1「ああっ、これ、だれがやったの!」
お母さんのさけび声が聞こえます。だれかって、犯人はぼくだとわかっているのにいつもそんなふうに言うのです。
「うわあ、こんなことするのは、シゲしかいない。」
2続いて聞こえるお姉ちゃんの声もいつもどおりです。二人がキッチンでぼくのことを言っているのが聞こえます。ぼくは、ドラキュラのマスクをかぶって階段のかげにひそんでいて、いつ飛び出して驚かせようかと考えていたのですが、ちょっとひるんでしまいました。3ついにお姉ちゃんが、
「こうなったら、お父さんに言いつけるしかない。」
と言い出しました。
ぼくは、いたずらが大好きです。学校でもうちでも、年がら年中、いたずらのネタを考えています。4人がびっくりしたり、不思議そうな顔をしたりするのを見ると、とてもうれしくなります。だから、先生や家族にどんなに叱られても、また次のいたずらを思いついてしまうのです。
5昨日は、トイレットペーパーの内側にゴムでできたトカゲをはさんで、ペーパーを引き出すとトカゲが落ちてくるようにしておきました。
また、夜には、キッチンの塩と砂糖の入れ物のフタをとりかえておきました。6塩が青で、砂糖が赤のフタなのを逆にしておいたのです。
そして、今日のいたずらは、お姉ちゃんの問題集のカバーを全科目つけかえたのと、お母さんのショッピングバッグに小さい鉄アレイを隠したことです。
さて、お父さんが出張から帰ってきました。7お姉ちゃんは真っ先にぼくにされたいたずらを言いつけにいきます。
お父さんは、笑いながらそれを聞いていましたが、心配でのぞいていたぼくに気がつくと、
「おっ、いたずら小僧がいたぞ。」
と、ぼくに手招きをしました。
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