1997年1〜3月 第11週号 通算第516号 言葉の森 

言葉の森新聞

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  高校二年生の人は志望校を決めましょう

高校二年生の人は、この三月中に志望校を決めましょう。

高校生の受験勉強を見ていて共通する弱点は、スタートが遅いということです。中学生のころまでは、親や先生や塾からいろいろなアドバイスがあり、そのアドバイスに乗っていれば、自然に受験勉強ができるという状態にありましたが、大学受験は違います。何よりも自分が何をしたいのかという自分自身の目標がなければ志望するところを決めることさえできません。高校受験までは、高校自体に特色があるわけではありませんから、偏差値のように量的な尺度を基準にして考えて進路選択ができたのですが、大学は、何をしたいのかという質が進路選択に大きく関わってきます。

そしてまた、大学受験は、勉強のゴールではありません。将来、自分がどういう仕事をしたいのかというより大きな目的のためのひとつのステップです。

高校生の段階で、自分の適正や興味を知ることは、実は容易なことではありません。みなさん自身がこれから大きく変化していくからです。しかし、なりゆきにまかせて勉強していたのでは自分で満足できるような勉強はできません。

今わかる範囲で、自分の人生や将来の目標を考え、その目標に合わせたかたちで志望校を決めていきましょう。

  中高生は読書の習慣を

よく、「勉強が忙しくて本を読む時間がない」という人がいます。確かに、試験前の一時期には読書をする時間どころか寝る時間も惜しんで勉強をしたいということもあります。

しかし、読書というのは、その人の生活習慣のようなものです。本を読む習慣のついている人は、どんなときでも身近に本があって、五分でも十分でも読める環境を作っています。逆に、いったん読書習慣がなくなると、どんなに時間があっても本を読もうという気が起きないものです。

そこで、忙しい中高生のみなさんにおすすめしたいことは、どんなときでも一日一度は本を開くということと、近くの書店に一日に一度は立ち寄るということです。

一度にたっぷり読書の時間をとろうと思わずに、まず自分が簡単に着手できるところから読書の習慣をつけていきましょう。

  なぜ、作文を勉強するのか

(これは父母向けの印刷物に掲載したものですが、中高生の皆さんにも読んでいただきたいので再掲しました)

今の世の中では、受験に合格するための勉強が主で、それ以外の勉強や習い事は、補助的なものと考えられています。しかし、本当にそうでしょうか。

勉強の目的は、自分自身を向上させ、世界に何かを創造し、社会に貢献し、幸福に生きることにあるはずです。フランシス・ベーコンは、「読書は人間を豊かにし、作文は人間を正確にし、話し合いは人間を有用にする」と言っています。

高校までの教科の勉強は、教養の基礎を作るために大切なものです。しかし、その教科の勉強自体が目的なのではありません。

言葉の森に通う生徒の中には、小学生のころから勉強を始め、高校を卒業し大学生になったあとも学習を続けている生徒がいます。それは、なぜかと言えば、高校までの教科の勉強はひととおり内容を身につければそれで卒業できるものですが、作文や読書の勉強は、社会の進歩や自分自身の成長に応じて、より深い段階に進んでいくことができるものだからです。

大学生や社会人になってからも、今日の社会の問題を真面目に考え、読書によって自己を啓発し、前向きに生きる同世代の仲間たちからの知的刺激を受けて勉強を続けていくことは大切です。その学習の場を提供するものが、作文と読書と話し合いです。

こう考えると、作文や読書の勉強こそが長続きする本当の勉強で、受験などで一時期作文や読書の勉強を中断する時期があっても、また時間ができれば再開するというのが、勉強の本来の姿であると思われます。

いま、言葉の森で勉強している方は、ぜひこういう大きな展望で学習に取り組んでいってください。

  第11週の感想文のヒント

「砂漠化の原因は」を読んで(11行目の「注んで」は、「住んで」のまちがいです

要約

  1. 砂漠化の原因は人為的なもので、最も大きな原因は貧困である
  2. 先進国の援助が砂漠化を助長する場合もある
  3. 砂漠化を解決するためには、農学だけでない幅広い分野の協力が必要だ

似た例

似た話は、いろいろなかたちで考えることができます。機械化や大規模化が自然を破壊しているという例で考えてもいいし、なにごともやりっぱなしはよくないという例で考えてもよいでしょう。中途半端な援助で最後の結果まで見届けないことがかえって途上国の環境を破壊しているということは、考えさせられる問題ですね。

感想

感想は、砂漠化というところから離れて一般的に考えていくといいでしょう。「何事も、最初よりも最後が肝心だ」とか「相手の事情をよく見て手助けをすることが大切だ」のような感想であれば、いろいろな実例と結びつけることができるでしょう。

名言・ことわざ

名言は、「89、悪いことそのものが……」や「59、始めることも大切だが……」や「84、理想に到達するための……」などが使えそうです。

「落ちてきたら」を読んで

要約

  1. 「落ちてきたら」の詩のよさは「願いごとのように」の比喩にある
  2. 二つの異なるものを結びつける比喩はものごとをわかりやすくする

意見

そのまま、比喩の大切さで書いていくとよいでしょう。もっと一般化して、異質なものを結びつけることの大切だと考えてもいいかもしれません。比喩は、ものごとをわかりやすくするという効果があります。この比喩とは対極にあるものがデータなどを駆使した説明ということになるでしょう。「体重120キロの人」という説明と「お相撲さんのように大きい人」というのと、どちらの表し方にもそれぞれよいところがあります。

名言・ことわざ

名言は、比喩は自分で新しく創造するものだという意味で、「74、もともと地上に道は……」。同じく、「75、問題とはそこに……」。また、長い説明よりも簡潔な比喩のほうが難しいという意味で、「67、短いスピーチが……」などが使えそうです。