1996年4〜6月 第10週号 通算第483号 言葉の森
言葉の森新聞
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行方不明の原稿です
5月に送られてきた作文の中で、名前のわからないものが2点ありました。自分の作文だと思う方は、ご連絡ください。
なお、作文用紙と封筒用紙には、必ず名前と広場名を書くようにお願いします。
勉強の基礎は日常生活から
ペットでも、しつけの差は大きい
犬を散歩させていて、気がつくことは、しつけのよくできている犬とそうでない犬とがはっきりと分かれていることです。しつけのできていない犬は、吠えたり、人にとびついたりして、飼い主の言うことを聞かずに自分でどんどん飼い主を引っ張って歩いていきます。
欧米では、犬は、よくしつけられていて、街の中でも平気でつれて歩くことができるそうです。日本でも、盲導犬など、よく訓練された犬は、電車に乗せても平気で、決して人に迷惑をかけません。
この違いは、どこにあるかというと、犬をしつけるということが、日本ではまだ文化として定着していないということです。犬のしつけということを実際にわかっている人が身近にいないので、どうしても、書物などから正しいしつけの仕方を学ばなければなりません。ところが犬のしつけのためにわざわざ本を読んで勉強をする人は、あまりいません。
このために、犬というと、ワンワン吠えて、散歩に連れていくと主人を引っ張って歩き、ところかまわず糞をするというイメージをほとんどの人が持つような状態が生まれているのです。
人間の勉強の習慣も、一種のしつけ
似たことが、家庭の教育についても言えます。
勉強の基礎になるのは、毎日決まった時間に起きて、決まった時間に食事をして、決まった時間に勉強をするという習慣がついているということです。低中学年では、勉強の中身よりも、この勉強の習慣がついているどうかということがいちばん大切です。
また、高学年では、勉強の方法として、同じものを何度も反復して勉強するスタイルを身につけていることが重要です。勉強の時間が長いわりに成績が上がらない生徒のほとんどが、次々と新しい参考書や問題集で勉強するという無駄の多い勉強法をとっています。今日では、学校でも塾でも書店でも、教材が山ほどあるので、ついいろいろな教材を使って勉強をしたくなりますが、教材の量が増えるほど、能率の悪い勉強になっていきます。
ところが、こういう基本的なことを、多くの人が理解していません。家庭での勉強の仕方やしつけの仕方が、日本の文化から失われてしまったためです。
江戸時代には、寺子屋という大衆的な教育制度がありました。このころは、しつけも教養も、家庭での日常的なはたらきかけとして、親から子へと伝えられていました。現在では、しつけや勉強は、ほとんどが、学校や塾のような家庭以外の機関でまかなわれるようになっています。しかし、このために、かえって家庭での教育力が低下するという結果が生まれているようです。
勉強のコツは、難しいことをたまにたくさんやることではなく、やさしい基本的なことを毎日少しずつやっていくことです。そして、こういう基本的なことは、家庭の中での日常的な習慣として定着させていくのが、実はいちばん簡単なことなのです。