言葉の森新聞
2014年12月2週号 通算第1349号
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森新聞 |
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■暗唱力がつくと作文力読解力思考力がつく(つづき) |
【前号まで】 …… しかし、この暗唱にも弱点があります。その一つは、電話指導による暗唱チェックだと、どうしてもチェックが不十分になるということです。 もう一つは、1ヶ月で約1000字の文章が暗唱できたとしても、それで終わってしまったのでは、やはり定着度が低いということです。(つづく) ==== 1ヶ月かけて暗唱できるようになった文章も、次の1ヶ月の暗唱ができるようになるころには、もうかなり忘れています。本当は、無意識のうちに口ずさむことができるようになるぐらい定着するのがいいのですが、1ヶ月ごとに終わっていたのではなかなかそこまでは行きません。 そこで、今考えているのは、第一に、寺子屋オンエアなどで画面を共有する形で暗唱をチェックできるようにすることです。 第二に、毎月の1000字の暗唱を1年間かけて合計12000字まで通して暗唱できるようにすることです。 暗唱をすると、どういう力がつくかというと、第一に作文力です。どんなテーマが出ても的確な表現と内容の伴った文章を書くことができるようになります。 第二は読解力です。理解の枠組みが大きくなるので、全体の内容をすばやく読み取れるようになります。 第三に、これは付随的なことですが、覚えることが苦にならなくなります。今の勉強のほとんどは記憶力を必要としますが、記憶することが負担にならなくなります。 第四に、これがいちばん大事なことだと思いますが、思考力が育ってくるのです。暗唱の力がついてくると、一つの言葉からいろいろな連想が生まれるようになります。そのために、個性的な考えが生まれやすくなるのです。 ※暗唱の仕方のページは今改訂中です。 http://www.mori7.com/mori/mori/annsyou.html |
■学力をつけるには、正しい勉強法がすべて |
子供が小学校低学年のころは、勉強法も何もありません。どんな教材でもよいので、ただやれば実力はつきます。 計算練習でも、漢字書き取りでも、誰に教えてもらっても、どの教材でやっても、どのようなやり方でやっても大差はありません。 問題は、小学校中学年のやや複雑な問題をやるようになってからです。このころから、勉強法の差が出てきます。 更に、小学校高学年になり、入試問題の一部をやるようになると、もう勉強時間の長さよりも、勉強法の差の方がずっと大きくなります。これが、そのまま、中学、高校と続いていくのです。 成績のよい子というのは、家庭でよい勉強法の習慣がついている子なのです。 では、そのよい勉強法というのは、どういうものでしょうか。 第一は、明るく楽しく勉強することです。叱られたり注意されたりしながら、暗く真面目に長時間勉強していてはだめです。 第二は、1冊の教材を徹底して(というのは繰り返し5回ぐらい読んで)、その内容を百パーセント自分のものにすることです。 第三は、問題は解くことに力を入れるのではなく、答えを読むことに力を入れることです。その方が何倍も能率のよい勉強になります。 第四は、同じことを同じように毎日やることです。日によって気分を変えて目新しいことをするというのは、かえって身につきません。 第五は、基本となる「読書」「算数」「国語」(中学生なら「英語」も)に絞って勉強することです。 |
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第六は、その基本の勉強と並行して、将来大事になる「作文」に力を入れることです。 そして、最後に、勉強が終わったあとは、よいところを必ず褒めてあげることです。 「もう少し字をていねいに書かないと」などという注意は、決して言わないことです。 注意して直るぐらいなら、世の中にいる子は、みんな天才になっています。先生が注意しても、親が注意しても、誰が注意しても直らないから、今の状態になっているのです。 直すよりも、今できているよいところを伸ばすのが先です。よいところを伸ばしていけば、悪いところはそのうち気にならなくなってきます。 ところで以上のことは、文章を読んだだけではなかなか実行できません。 勉強の方法というのは、習慣化されているので、これまでのやり方を変えるというのはかなり難しいのです。 では、どうしたらよいかというと、実際に、よい勉強法で勉強している子のやり方を見ることです。 その勉強法を、これから言葉の森で広げていきたいと思っています。 |
■受験志望理由書の書き方(過去の記事の再掲) |
志望理由書の書き方ということで、書店にはいろいろな本が出ています。書く内容は、それらを参考にしていただくことにして、ここでは、それらの本にはあまり書いていないことを説明したいと思います。 第一は、子供任せにしないことです。志望理由書は本人が書くという建前になっていますが、小6や中3の子供に任せて、いいものが書けるはずはありません。と書くと言いすぎですが、ここはやはり親が全面的に協力して内容を煮詰めていくことです。 第二は、明るい内容、面接で話題にしてほしい内容に絞ることです。明るさというのは、志望理由書以外に、作文の試験の場合も重要です。文章がうまければよいというのではなく、自分の好ましい人柄がにじみ出るように書いていくことが大事です。 第三は、勉強の話を中心にしていくことです。学校は勉強をするところです。それなのに、部活や友達や趣味の希望をたっぷり書いてしまう人がいます。学校で青春を楽しみたいという気持ちはわかりますが(笑)、勉強をしにいくのだという原点を大事にしておかなければなりません。その学校に入ったら、どんな勉強を何のためにどういうふうにやっていきたいかということを書いていくことです。 第四は、書くスタイルです。よく直接鉛筆で書いて、手書きの原稿を推敲している人がいますが、それでは十分な推敲はできません。まず最初に、自分が普通に書くぐらいの字の大きさで、読み手にとって見にくくない程度の文字で2、3行手書きで書いてみます。そして、1行の平均的な字数を数えます。そのあと、その字数と行数に合わせてパソコンで下書きを書いていきます。パソコン上で推敲を十分に行ってから、最後は手書きで清書をするようにします。 第五は、書いたものは、必ず書いた本人以外の他人に見てもらうということです。本人がアピールしたいと思っていることと、相手に実際にアピールすることとは違います。どういう内容がアピールするかというと、ひとつは挑戦したことがわかる話、もうひとつは継続したことがわかる話で、これらに客観的な裏づけのあるデータを入れて書きます。客観的なデータとは数字や固有名詞のことで、例えば、「○年間、○○の委員長を務め、○○という工夫をして、○○パーセントの成果を上げた」というような書き方です。 志望理由という言葉から、自分の希望を中心に書いてしまいがちですが、未来の話はだれも同じようなものになりがちです。自分らしい過去の実績を盛り込みながら書いていくことが大事なのです。 |
■受験直前の作文小論文(過去の記事の再掲) |
今回は、受験直前の取り組みの説明です。 まず、作文小論文の試験では、どういう課題が出るかわかりません。ここがいちばん不安なところです。この不安をなくすには、次のように考えることが大切です。「運がよければ、いい課題が出るだろう」。 書きやすい課題が出れば自分の普段の心がけがよかったからだと考えます。しかし、書きにくい課題が出たときは、「こんなに書きにくいのだから、ほかの人もみんな苦労しているだろう。だから自分は自分のベストを尽くせばいいのだ。ラッキー」と思えばいいのです。 さて、直前までの勉強の中心は、これまでに書いた自分の文章です。どんな参考書よりも自分の書いた文章がいちばんの財産です。書いたものを何度も読み直し、自分なりによく書けているところに赤ペンで線を引いていきます。それを試験の直前まで続けていってください。よく書けているところとは、切れ味のいい表現、感動のあるエピソード、味のある会話などのあるところです。 試験の当日には、自分の書いた文章のファイルと1冊の本を持って出かけます。本は、空いている時間などに読みましょう。小説よりもノンフィクションの方がいいでしょうが、自分の好きなものでかまいません。これは、面接のときも同じです。何気なく手に持っていった本が、作文試験や面接のときに意外と使えることがあります。 試験の会場でも、時間があれば、これまで自分が書いた文章のいいところだけを読んでおきましょう。 試験が始まったら、課題を見て、これまでに書いた文章の使えそうなところを簡単にメモします。作文に、その使えそうなところが三つも入れば大成功です。もちろん、使えそうなところが何もなくても大丈夫です。これまでに書いたものが頭に入っているので、書いている間に自然に続きが出てきます。 書いたあとは、もちろん読み返し。1、2文字の訂正なら消しゴムで、それ以上の長い訂正は消しゴムを使うと汚くなるのでなるべく訂正をしないように工夫していきましょう。原則として消しゴムは使わないつもりで書いていきます。これは普段の練習のときも同じです。 試験までにまだ時間があり、もう少し書く練習をしたいという場合は、自分がこれまでに書いたものと同じテーマで同じ内容を時間内に書く練習をしていってください。新しい課題に取り組む必要はありません。書く時間が取れないときは、頭の中で構成を考えるだけでも練習になります。 それでは、試験まで、これまでに書いたものを何度も読み返してがんばってください。 |
■国語は問題を解くのではなく何度も読むこと |
国語の勉強の仕方と、算数数学の勉強の仕方はかなり違います。しかし、それを同じようにやっている人が多いようです。 国語の勉強というと、漢字の勉強をするか、国語の問題集を解くかするという人が多いと思います。しかし、問題集を解いても、ほとんど力はつきません。問題文を読むというところだけは役に立ちますが、問題を解くという作業はほとんど役に立たないのです。 しかも、問題を解くには、かなり時間がかかります。時間がかかるので、中には、問題を解くことだけ熱心にやって、やっと問題を解き終わると、答え合わせもせずに勉強をしたことにしてしまう人もいます。 読解の選択式の問題で大事なことは、合っている選択肢を探すことではなく、合っていない選択肢のどこが合っていないかを探すことです。しかし、問題を解く勉強では、なかなかそこまで気が回りません。 では、どうしたらよいかというと、問題集に先に答えを書き込んで、その問題と答えをまとめて読んでいくのです。小学生の場合は、黙読では斜め読みになり眺めるだけになってしまうことも多いので、音読で読むようにします。 ところで、子供が音読で何かを読むと、親はついその読み方が気になって注意をしたくなるものですが、読み方についての注意は原則としてしません。 注意をして直るという効果よりも、注意をして親の前で読むのを嫌がるようになるという逆効果の方がずっと大きいからです。 そして、どんな下手に思える読み方であっても、「読むのがだんだん上手になってきたね」と褒めてあげます。そうすると、読み方は、注意をするよりももっと早く上手になってきます。 さて、問題を解くのではなく、問題と答えを読むのが大事なのですが、この読むことも1回読んでおしまいというのではやはり力はつきません。 何度読んだらよいかというと、1冊の問題集の最後まで行ったら、また最初から今度は音読で読んでいくという形で、5回繰り返して読むのがよいのです。 この繰り返し5回というのは、あらゆる勉強に共通する方法です。というのは、難しい問題や文章であっても、3回繰り返すと大体わかるようになり、4回目でほとんどわかるようになるということがあるからです。 人間の頭には、時間をかけて繰り返すと自然に理解できるという力が備わっています。一度か二度じっくり説明してわからせようとするよりも、もっと簡単に、ただ日をおいて5回繰り返すという勉強をしていけばよいのです。 このやり方で、難しい問題集をどんどん読んでいくのです。 国語力は、難しい文章を読まなければ力はつきません。 しかし、難しい文章がいいからといっても、読書で難しい文章を読ませようとすると、読書量が少なくなります。読書は、自分の好きな本をたっぷり読んでいくことが大事ですから、読書で国語の勉強を兼ねるというようなことはしない方がよいのです。 ただし、易しい読書であっても、本を読んで登場人物に共感する機会が多いと、物語文の読解力がつきます。 説明文の読解力は、易しい読書ではつきません。しかし、難しい読書では読書がはかどりません。 問題集の文章は難しいものが多いので、問題集読書を、通常の読書と並行する形で読んでくとよいのです。 |
■算数数学はできなかったところだけを何度も解くこと |
算数数学の勉強の仕方は、第一に、基礎をしっかり身につけること、第二に、計算力をつけること、第三に、難問を繰り返し解くことです。 小学校低中学年のころは、大体の人が基礎力と計算力に力を入れるので問題はありません。問題は、高学年になってからです。 算数数学は、受験で差がつきやすい科目です。そのため、受験生を受け入れる学校の方でも、点数に差をつけるための難問作成に力を入れます。そのため、学校の教科書レベルの勉強ができても、受験の算数数学には対応できないことが多いのです。 受験の算数数学力をつけるためには、難問の載っている問題集を解く必要があります。しかし、この場合も原則は1冊を5回繰り返し、解けない問題が1問もなくなるまで完璧に仕上げるということが大切です。 難問になりやすいのは、図形の問題です。文章題もそれなりに難しいものはありますが、手順を追っていけば解く見通しが立つことが多いものです。 文章題の難問は、文章のまま考えるのではなく、手を使って図示してみることが大事です。文章に書いてあることを、何しろ図や絵にして書いてみると、途中から全体像が明らかになってきます。気軽に図や絵をかけるということは、難しい文章題を理解するために大事なことですから、幼児期からお絵かきのようなものに慣れておくことです。 図形の問題の難しいものは、問題を見ても解く見通しさえ立たないものがかなりあります。それは、図形の問題というものが、一種のパズルのようなもので、わかっていれば解けるが、わかっていなければ解けないという性質のものだからです。 図形の問題に慣れるためには、図形の難問を繰り返し解くことです。図形の難問を何度も解いていると、だんだん図形問題のコツのようなものがわかってきます。 図形問題は、理解する勉強ではなく、慣れる勉強です。ところが、ほとんどの人は、勉強とは理解すればわかるものだと考えています。だから、できない問題があると、すぐに人に聞くということになりやすいのです。 人に聞いて教えてもらうというのは、一見よい方法に見えますが、勉強は理解ではなく慣れだということから考えると、聞いてわかるというのは、実はあまりよい方法ではありません。それは、簡単にわかると、わかった気がするだけで、しばらくたつとまたわからなくなるからです。 慣れる勉強で大事なことは、繰り返し解くことです。 よく問題集に直接計算式や答えを書く人がいますが、これでは繰り返しの勉強はできません。問題集は、○と×をつけるだけにして、計算式や答えは、ノートに別に書きます。 ノートに書いた計算式や答えが間違っていた場合、消しゴムは使いません。間違ったところには×をつけておきそのまま残しておきます。そして、その横に正しい計算式や答えを書き写します。そのために、ノートはできるだけ広々と使っておくことが大切です。ほとんどの子供は、ノートを狭く使うので、ノートの使い方も事前に教えておくことが必要です。 このようにして、その問題集の最後まで終えたら、2回目は、同じ問題集を最初から、今度は×になったところだけを解いていきます。 小学校低中学年のころは、一度×になった問題でも二度目には解けるようになっていることが多いものです。それは、問題自体がそれほど難しくないからです。 ところが、高学年になり難問を解くようになると、一度できなかったところは、二度目もできないことが多いのです。そこで、また答えを見て解法を確認しておきます。そして、二度目の問題集も終えたら、三度目に挑戦です。ところが、一度目と二度目にできなかった問題は、三度目にもできないことが多いのです。ここで、多くの人は、自分が算数数学が苦手なのではないかと思ってしまうのですが、そうではありません。それは、単にまだ慣れていないだけです。 問題集を四度目に解くころになると、それまでできなかった問題が急にできるようになってきます。多くの場合、五回繰り返せば、1冊の問題集を完璧に仕上げることができます。 このように、できなかった問題だけを繰り返すというのが、算数数学の勉強の仕方の鉄則ですが、この勉強法は実はかなり苦痛が伴います。 子供は、できる問題をやっていた方が楽しいので、できない問題だけを繰り返すということがなかなかできません。そのため、何冊もの問題集をできるところだけやって勉強したような気になってしまう人が多いのです。 |