KotobanomoriNo.760
言葉の森新聞 |
2002年8月1週号
文責 中根克明(森川林)
難しい長文
「長文が難しく、読めない漢字や意味のわからない言葉があちこちに出てくるので、1ページ読むのに30分も40分もかかり、負担です」というご意見をいただきました。
長文を読むのが難しいのは最初の数週間で、二、三回読んだあとは漢字にもなれて、ほとんどの子がすらすら読めるようになってきます。
また、言葉の森の長文は、漢字のルビについては、できるだけふらないようにしています。というのは、わずか8ページの長文ですから、くりかえし読んでいると、漢字ごと読めるようになるからです。生徒によっては、自分でふりがなをふって読んでいる子もいますが、そういう子には、ふりがなをつけないで漢字ごと読めるようにしたほうがいいとアドバイスをしています。これは音符を読むときに「ドレミ」などと書かずに音符そのものを読めるようにした方が、あとからの勉強がはかどるのと同じ理由です。
初めは「こんなのが読めるのだろうか」と思っていた長文が、学期の終わりごろになると驚くほど楽に読めるようになってきます。そのときに、お母さんが子供に、「最初は、あんなに苦労したのに、やはり繰り返しやっているとできるようになるんだね」と強く印象づけるように言ってくださると、その後の勉強にプラスになります。一度成功体験を積むと、また次の学期に難しい長文が出てきたときに、子供自身が、「またすぐにできるようになる」と前向きの姿勢で取り組めるようになるからです。
我が家の経験では、子供は一般に、易しいものを楽にやるよりも、難しいものを感心されながらやる方が元気に取り組めたようです。
子供が「難しくて嫌だなあ」と思いかけたときに、お母さんが「本当に、こんな難しいのを読んで大丈夫かしら」と不安を感じて対応すると、勉強がだんだん暗くなってきます。お母さん自身が子供の不安を吹き飛ばして、「わあ! こんなに難しいのを読むんだ。すごいなあ」と明るく対応すると、勉強は明るくなってくると思います。
音読の効果
最近、さまざまなところで音読や暗唱の効果が言われるようになってきました。声を出して文章を読むことは、脳の活性化にも役立つようです。これまで、音読ということに半信半疑だった方も、実際に試してみて音読の効果を実感するようになってきました。
しかし逆に、「学校で教科書音読の宿題が出るので、言葉の森の長文音読まで手が回らない」というような状況も出てきているようです。
音読をすることは大事ですが、何を音読するかを選択することも更に大事です。単に、日本の伝統的な音読教育の復活ということで音読をとらえていると、昔ながらの古典を読むことそのものが目的になってしまいます。「声に出して読みたい日本語」(斎藤孝著)は、音読の役割を多くの人に知らせたという点でいい本でしたが、言葉の森であまり評価しなかったのは、内容が雑然と昔からの有名な文章を並べたものだったからです。
私たちが音読の役割を考える場合、それは文章を書く力とセットでとらえています。現代において文章を書く力とは、第一に正確な説明文・意見文をしっかり書く力です。ところが、日本の国語教育は、文学的な文章を味わう教育にかなり偏っています。更に、俳句や短歌のような短い詩で、言葉の微妙なニュアンスを察し合う力が国語力の重要な一部となっています。文学や俳句や短歌を味わう力はもちろん大切ですが、それは国語教育というよりも日本文化の教育として位置づけられるべきものです。
江戸時代までの音読教育は、論語孟子などの四書五経が中心でした。ところが、これこそが当時においては説明文・意見文の典型的な教材でした。明治時代までの知識人は、論語や孟子で培った説明文・意見文の思考力の上に、日本の近代化を思索することができたのです。
ところが、日本の国語教育は、明治以降大きく文学的なものに偏っていきます。しかも、当時の文学の多くが、科学に疎い文学者によって担われたために、日本の文学は近代の科学と対峙するほどのたくましさを持たず、個人の感覚世界を重視する私小説的なものを中心にして成長していきました。現代の国語教育には、この私小説の文学教育が色濃く反映されているのです。
ですから、音読の役割を考えるときにまず大事なことは、子供たちが将来社会人になったときに、理路整然と自分の考えを説明できるような表現力をつける基盤となる文章を読むということです。しかし、それは、味気ない文章を読むということではありません。説明文・意見文でありながら、人の心を打つような名文は数多くあります。
問題は、まだ、現代にふさわしい説明文・意見文の教材が充分に開発されていないことです。言葉の森の長文は、このような教材を目指して編集していきたいと思っています。
項目指導の意義
小4の生徒の保護者から次のようなご質問をいただきました。
「『心の中で思ったこと』の評価で『心』がキーワードになっていますが、これは毎回入れなければならないのでしょうか。子供に、『思いました』だけでもいいのではと言われてしまいました」
「心の中で思ったこと」は、「口には出さない(出せない)が、心の中でそっと思ったことを書く」という練習です。
小学5年生の課題から、考えて書く作文が中心になります。小学3・4年生は、考える作文の一歩手前の練習で、情景描写、心情描写などを工夫して書く練習を中心にしています。「心の中で思ったこと」も、その心情描写の練習の一環です。
ただし、「心の中で思ったこと」を入れたから上手な作文になるということではありません。「心の中で思ったこと」を意識的に入れる力をつけるというのが項目指導の目的です。
項目指導のキーワードと指導内容の関係は次のようになっています。
┏━━━━━┓この場合、指導しにくさには二種類あります。
(2?1)キーワードが易しすぎる場合
例えば、内容が「自分だけが思ったこと」で、キーワードが「思」というケースです。
(2?2)キーワードが難しすぎる場合
例えば、内容が「心の中で思ったこと」で、キーワードを「心」という場合です。
現在の項目表は、難しすぎるよりも易しすぎる方がよいという方針で編集していますが、「心」などは少し難しい部類に入ると思います。
指導の項目とキーワードは、今後改善していきますので、ご意見ご要望がありましたらお寄せください。
チカラシバ(小4)の長文にミスプリント
7月1週の長文で、「ランプ屋のしようばいはいらなくなるだろう」となっているのは、「しようばい→しょうばい」のミスプリントです。
なお、8月2週の長文で、「海蔵(かいぞう)さんは半田(はんだ)の町に住んでいる地主の家へやっていきました。」となっているところは原文のままです。
9月1週の長文で、「行列の先頭には黒い服、黒と黄の帽子をかむった兵士が一人いました。」も原文のままです。
「やってきました」「かぶった」の方が一般的な表現ですが、原文のままにしておきました。
光る表現(幼長?小3)
2002年8月1週号●ななみさん
(いまの/幼長)の作文より(メグ先生/7.2週)ちはるちゃんはわたしのいもうとです。おととしの12月15日にうまれました。ちはるちゃんがうまれるまえに、あかちゃんがほしくてわたしは、かしもりじんじゃのかみさまと、いなばじんじゃのかみさまと、みえじかんのんさまに、「あかちゃんをください!!あかちゃんをください!!」とてをあわせていっしょうけんめいおねがいをしました。【評】ななみちゃんがいっしょうけんめいおねがいしたから、かみさまがねがいをかなえてくださったのね。
●ななみさん
(いまの/幼長)の作文より(メグ先生/7.3週)わたしもまほうのほうきでそらをとびたいとおもいます。もしもとべたら、みんなをのせてディズニーシーにつれていってあげます。いそがしいときでも、だいがくびょういんにママをちょうとっきゅうのひかりごうのようにつれていってあげます。【評】想像(そうぞう)したことがかけたね。たとえもじょうずです。ななみちゃんはやさしいですね。
●くるみさん
(いのね/小1)の作文より(メグ先生/7.3週)こわいとおもっていたことも、まるでおばけのようにきえてしまいました。【評】じょうずなたとえです。
●みほろさん
(いひり/小1)の作文より(ひまわり先生/7.1週)わたしは、ほんとうのパンやさんになりたいです。いっぱいのおきゃくさんにたべてもらって「おいしい」とよろこんでほしいです。ぎょうれつができるほどおきゃくさんがいっぱいきたらいいのになあ。でもほんとうはわたしがパンをだいすきだからたべたくてなりたいのです。はやくおとなになってパンやさんのしゅぎょうをしたいとおもいます。 【評】しゅぎょうはたいへんだと思うけれど、ぎょうれつのできるおみせをめざしてがんばってね。先生もみほろちゃんのおみせに、パンをかいにいきたいなあ。
●耀子さん
(いむか/小1)の作文より(メグ先生/7.3週)(ゲームで)わたしはおねえちゃまにかちました。おねえちゃまがくやしそうなかおをしていました。まるでらいおんみたいにこわいかおをしていました。(中略)パパはかつとうれしそうにてをあげています。【評】おねえちゃまにはちょっとかわいそうなたとえですが、おねえちゃまやパパのようすをうまくあらわすことができましたね。(^o^)丿
●ミュウツーさん
(いらい/小1)の作文より(メグ先生/7.4週)おばあちゃんのいえの二かいでおにいちゃんとキャッチボールをしました。ボールは、まるでつきのようでした。もっとれんしゅうして、じょうずになげられるようになりたいとおもいました。【評】たとえとおもったことがしっかりかけたね。
●舞さん
(いらき/小1)の作文より(メグ先生/7.3週)きょうまいは、おにもつがおおかったです。なんでかというと、まいはおにもつをもってかえってなかったんです。(中略)まるでおひっこしみたいでした。てがあかくなっちゃいました。おうちについたらつかれちゃいました。おなかぺこぺこでした。【評】あつい中、たくさんのにもつをもってかえるのはたいへんだったでしょう? こんどからは、にもつをためないようにね(笑)。
●千瑛さん
(いりの/小1)の作文より(けいこ先生/7.2週)わたしは(びょうきのきんぎょが)しんぱいでたまりません。「いたくない。だいじょうぶ。」と、わたしはいきます。きんぎょにききます。きんぎょは「ぶつぶつがいたいよ。」と、いいます。わたしは、かわいそうでたまりません。 評:きららちゃんはきんぎょと話ができるのね。早くきんぎょのびょうきがなおるといいね。
●大地さん
(いろは/小1)の作文より(うさぎ先生/7.2週)クワガタ虫とカブト虫がたたかったらどうなるかなーまるでクワガタ虫はプロレス、カブトはボクシング、せんしゅみたいだなー【評】さすが男の子。昆虫(こんちゅう)博士(はかせ)だね。この「虫のことをよく知ってるたとえ」は、まねができないなあ。
●りょうさん
(いつみ/小2)の作文より(みのり先生/7.2週)もし、きそ川のていぼうがはんらんしたら、ぼくはどうやって何をもってにげようかな。けんちゃんとちょ金箱をもってビニールプールでにげようかな。でも、そのままながされて行方ふめいになってしまったらどうしようかな。〔評〕ごめんね。思わず笑ってしまいました^^;
●マッキーさん
(いなく/小2)の作文より(メグ先生/7.2週)わたしは、まるで、海の小さな魚をおそう、おそろしいさめのようにいきおいよくおよぎました。(中略)私は、さっきのはくりょくでおよぎました。先生のアドバイスをわすれないようにおよぎました。そのとき、わたしはおよげました。私は心の中で、「やったあ。」とさけぶと、プールから上がってとびはねました。【評】おめでとう!きっとさめになったつもりで、つよい気もちでおよいだのがよかったのね。
●マッキーさん
(いなく/小2)の作文より(メグ先生/7.3週)バナナちゃん(インコ)が食事をするときは、ぱくぱく一口ずつ食べつづけて、食べおわると、ピーとひと声なきます。【評】さいごにひと声なくところがかわいいなあ。
●よもぎさん
(いはや/小2)の作文より(ふじのみや先生/7.2週)「うまれてはじめてせいざ見た。」といったらおかあさんが、「そう、よかったね。」とびっくりしたようなかおでいいました。 【評】<●声・顔・動作>を、「(かぎかっこ)」のあとにいれたので、ようすがよくわかります。
●千波さん
(いはわ/小2)の作文より(みち先生/7.1週)きょうは、みんなにしんぱいをかけたりほけん室につれていってもらったりして人まかせすぎたみたいでした。<評>やさしくてしんせつなおともだちの気持ちが通い合った良いクラスですね。
●千波さん
(いはわ/小2)の作文より(みち先生/7.3週)お兄ちゃんがうったバトミントンのシャトルが、「ポン」とまるでポップコーンのようにはじける音をだしてとんでいったのでびっくりしました。<評> ぴったりのたとえです。「はじける」ということばから勢いを感じます。これからもどんどんたとえを使っていきましょうね。
光る表現(小4?社)
2002年8月1週号●瑞幾さん
(いおね/小4)の作文より(はるな先生/7.2週)お父様はアイスクリームをつくっています。世界でいちばんおいしいです。でも、味が毎日ちがいます。アイスクリームの味がちがうみたいに、お父様の顔の表情もちがいます。ぼくは、こういうお父様がすきです。(講評);なかなか、ユニークなたとえかたですね。おいしいアイスクリームをつくられる、たくましくてすごくおもしろいお父様を、とても尊敬し、大好きだということが、あなたの作文のなかから、強く感じ取ることができました。
●ラーメンさん
(いおら/小4)の作文より(ふじのみや先生/7.1週)その時はまるでライオンがトイレに行きたいのを歯を食いしばってじゅ業を受けているかのようだった。 【評】ウズウズしながら我慢しているつらい気持ちを、自分だけのたとえにして書けたね。
●アッキーさん
(いそか/小4)の作文より(ももんが先生/7.1週)私がいつも「なにしてあそぶ?」ときくと、妹が「せんたっきだっよーん。」とうれしそうにわらいながらやっています。そして、だいぶあそんだので、私が「ようたん、そろそろあがろっか。いっぱいあそんだからね。」と言うと、妹が「いやだ。もうちょっと遊ぶ。」というので、しかたなくあそんでいます。でも、妹といっしょにおふろに入ると、妹がたのしくしてくれて、いやなことがあってもふっとばしてくれるので、好きです。【評】かぎかっこのことばが、生き生きと書けています。このように、その人のことばを、そのままかぎかっこにして、いっぱい入れると楽しいね(^o^)。
●ジョナサンさん
(いにう/小4)の作文より(ふじのみや先生/7.2週)家の中にランプが一つしかなかったら、とりあいになると思います。とりあいでまけた人は、「暗いなー」「みんなどこー」「ここだよー」「トイレにいけないよー、うえーん、うえーん。」 たぶんぼくは、(きぜつするー)と、思います。ランプを持っている人は、「ララランー」 【評】真っ暗な家の中でまいごになるようすを「(かぎかっこ)」を使って、たくさん想像したね。「ララランー」は、ランプのだじゃれかな(゜?゜)。
●スマイルさん
(いにわ/小4)の作文より(けいこ先生/7.3週)後半はゴン中山(ジュビロ)が1点入れました。「イエーイ。」「ジュッビィーローいいぞ!」と歓声が上がりました。わたしは心の中で「わたしは応えん団の一人なんだぁ。家とはちがって、“うず”があるんだ。その歓声のうずの中に今私がいる!!」と思いました。 評:スタジアムの熱気が伝わってくるようだね。Jリーグも盛り上がっているなぁ。
●なっちゃんさん
(いひく/小4)の作文より(ふじのみや先生/7.1週)あわがおゆのなかに入ってしまったら三人で顔を見あわせて「しーねっ。」といってほかの人にはひみつにしておきます。もちろんお母さんにも。 【評】いきいきとして、楽しい遊びの場面だね。でも、ひみつの遊びのことを「光る表現」に書いてよかったかな(^_^;)?。
●裕介さん
(いまお/小4)の作文より(けいこ先生/7.2週)(お母さんが)おこっている時、なんだか頭がこわれているみたいで、「ウィーン。ドカーン。」大ばく発をおこしたようでした。(頭いかれすぎなんだよ。もー。)とか(いいかげん静かにしろよ。もー。)などと思う時があります。 評:いかりの大ばく発だね。人を機械(ロボット)のように表現したのがおもしろい。回線がプチンと切れたみたいだなぁ。
●MIZUさん
(いみち/小4)の作文より(ゆえ先生/7.4週)そのあと、お父さんたちに聞いたら、 百二十年ぐらい前だそうです。 そのころは、 文化開化といわれていたそうです。◆評◆瑞くんが興味(きょうみ)をもって、お父さんたちにたずねているようすが目に見えるようです!本を読んで、自分でいろいろとしらべてみるものたのしいし、べんきょうになりますね!これからもたくさん本を読んで、しらべたことを先生にも教えてね!
●ヨーリンさん
(いみろ/小4)の作文より(きりこ先生/7.3週)マッチをつけるとき、カチッカチッとパソコンのマウスのような音ばかりなってなかなかつきません。<たとえが上手にできたね。>
●玲さん
(いりて/小4)の作文より(はるな先生/7.2週)私は、四教科の中でとくに算数の問題が解けると、まるで水泳の平泳ぎで25メートルが泳げたときみたいにうれしくなるのです。(講評);算数のむつかしい問題が見事に正解したときのうれしさを、とてもじょうずにたとえましたね。
●悠衣さん
(いろて/小4)の作文より(うさぎ先生/7.3週)そのボールはかんたんに取れました。いよいよわたしの投げる番です。【評】「いよいよ・・です。」の文が短くて的確で、現在形になっているため、ドッチボールの緊迫感がよく伝わってきます。この一文にセンスのよさを感じます。
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