1現代文明が、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料に依存し、化石燃料を利用して成り立っているのに対して、江戸文化は、太陽エネルギーだけを使って成り立っていた。具体的にいうなら、徹底的に植物に依存し、植物を利用した時代だった。
2もちろん、植物以外の資源を利用する漁業や、鉱物を加工して金属や陶磁器を作る産業も発達したが、中心になるのはさまざまな形での植物の利用だった。3植物を育てる重要な作業にも、人力とわずかな家畜の力しか使わなかったが、考えてみると、人間は去年の太陽で育った穀物などを食べて動いているし、馬や牛も去年か今年の太陽で育った穀物やわら、草などで生きているから、結局は、産業も過去一、二年の太陽エネルギーだけを利用して成り立っていたことになる。
4今のように石油で暖めるハウス栽培をすれば、真冬でも胡瓜やトマトを出荷できるし、大きな船で遠洋漁業に出れば、日本では獲れない魚を獲って来ることもできる。5ところが、太陽エネルギーだけを利用して植物栽培や漁業をやっていた当時は、それぞれの土地柄に合った作物を育て、季節の海産物を利用するほかなかった。
6江戸時代の産業が今の工業と根本的に違うのは、さまざまな物産の生産から加工まで、すべて人手によっていた点である。つまり、原料を育てるのも太陽エネルギーだけなら、それを加工して製品化するのも、太陽エネルギーの範囲だけで行っていたのだ。7力仕事や面倒なことはほとんど機械が肩代わりしてくれる現代の作業に比べると、人力だけが動力の産業は、能率が悪く生産力も低い。
8しかし、手仕事による産業が、何でも機械で処理する近代産業に比べて、けっして劣っているわけではない。手仕事は、不便なのではなく「小さな便利さ」の上に成り立っている別の種類の産業であり、生産量だけで近代産業と比べるのは間違っている。
9もちろん、手仕事では大量生産ができないから利益も少なくて、大企業にはなり得ないが、手仕事では需要ぎりぎりの量しか作れないため、生産過剰になる心配がない。0ところが、大量生産を
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