1997年10−12月 第9週号 通算第548号
言葉の森新聞
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第9週はテストです 第9週は、作文のテストを行ないます。書き方は、いつものとおりですが、項目表の●印がひととおりできているかどうかをくわしく見ます。字数は、目標とした字数まで書けなくてもいいですから、できるだけ項目表に書いてある字数に近づくように書いていきましょう。高校生以上の人は、制限時間75分が表記の項目にあります。これも、制限時間内に書き上げられなくてもいいですから、できるだけ短い時間で書くようにしましょう。高校生以上の人は、作文用紙の空いているところに、かかった時間を書いておいてください(書いていないと減点)。 この第9週のテストと、これまでの3週から8週までの点数を集計して進級を決めます。 図書の返却は12月10日です 貸出図書は、12月10日までに返却してください。 教材と一緒にお渡ししてある茶色の返信用封筒の図書を入れて、そのままポストに投函してください。図書の返信用封筒は開封になっていますから、封筒の空いているところはふさがないようにしてください。また、返信用封筒には、図書以外の作文などは入れないようにしてください。 図書をすでに返却してあるはずなのに、または自宅にそれらしい図書が見あたらないのに「山のたより」に図書貸出が表示されているという方はご連絡ください。(自習用紙に「図書が貸出中になっていますが、うちにそういう本はないので、もう返したと思います」のように書いてください。こちらのデータを訂正します) 優秀作品コーナーを見て比較をしないでね(^o^) 優秀作品コーナーに、毎週それぞれの学年からよく書けた作文を掲載するようにしています。 優秀作品に掲載される作文を見て、子供さんに「ほら、この子の作文じょうずでしょ。これで同じ学年なのよ。あなたもこういうの書いてごらんなさい」という励まし方はしないようにお願いします。文章力は、その子の語彙力に支えられています。読書や自習によって地道に語彙の質と量を増やしていくことが勉強の王道です。その場の努力だけで文章をじょうずに書くことはできません。 じょうずな子の作文と比較をされると、ほとんどの子はその後書くことが嫌いになります。子供に努力を促すのは、本人の努力で実現可能な項目表の項目だけに限定するようにしてください。 優秀作品コーナーの作文は、「こういうテーマのときはこういう書き方もあるのだなあ」と、書き方の参考になるように載せています。くれぐれも子供さんの作文と比較をして見ないようにお願いします。 自分だけが見たり気づいたり感じたり考えたりしたことを 言葉の森の作文指導は、項目表を基準にしています。これは、作文という主観的になりがちな勉強に客観的な目標を与えるためのものです。しかし、この項目や字数ができることがそのまま作文の勉強の目的となるのではありません。また、小論文の試験に合格したり、国語の成績を上げたりすることだけが目的なのでもありません。 作文の勉強の目的は、書くことを通して、感性と知性と創造性を育てることにあります。ですから、普段の勉強で大事なことは、自分だけが見たり気づいたり感じたり考えたりしたことを書いていくということです。 項目表の項目がひととおりできた人は、今度は作文の内容面に力を入れて、自分らしい作文を書いていくようにしましょう。 短文筆写は記憶力も育てる 言葉の森の短文筆写は、100字程度の文章を繰り返し読んで暗唱してから書き写すという練習です。100字の文章を暗唱するというのは、慣れないとかなり大変です。初めのうちは、何十回読んでも、読むたびにどこかつっかえてしまいます。しかし、この練習を数ヶ月続けていると、4、5回読んだだけですらすらと暗唱できるようになります。 文章というものは、知的に理解できるだけでは不十分で、それを自由に自分でも使えるようにならなければなりません。これまでの国語の学習は、文章を読んで知的に理解してそれで完成というかたちのものがほとんどだったので、文章を書く力はなかなかつきませんでした。 短文筆写は、そこに書いてある語彙や言い回しを自分でも自由に使えるようにするための練習です。 この短文筆写の副産物として、記憶力が育つということがあります。短文筆写を何年も続けている人は、理科や社会の勉強でも、参考書や教科書を数回読むだけで中身がすぐに頭に定着するようです。 繰り返しの勉強は退屈ですが、とても大切なものです。書物の量が今よりもはるかに少なかった明治時代の人たちがなぜ文章を書くのがうまかったかというと、そこに論語や孟子を素読(そどく)する知的習慣が江戸時代から引き継がれていたからだと思います。
成績は手段で、目的は学力の向上 小中学生の学校や塾での試験問題を見ていると、枝葉のどうでもよいことで点数の差をつけているとしか思えない問題に出合うことがあります。これは、受験という目的のために勉強の方向が歪められているからです。 こういう問題を解いたり、こういう問題を解くために勉強したりしていると、感度の鋭い子の中には、勉強そのものに疑問を持つ場合も出てくると思います。 親がこのときに、「そんなこと言ったって、成績がよくなければいい学校に行けないでしょ。いい学校に行けなくて困るのはあなたなんだからね」と目先の話で対応してしまうと、子供の勉強に対する意欲は長期的には萎えていきます。それは、目指す学校に合格したあと、勉強に意欲が持てなくなるというかたちで表われます。 勉強の目的は、試験でいい成績をとったり、いい学校に入ったりすることにあるのではありません。本当の目的は、自分の学力や人間性を向上させることにあります。しかし、漠然と学力を向上させるという目的だけでは、人間は苦しい努力はできないものです。自分の実力をつけることが目的で、そのためのきっかけとして試験や成績があるのだと考えて勉強していきましょう。 アスキーという会社の社長の西氏は、自分の子供が塾で「易しい問題から先に解き、難しい問題は後回しにし、全体で成績を上げる」と教えられたことに疑問を持ち、「難しい問題から解かなければ本当の勉強ではない」と子供に言いました。その結果、子供の塾での成績は毎回0点が続き、クラスもどんどん下がっていきました。しかし、ある日ついに、塾でひとりだけ100点をとることができ、親子で泣いて喜んだそうです。 キャノンという会社の会長の賀来(かこ)氏は、高校時代に恩師から「公式は暗記するな。問題が出たつど自分で公式を考え出し解いていくのが本当の勉強だ」と教えられそのとおり実行して、志望校に何度も落ちたそうです。 こういう能率の悪い勉強の仕方は、もちろんすすめるものではありません。しかし、こういう勉強の姿勢を持った子は大きくなって、自分の力で勉強をする喜びを見つけていくと思います。 第9週の課題のヒント 小学1・2年生 「自由な題名」 小学1・2年生は自由な題名で、先生から電話がある前までに何を書くか決めておきましょう。 小学3・4年生 「私の夢」 「私の夢」という題名で自分が将来なりたいもの書いていきましょう。説明だけでは長く書けないので、その夢をお母さんやお父さんと話してみるとよいと思います。お母さんやお父さんの子供のころの夢を聞いて書いてもいいですね。 小学5・6年生 「私の夢」 第一の実例は、自分の夢の話を実例を入れて書きましょう。どうしてそういう夢を持つようになったかというきっかけなどを書くと長く書けます。第二の実例は、第一と同じ夢のもうひとつの出来事を書いてもいいですし、幼稚園のころ持っていた夢やお父さんやお母さんの夢など、別の夢の話を書いてもよいでしょう。 年生の人は、夢というものについて「わかったこと」を、6年生の人は「夢というものは(人間にとって)……」と大きく考えてみましょう。 ことわざ:「67、初心忘るべからず」「126、まかぬ種は……」「143、ローマは……」などが使えそうです。 中学生 「夢についての意見文」 意見は「夢を持つことの大切さ」。中学2年生は、「夢も大事だが現実も大切」というふうに二つの意見を比較して考えてみましょう。具体的な事例を念頭において考えないと観念的に話になり、展開しているうちにわけがわからなくなるので注意。自分の話以外に、伝記などをもとに「ライト兄弟の夢は……」と考えていくと話に広がりが出てきます。中学2年生の総合化の主題は、「いちばん大切なのは、夢と現実を結び付けるような実力をたくわえていくことではないか」という感じで。総合化は自分なりにいろいろ考えられると思います。中学3年生は、「夢のある生き方をしたい」という生き方の主題で、そのための方法を書いていきましょう。逆に言うと、今の夢の持ちにくい時代状況の中でいかにして夢を持って生きていくか、という社会性のある考え方をしていくということです。 名言は、「78、夢があるから……」など。 高校生・大学生・社会人 「夢」 夢の持ちにくい現代の社会ということがよく言われます。高校1年生の人はどうしたら人は夢を持てるのかという方法を中心に、高校2年生の人は、現代の社会はどうして夢を持ちにくいのかという原因を中心に、高校3年生の人は、現代の社会がどうしたら夢の持てる社会になるのかという対策を中心に考えてみましょう。 夢の持ちにくい時代と言っても、江戸時代の身分制に比べれば今ははるかに自由に自分の夢を持てる時代です。また、情報の面でも資金の面でも、数十年前と比べて制約は格段に少なくなっています。それなのに、夢を持ちにくいと感じるのは、極端に身近な夢と極端に大きな夢を観念的に持ってしまうからかもしれません。「たまごっちがほしい(ちょっと古いか)」というような身近な夢と、「世界征服をしたい」という大きな(大きすぎるって)夢を持っているだけでは、現実に生きる力はわいてきません。大きな夢と小さな夢をつなぐ中間地点を自分なりに設定していくことが大切なのでしょう。 ミスプリントの訂正 4年生の漢字集の167番「かえる(へんか)」の送り仮名は、「変える」です。データを編集しているときに「え」が落ちていたようです。これに関連して、「かわる」の送り仮名は、「変わる」と「変る」の2種類がありますが、誤読を避ける意味から、「変わる」のように多めに送るとよいと思います。 これに似た漢字に、ほかに、「終わる」「終る」「終える」「当たる」「当る」「当てる」などがあります。 4年生のみなさん、大変失礼しました。 第7〜8週の「山のたより」の第7週の講評の中に、前の学期の講評が出ているものがありました。
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