1997年4-6月 第12週号 通算第528号

言葉の森新聞

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  大切な反復学習

例えば、サッカーのインステップキックを練習するときに、「軸足を大きく踏み込んで、蹴る方向につま先を向け、蹴り足の甲で蹴る」という理屈をいくら覚えても、それで上手に蹴れるようになるわけではありません。同じ動作を何度もくりかえし、無意識のうちに一連の動作ができるようになってはじめて、蹴り方がマスターできたと言えます。

勉強もこれと同じです。しかし、意外に多いのが、一度か二度理屈で理解して、わかった気になって先に進む、という勉強の仕方です。これは、教える先生や親の場合も同じです。できなかった問題をできるようにさせるときに、つい理屈でくわしく説明してそれでよしとしてしまいがちです。理屈で理解することは大切ですが、もっと大切なのは、その理解を定着させるように反復練習をすることです

漢字の勉強が苦手だったり、ちょっとした計算のミスが多いという生徒の場合、この反復練習が足りないことがもっとも大きな原因になっています。

  能率のよい勉強法

しかし、ここで問題になるのは、ただ数多く反復するだけというかたちの練習では、学年が上がるにつれて能率が悪くなるということです。学習塾によっては、宿題のプリントをたくさん与えて、そのプリントを解くことが勉強の中心になっているところもあります。これは、低中学年では効果的な方法ですが、学年が上がるにつれて、すっかり定着しいる問題もまだあまり定着していない問題も、同じように反復するという無駄が生じてきます。

いちばんよい方法は、あまり定着していない問題を中心に反復練習をすることですが、こういう仕組みになっている問題集はほとんどありません。

将来は、印刷物形式の問題集ではなく、パソコンを利用して、その生徒のできた問題はもう出さずに、できなかった問題だけを反復して出すというかたちの学習が中心になると思いますが、今はまだ、そういうシステムはだれもが簡単に手に入れられるようなかたちでは提供されていません。

しかし、実は、手作りでこういうシステムを作ることは、それほど難しいことではありません。自分が解いた問題のまちがえたところに印をつけておき、何週間かあとにその間違えたところだけをもう一度解き直し、また何週間かたってからもう一度解き直し、さらに何週間かたってからもう一度解き直すというやり方で勉強していけば、学習の能率はずっと向上します。高校生以上の人は、普通、こういう勉強の仕方をしていると思いますが、小中学生の人も、できるだけこういう能率のよい勉強方法を取りいれていきましょう。

漢字集で漢字の勉強をしている人の中に、どの漢字も同じように一回ずつ書いている生徒がかなりいます。また、どの漢字も同じように何十回と書いている生徒もいます。書ける漢字は一回だけ、書けない漢字は四回以上というふうに、ウエイトづけをして勉強していくのが能率のよい勉強の仕方です

  短文・長文・読書の勉強の意味

長文集をくりかえし音読する勉強は退屈なので、問題集を解く勉強を国語学習の中心にしている生徒もかなり多いようです。

問題集を解く勉強をしている時間は、スポーツで言えば試合をしている時間に相当します。走ったり、ドリブルをしたり、パスをしたり、シュートをしたりと、いろいろな動作をするので、その生徒のどこが得意でどこが苦手かを判断する材料を集めることができます。しかし、試合を数多くやっていても、上手なプレーができるようになるわけではありません。上手になるためには、苦手な技術を独自に取り上げて練習する必要があります。

問題を解いている時間は、試合をしている時間と同じように、それなりに楽しく充実感がありますが、それが練習の中心になっていては、技術は向上しません。

国語の学習は、他の教科の学習と違い、学習範囲が無限にあります。英語や数学であれば、教科書や参考書を一冊マスターすれば、それで勉強のほとんどは完成したといえますが、国語の場合は、教科書や参考書を一冊まるまる覚えても、それで学力がついたとは言えません。

国語の読解力は、さまざまな分野におけるものの考え方やさまざまな場面におけるものの感じ方に理解したり共感したりする力をつけることですから、ある程度の難しさや複雑さをもった文章を何度も読んで自分のものにしていく勉強法が最も効果があります。問題集を解くよりも、長文の音読や読書に力を入れたほうがよいというのは、こういう理由からです。

さらに、国語の表現力は、読解力以上に徹底してその文章を自分のものにしていかなければ向上しません。短文の筆写や長文の音読を何度も繰り返していると、ある時期から、その文章が空で言えるようになってきます。

テニスでも卓球でも素振りの練習を何度も繰り返しているうちに、どこにどういうボールが来ても、無意識のうちに体が動いて、正確に打ち返すことができるようになってきます。この素振りの練習にあたるのが、短文の筆写や長文の音読の練習です。

昔から、文章力を向上させるには、「三多」(たくさん読み、たくさん書き、たくさん推敲する)が必要だと言いますが、中でも、同じ文章をたくさん読むことがいちばん効果のある文章力向上法なのです。

  要約の仕方

 ものごとを構造的に考えることのできる年齢は、一般に五年生からと言われています。ですから、言葉の森では、作文を書く前に構成メモを書いたり長文を要約したりする練習を、五年生から行なうようにしています。

また、国語の学力は、精神年齢に比例しているので、中学一年生で普通にできることが、小学五年生ではかなり難しく、中学三年生ではかなり易しくできる、という関係にあります。

中学生レベルでは、要約は、普通にできることに入りますが、小学五年生にとっては、要約は初めてやることもあり、かなり難しい勉強に入ると思います。

そこで、要約のコツですが、まず、要約の外見を身につけるというところから入っていくと取り組みやすいと思います。その際に、大事なことは、読む文章の中で自分が心にとめておきたいところに、必ず線を引きながら読むということです。線を引きながら読むと、二度目以降に読むときの能率が格段とよくなります。

  1. 大事なところに線を引きながら読む。(この場合、大事なところとは、自分がなるほどと思ったところや、自分がよく理解できたところです)
  2. その線を引いたところを中心に、同じ文章を、4、5回繰り返し読む。(線を引いたところだけをとびとびに読むだけでかまいません。こうすると、文章の全体像が頭の中に次第にはっきり形成されてきます)
  3. 線を引いた中で、特に自分が大事だと思うところを、3〜4ヶ所選ぶ。
  4. その3〜4ヶ所の文を適当につなげて書く。(これで要約が完成です)

つまり、要約のコツを簡単にひとことで言えば、もとになる文章から、三つか四つの文を選んでつなげる、ということです。

つなげた文の結果が、内容からはずれていても、最初はかまいません。見当ちがいの文を選んでいても、かたちだけができていればよいということで、はじめは取り組んでいきましょう。

要約の本当の目的は、要約そのものにあるのではありません。要約をしようと思って文章を読むことによって、その文章を深く読む力がつくというところにあります。ですから、4、5回読んでも内容がわからず、一行も要約が書けなかったということであっても、その4、5回読んだという過程に勉強の中身があると考えておくことが大切です。

  第12週は清書です(電話面談もあり)

第12週は、この一ヶ月に書いた作文の中からじょうずなものを選んで清書します。この清書は、学年別の「広場」に載せたあと、ホームページに掲載し、新聞社に投稿します。「学習の手引」にくわしい書き方が載っています。

清書の場合、原稿用紙の左上に自分の生徒コードを書くことを忘れないようにお願いします

なお、第12週は、担当の先生から保護者の皆様に電話による面談があります。授業の週にお電話を差し上げることが多いと思いますが、時間は確定していませんので、特にお待ちいただく必要はありません。

なお、今回から、電話面談のかわりに、お手紙によって「学習状況の連絡」をする場合もあります。その場合、更にくわしい説明をご希望の方は教室にお電話でお問い合わせください。