1十二月三日、大事件が起きました。ぼくの下の前歯が抜けたのです。友達はみんな抜けていたのに、ぼくだけ、まだ一本も抜けていませんでした。
その歯は、前から少しぐらぐらしていました。2歯が抜ける前の日から、走った震動でぐらぐらしてしまうぐらい揺れていました。だから、ぼくだけ、朝ごはんをおかゆにしてもらいました。おかゆはあまり食べた気がしません。ぼくは何杯も食べました。
3朝ごはんはなんとか食べられたけれど、心配なのは給食です。その日の献立はきびなごフライでした。まるで歯医者さんに行ったときみたいに大きな口を開け、慎重に口に入れました。そんなに気をつけて食べたのに、ぐらぐらの歯にがつんと当たってしまいました。4とても痛かったです。ぼくは、おなかがぺこぺこでしたが、それからは、もう歯が気になってあまり食べられませんでした。
ぼくは、一回も給食を残したことがありません。それなのに、今日は残したので、友達が心配してくれました。5大ちゃんは、
「自然に抜けるまで待った方がいいよ。」
と言いました。てっちゃんは、
「ぼくは、お兄ちゃんとケンカしてたら腕がぶつかって抜けたよ。」
と言いました。その話を聞いていた女の子たちも、自分が抜けたときのことを教えてくれました。6歯医者さんで抜いてもらった子もいました。ぼくがいちばんうらやましいなと思ったのは、朝起きたら抜けていたという話です。どうしてかというと、寝ている間だったら痛くてもきっと気がつかないなと思うからです。
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