言葉の森新聞2006年3月2週号 通算第926号
文責 中根克明(森川林)
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■■3月9日は 作文の日
★世界に咲かせよう 作文の花★
3月9日を作文の日と決めました。
今年は、港南台教室の生徒を対象に、「花」というテーマで自由に作文を書いてもらうことにしました。次回はもっと広範囲の人を対象にした企画を提案したいと考えています。
■■国語の新しい勉強法(その1)
国語力は、勉強によって身につくものではなく、生活によって身につくものだというのが私の考えです。特に、小学生の国語力は、その子の家庭環境が大きく物を言います。国語の得意な子に共通しているのは、小さいころに読み聞かせをよくしてもらった、本をよく読んでいる、家族の中での対話が豊富、などです。
私が自信を持ってこう言えるのは、私自身国語が得意で、私の子供も国語が得意だったからです。厳密に言うと、国語「だけ」が得意だったのです。(笑)
私は、勉強というものは、やる気になればいつからでもできるものだという考えを持っていました。私自身がそうで、本気で勉強をしたのは大学を卒業してからです。それまでは、大学入試のときも、今考えるとかなり適当な勉強の仕方をしていました。高3の夏休みなどは、野島海岸という近くの海で日光浴をしながら参考書を読み、熱くなると海に入って泳いでまた勉強をするという優雅な受験生活でした。当時、一日の勉強時間の目標を5時間と決めてグラフをつけながら勉強していましたが、平均すると4時間ぐらいがやっとでした。もちろん当時は予備校などないので、自宅か海岸での勉強です。
そんな私が、25歳ごろ猛勉強をしました。勉強というか読書です。サルトル、ヘーゲル、マルクス、ケインズなど、世界史や日本史の教科書に出てくるような名前の人の本を片っ端から読みました。文字どおり、朝起きてから夜寝るまで読書をするような生活でした。
その経験から、人間はやる気になればやるのだから、やる気がまだ出ないときは楽しく暮らすのがいいいう考えを持つようになりました。
そこで、自分の子供にも、遊びと読書と対話を最優先、勉強はその次という考えをしました。それで、小学生のころの子供の成績は、国語ダントツ、算数平均以下という不思議な成績でした。中学生になると、国語はやはりダントツ、英語はよい方、数学は平均よりややよい程度になりました。
さすがに、中学3年生の受験期には、数学の弱さが気になり、夏休み中に数学の問題集3冊(中1・中2・中3用)を徹底して、できないところがなくなるまでやりました。1日6〜7時間勉強をしたと思います。私が高3のときにもできなかった時間です。(^^ゞすると、9月からは数学も一挙に得意科目に。(笑)やる気になればいつからでも追いつくということを実証しました。もちろん塾には行きませんでした。
これも私の持論ですが、勉強は基本的には自力でするもので、塾や予備校などに頼る必要はないと思っています。では、なぜ作文教室をやっているのかと言うと、作文というものは、音楽やスポーツに似ていて、自分で客観的な評価ができないからです。だから、言葉の森は、作文の苦手な子を指導するというよりも、作文の得意な子に更にレベルの高い文章を書かせるということを主な目標にしています。うち私の子供も、小1から高3までしっかり生徒でした。
さて、私の子供は高校のときも国語は超得意科目で、大学入試の過去問などもほぼ最高点の成績でしたから、国語だけは安心という状態で入試に臨みました。大学入試の英語は、かなりの割合で国語力に支えられているので、英語ももちろん得意です。
しかし、私は、大学入試までの国語力というのは、実は大したレベルではないと思っています。本当の国語力はやはり大学に入ってからどれだけ難しい本を読むかによって決まってきます。ですから、大学入試まで国語が得意だったというのは、自慢でも何でもありません。
さて、以上のような経験から、私は国語力というものは、勉強ではなく生活だということを確信しましたが、それをそのままほかの生徒にあてはめるわけきにはいきません。実際に、国語が苦手で言葉の森に来ている生徒もいるからです。そこで、今、長文音読、短文暗唱などの自習のほかに、新しい国語の勉強法というものを考えています。(つづく)
■■テレビの音に消されていた音(モネ/いとゆ先生)
ある日突然、リビングにあるテレビがこわれてしまいました。大好きなテレビドラマを見ていたら、主役の女優さんのアップのところで、音もなく画面が真っ暗になってしまいました。「えっ?なにが起こったの?」あわててリモコンのスイッチをつけたり消したりしても、テレビはうんともすんとも言わず真っ暗なままです。
どうやら、電源を入れるそうちが故障してしまったようで、直すのに1週間ほどかかると電気屋さんに言われてしまいました。
一番悲しんだのは、2人の息子たちでした。2人ともアニメ番組が大好きで、月曜日にはあれを見て、火曜日にはこれを見て、と、毎日のスケジュールがしっかり決まっているほどです。「たったの1週間なのだから、がまんしなさい。」と言っても、死にそうな顔で落ちこんでいます。
そう言う先生も、ふだん何気なくテレビのスイッチを入れてしまうことが多いので、テレビの音が全く聞こえない生活に物足りなさを感じていました。
ところが、2〜3日たつうちに、今まで聞こえなかった音たちの存在に気づくようになりました。真っ先におやっと思ったのは、飼い猫のいびきです。猫というのは本当によく寝る動物で、ひまさえあれば眠ってばかりいるのですが、「グゥー、グゥー」と一人前にいびきをかきながら寝ているのです、時々、人間のように「ンー、ムニャムニャ」なんてかわいい寝言を言ったりもします。今まで、テレビの音がうるさくて、気がつかなかったのでしょうね。
息子たちは、よくキッチンをのぞくようになりました。「ジュージュー」、「トントントン」、「グツグツグツ」おいしそうな料理の音がするたびに、「きょうのごはんなあに?」とか、「この音は、焼き肉でしょ?」などと、うれしそうに顔をのぞかせます。
先生のだんなさんは、ある晩、「雨の音がやんだと思ったら、雪に変わったみたいだよ。」と言いながら、窓から外を眺めていました。そして、しばらく2人でしんと静まり返った夜の雪景色を楽しみました。
テレビのない生活のおかげで、思いがけずふだんの生活の中のステキな音たちを耳にすることができました。みなさんも、時にはテレビのスイッチを入れる手をちょっと止めて、身の回りの音に耳をすませてみませんか?
<<え5623み>>
■■「自分に合った仕事」なんかない(ふじのみや/ふじ先生)
2月は一年で一番好きな月です。年末年始のあわただしさと新学期のにぎやかさの間で、春に向かうエネルギーをたくわえる時期。それから、誕生日! みなさんの何倍もの月日を生きてきていますが、やはり、誕生日にはしみじみと喜びを感じます。今年は、昔からの友人が集まって、「X歳おめでとう!」と、お祝いをくれました。「どうもスミマセン(^_^;)」となぜかペコペコ。
さて、今月は、いま、話題の本から。2年ほど前にベストセラーとなった『バカの壁』/養老孟司 という本の続編として『超バカの壁』が出たというので、さっそく手にとってみました。この著者の好きなところは、まず、文章がわかりやすいのです。本当は奥深くむずかしいことを、お茶を飲みながら話しかけるように語りかけてきます。おそらく、中学生ぐらいの人なら、言葉の森の長文よりも(^_^;)、読みやすく感じるのではないでしょうか。
<<え331み>> そんな『超バカの壁』の中の一節に、こんな部分があります。
■「自分に合った仕事」なんかない
この「ふじばたけ通信」で約2年前、「好きなことを仕事にする」について書いたことがあります。ほとんど自分の体験談だったのですが、「自分に合った好きを見つける」ことの大切さを力説した記憶があります。今も、その考えは変わっていないのですが、そこに飛び込んできたこの言葉。「自分に合った仕事」なんかない。
著者の養老先生は、仕事は自分に合っていなくて当たり前だと書いています。長年、東京大学で解剖の仕事についていても、「それのどこが私に合った仕事なのか」と、いまだにそう考えています。たしかに、亡くなった人の体を解剖し、お骨にして遺族に返す仕事なんて、明るい顔でやりがいたっぷりにできる仕事ではなさそうです。
しかし、先生はこう考えています。
「仕事というのは、社会に空いた穴です。道に穴が空いていた。そのまま放っておくとみんなが転んで困るから、そこを埋めてみる。……それが仕事というものであって、自分に合った穴が空いているはずだなんて、ふざけたこと」さらに、
「最近は、穴を埋めるのではなく、地面の上に余計な山を作ることが仕事だと思っている人が多い。社会が必要としているかどうかという視点がないから」、とも、書いています。
多くの人は、(たぶん私も含めて)、自分には好きなことがあって、それを生かして仕事ができれば、社会の役に立つだろうと思っています。しかし、養老先生の考えでは、それはヤワな幻想なのです。
仕事で自分を生かすことを考えるよりも先に、向かう場所(縁あった仕事先)に不足していること(穴)があるなら、まずそこをきちんと埋める覚悟がなければならない、こういうことでしょうか。
夢を持ってこれからを生きていくみなさんには、想像しにくいかもしれません。しかし私は、自分がはじめて社会人として世の中に出たときのことを思い出し、少しばかり反省しました。
ある会社の新製品開発と宣伝広告の部門に就職したのですが、なかなか希望するような仕事は回ってきません。「なんでこんなこと、しなくちゃならないの?」、「早く活躍したいなあ」とよく思っていました。でも、学校を出たばかりの新人さんに、だれが才能を生かし、社会が期待している仕事を持ってきてくれるでしょう。真剣に、ていねいに、目の前のようすをよく観察して穴を埋めなければならなかったのです。もしかすると、穴を埋め続けるだけの毎日が何十年もずっと続くかもしれません。しかし、働いてお金を手に入れるということは、本来そのくりかえしなのです。このことは、X歳を超えた今、すこしは身にしみて納得できます。
好きだと自覚していることを仕事にできるのは、幸せなことです。この考えは変わりませんが、これからはその上に、自分が必要だからではなく、社会が必要としているからやらなければならないのだ、こういう厳しさも必要なのだと、考えたのでした。
■■おともだちが読んだ本(きりこ/こに先生)
<<え247み>>
春のような暖かなお天気が続いたと思うと、雪のちらつく寒い日が一気にやってきたりと天気の変化が激しいですね。「三寒四温」ということわざがあります。ちょうど2月ごろの天気の変化を言い表していて、字のとおり「三日寒い日が続くと、4日暖かい日が続く」ということです。こうして暖かくなったり寒くなったりを繰り返しながら春へと向かっていくのですね。
<<えa/1201み>>
今月は、皆さんが読んだ本の紹介をします。言葉の森でお勉強をしているお友達が読んだ本は、参考になると思いますよ。読んでいない本があったら、ぜひ一読を。毎日歯を磨くように心を磨くつもりで本を貪欲に読んでいってくださいね。
【小学校低学年】
ドリトル先生と月からの使い / ヒュー・ロフティング
【小学校中学年】
パスワードは,ひ・み・つ / 松原秀行
【小学校高学年】
最後のトキ ニッポニア・ニッポントキ保護にかけた人びとの記録/国松俊英
ズッコケ中年三人組/那須正幹
西の魔女が死んだ / 梨木香歩
ハンナのかばん / 安藤 富雄 石岡 史子
車輪の下 / ヘッセ
【中学生】
アガサ・クリスティー自伝 / アガサ・クリスティー
ナイフ / 重松清
オリーブの海 / ケヴィン・ヘンクス/
野ブタ。をプロデュース / 白岩玄
これは、余談ですが、「ズッコケ三人組」は、広島市こい町というところがモデルになっている本です。JR西広島駅が「花山駅」となっています。本に出てくる風景は今でもあまり変わっていません。本に書いてある地図をみると、「小西邸」ものっていますので、一度探してみてくださいね!!(誤解のないように、残念ながら我が家ではありませんが・・・・・・。)<<え1678み>>
■■右側が見えづらい弟(ぺんぎん/いのろ先生)
<<え381み>>数年前掲載という小4女児の詩<<え2005/105jみ>>
「右側が見えづらい弟」 (読売新聞「編集手帳」2月1日付け)
障害はたった少しのことだけど
大きなことにつながる
だから私はいつも弟の右側にいる
でもあっちを向いたり
こっちを向いたりおいていかれる
でも心の右側にいれば大丈夫
いつも祈ってあげられるから
<<え2004/6jみ>>先生はこれを読んですてきな詩、大切な詩だなぁと思いました。言葉はその人を表しますね。この小4の女の子の心は、この短い数行にぎゅっとつまっています。文章にはその人が大切にする「人」や「物」、「見方」が自然とうつし出されるようです。
<<え382み>>みんなの作文にはかならず、「主題(しゅだい)」という項目がありますね。これは、みんなの心の場所をあらわす項目です。学年によって「思ったこと」となっていたり、「自分だけが思ったこと」、「心の中で思ったこと」、「わかったこと」と書き方のコツは変化していきますが、その主題に向かってみんなの作文は花開くのです。(大きな学年では「人間にとって〜」や、「〜べき」、「〜と生きたい」、「〜が問題だ」などなど。)
<<え382み>>この女の子の大切にしていたものは、弟を包む「いたわり」でした。その弟には、障碍(しょうがい)がありました。右側が見えづらいその小さな弟のために心をかたむける、女の子のやさしさが詩からにじみ出ていますね。
<<え382み>>作文のとちゅうや最後に書く「思ったこと」には、知らず知らずにみんなの心がうつっています。主題とは、まるで鏡のようですね。今日のみんなはどんな心かな?(みんなはどんな心をうつしたいかな?) 後から読んで、みんなの心のありかがわかるのも作文のおもしろいところです。1週、1週の作文の中に、「心」をぎゅっとこめて書いてみてね。きっともう1回読みたくなる作文が完成するはずです。
<<え2005/62み>>
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