、私(わたし)たちが生きて活動(かつどう)するためには、エネルギーが必要(ひつよう)です。そのエネルギーを、私(わたし)たちはご飯( はん)を食べることで体に取り込ん(と こ )でいます。お米やパンの中に多く含ま(ふく )れているデンプンは、糖(とう)質(しつ)と呼ば(よ )れるものの仲間(なかま)で、人間の体の大事(だいじ)な栄養(えいよう)の素(もと)です。砂糖(さとう)も、この糖(とう)質(しつ)の仲間(なかま)です。デンプンも砂糖(さとう)も、いちばん小さい単(たん)糖類(とうるい)というのものに分解(ぶんかい)されて体に吸収(きゅうしゅう)され、私(わたし)たちのエネルギーになりますが、脳(のう)や神経(しんけい)は、単(たん)糖類(とうるい)の一種(いっしゅ)であるブドウ糖(   とう)だけしかエネルギーとして利用(りよう)できません。つまり、脳(のう)や神経(しんけい)を働か(はたら )せるために、糖(とう)質(しつ)はなくてはならないものなのです。脳(のう)や神経(しんけい)は、砂糖(さとう)のおかげで、さっと動く(うご )ことができるというわけです。
 最近(さいきん)では「太る」とか、「糖尿(とうにょう)病(びょう)になる」とか、「虫歯(むしば)になる」などと言われて、ちょっと悪者(わるもの)扱い(あつか )の砂糖(さとう)ですが、じつは私(わたし)たちにとってはなくてはならない調味(ちょうみ)料(りょう)です。昔(むかし)のヨーロッパでは、栄養(えいよう)豊富(ほうふ)な薬(くすり)として使わ(つか )れていたこともありました。昔(むかし)、砂糖(さとう)は、現在(げんざい)の石油(せきゆ)のように輸入(ゆにゅう)しなければならない高価(こうか)な食品(しょくひん)だったのです。また、日本でも、江戸(えど)時代(じだい)ごろから砂糖(さとう)を輸入(ゆにゅう)し始め(はじ )ましたが、最初(さいしょ)のころ、砂糖(さとう)はやはり薬(くすり)として高い値段(ねだん)で輸入(ゆにゅう)されていました。
 どうして砂糖(さとう)を輸入(ゆにゅう)しなければならなかったかというと、砂糖(さとう)は最初(さいしょ)、サトウキビから作られていたからです。サトウキビというのはイネ科の植物(しょくぶつ)で、熱帯(ねったい)や亜熱帯(あねったい)などの暑い(あつ )地方でしか栽培(さいばい)できないので、ヨーロッパなどでは作ることができませんでした。日本では、現在(げんざい)は沖縄(おきなわ)と南西諸島(なんせいしょとう)で作られています。
 サトウキビは、高さが人間の背(せ)の倍(ばい)ぐらい、茎(くき)の太さが手首ぐらいの、竹とススキを足して二で割っ(わ )たような姿(すがた)をしています。
 サトウキビは暑い(あつ )地方でしかとれなかったので、ヨーロッパで力
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のあったスペインやポルトガル、イギリスやフランスなどは、そういう暑い(あつ )地方を自分たちの植民(しょくみん)地にしました。そして、その地方の人々や、アフリカから奴隷(どれい)として連れ(つ )てきた人たちを働か(はたら )せて、砂糖(さとう)を作らせたのです。
 しかし、そういう植民(しょくみん)地を持た(も )ない国は、サトウキビ以外(いがい)のものから砂糖(さとう)を作る研究(けんきゅう)を進め(すす )ました。そして、今のドイツであるプロイセンの研究(けんきゅう)者(しゃ)が、サトウダイコンにも砂糖(さとう)が含ま(ふく )れていることを発見(はっけん)しました。フランスのナポレオンがサトウダイコンの栽培(さいばい)に力を入れると、砂糖(さとう)はヨーロッパ中に広まりました。
 サトウダイコンは、テンサイやビートとも呼ば(よ )れ、カブに似(に)た植物(しょくぶつ)で、この根(ね)から砂糖(さとう)をとることができます。サトウキビと違っ(ちが )て、涼しい(すず  )気候(きこう)でよく育つ(そだ )ので、日本では北海道で栽培(さいばい)されています。ロシア民話(みんわ)に出てくるカブは、たいていはこのサトウダイコンのことです。
 現在(げんざい)、砂糖(さとう)の約(やく)七割(わり)は、やはりサトウキビから作られています。残り(のこ )の三割(わり)が、サトウダイコンから作られています。また、サトウカエデの幹(みき)に穴(あな)を開(あ)け、そこから出てくる液(えき)を集め(あつ )て煮詰め(につ )たものがメープルシロップで、カナダのものが有名(ゆうめい)です。
 「宿題(しゅくだい)しなさい。」と言われて、「ちょっと待っ(ま )て。おやつを食べてから。」というのは、脳(のう)に栄養(えいよう)を与え(あた )てよく働く(はたら )ようにするという意味(いみ)で正しいことです。「腹(はら)が減っ(へ )ては戦(いくさ)はできぬ」と言いますが、それは脳(のう)にとっても同じです。
 砂糖(さとう)は今、サトウキビやサトウダイコンやサトウカエデから取れ(と )ますが、将来(しょうらい)、品種(ひんしゅ)改良(かいりょう)が進ん(すす )で、ニンジンやゴボウやショウガからも取れる(と  )ようになるかもしれません。 
「どうですか。ショウガさん。」
「さあ、どうでしょうが。」
 言葉(ことば)の森長文(ちょうぶん)作成(さくせい)委員(いいん)会(τ)
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