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1999年11月2週号 通算第639号 mori7@mori7.com言葉の森新聞
文責 中根克明(森川林)4年生もパソコンで書き始めました
小学4年生の人が学校でローマ字を習い始めました。教室に来ている4年生の人も、パソコンで作文を書くようになりました。
最初はだれでも2行か3行しか打てません。しかし、一ヶ月もすると、時間はかかりますが手で書くのと同じぐらいの長さまで打てるようになります。一年もすると、手で書くよりもずっと速く長く楽に打てるようになります。キーボードを見ないで打つのに慣れてくると、横を向きながら打つこともできるようになるので、手で書くのと比べて疲労度が極端に少なくなります。
パソコンで書いた作文はインターネットに掲載されるので、自宅で自分の書いた作文や友達の書いた作文をいつでも読むことができます。
自宅でパソコンを打って書く人は、ローマ字入力で、はじめから指の位置をしっかり決めて、打つ練習をしていきましょう。小学校低学年のうちに、ひらがな入力で人差し指などで打つ癖をつけてしまうと、あとで直すのが大変です。既にそういう癖がついてしまった人は、今から正しい打ち方に直していきましょう。
来週11.3週のヒント(小1−小3)
小学1年生 11.3週 はじめての花がさいてから(感)
内容:にがうりの花がさいたので、ベランダにはハチやアブがあつまってきました。ミナちゃんのうえたアサガオも、ミナちゃんのおへそのあたりまでせがのびていました。お父さんは、わすれずに水をあげているミナちゃんをほめてくれました。
解説:アサガオなどの植物をうえたことのある人もいるでしょう。はじめはなかなか芽が出てこないように見えますが、のびだすとぐんぐんのびていきます。花がさくと、いつのまにかハチやチョウがあつまってきます。たまに水やりをわすれると、植物はすぐにしおれてしまいますが、水をやるとまた元気をとりもどします。植物をそだてたことを似た話として思い出してみましょう。
感想文の書き方の流れ
わたしがこの話を読んでいちばんおもしろいと思ったところは、アサガオがミナちゃんのおへそのへんまでのびていたことです。(と、中心を決めます。「いちばん」という言葉が使いにくいときは、「ベランダにうえたミナちゃんのアサガオのせがのびました。」と、長文の説明を書いていってもいいでしょう)
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わたしもにた話があります。それは、夏休みのことです。わたしは、学校でアサガオをうえました。ある日、……(ここは、普通の作文と同じように会話やたとえなどを入れてくわしく書きます。また、「どうしてかというと」という言葉をつかって、そのときの理由なども説明していきましょう)
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わたしは、ベランダにまでハチやアブがくるのはどうしてだろうかと思いました。たぶん……。(と、長文の話にもどって、結びの感想を書きます)
小学2年生 11.3週 冬のさむい日が(感)
内容:さむい日は、水をがぶがぶのむことはありません。あついときは、のどがかわきます。それは体をひやすためにあせをかくからです。木も同じです。さくらやもみじの葉は、あせのあながあけっぱなしなので、冬になると葉をおとします。まつやつばきの葉は、あせの出るあながぐあいよくできているので、冬でも葉をおとしません。
解説:公園の桜の木も、葉がだいぶ落ちてきました。汗の出る穴があいている葉を落として、冬の間につぎの春の用意をしているのでしょう。
暑いときや運動をしたときは、のどがかわきます。夏の間は、毎日のように麦茶を飲んだりジュースを飲んだりしていたと思いますが、涼しくなってくるとそういう水気のあるものはあまり飲みたいと思わなくなります。汗をかかないから、水気のものがほしくなくなるのですね。スポーツをしてのどがかわいたときの話などを思い出して書いてみましょう。はげしい運動をしたあと、シャツをぬいでしぼると水が出てきたなどという経験のある人もいるかもしれませんね。
書き方の流れ
ぼくが、この話を読んでいちばんおもしろいと思ったところは、葉っぱにも汗の出る穴があるということです。(と、中心を決めます。「いちばん」という言葉が使いにくいときは無理に使わなくてもいいです。「葉っぱも人間と同じように汗をかきます。」などと、長文の説明を書いておきましょう)
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ぼくも、すごく汗をかいたことがあります。それは、……(と、ここで、会話やたとえなどを入れて、普段の作文と同じように似た話をくわしくかきます)
ぼくは、犬は汗をかかないと聞いたことがあります。お母さんにそのことを聞くと……(と、自分以外の話にも広げていくと、長く書くことができます)
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ぼくは、この話を読んで、松や椿はどうして汗をあまりかかないのかと不思議に思いました。たぶん、……。(と、長文の話にもどって感想をまとめましょう)
小学3年生 11.3週 かれはすぐ(感)
内容:アインシュタインはプリンストン大学の名誉教授になりました。博士は、十歳の女の子の算数の宿題を教えてあげたこともありました。アインシュタイン博士は、身なりをかまいませんでした。古いセーターに、サンダルばき、靴下をはかず、散髪も大嫌い。だれかが忠告すると、「肉を買って、包み紙のほうがりっぱだったら、わびしくないかね」とやりかえしました。おしゃれをする時間があれば、研究の時間のほうにまわしたいと思っていたのです。
解説:えらい人でも親しみやすい人がいるという例です。
外見よりも中身が大事だ、ということばをよく聞くでしょう。身近な人で身なりにかまわない人の例などをさがしてみましょう。
みなさんも、何かに熱中しているときは、自分の身なりなどにかまっていられないでしょう。サッカーの試合をしている最中に、「ちょっと髪型が乱れたから、タイム」などという人はいません。
友達の中にも、全然身なりにかまわない人がいると思います。そういう人は、もしかするとアインシュタイン博士のように、おしゃれをする時間があれば勉強のほうにまわしたいと考えているのかもしれません。
書き方の流れ
「床屋に行かなかったアインシュタイン」(のように題名を自分なりにくふうしてみましょう)
ぼくが、この話を読んでいちばんおもしろいと思ったところは、アインシュタインが大学の名誉教授になったのに、髪の毛はぼさぼさで床屋にも行かなかったというところです。(と、中心を決めます。「いちばん」という言葉が使いにくいときは無理に使わなくてもいいです。「アインシュタインは、身なりをかまわない人でした。」などと、長文の説明を書いておきましょう)
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ぼくも、床屋がきらいです。床屋に行くひまがあったら、ゲームをしていたいところです。この前、……(と、ここで、会話やたとえや「です、ます」などを入れて、普段の作文と同じように似た話をくわしくかきます)
ぼくのうちのお父さんも、あまり身なりを気にしません。たぶん……(と、自分以外の話にも広げていくと、長く書いていくことができます。「どうして」や「たぶん」といことばを使って、自分なりに考えたことを途中で書いていきましょう)
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ぼくは、この話を読んで、アインシュタインもぼくと同じように自分の家で髪の毛を切っていたのかなあと思いました。たぶん、……。(と、長文の話にもどって自分らしく感想をまとめましょう)
光る表現(小1−小3)
1999年11月2週■
みゆさん(あはみ/小2)の作文より(ももんが先生/10.3週)(野球のようす...前略)かんばんに(ボールが)あたって、またふってみるとまうえにとんでいて、おちてきました。すごくはやくて、はねかえってきてもとれませんでした。評:やきゅうのボールのようすがとてもよくわかる、いい文ですね。
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ニルスさん(あそな/小3)の作文より(スズラン先生/10.3週)(好きな理科の授業の実験で)水でっぽうをしました。水をつつに入れました。・・中略・・また水をすいこむと、「ブクブクブク」と、まるで何かにすいつけられるように、水がつつに入っていきました。評:水が入っていくようすが見えるようですね。
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えりさん(あなふ/小3)の作文より(ももんが先生/10.2週)わたしは、秋が、大すき。すきじゃなくって、大すき。評:とっても、とっても、気持ちが伝わってきますね
来週11.3週のヒント(小4−小6)
小学4年生 11.3週 第四にお米は(感)
内容:日本のお米は、ヨーロッパの小麦と違って、何年も同じ土地で作りつづけることができる。その秘密は水田にひかれる水にある。また、お米はおかずがなくても食べられるほどおいしい。稲は、縄文時代の終わりごろ、中国から伝わってきたと考えられている。
解説:水のはられている水田を見た話や、ごはんがおいしいという話などを書くとよいでしょう。今学期のこの長文で、ごはんが好きになった人も多いと思います。パンなどはジャムをつけたりハムや野菜をはさんでサンドイッチにしたりしないとおいしく食べられませんが、ごはんはそのまま食べてもおいしいものです。運動会や遠足のお弁当というと、やはり中心になるのはパンではなくお米だと思います。
書き方の流れ
「おかずがなくてもおいしいお米」(のように題名を自分なりにくふうしてみましょう)
第四に、お米はせまい土地でもたくさんつくることができました。第五に、お米はおいしかったからです。そのジャポニカのふるさとは、中国の長江(揚子江)の流域だとみられています。(と、はじめ、なか、おわりから三文を抜き書きします。抜き書きする場所は、どこでもかまいません。5年生になると、大事なところを中心に要約を書く練習をしますが、4年生のうちは、大事なところかどうかわからなくても形だけができていればそれでいいです。初めのうちは、三文をそのまま抜き書きして書くだけですが、慣れてきたら、三つの文が自然につながるように文の前後のつながり方を直して書いていきましょう。また、三文でなく、四文や五文になってもかまいません。)
私が、この話を読んでいちばんおどろいたのは、お米が七千年も昔から栽培されていたということです。それぐらいお米はおいしかったのでしょう。(と、中心を決めます。)
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私も、お米が大好きです。私の特に好きな朝ごはんは、……。(と、ここで、会話やたとえや現在形などを入れて、普段の作文と同じように似た話をくわしくかきます)
私は、百科事典でお米がどこで作られているか調べてみました。(と、自分以外の話にも広げていくと、長く書いていくことができます。「どうして」や「たぶん」といことばを使って、自分なりに考えたことを途中で書いていきましょう)
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私は、この話を読んで、ヨーロッパの人たちは、おいしいお米をどうして作らないのか不思議に思いました。(と、長文の話にもどって自分らしく感想をまとめましょう)
小学5年生 11.3週 科学的態度(感)
内容:科学的態度は、ものをよく見ることから始まる。タイは赤いと思われているが、よく見ると紫色に近い。ものをよく見て「はてな」と感じたら、すぐに実験したり、調べたりすることだ。科学的態度とは、疑問を実験や調査によって解決しようとする態度である。
鯛(たい)の色の話が出てきますが、先入観でものを見ずに自分の目でしっかり確かめるのが科学的態度の出発点だというような例をさがすといいと思います。日本では太陽の絵をかくとき赤で塗ることが多いと思いますが、欧米では黄色で塗ることが多いということです。しかし、実際の太陽を見てみると、赤でも黄色でもない、どちらかといえば白い色です。
また、何かの実験をしたり調査をしたりしたことがあれば書いてみましょう。牛乳パックから葉書を作ったり、洗濯のりからスライムを作ったりと、いろいろしたことがあるでしょう。
ことわざは、実際に見てみることが大切だという意味で「119、百聞は一見にしかず」、疑問を持ったり考えたりすることが大切だという意味で「111、人間は一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である」、本に頼らないで自分で実際に確かめることが必要だという意味で「144、論語読みの論語知らず」など。
小学6年生 11.3週 誰もがよく知っている(感)
内容:「もも太郎」に見られるような日本人にとっての原風景とは、森林と川に囲まれた扇状地の集落である。東アジアの季節風地帯に属し、気候が湿潤であるため豊かな森林と川に恵まれた日本では、住民の生活は森と川の恩恵のもとに営まれた。里山は生活資源を提供し、また、川は良質な生活用水を提供してきたのである。里山が長く維持されてきた理由に、必要な時に必要な分だけを求める摘み取りという収穫方式があった。また、自然への畏敬の象徴として、集落一帯の環境保全の急所ともいえる場所に鎮守の森があった。これは、信仰の場であると同時に保存林にもあたる聖域でもあった。
解説:昔の日本人が持っていた自然への畏敬とは反対に、この百年近くの間に、自然への破壊が急速に進みました。森林伐採による崖崩れや土石流の発生、熱帯雨林の大規模な焼畑によるCO2の発生などは、自然への畏敬を忘れたおごる人間たちに対する自然からの報復!? かもしれません。
田舎などに行くと、「おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に」という景色がまだ残っているところがあります。ちょうど、映画「となりのトトロ」に出てくるような風景です。みなさんのうちの近くにも神社などがあるでしょう。そこには、大きな木がうっそうと茂っています。昔の人は、神社に地域の自然を守る役割も持たせていたのでしょう。
「森は生きている」(講談社)によると、木曽のきこりは、木を切る前にその木にしめなわをはりお酒をささげて山の神様にお祈りをしたそうです。信州には、「タラの芽は、三番芽をつむな」という教えが親から子へとうけつがれています。こだまは漢字で木魂や木霊と書きます。昔の人は、木の魂が「やっほー」と返事をしてくれると考えていたのです。
映画「もののけ姫」を見た人は、似た例を映画の中からさがしてもいいかもしれません。
ことわざ:「45、剣によって立つものは剣によって滅ぶ」など。
光る表現(小4)
1999年11月2週(小5−小6は来週)■
友理絵さん(ああて/小4)の作文より(とこのん先生/10.3週)おいしいあきのものをたべるのはいいと思うしきれいな音やきれいな物いっぱいある秋。わたしは、秋が大すきです。 評:草花に限らず、昆虫や食べ物など、本当にたくさんの「秋」を見つけてくれました。自分の周囲に目を向け、とても感性豊かに季節を感じ取りながら楽しんでいることがうかがえます。
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洸さん(あてす/小4)の作文より(洋子先生/10.2週)もしも、ぼくがお米だったらそまつにする人に向かって「やだよ−。お米は、日本人の大切な主食だから捨てないでよ−。」といっていたかも知れません。ぼくも、食べきれなくて捨ててしまうときがあるけれど、これからは、たべられる程度によそいたいと思います。評:お米は日本人にとってを読んでの感想です。おこめの気持ちを代弁し、これからの君の心構えまで発展させていったところがとてもよかった。
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淳一さん(あとは/小4)の作文より(ももんが先生/10.3週)ぼくが通る通学路に田んぼが集団になっているところがあり、そこに一本のほそい水田があります。そこのいねは、すごく美しいです。たぶんそこの水田の水がきれいなんだと思います。評:澄んだ観察力の光る一文です。「たぶん」を使ってよく考え、とてもいい発見をしましたね。
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寛史さん(あなに/小4)の作文より(洋子先生/10.2週)僕がどんぐり笛を吹いているとおかあさん、おにいちゃんが寄ってきてかわるがわる吹きました。小さな笛は、休む間もなく、ピ−ピ−ピ−となり鳴りつづけていました。ぼくは、どんぐり笛を吹きながらもう一つ秋をみつけました。それは庭からただよってくるあまい金木せいのかおりでした。評:どんぐりで今年は、どんぐり笛をつくったのですね。どんぐりの実をくりぬいて口に持っていった時にごまのにおいがしたそうですね、(ここでは前半の作文は、省略しました)これが秋のかおりか?とおもいながらふいてみたときの描写もよくかけていました。親子三人でかわるがわるどんぐりぶえを吹いている姿が目に浮かんでくるようです。結びがまたもうひとつの秋をみつけたところで終わっていていいですね。先生のところにもあまい金木犀のかおりがただよってくるようです。
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ゆうちゃんさん(あにみ/小4)の作文より(ももんが先生/10.2週)ふと、書さいのけい示板を見ると、「親子で米づくりにちょう戦」の手紙がはってありました。「春にぼくが植えたなえが、冬にはもう食べられるんだなあ。」目の前に白いごはんがうかんできました。評:とても上手な作文の結びですね。作文を読んだ後、何だか、ふっくらたけたおいしいご飯のにおいがしてきそう(^o^)。
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カヤケムさん(あまく/小4)の作文より(ももんが先生/10.3週)ほんとに水田が小さなダムなら、日本には、何万何千こもダムがあることになるなあと思いました。そしたら日本は、ダムだらけになるなと思いました。評:カヤケムくん、とても良いことを発見したね。さすが〜!(^o^) 。
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雅貴さん(あめす/小4)の作文より(ももんが先生/10.3週)ぼくの朝食は、ほとんどごはんです。おかずは、なっとう、おみそしる、おつけものが多いです。お父さんは、いつもパンです。なぜおいしいごはんを食べないのか不思議です。お父さんは仕事が休みの日の朝は走ってきてごはん(朝食)を食べるんですが、パンです。ぼくは心の中で、「おなかすかないの」と思いながら見ています。評:気持ちをすなおに表現することができました。心の中の声がとても生きていますね!
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直茂さん(ねさ/小4)の作文より(ももんが先生/10.1週)「バシッ」と、いう音とともにボールがとびました。それで友達はツーベースヒットで出るいしました。次は、ぼくの番で、「バクバク、バクバク」と、はげしい音がしました。評:音がとてもうまく表現できましたね。直茂くんの心臓のこどうが、本当に「バクバク」伝わってきましたよ!
来週11.3週のヒント(中学生以上)
中学1年生 11.3週 「ああすれば、こうなる」(感)
内容:現在の中には「予定された未来」も含まれる。本当の未来とは何の予定もない未来である。現代社会は、子供たちの「定まらない未来」を奪っているのではないか。
解説:現在のような高度に管理された社会にいると、人生にも教科書や予備校のようなものがあって、時間割やカリキュラムのようなものが立てられると考えがちです。ところが実際には、人生は行き当たりばったりと試行錯誤の連続です。その行き当たりばったりに生きている最中にこそ生きている面白さがあると考えられればいいのですが、つい、現在は未来のための準備期間だという考えてしまうことが多いと思います。未来のために現在を犠牲にして生きるのではなく、今この瞬間を生きていくことの大切さ、ということで主題化していくと書きやすいと思います。
名言は「61、人が旅行するのは……」「88、私たちの人生は……」「21、子供は大人を小さくしたものではなく……」など。
中学2年生 11.3週 このところ、ドストエフスキー(感)
内容:ドストエフスキーやファーブルなど20年以上も前に読んだ本をもう一度読んでいる。古典とは、人間の本質を、その時代の素材を用いて表現しているものだ。現代の素材でないことがかえって、抽象の骨組みをはっきりさせている。
解説:流行のものよりも古典のほうがよいという意見。流行のものは本にしろゲームにしろ一時期大いにもてはやされても、寿命の短いものが多いようです。自分の読んだ本で、「ずいぶん昔の本だが、心に響いてくる」という例などを考えると実感がわくと思います。
名言は、くりかえし読むことが大切だという意味で、「39、精読とは……」。いい本を読むためには漫画を片づけておこうという意味で「2、悪書を読まないことが……」。名言以外にもことわざで、「温故知新」「亀の甲より年の功」「腐っても鯛」なども使えそうです。
中学3年生 11.3週 昔話の研究を(感)
内容:昔話に見られる民衆の知恵は、現代の生き方にも示唆を与える。「うばすて山」は老人の知恵の必要性を示している。「貧乏神」は、思い切りの大切さや貧乏への諦観を示唆している。また、昔話に見られる類話の多様性は、人生の問題の解決の多様性を示している。
解説:昔話を読んで、自分の生き方の参考にできた話などを考えてみましょう。「みにくいアヒルの子」などを読むと、今の自分の状態が満足できないものでも、将来に向けてがんばろうという気になるでしょう。
この長文全体について主題を決めるというより、自分の印象に残っているあるひとつの昔話に関連させて生き方の主題を決めていくといいでしょう。
高校1年生 11.3週 鯨や象は(感)
内容:鯨や象は、人とは別種の知性を持っている。鯨やイルカや象の知性は、科学技術を進歩させてきた人間の攻撃的な知性ではなく、自然の多様性を理解し適応しようとする受容性の知性である。
解説:人間の知性と鯨や象の知性は種類が違うだけで優劣があるものではない、という内容です。人間の知性は、愛情や調和を欠いた、自己中心的で攻撃的なものになりがちです。これを現代の問題として考えていきましょう。かつてのアメリカインディアンやオーストラリア原住民には、そういう調和ある知性があったという例なども参考になりそう。日本人は、どちらかな。
高校2年生 11.3週 A氏は、まず(感)
内容:昭和60年代以降の広告には、「モノ離れ」現象がおきたと言われている。しかし、広告の役割は依然として、新しい生き方と一体化した商品=モノへの欲求喚起である。
解説:最近の広告では、その商品がどれだけ役に立つかというような機能面での説明はあまりなく、その分、雰囲気を重視したものが多くなっています。昔からあるリポビタンDの宣伝などでも、何がどう効くのかよくわからなくても、「ファイトー! 一発」などという元気な広告を見ていると、何か効きそうだなあと感じてきます。
昔の広告は、より豊かな生活をというメッセージが豊富にありましたが、最近の広告はときどきすごくしょぼくれた場面が出てくることがあります。これは、「豊かな生活にあくせくするよりは、今手に入る身近な幸せに満足しよう」という生き方の提案なのかもしれません。
最近気になった身近な広告を例にして考えてみましょう。
高校3年生 11.3週 クリントンの(感)
内容:クリントンの税制案は、公平さを装っているが、人生の真実は、自己責任である。努力した人は報われるし、先に楽しむ人と後に楽しむ人がいても、その選択はその人の責任である。
解説:貧富の差が激しくなっている米国では、貧しい人を助ける税制が必要になっているのかもしれませんが、いつの世の中にも自分の責任を社会のせいにする人はいます。また、ある結果を得るためのその人の努力を評価せずに、結果の違いだけを見てやきもちを焼くという風潮は、どこの世界にもあるようです。
高校生の場合は、勉強や成績などが身近な話になると思いますが、この長文にあるように経済の問題で論じていってもいいでしょう。機会の平等は正当な競争の前提ですが、結果の平等を求めると、正しい競争を歪めてしまうことがあるようです。
大学生社会人 11.3週 均衡、たえざる成長への(感)
内容:ニューヨークのダウ平均は一万ドルを突破した。利益をあげていないベンチャー企業が将来の有望性だけで高値をつけている現状は危うい。わずかの技術革新で、これまでの長い歴史を持つ企業を上回る株価を持つということは、その技術革新もすぐに新しい技術革新にとってかわられるということだからだ。
解説:アメリカのベンチャー企業のいくつかは、利益を出していないうちから高い株価をつけ、その株高をもとに他企業を合併し、更に株高を演出するというような状態になっています。
人生でも、「濡れ手に粟」でつかんだものは失うのもまた早いという原則があります。時代の流れをよく見極めていくことも大事ですが、地道に実力をつけていくという生き方もそれ以上に大事です。本当は、両方できればいちばんいいのでしょうが、目先の利く人は地道さが足りず、地道に努力する人は視野が狭いというところがあるようです。
社会の問題だけでなく、自分の生き方の問題にして考えていくといいでしょう。
光る表現(中学生以上)
1999年11月2週■
魔法使いさん(あちほ/中1)の作文より(スズラン先生/10.3週)「経験は最良の教師である」という。道具を使って得た知識を、自分の力でやり遂げるばねにしたいと思う。評:私達は、道具に使われずに、使いこなす立場でいたいですね。
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サイコロさん(あつと/中1)の作文より(洋子先生/10.3週)おなじようような物に、原子力発電所がある。原子力発電は、僕たちの生活には欠かせないものだ。だが一回事故を起こすとまわりの人間だけでなく、その周辺の動植物にも被害が及ぶ。最近あったこでは、東海村の原子力研究所から放射能が漏れ出したことだろう。この事故が起きた原因は、研究所の職員のミスだ。これは、「カメラマンは、レンズのほこりを払う前に目のほこりを払わなければいけない」のと同じだ。このように、科学には、危険がたくさんあるがその使い方や扱い方をまちょがわなけえば、必ず役く立つであろう。評:パソコンの二千年問題とともに先日の東海村のウラン臨界事故のことをとりあげたのは、とてもタイムリ−なよい実例でした。科学の最先端でゆくべき原子処理が最も原始的な手段で処理されていたということ。長年にわたって黙認されてきたことには、呆れるとともに恐ろしさと怒りさえ覚えますね。科学的には、きわめて未知の分野です、原子力に対する不信もますますたかまっていくことでしょう。一日も早い安全対策の樹立をしてもらいたいものですね。
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愛さん(たの/高1)の作文より(きょうこ先生/10.3週)「理屈=周りの意見よりも、自分の物語=自分の出した考えが大切」 愛ちゃんの自作名言だね! 長文に出てきたキーワードをじょうずに自分の言葉に作り替えることができていたね!!
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K.Kさん(きそ/高2)の作文より(スピカ先生/10.1週)無理をしない生活はどんなものだろう。する事は、自分の能力の範囲内の事のみ。(略)つまり、何かに新しく挑戦することは、少なからず無理がつきまとう、ということである。どんな小さな事でも無理して挑戦してこそ成果が出るのだ。 評:無理が良い悪いだけでなく、「無理が必要な場合」を、うまく浮かび上がらせた
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吉見さん(こと/大3)の作文より(森川林先生/10.3週)私は何も「日本文学」に固執しなくても良いと思う。それよりも「桃太郎」や「金太郎」「浦島太郎」「猿蟹合戦」のような日本独特の「童話」を日本人共通の文化的概念にしてはどうか。親しみやすいし、子供の教育にもなる。西欧人は聖書を持ち歩く。二十一世紀の日本人は「童話」を持ち歩くかもしれない。評:実際にできそうなところからスタートするのが大事だよね。