言葉の森新聞2005年9月1週号 通算第901号
文責 中根克明(森川林)
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■■9.1週は進級試験
9.1週に、作文進級テストを行います。課題フォルダの字数・構成・題材・表現・主題の●印が全部できていることが合格の条件になります。(表現の項目などで「たとえ」と「ダジャレ」など二つ以上の項目が指定されている場合はどちらかができていればその項目は◎です)。キーワードと字数が採点の基準ですので、指定された字数以上で必要な項目が全部入る作文を書いていってください。中学生以上の時間制限については、今回は採点の基準にしませんが、できるだけ時間内に書き上げる力をつけていきましょう。
手書きで作文を書く人は、項目ができたところにシールをはっておいてください。
パソコンで作文を書く人は、キーワードを入れておいてください。
小学生の場合は、提出する前に、おうちの方が字数と項目シールをチェックしてあげてくださるとよいと思います。
小学2年生までの生徒は、試験は行いますが、全員進級扱いで先の級に進みます。7月以降に受講を開始した生徒も、試験は行いますが、全員進級扱いで先の級に進みます。ただし、いずれの場合も、賞状は出ますので、できるだけ字数と項目ができるように書いていってください。
■■作文・小論文のコツ(1)
少子化の進行により、国公立大学でも一次募集で定員割れを起こし二次募集を行わざるを得ない学部が出てきました。私立大学は、一部の有名な大学を除いては、どこも経営困難に陥りつつあります。文部科学省は、大学入学希望者が大学の定員と同数になる時期を2007年度と試算しました。この結果、推薦入試の採用が、大学から高校、中学へと次第に低年齢化しているのが現代の入試の特徴です。
推薦入試の広がりに伴い、作文・小論文を試験として採用するところが増えています。また、企業の入試でも、文章力を評価する動きが強まってきました。
作文や小論文の勉強には、コツがあります。
いちばん重要なこは、まず読む力をつけることです。次に、当然ですが、書く力をつけることです。
読む力がなぜ大事かというと、作文には、その人の読む力が語彙力として反映してくるからです。
具体的な例は次回に。(つづく)
■■教育の力(3)
教育の果たす役割には、破壊性の克服と創造性の開発があると書きました。
実は、このほかにも、いくつかの重要な役割があります。その一つは、幸福の実現です。
私は、昔、大人はみなそれぞれに幸福に生きているのだと思っていました。自分があまり幸福を感じないで生きているのは若いからで、年を取ればだれでも幸福に生きられるようになるのだと考えていました。しかし、40歳を過ぎたころから、実は多くの人は幸福に生きていないのではないかということに気がつきました。不幸というわけではありませんが、小さい子供のころ、朝になるのを待ちきれなくて飛び起きた、そういう単純な幸福感で生きている人はほとんどいないようでした。だれも、生きることや生活することに慣れて日常生活に退屈しながら、そして愚痴や取り越し苦労や漠然とした不安を繰り返しながら、そしてそれらをテレビや雑談や多忙やレジャーでまぎらわしながら生きているようだったのです。
人間にとって大事なことは、生きていることが楽しいということです。それは、英語や数学や国語の勉強ができるということよりも、ずっと大切なことです。教育の順番で言えば、幸福の実現が最初にあって、そのあとに学力の向上が来るということです。
ところが、幸福の実現のように主観的なものは、今の教育では、個人の努力に任されています。しかし、このように大きな問題こそ、個人の取り組みに任せるのではなく、社会がその取り組みをバックアップする必要があるのです。そうでなければ、宗教がその役割を果すことになり、それは今日のような宗教間の対立を助長することにしかならないでしょう。宗教のいちばんの問題は神を信じていることです(笑)。およそ人間が何かを信じるとき、その人は人間ではなくロボットになっています。ロボット同士の間には、対話も民主主義もありません。最後には、どちらの神が正しいかという実力行使に頼らざるを得ないからです。
幸福の実現についての方法論は、まだほとんどありません。私は自分なりに自己流の方法を見つけましたが、それがほかの人にも当てはまるとは限りません。幸福になることを学ぶための授業や学校は、世界のまだどこにもないと思います。しかし、私たちが、幸福の実現こそ、教育の中で優先的に学ばれるべきだという共通認識を持てば、その教育技術における進歩は早いはずです。
■■オークヴィレッジ(ふじのみや/ふじ先生)
<<え2564み>> 先日新聞をながめていたら、おもしろい記事を見つけました。
言葉の森の長文集「ヤマブキの山」の6.2週に、『百年以上家具を……』という課題があります。小学生の人はまだ読んでいない長文ですが、中学2年生以上の人は覚えているでしょう。ここには、「本物の木を使い、本物の造り方をした家具は、本物の人間を育てるようになる。百年の木目は、いまだ未熟な私たちを、控え目だが確実にしっかり応援してくれるはずだ。そして、木の家具と対話しながらの日々は、ほんの少しずつだが、私たちの意識を変えていってくれる。」という、岐阜県にある家具作り工房の考え方が述べられていました。
その家具作り工房、「オークヴィレッジ」のことが、新聞のコラムの中で紹介されていたのです。
あ、この話、長文で読んだことがある!と、興味がつながった私は、さっそく「オークヴィレッジ」について調べてみました。
ここでは、ただ木の家具を作って売るだけではなく、森作りも行いながら、循環型の社会を目指したモノづくりが行われているそうです。
木の素材を生かしたものというと、素朴であたたかみはあるけれども、現代的で使いやすいデザインのものは少ないのでは……そのように思っていたのですが、これは私の無知でした。100年使いつづけても飽きず、しかも風格がにじみ出るように、実にうつくしいデザインがほどこされた小物や家具の数々。お箸、おもちゃ、椅子、机から、ステレオのスピーカー(ウィスキーの樽を使っているのでアルコールの作用で音響が熟成されるそうです)、そして住宅。どれをとってみても、作り手の木に対する真剣な思いがあらわれています。
製品だけではなく、自然学校や木工スクール、レストランやギャラリー、ホテルも併設されています。炭焼き窯もあるみたい! 小さな子どもから、おじいさんおばあさんまで、森に囲まれた環境の中で木を使った循環型社会を学べる場となっています。
また、誰でも参加しやすいように全国各地で「木の循環プロジェクト」と題した展示会や木製品即売会を行っていて、売上げの2%が広葉樹の植樹・育林を続ける「NPOドングリの会」に寄付され、森作りに還元される仕組みだそうです。
もし、近くでこの催しが行われているのに気づいたら、ちょっとのぞいてみるのもいいですね。東京では8月24日〜29日に世田谷の高島屋で開かれるそうです。
<<え2564み>> 音読や感想文の課題として読んでいた長文で、実際のニュースとなっているものは他にもあります。毎週の10分たらずのお電話の中ではお話できない、長文をめぐるあれやこれやの「豆知識」、見つけたらここでお知らせしていきますね。
■■自然の風の涼しさを(うるっち/かん先生)
みなさん、こんにちは。長かったはずの夏休みも残りあとわずか。みなそれぞれ、心の栄養となる様々な経験をしたことでしょうね。
さて、夏の暑い毎日をエアコンのきいた室内で過ごしてばかりだった人も多いことでしょう。ここ数年、私はエアコンなしの夏を過ごしています。「えー? うそでしょう? 」という声が聞こえてきそうですね。確かに暑いときもありますが人間の体とはすばらしいもので環境に適応する力があるのでしょう、すっかり慣れてしまいました。生まれたときからエアコンなしが当たり前になっている子どもたちも汗だくになりながらもとても元気です。家中の窓を開け放しているので、私が子どもたちを怒る声はご近所に筒抜けになってしまうのが困りものではありますが。(笑)
暑い時の冷たい飲み物は、たまらないごちそうですね。でも、冷たいものの取りすぎも体を冷やしてしまうのだそうです。冬場の冷えは、すでに夏から始まっているらしいのです。暑くて食欲がないからと冷たいものばかりを欲しがる毎日が夏バテの原因とも言われますものね。
思えば今の時代に生きる私たちは快適な暮らしにすっかり慣れてしまっています。人間の持つ本来のパワーを出し切れていないのではないかと思うこともあります。それほど暑さを感じない日にはエアコンを切って自然の風の涼しさを味わってみてはいかがでしょうか。
<<え2004/497み>>
■■戦争(コスモス/ほえみ先生)
<<え888み>>
8月といえば、思い出すのは祖父(おじいちゃんのこと)の話です。毎年、きまってこの時期になると祖父は戦争の話を聞かせてくれました。先生の両親は戦後の生まれなので実際に戦争を体験していません。だから祖父の話はとても貴重だったのです(子供の時は何で毎年同じ話をするのかな? なんて思ったときもありましたが。。。)。祖父たち家族が住んでいたのは東京の下町。だから東京大空襲の被害にまともにあったのです。戦争の話を聞くたびに胸が痛みました。そして「同じ人間なのに憎み合ったり殺し合ったりしなくてはいけないのはなぜだろう?」「みんな仲良く生きていければどんなにか楽しいだろうなぁ」と子供心に思っていました。以前、長崎や沖縄に行ったときも戦争が残していったとても痛ましい悲惨な跡に涙が止まらなくなりました。戦争で失うものは計り知れないほど大きいですよね。戦争に使うエネルギーがあるのなら、もっと世界をより平和により豊かにするエネルギーに変えられればどんなにいいでしょうね。みなさんはどう思いますか? 今もこの地球上では戦争に苦しんでいる人が多くいますよね。どうすればみんなが争うことなく、仲良くくらしていけるのかについて、お父さんやお母さんたちといっしょに少し考えてみてはどうでしょうか?
■■夏(イルカ/かこ先生)
<<えa/642み>> 毎日暑いですね。私は夏が大好きです。皆さんは、この夏をどうやって過ごしていますか。愛知万博に行く人もいると思います。ディズニーランドやディズニーシーに行くという人もいるかな。海や山に行く人もいるでしょう。もしかしたら、な〜んにも予定がないという人もいるかもしれませんね。
夏休みは、少し長いお休みです。いつもはできないことをするチャンスでもあります。自然と触れ合ったり、読書をしてみる。日記を書いてみる。お料理をしてみる。ボランティア活動に参加してみるのもいいですね。いろいろなことにチャレンジしてみましょう。今体験することは、決して無駄なことではないと思います。どんなことにしても、きっと皆さんを一回りも二回りも成長させてくれることでしょう。
<<えa/2311み>>
今年は受験勉強でそんな暇はない、という人もいると思います。受験は大変だと思います。心身ともに疲れますね。私も受験の経験者(小学校、中学校、大学受験)ですから、受験する皆さんの気持ちはよくわかります。でも、受験も一つの人生経験です。受験勉強をすることで、自分を強くすることができる。一つのことを乗り越えようとすること自体、それは精神的な成長を促していることにつながります。塾や模試の成績によっては、喜んだり落ち込んだりすることもあると思います。受験勉強をしている時、自分はダメだと思わないことです。いつも順調な人ばかりいるわけではありません。みんな同じように喜んだり悩んだりしているのです。テストの成績が悪かったら、それを土台にして這い上がっていけばよいのです。プラス思考でいること。自分を信じること。それが大事だと思います。ストレスがたまってきたら、ストレス発散の日を1日作ってみましょう。私は時々、湘南の海で叫んだものです。(^^ゞ
受験に限らず何かをしようとする時、失敗はつきものですね。そういう時、反省することはよいと思いますが、自分を責めるのはよくないことです。反省したら、プラス思考で物事を考えましょう。時には、「ま、いいか。」と自分を許してあげることも必要だと思います。○○年生きてきた私の人生は、常に失敗だらけでした。それは今も更新中です。一つ一つお話ししていたら、きっと皆さんはビックリするどころか、かえって自信がついてしまうかもしれません。(笑)
今年の夏に体験することが、皆さんをより大きく成長させてくれますように。皆さんに負けないように、私も頑張りますね。
■■子どものように(ぺんぎん/いのろ先生)
<<えa/1918み>> 先生の今年の夏のテーマは「子どものように」でした(笑)。中でも特に熱中したのが、虫取り。特に、クワガタ、カブトムシ取りです。皆さんならどうやってそれらの虫を見つけますか? 先生は、まず「木」を探す作戦に出ました。
ねらうはクヌギの木。深いタテジマ模様のあの木を6才の息子と一緒に探します。クヌギがあった! そう思って駆け寄ると、
「お母さん、虫、いたぁ?」
と、すぐ後ろから子どもの声。そう簡単にはいませんよね(笑)。最初のうちは楽しく探していましたが、何本見ても空振りなのには意気消沈。しばらくして、あることに気がつきました。それは、クヌギだからといって必ずしもクワガタがいるわけではない、ということです。
そもそも、先生は子どもの頃、虫取りをする兄弟の姿を見て育っただけ。虫取りはど素人なのです(何とも心細い案内人です。) そこで、もう一度おぼろげな記憶を手繰ってみました。
「確か、虫がいる木には、茶色の蝶がむらがっている樹液があったっけ。緑や黄土色のカナブンもいたな。そんな木を見つけさえすれば……。」
ふとよぎったこの思い出だけが手がかりです。
先生の家のまわりには竹林、杉林が多いのですが、最近になってそのさらに奥にクヌギ林があることを発見していました。(用意周到でしょう?) でも、無い。無いのです。クヌギはたくさんありますが、樹液の出ているクヌギとなると、本当に見当たらないのです。
いよいよ成果が見込めず、あきらめムードが私達を包み始めました。もうここだけを見て帰ろう、そう思いながら湿った森の中をさらに一歩、踏み込んだその時……あった! そう、彫りの深いしわに樹液をにじませたクヌギの巨木が、特有の香りを漂わせて目の前に現れたのです。
見ると、まさに蝶が羽を開け閉じしながら樹液にむらがっています。2匹のカナブンが頭を寄せ合っておいしそうに食事中です。クワガタがいるはず、と想定した状況がまさにそこにはありました。やった! とその木を見つけたことが嬉しくて、何を探しに来たのか一瞬忘れていました。
そうそう、肝心のクワガタ。それが……地上から約2メートルのところに、いたのです! コクワガタのオスでした。まるでバッヂのようにピタリとクヌギのタテジマに張り付いているではありませんか。大物でこそありませんでしたが、木にいるクワガタを初めて一人で見つけ、大満足だったのは言うまでもありません。
ところで、クワガタって飛ぶんですね。もたもたしていたら逃げられました(笑)。後から追いついた子どもには「本当にいたんだよ」と、一生懸命説明しましたが……。でも、これで重要な木が見つかったので、ミヤマやノコギリクワガタ、カブトムシを捕える日もそう遠くはないでしょう。子ども以上に、子どもと化した先生のある午後の一時間でした。
<<え2498み>>楽しい時間を子どものように過ごし、先生は思いました。実は皆さんは、一時間どころではなく、「今」、「絶えず」その素敵な「小学生の時間」、「中学生の時間」、「高校生の時間」の中にいるのですよね。言葉の森の中を飛んだり、言葉の蜜を吸ったり、言葉の山をほったりしながら。よく考えると素敵なことですよね!
この夏休み、是非、身近な出来事を「自分ならではの言葉」で大いに語る楽しさに目覚めましょう。日記? 作文? 受験特別コースの人もいますね。でも、みんな、言葉の森を始めてから、ずいぶんと「言葉」が親しいものに変わってきていると思います。先生も、今の方が以前よりずっと、言葉の世界が身近になりました(笑)。この夏も、「言葉の森」の住人として、言葉の国の空を、自由に羽ばたいて飛び回りましょう! 素晴らしいことを体験したら、言葉を使って教えてくださいね。
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