言葉の森新聞2008年12月2週号 通算第1058号
文責 中根克明(森川林)
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■■ウェブ添削を開始(海外生徒・モニター生徒対象)
海外で受講されている生徒と、7月にファクス送信モニターに応募された生徒のみなさんを対象に、1月からウェブ添削を開始します。(一部、試験的に12月から開始しています)
このほかの一般の生徒のみなさんは、システムが安定的に運用できる見通しがつくまでご利用はお待ちください。
これまでは、ファクスで送られた原稿に事務局で赤ペンを入れたあと、PDFファイルに変換して作文の丘にアップロードしていました。
これからは、ファクス原稿をJPGファイルに変換してアップロードします。このJPGファイルの作文画像に、担当の先生がウェブ上で赤ペンを入れるという形になります(12月中は、試験的に事務局で赤ペンを入れています)
また、JPGファイルのアップロードとともに、本文も一緒に送れるようにしました。本文はなくてもかまいませんが、空のままだとエラー表示が出ますので、「○月○週の作文を送ります。」のような短い一言を一緒に送るようにしてください。
このウェブ添削は、これまでの郵送やファクスに取って代わる新しい作文送信システムです。
リアルタイムでカラーの手書き原稿を送ることができ、担当の講師がウェブ上で赤ペンを入れることができるというこの方法は、将来の作文通信添削の主流になると思います。(まだ添削の仕方などに慣れるまで時間がかかるので、教室の生徒全体に広げるのはしばらく先になります)
■■将来考えていること
来春以降、実施することを考えている企画です。
1、通学教室を展開していきます。
これまでは、暗唱自習をノウハウ化していなかったので、通学教室は広げていませんでした。
しかし、言葉の森はもともと通学教室主体で運営していたので、通学教室の指導の蓄積はたっぷりあります。
通学教室のメリットは、生徒の勉強の敷居が低くなること、必要に応じて父母との面談が実施できることです。
今後、暗唱自習を取り入れながら、小規模の通学教室を広げていく予定です。
2、中学生以上はマインドマップ風構成図の指導を取り入れていきます。
生徒のみなさんの中には、既に自分でマインドマップを使った書き方をしている人もいると思います。
通学教室でも、マインドマップ風構成図(以下、構成図)を書いてから作文を書くという方法によって、密度の濃い文章が早く書けるという効果が出ています。
今後、ノウハウを整理して、通信教室の中学生以上で構成図を書く練習を取り入れていく予定です。
3、3月末に作文検定試験
昨年3月末に実施したものと同じ作文検定試験を2009年3月にも実施します。
通信生は、自宅で試験を行うようになるため、正式の検定試験ではなく検定試験模試となります。
しかし、通信生でも、通学教室に来て検定試験を受ける場合は、正式の作文検定試験となります。
詳細は、3月に入りましたら、言葉の森新聞でお知らせします。
■■読解力の本質
今日は、読解力の本質について述べてみたいと思います。
読解力は、国語の成績にその一部が表れます。しかし、国語のテストで評価される国語力は表面的なものです。そのため、だれでも正しいやり方で勉強すれば高得点が取れるようになるという面を持っています。そこで、現在の国語の入試問題は、長文化する傾向にあります。つまり、速度によって成績をふるいわけするという方向に進んでいるのです。
この国語の性質は、英語、数学、理科、社会などの他の教科の性質とは異なっています。英数理社の教科は、知識の体系がまず先にあり、問題はその組み合わせ方として作られます。ですから、過去問のパターンを身につけることが最良の勉強法となります。そのこと自体は問題ありませんが、そのパターン作りが点数の差をつけるためのもととなっているところが問題です。勉強の目的は、差をつけるためではなく、人間の幸福を育てるためのものとなるべきだからです。
国語の問題を改善する対策として作文試験を課すということも考えられています。しかし、これは今のところ、評価に時間がかかるという技術的な難しさがあります。将来は、森リンなどの作文自動評価システムがもっと利用されるようになると思いますが。(我田引水です)
さて、長文化され、速度が要求されるようになった国語の問題に、速読力をつけることによって対応することは有効でしょうか。速度が要求されるから速読力をつけようというのは表面的な考え方です。読解力をつけるためには、読解力についての本質を探る必要があります。
読解力とは、言葉のつながりである文章をより豊かにより速く把握する能力です。(定義)
すると、読解力のない人とある人の差は、どのようになるのでしょうか。
読解力のない人は、言葉のつながりとして与えられた文章を、それぞれの言葉について狭い範囲の理解で受け取ります。したがって、言葉と言葉のつながりを把握することに時間がかかります。これに対して読解力のある人は、与えられたそれぞれの言葉を豊かな理解を伴って受け取ります(文化化)。したがって、言葉と言葉のつながりをすばやく理解することができます(チャンク化。ばらばらだった複数のものがひとまとまりになること)。なぜそういうことができるかというと、自分の頭の中に言葉とそのチャンク化された思想が豊富に用意されているからです(自己化)。
例えば、「香炉峰の雪はいかならむ」の問いに、御簾(みす)を高くあげるような対応がすぐにできるのは、清少納言に言葉の文化化、チャンク化、自己化ができていたからです。
つまり、言葉のこれらの能力が、読解力の本質になっているのです。実は、これらは、暗唱で身につける能力と同じです。
ここから、国語力アップの秘訣として、暗唱や難読の復読がなぜ必要なのかということがわかってくると思います。
■■長文暗唱の自習のコツ
これまで、言葉の森新聞で、長文暗唱の仕方を載せてきました。
これを見て、自宅で暗唱に取り組んでいる人の参考になるように、更に具体的な説明をします。
勉強のコツとして、いったん始めたことは最後までやり続ける、ということが大事です。始めたことを途中でやめると、子供は、始めたことを学習せずに、途中でやめたことを学習してしまうからです。
この長文暗唱は、これまでの音読よりもずっと面白いはずです。音読は、同じものを読むのが飽きるので継続しにくい面がありましたが、暗唱は、できなかったことが10分でできるようになるという手ごたえがあります。
また、暗唱は、読解力と作文力の実力向上により早くつながります。もちろん、より早くと言っても暗唱を始めてすぐに実力向上が目に見えるわけではありませんが、ほかの方法よりも確実に成果が上がります。
暗唱の代わりに、音読や読書でも実力はつきます。しかし、音読は毎日継続しにくいという面があります。また、読書は小学校高学年以降の多読が大事なのですが、多くの人は小学校高学年以降にだんだん読書量が減るという傾向があります。暗唱は、この音読と読書の不足をカバーし、更にそれ以上の効果をもたらすと思います。
以下、わかりやすく絵で説明をしていますが、絵が表示できない人のために、文章の説明を入れておきます。
■用意するもの(図1)
1、暗唱の自習のために用意するものは、長文のコピー(課題フォルダのままでもよい)、10分間を計るタイマー(なくてもよい)、タイマーの代わりとなる回数カウンター(なくてもよい)、などです。
2、タイマーや回数カウンターがない場合、回数を数えやすくするために「正」の字を書くとか、おばあちゃんに数珠を借りるとかいう方法もありますが、もっと簡単に紙でカウンターを作ることができます(図解参照)
3、暗唱の分量は、1日100字(4行分)ぐらい、時間は10分ぐらい、時間ではなく回数で数える場合は30回ぐらいを目安としてください。
■暗唱の仕方(図2)
4、最初は、長文を見ながら、100字(4行分)を何度も音読します。この場合、ある程度早口で音読した方が覚えやすくなります。大体15回(4?5分)で空で言えるようになると思います。
5、長文を見ないでも言えるようになったら、そのまま空で暗唱を続けます。大事なことは、長文を見てすらすら言えるようになるまでは、空で言おうとしないということです。つっかえたり考えたりしながら覚えようとすると、その「つっかえたり考えたり」を覚えてしまうので、かえってすらすらとした読み方を覚えにくくなるからです。
6、空で暗唱しているときは、歯磨きをしたり、お風呂に入ったり、ご飯を食べたりと、ほかのことをしながら暗唱を続けることができます。ですから、長文を見ながら暗唱する正味の時間は最初の4?5分だけです。
7、長文を読み始めてから10分(30回)ぐらいで、すっかり暗唱できるようになります。
8、1日目に100字暗唱できるようになったら、それはもうそのまま何もせずに、2日目は新たに続きの100字を暗唱できるようにします。同様に、3日目、4日目と100字ずつ暗唱します。
9、5日目からは、4日間で覚えた400字分を通して暗唱します。6日目も7日目も同様です。
10、短時間の勉強は、毎日決まった時間にやる方が続けやすいので、原則として毎日暗唱する時間をとるようにします。
このようにして、毎日の暗唱を続けていくと、途中から自分でも頭がよくなっていく感じがつかめるようになると思います。
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