1996年1ー3月 第5週号 通算第467号 言葉の森
言葉の森新聞
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予想される大変革と
言葉の森の今後の教育ビジョン
現在、社会は二つの面で大きな変革に直面しています。たとえて言えば、東と西から大きな津波がおしよせつつあるが、多くの人はまだ平穏に暮らしているというところです。一つは数年内に起こることが予想される大地震と、それに引き続く経済の混乱や恐慌です。もう一つは、インターネットの発達によって引き起こされる産業界の大変化です。この二つの津波によって、これまであった多くのものが失われ、これまでになかった多くのものが新たに生まれると思われます。
しかし、このような混乱の間であっても、子どもたちの成長は待っていてはくれません。
言葉の森では、社会の大変革の中でも、子どもたちの勉強がスムーズに進む体制を作るために、現在、作文読解以外に、全教科の指導を行なう仕組みを作る計画を立てています。
負担の少ない自学自習
言葉の森で行なう今後の教育のビジョンには、五つのポイントがあります。
第一は、自学自習を中心にするということです。一斉授業の講義形式で先生の話を聞くという学習は、基礎を身につける段階では有効ですが、学習が発展すると、かえって無駄な時間が多くなってきます。場所や時間の制約がない自学自習が、学習の理想のかたちです。
基礎の反復
第二は、基礎の反復を徹底するということです。現在の教科書は、必要な知識をきわめてわかりやすく整理して編集されています。いまの日本で高校までの教科書をだいたいマスターしていれば、どこでも通用する立派な知識人になると言われています。ただ、教科書は、学校での授業やテストとセットで教えることが前提となっているために、説明の量が少なく、問題にも自分で確かめるための答えがついていません。したがって、教科書に準拠した「教科書ガイド」や「教科書テスト」を併用すれば、教科書の持っている弱点を補うことができます。
勉強は、一つのものを徹底して反復する方が、数多くのものをこなすよりも、ずっと効果が上がります。学校で使っている教科書を有効に活用することが勉強の正道で、教科書以外の教材は、教科書がすっかりマスターできてから使うようにすることが大切です。
顔の見える少人数で
第三は、顔の見える少人数での協調的競争を学習意欲の源泉にするということです。勉強でいちばん大切なのは、教材でも先生でもなく、また勉強の時間や量でもなく、本人の意欲です。意欲を持って取り組めば、教材や先生に問題があっても、勉強の時間が長くとれなくても、学習の効果は上がります。
学習意欲の源泉になるのは、本人の目標意識ですが、小中学生の段階では自分で自立的に勉強の目標を立てることは、まずできません。ほめられたりしかられたりして勉強を続けていくうちに、勉強することが習慣になって、苦にならなくなってくるというのが、小中学生の勉強の実態です。
この「ほめられたりしかられたり」の量をできるだけ少なくして本人の意欲を引き出すために、互いに顔の見える範囲の数人の仲間が集まって、協調的に競争をしながら勉強をしていくというかたちを学習の基本にしたいと思います。このためにも、「広場」による交流は更に充実させていく予定です。
学力別のクラス分け
第四は、学力別の少人数のクラス分けを、本人の学力に応じて行なうということです。これは、生徒数の多い塾や学校では既に行なわれていることですが、通信システムを利用すれば更に少人数の細かいクラス分けが必要に応じてすみやかにできるようになります。ただし、クラス分けの意義は、競争意識をあおることにではなく、能率のよい学習をすることにあります。クラス分け自体に優越感や劣等感を持たないように、クラス相互の位置は、公表しないようにする予定です。
努力をグラフとして目に見えるかたちに
第五は、学力別の少人数のクラスで、その生徒の確率上の成績の順位を、グラフとして見えるかたちで表すということです。学力差のあるクラスでは、本人の努力がなかなか成果として見えてきません。また、同じ学力でも、人数の多いクラスではやはり、本人の努力がなかなか見えてきません。また、成績の出し方について言えば、単なる順位や、平均点との比較や、偏差値では、成果の本当の姿がよくつかめません。本人の努力の自然の姿を目に見えるかたちで伝えることが、学習意欲を引き出す前提になります。
簡素な仕組みで、より本物に近く
言葉の森では、以上の取り組みを、(1)教科書・教科書ガイド・教科書テスト、及び、受験生の場合は志望校の過去問というどこでも手に入る教材と、(2)全国どこからでも文字情報のやりとりをリアルタイムでできるパソコン通信(通学生の場合は教室のパソコン)と、(3)ワープロ、表計算、データベースというパソコン用のソフトと、(4)毎週1回発行する「広場」を利用して作り上げていく予定です。
「本物は高くない」と言われるように、このシステムのコストはきわめて低く抑えられます。しかし、他塾の経営のことを考え、当面、費用は他の塾と同程度に設定します。そのかわり、利益は生徒どうしの交流を充実させる方向で還元していく予定です。具体的には、地域でのレジャーや、遠方の通信生の場合は季節ごとのキャンプなど、種々のイベントを実施していくことを考えています。また、現在は新しい価値を創造することが求められている時代なので、企画するイベントもできるだけこれまでの商業ベースにないものを作り上げていきたいと思います。
将来の評価表
現在、一部のクラスで試験的に、図にあるような評価表を生徒に渡しています。この評価は、生徒の最新の成績をデータベースでつなげ、少人数のクラス(広場)に分けて(広場は現在学力別ではありませんが、この1月から学年別になっています)、そのクラス内での確率上の順位を計算しグラフ化したものです。今後、自分の順位はわかるが、他の人の順位は上位の場合だけにしかわからないというくふうをしていきたいと思います。また、集計する人数も、学力別にもっと少人数にすることを考えています。この評価方法によって、これまでの絶対評価よりもより客観的な評価ができ、したがって、より的を絞った指導ができるようになると思います。
作文と読解のこの評価方式を発展させて、今後、他の教科の指導や、受験生の場合は志望校に合わせた指導をしていく予定です。
以上のシステムは、当初、もっと短時間でできあがる予定だったのですが、プログラムの設計に予想以上の時間がかかり、予定よりもだいぶ遅れてしまいました。しかし、今後できるだけ早い時期にこのシステムを軌道に乗せて、生徒のみなさんの勉強に役立つようにしていきたいと思います。
ご意見やご要望がありましたら、ぜひお寄せください。