言葉の森新聞
2019年8月3週号 通算第1575号 https://www.mori7.com/mori |
森新聞 |
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■【再掲】【重要】サマーキャンプ中の電話受付時間の変更 |
サマーキャンプ実施期間(7月20日~8月10日、8月17日~8月24日)の電話の受付時間は、平日午前9時から午後7時までとなります。土曜日は通常どおり午前9時から正午までです。 振替授業の受付時間も平日は、午後7時までとなります。 1時間早い終了になり、ご不便をおかけしますが、よろしくお願いいたします。 |
■子供の教育の目標は成績ではなく個性と実力と不屈の精神を育てること |
昨日の保護者懇談会で、小学1年生の生徒のお母さんから、将来の勉強の方向について質問がありました。 「今の受験の仕組みだと、どうしても子供に詰め込みの勉強をさせざるをえない。私(そのお母さん)は中学受験を経験をしてそのマイナスの面も感じているから、子供にはそういう勉強をさせたくないとは思っている。しかし、将来はどうなるかは分からない」というものでした。 これは、小学生の子供を持つ多くの人が迷っていることだと思います。 中学受験をするためには、小学校高学年で受験用の詰め込みの勉強をする必要があります。 受験というのは、もともとそういうもので、詰め込みの勉強しなければいい成績は取れないようになっています。 だからこそ、この受験によって基礎的な学力がつくとも言えます。 中学入試の場合の場合、漢字の書き取りの力などが完成します。 しかし、そのために費やす時間は大きすぎるというところに問題があると多くの人が感じているのです。 ところで、今の社会では職業は卒業した大学によって決まるところがあります。 大企業に入るためには、高学歴が必要です。 安定した大企業に入ることが、その後の安定した生活を支える土台となります。 しかし、ここで大きく考えを変えていく必要があるのです。 人生のゴールとして大企業に入るという選択は、今の時点では福利厚生も充実しているし、研修制度も充実しているので、待遇もよくやりがいもある仕事のように見えます。 しかし、大きな安定したところほど、組織が細分化されていて、全体を見るような仕事がしにくいところがあります。 また、大企業といえども、今の技術革新の変化の速さの中では安泰ではいられません。 今すぐどうということはなくても、子供の社会人生活の数十年の間には必ず大きな変化があるはずです。 すると、中学で受験をするか、高校で受験をするか、大学で受験をするかということはむしろ二の次で、将来子供が自分の力で何事かを成し遂げていくための実力をどうつけていくかということが大きな目標になってくるのです。 自分で何かをするためには、学ぶ力はもちろん必要ですが、それ以上に、個性があること、決めたことを続ける力があること、他の人と協力ができること、幸福に生きる力があることなどが重要になってきます。 ですから、受験も、その子を成長させるものとして意味があるかどうかということが大事なのです。 そのためには、塾に丸投げにせずに、家庭で志望校の研究と子供の得意不得意の分析をして、宿題なども取捨選択してやらせるようにすることです。 少なくとも、あまり早い時期から塾漬けにするのではなく、できるだけ短期間で集中的な受験勉強をすることです。 また、受験勉強中にもかかわらず、読書生活は一定の時間を必ず確保しておくことです。 受験は人間にとって大きな勝負の機会ですが、それはこれから数多くある勝負の一つでしかありません。 受験で大きな方向が決められてしまうように思う人もいると思いますが、それよりももっと大きな方向というものが本人の個性と実力と不屈の精神というところで決まってきます。 だから、親は子供にそういう本当の実力と個性と、どんなことにも負けない精神を養うように育てていくことを第一の目標と考えていくといいのです。 |
■音読の文章の種類について――子供が毎日自分でできる説明文の音読を中心に |
音読の文章の種類について、小学1年生の生徒の保護者の方から相談がありました。 それは、課題フォルダに載っている難しい説明文の文章よりも、学校の教科書にあるような読みやすい文章を音読した方がよいのではないか、というとことでした。 音読の長文については、読みやすさや内容の面白さというものももちろん大切です。 しかし、もっと大切なのは音読の習慣をつけるということです。 言葉の森の課題フォルダの音読の長文には、小学1年生から高校3年生までの長文が載っています。 小学3年生になると、その音読した文章をもとに感想文を書く練習をするようになります。 すると、毎日の音読の習慣が、そのまま感想文の課題の週の準備になります。 音読を毎日の習慣として行うようにするためには、お父さんやお母さんが工夫して学年に応じた音読の文章を探すような手間をかけない方がやりやすいということなのです。 教科書の文章は、必ずしも音読のために作られているわけではありません。 中には、音読に適さない章もあります。 それをそのつどお父さんやお母さんが判断して、子供に指示をしてあげるようになると、お父さんやお母さんに聞かないと音読ができなという場合が出てきます。 すると、習慣をつけることが難しくなるのです。 小学1年生のころは、お父さんお母さんが子供の勉強の仕方について、いろいろな工夫をすることができます。 しかし、習慣化したいものについては、できるだけ毎日のルーティンワークとして、子供が誰にも聞かず自分でやれるようなものにしていくことが必要なのです。 また、今の子供たちの読書環境は、読みやすい物語文が中心で、説明文の文章を読む機会が少ないという傾向にあります。 読書に必要な二つの要素は多読と精読で、精読とはゆっくり読むことではなく繰り返し読むことです。 その繰り返して読む文章として必要なのが、やや難しい説明文の文章なのです。 |
■未来の教育は紙ベースのオンライン教育 |
現在の教育の問題点は、既に多くの人によって共有されています。 それは第一に、従来の一斉指導型の教育では、能率のよい学習が成り立たなくなっていることです。 その原因のひとつは、各家庭の経済的文化的な差が大きくなったことです。 しかし、その教育格差を解決するための習熟度別教育は、コストがかかりすぎるという問題があります。 ここまでは多くの人が述べていることです。 しかし、実はこの問題は、既にテクノロジーの力によって解決される見通しがついています。 それは、ブレンデッド教育と呼ばれるようなオンラインの個別教育を取り入れた学校の集団教育を進める動きです。 だから、本当の問題はすでにその先にあるのです。 というのは、ブレンデッド教育によって能率よく学ぶテクノロジーができたとしても、人間の意欲は能率だけで活性化するものではないからです。 意欲は、人間どうしの交流によって生まれます。 もう一つの問題は、能率とコストを優先したオンライン教育は、デジタル的な教育になりがちだという点です。 デジタルの教材は、分離された知識を身につけるには有効です。 しかし、学問の世界は、知識の単なる集合でできているのではなく、一つの体系としてできています。 人間が真に自分のものとして学ぶべき知識は、デジタル化されたものよりも、アナログの手触りのある紙ベースのものである必要があるのです。 そして第三に重要なことは、学習する内容です。 これから求められる教育は、従来のような確立された既成の知識体系を身につけることではなく、その土台の上に自分の個性を発揮することです。 学習の方法以上に、何を学ぶかという内容が問われているのが現代の教育なのです。 以上のことを机上の理屈として述べるだけではなく、言葉の森は実践的にこれらの問題を解決したいと思っています。 それが、現在行っている、寺オン作文クラス、発表学習クラス、自主学習クラスの教育なのです。 |
■算数の勉強 |
子供たちの算数の勉強を見ていると、かなりの子に共通点があります。 それは、算数を考える勉強として行うのではなく、計算の作業として行っていることです。 その計算の結果、答えが合っていれば○、合っていなければ×という勉強になっているのです。 こういう勉強をしている子にとっては、算数の勉強はあまりおもしろくないものだと思います。 もっと考える勉強をしなければならないのに、それが単なる計算の勉強になっているのは、学校のテストや入試で、煩瑣な計算の問題が出されているからだと思います・。 もうひとつは、難しい問題は、すぐにわからないということでおしまいにしてしまうことです。 そして、わかる問題だけを解いて、算数の勉強をしたことにしていることです。 本当は、難しい問題にぶつかったらすぐに解法を見て、その解法を理解する勉強にすればいいのですが、解法を見て考えるという発想がありません。 これは、学校や家庭で、算数を考える勉強として行わず、答えが合っているかどうかという勉強をしているせいだと思います。 算数は、「わかる」と「わからない」がはっきり分かれる勉強です。 特に図形の勉強は、わかる子はわかるが、わからない子は全くわからないという差があります。 だから、算数は一斉学習に最も向かない勉強で、個別に質問できる人が必要なのです。 |
■低学年の勉強のコツは目先の面白さで引っ張らないこと |
最近人気のある問題集に、「うんこ漢字ドリル」というようなものがあります。 子供は面白がって手に取りますが、こういう子供の興味を引くようなもので勉強をさせない方がいいのです。 読書でも、子供が好むものに、怖い話というものがあります。 これも、子供が興味を持つからと言って与えるのはやめたほうがいいのです。 なぜなら、それは岡潔さんの言う人間の無明に根ざした興味や関心だからです。 (「無明」については、「どんな本を読むか。その前に読まない方がよさそうな本」https://www.mori7.com/as/3312.html をご覧ください。) 勉強の方法で最も大事なコツは、一冊の同じものを何度も繰り返して身につけることです。 繰り返しの回数の目安は5回です。 一冊の参考書を5回繰り返して読めば、大体のことは頭に入ります。 理科や社会の勉強は、この一冊の教科書または参考書を繰り返し5回読むということに尽きるといってもいいと思います。 (ところで、「東大首席が教える超速『7回読み』勉強法」では、繰り返しの回数は7回となっていますから、要は何度も同じものを繰り返すということが大事なのです。) さて、なぜ子供の興味を引くような問題集がよくないかというと、興味を引くことによって始めたものは、次にまた新たな興味を引くものを持ってこなければ続けさせることができなくなるからです。 そう考えると、この勉強法に、すぐに限界が来ることがわかります。 低学年の勉強で大事なことは、今の成績を上げることではなく、高学年になってからの勉強の土台を作ることです。 低学年のうちは、同じものを繰り返すことが勉強の基本だということを身につけることが最も大事なのです。 なるべく薄い問題集で、それを何度も繰り返し解くというような勉強をすれば、定着度が高まるとともに高学年になってからも同じ方法で勉強を続けることができます。 小学1、2年生は、親の言うことを何でも素直に聞く時期ですから、よい勉強のさせ方をすることを第一に考えていく必要があります。 今回、言葉の森が、公立中高一貫校や公立高校の受験対策の全教科自主学習クラスに力を入れるのも、そういう背景があるからです。 小学校低中学年のころの勉強は、どういうやり方をしても、時間をかければ誰でも成績は上がります。 しかし、勉強の仕方には、あとに続く勉強法と、あとに続かない勉強法とがあります。 公立中高一貫校の入試や、最近の公立高校の入試は、長い説明的な文章を読み取りそこから自分なりに考えることが要求されています。 こういう力は、単に問題集を解くような勉強からは出てきません。 例えば、発表学習クラスで自分なりの理科実験の結果を発表するというようなところで力がついてくるものです。 小学校低中学年のころから、同じものを繰り返すという勉強の基本を身につけ、それによって効率的になった勉強時間の余裕の部分を、発表学習のような思考力と創造力を必要とする勉強にあてるというのが、受験前の勉強の理想的なスタイルになると思います。 |