1998年 2月 3週号 通算第558号 言葉の森新聞 住所 234横浜市港南区港南台4-7-29-A201 電話 0120-22-3987 留守番電話・ファクス 0120-72-3987 http://www.mmjp.or.jp/shine/index.html (Yahoo!で"言葉の森"と検索してください) 2月3週の課題のヒント 小1・2年生 「自由な題名」 小3・4年生 「カ(感)」 内容:カ(蚊)の雌は卵を生むために動物の血を吸う。カにさされたあとがかゆいのは、血液をかたまらせない物質が人の体に入るからだ。カの羽音は仲間に自分の場所をしらせる音だ。 似た話:季節が違うので、書きにくいかもしれません。夏山でやぶの中などに入ると、カの大群におそわれることがあります。人間が来るのをずっと待っていたのでしょう。家の中でカを見つけて、たたこうとしてもなかなかうまくたたけません。人のおでこにとまったカをたたいたらおこられたなどという楽しい話もあるかもしれません。 小5・6年生 「おとぎばなし(感)」 要約:「もも太郎」に見られるような日本人にとっての原風景とは、森林と川に囲まれた扇状地の集落である。東アジアの季節風地帯に属し、気候が湿潤であるため豊かな森林と川に恵まれた日本では、住民の生活は森と川の恩恵のもとに営まれた。里山は生活資源を提供し、また、川は良質な生活用水を提供してきたのである。里山が長く維持されてきた理由に、必要な時に必要な分だけを求める摘み取りという収穫方式があった。また、自然への畏敬の象徴として、集落一帯の環境保全の急所ともいえる場所に鎮守の森があった。これは、信仰の場であると同時に保存林にもあたる聖域でもあった。 似た例:昔の日本人が持っていた自然への畏敬とは反対に、この百年近くの間に、自然への破壊が急速に進みました。森林伐採による崖崩れや土石流の発生、熱帯雨林の大規模な焼畑によるCO2の発生などは、自然への畏敬を忘れたおごる人間たちに対する自然からの報復!? かもしれません。 田舎などに行くと、「おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に」という景色がまだ残っているところがあります。ちょうど、映画「となりのトトロ」に出てくるような風景です。みなさんのうちの近くにも神社などがあるでしょう。そこには、大きな木がうっそうと茂っています。昔の人は、神社に地域の自然を守る役割も持たせていたのでしょう。 「森は生きている」(講談社)の68ページ、76ページに参考になる話が出ています。木曽のきこりは、木を切る前にその木にしめなわをはりお酒をささげて山の神様にお祈りをします。信州には、「タラの芽は、三番芽をつむな」という教えが親から子へとうけつがれています。こだまは漢字で木魂や木霊と書きます。昔の人は、木の魂が「やっほー」と返事をしてくれると考えていたのです。 映画「もののけ姫」を見た人は、似た例を映画の中からさがしてもいいかもしれません。 ことわざ:「45、剣によって立つものは剣によって滅ぶ」など。 中学生 「ニーズとウォント(感)」 要約:「必要」という言葉の表現として、英語には「ニーズ」と「ウォント」がある。「ニーズ」は理性による判断から生まれるものであるのに対し、「ウォント」は内なる欲望から生まれるものである。新しい物を生み出す、創造するためには、飛躍というものが必要であり、この飛躍の原動力が「ウォント」である。(ミルクティ) 伝記人物実例:宮沢賢治は、最愛の妹が亡くなった日、その死についての3つの長い追悼の詩(「永訣の朝」「松の針」「無声慟哭」)を作りました。心の中の内なる欲望が彼にそれを書かせたのでしょう。このほか、歴史上に名を残している人の行動の動機はどれも「ウォント」です。大分県の青ノ洞門は、禅海がのみ一本で三十年かけて掘ったトンネルです。宇宙飛行士、土井隆雄さん(43)の夢も「ウォント」から出発していたのでしょう。 体験実例:「明日から朝早く起きて勉強をしよう」と思ってもなかなかふとんから出てこられません。しかし、「明日は遠足だ」となると、目が覚めたとたんにガバッと起きてしまうでしょう。そんな身近な例を念頭において考えてみましょう。 意見:「必要だからする」のではなく「したいからする」という内なる熱い動機が大切だ、という意見です。しかし、自分の能力や社会のニーズなど、客観的な条件を考慮しなければ、単なる無謀な賭けになってしまうかもしれません。反対意見への理解は、「確かにニーズを見きわめるも大切だが」というところで。 名言:「34、人生に意味はない。あるのは欲望だ。欲望があるから、バラはバラらしく花を咲かせている」「46、知識がはしごを作ったのではなく、二階に上がりたいという熱意がはしごを作ったのだ」など。 高校生 「身体(感)」 内容:身体は解剖学的な構造を持った生理的身体であると同時に、運動や学習を内臓した文化的・歴史的な身体である。練習を繰り返すことによって、それまでできなかった動きのネットワークがある日突然構築される。しかし、いったんできあがったネットワークをさらに繰り返すと習慣はやがて惰性になり、人は惰性に飽きている自分を発見する。 意見:「人はユートピアにさえ飽きる存在だ」というところを今日の社会の問題と結び付けて考えてみることができそうです。理想の社会というと、私たちはつい聖書の天国の絵にでもあるような、毎日が春で花が咲き蝶が舞いいつも若くて年中公園でひなたぼっこをしているような図を頭に描きそうですが、逆にこういう毎日だったら退屈でしょうがないでしょう。と言っても、毎日が戦乱で明け暮れるような落ち着きのない日々を求める人はいません。安定と活力が共存し、平和と進歩が共存するような社会が本当の理想の社会なのですが、そういう社会を合意のもとに作り上げるのは実に難しいと言えます。 主題は、長文前半の「身体は生理的であると同時に文化的でもある」のところを取り上げて考えてもよいと思います。私たちは外見の体格のよさについ目を奪われがちですが、大事なのは運動のスムーズさを獲得している身体なのでしょう。 大学生・社会人 「波長(感)」 内容:共鳴とは、振動体の持つ固有振動数と等しい振動が外部から与えられたとき振動の幅が大きくなる現象だが、これは個々の人間が持つ波動にも当てはまる。世の中には波長の合う人と合わない人とがいるが、人間の持つ波動は複雑な合成波だから、互いに波動の合うところで共鳴するようにすればよい。今、子供たちが荒れているが、それは大人社会の波動の乱れを反映している。 意見:波動という言葉を使うにせよ使わないにせよ、波長の合う人と合わない人とはだれにもいるようです。互いに合うところで共鳴するようになれば、温かい社会ができそうです。しかし、今の社会の風潮は、互いに合わないところで自己主張をしているようにも思えます。 時間のかかる子 (ホームページの質問の広場に掲載した原稿に加筆したものです) 教室で作文を書いている生徒は、800字程度の文章を書くのに、中学生で1時間半ぐらい、高校生で2時間近くかかっているようです。もちろん、高校生で1時間以内で上手にまとめられる生徒もいますが、このへんは個人差がかなりあります。 これまでの例では、小学生でも高校生でも、時間のかかる生徒のほうが力がつく傾向があります。受験近くになれば、時間を考えて書くようにすることも大切になりますが、実力をつける段階では、あまり時間は気にせずじっくり書いていったほうがよいと思います。 時間がかかったときは、本人も、「こんなに時間がかかって大変だなあ」とため息をつきながら思っているはずですから、周りの人は「すごく時間がかかったけど、よくがんばったね」とほめてあげるようにしてください。 また、書きあぐねているために時間がかかるようでしたら、そのときは、教室に電話をして、どういうふうに書いたらいいかということを聞いてください。このへんの判断は子供が自分でできるものではありませんから、様子を見て、お母様のほうで「教室に電話をして、聞いてみたら」とさりげなくアドバイスをしてくださるとよいと思います。 光る表現 みなさんの最近の作文の中から上手に書けたところを選んで紹介しています。
「おっとあぶない!おちそうになった。」もうどこであそんでいるかわかりましたね。木の上です。評:書き出しが、とっても楽しい。(^o^)
外に出てみると、雪はやみ、庭一面に真っ白。よく本でみる、銀世界というものになっていました。学校にいく道は、まだふんでいないところがあったので、シャキシャキというう音をたてながら、学校にいきました。評:情景描写と音の表現がすばらしいですね。 いつも、ぷよぷよをやると、「なつき〜、もうやめなさい。目悪くなるよ。」とよくお姉さんにしかられます。そして、私は「うん。わかった−。ここの試合だけしたら、終わらせる」といって、いつも長びきます。評:楽しくて、阪さんが、ゲ−ムにのめりこんでいるようすが、いきいきとつたわってきますね。 ■太一さん(あうけ/小5)の作文より(通子222) 見上げてみると、カキの実が夕日に当って「これぞまさしく風物詩」のような感じだった。よく野菜をもらうおばさんが「今年は干し柿がぜんぜんだめだよ」「秋が寒くならないからくさっちゃったよ」という。ぼくは、好きでなかっ干し柿をためしにたべたかったのである。ふと朝日小学生新聞を見てみると「去年の地球、最もあつかった」と書いてあった。それでやっと一件落着したのであった。食べ物にこる人間の心と熟したもののおいしさがわかった。 ■パリパリさん(にみ/小5)の作文より(恭子126) カ−テンをあけると、そこはもう白一色の世界。お日様の光があたって、きらきらとかがやいていました。私は忍者のように、はやく洋服にきがえて、外にとびだしていきました。評:情景描写と、たとえのあらわしかたが、実にすばらしいですね。 ■宗一さん(あいは/小5)の作文より(ミルクティ122) たとえば、悪い人が人をなぐってしまったとしたら、「悪い種」を土に植えてしまって、そのようなことをしていくたびに、種に水をやっていってやがて、悪い花がさいてしまって、もう幸運がドアをたたきにやってこないということです。評:悪い生活習慣を種にたとえたところが、ユニークで、わかりやすい。 ■てんさいさん(こむ/小6)の作文より(ミルクティ108) 宝物とは、もろく、そして消えやすい一瞬の幻であった。評:ミュウのデータが消えた後、「宝物とは……」と書いた結びの部分。宝物を夢やあこがれではなく、幻ととらえたところがユニーク! おすすめ図書 みなさんもいい本がありましたら紹介してください。 |