言葉の森新聞2009年2月4週号 通算第1068号
文責 中根克明(森川林)
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■■清書の入選作品は3.1週に
清書の入選システムを変更するために、これまでの清書入選作品の掲載が遅れていました。
3.1週から順次掲載していきます。
■■3.4週に作文検定模試
3月4週に、日本語作文小論文研究会による作文検定模試が行われます。
詳細はおってお知らせします。実施要項は昨年とほぼ同じです。(昨年の言葉の森新聞の記事)
http://www.mori7.com/mori/20080303.html#12146
■■【重要】3.1週作文進級テスト。先取りも可(再掲)
3.1週に、作文進級テストを行います。
提出が遅れた場合は進級できません。(3月8日ポスト投函まで)
課題フォルダの字数・構成・題材・表現・主題の●印が全部できていることが合格の条件になります。(表現の項目などで「たとえ」と「ダジャレ」など二つ以上の項目が指定されている場合はどちらかができていればその項目は◎です)。キーワードと字数が採点の基準ですので、指定された字数以上で必要な項目が全部入る作文を書いていってください。中学生以上の時間制限については、今回は採点の基準にしませんが、できるだけ時間内に書き上げる力をつけていきましょう。
手書きで作文を書く人は、項目ができたところにシールをはっておいてください。
パソコンで作文を書く人は、キーワードを入れておいてください。
小学生の場合は、提出する前に、おうちの方が字数と項目シールをチェックしてあげてくださるとよいと思います。
小学2年生までの生徒は、試験は行いますが、全員進級扱いで先の級に進みます。1月以降に受講を開始した生徒も、試験は行いますが、全員進級扱いで先の級に進みます。ただし、いずれの場合も、賞状は出ますので、できるだけ字数と項目ができるように書いていってください。
3月8日ポスト投函が締め切りですので、3月1週に作文が書けない人は、2.4週の間に、3.1週の作文試験を先取りして行ってください。
<<え2005/31jみ>>
■■2.4週は読解問題と清書。幼稚園生は普通の作文
2月4週は、読解問題と清書です。幼稚園年中と年長の生徒は、第4週も普通の作文を書く練習です。自由な題名で作文を書いてください。項目シールは、予備のものを使ってください。
小学1年生以上の生徒は、第4週に読解問題と清書を行います。
読解問題の時間がかかるため、清書の時間が取れない場合は、清書を省略してもかまいません。
なお、清書が保存されると勉強の記録になりますから、生徒又は家族がパソコン入力ができる場合は、パソコンで書いた清書を作文の丘から送ってください。
■読解問題の仕方
「山のたより」についている読解問題は、課題フォルダにはさんである読解マラソン集から出しています。
読解問題の答えを作文の丘から送信する人は、作文の丘に答えを入れる欄がありますから、清書と一緒にそこから送信してください。
読解問題の答えを作文用紙に書く人は、作文用紙に問題と答えがわかるように書いてください。書き方は自由です。住所シールは、清書の1枚目にはってください。問題の方にははりません。
■清書の仕方
今月の清書のうち、上手に書けたものは、翌々月第1週に優秀作品としてプリントされます。
清書は、パソコンで書いても手書きで書いてもどちらでも結構です。
パソコンで書きインターネットから送信した清書は、ホームページに保存されます。
パソコンで清書を書いて送信した場合、手書きの清書は提出する必要はありません。
インターネットからの送信の仕方は、「学習の手引」をごらんください。
http://www.mori7.com/mori/gate.php
手書きの清書を提出する人は、清書がホームページに表示されなくなりますので、先生に送る前にコピーしておかれることをおすすめします。
よく書けた清書は、自分で小学生新聞などに投稿してください。ただし、同じものを複数の新聞社に送らないようにしてください。
新聞社などに投稿する場合、手書きで清書を書いている人は、その清書をコピーして、原本を新聞社への投稿用に、コピーを言葉の森の先生への提出用にしてください。パソコンで清書を送信している人は、その清書をワードなどにコピーして新聞社へ投稿用にしてください。
新聞社に投稿する際は、作文用紙の欄外又は別紙に次の事項を記載してください。
(1)本名とふりがな(ペンネームで書いている場合は本名に訂正しておいてください)(2)学年(3)自宅の住所(4)自宅の電話番号(5)学校名とふりがな(6)学校所在地(町村名までで可)
◆表はウェブでごらんください。
https://www.mori7.com/mori/mori_web.php?ki=20090204#13448
これまでの優秀作品は、「入選清書」のページでごらんください。
http://www.mori7.com/seisyo/nyuusenn.php
■■言葉の森の暗唱と他の教室の暗唱との違い
言葉の森では、暗唱の方法として、毎日10分間100字の文章を音読し、1週間で300字を暗唱できるようにするという方法をとっています。同時に、この暗唱の仕方では難しいと感じる人も多いため、速聴のページで長文を聴いて覚える方法もとれるようにしています。(「検索の坂」から「課題の波」に行く方法がいちばんわかりやすいと思います)
しかし、長文の速聴で覚えるという方法は、暗唱で挫折する子供を増やさないための便宜的な方法です。暗唱で本当に力をつけるためには、速聴で覚えるよりも、音読で覚える方がいいのです。その理由はあとで述べますが、今、暗唱に取り組んでいる人は、できるだけ音読による暗唱を優先し、音読が難しい場合にかぎって速聴で覚えるようにしていってください。
さて、言葉の森の暗唱と他の教室の暗唱との違いを述べます。
違いを明らかにする必要上、どうしても他の教室の方法を批判するような調子になってしまいますが、決してそういう意図はありません。むしろ、暗唱のような勉強を積極的に取り組んでいる教室の例は、多くの点で参考にしています。
最初に、言葉の森の暗唱の意義を説明します。
言葉の森の暗唱の目的は、読解力と表現力をつけることです。暗唱の意義は、同じ文章を反復して覚えることによって、より深い理解に到達するというところにあります。同様に、同じ文章を反復して身につけることによって、より高度な表現力も育ちます。なぜかというと、暗唱によって、語彙がもともと持つ文化性が豊かになるからです。
文化性というのは、その語彙が持つ意味を含めた多様なニュアンスのことと考えてください。イメージとしては、水素原子が1本の手を持ち、酸素原子が2本の手を持ち、H2Oという分子として結合するというときの原子の持つ手足を文化性と考えるといいでしょう。
語彙の持つ文化性の手足の数は、人によって違います。ある一つの語彙、例えばニワトリという言葉から、子供はニワトリのイメージを持つだけでしょう。ニワトリという語彙の持つニュアンスはそれほど多くないのです。しかし、大人は、ニワトリという言葉から「鶏口となるもむしろ牛後となるなかれ」などという意味も連想するかもしれません。更に、「にわにわにわにわとりがいる」というような言葉も知っているかもしれません。これが、言葉の持つ文化性の豊かさの違いです。
語彙の乏しい人は、語彙から伸びている文化性の手足の数が少ないので、他の語彙との関連を作りにくくなります。それが理解力や表現力の限界になります。合意が持つニュアンスの手足を増やしていくことが、その語彙を使ってより深く理解することや、より高度に表現することにつながっていきます。
これを図式的に説明します。まず、海面を語彙の文化性がゼロメートルの地点とします。理解を海の底の状態とすると、海底には深さによる凹凸があります。語彙の持つ文化性の低い人は、浅い海底までししか到達できません。ですから、同じ文章を読んでも、浅い理解にとどまるということです。これが読解力の差として表れてきます。
また表現に関していうと、表現は山の高さのようなものと考えるとよいでしょう。語彙の持つ文化性の高い人は、表現の山の頂上近くまで登ることができます。それに対して語彙の持つ文化性の低い人は、山のふもとまでしか登れないということです。
理解も表現も、どちらもその人自身の持つ語彙の文化性に応じて、深いところへ行ったり高いところへ行ったりしているので、本人はそのことに不便を感じるわけではありません。しかし、より深く潜っている人や、より高く登っている人と比較して、自分もそこまで行きたいと思ったときに、その不足が問題になってくるということです。
言葉の森では、暗唱の意義を語彙の持つ文化性を豊かにすることと考えているので、暗唱の勉強を、幼児や小学校低学年の間だけの勉強とはしていません。むしろ中学生や高校生になって、より難しいジャンルの文章を書く必要が出てきたときに、そのレベルに合わせた暗唱が必要になると考えています。ですから、暗唱を、中学生、高校生まで継続する勉強として取り組んでいるのです。
ところが、言葉の森以外の他の教室の多くは、暗唱の意味を単に記憶力を育てるということで考えていると思います。ここから問題点が五つ出てきます。
問題点の第一は、記憶を目的としているので、記憶術を使って記憶をしてしまうことがあるということです。記憶術というのは、記憶することがらをイメージ化したり語呂合わせにしたりして自分のよく知っているものに関連づけて覚える技術です。
記憶術を使うということは、真の記憶力を育てることとはむしろ正反対のテクニックになります。幼児期や小学校低学年の時期は、単純な記憶力を育てる時期で、記憶の土台を作っていく時期にあたります。この土台を作る時期に単純な記憶力をつけるのではなく、技術的に工夫した記憶の結果を身につける勉強すると、かえって記憶力の土台を作るという練習がおろそかになるのではないかと思います。
しかし、幼児や小学生は普通、何かをたくさん覚える必要に迫られていません。そういう普通の子に比べると、記憶術で記憶の勉強をする子は、テクニック化されていたとしても、覚えるための練習量が普通の子よりも多くなります。だから、記憶力がつくということです。言い換えれば、記憶術を使っているにもかかわらず、練習量が多いので記憶力がつくということです。
記憶術を使って記憶する勉強は、中学生や高校生になって何かを記憶する必要に迫られてから始めればよいものです。ある記憶術の著者は、高校3年生の夏休みまでに記憶術をマスターすれば、大学入試は間に合うと述べています。つまり、記憶術を使うノウハウは、学年が上がって必要に迫られてからやれば十分なのです。
同様なことは、国語の読解問題の解き方のノウハウについても言えます。受験直前の1、2時間もあれば、解き方のノウハウはすぐに理解できます。むしろそれまでは、読解力の土台を作る時期で、ノウハウやテクニックを身につける時期ではないと考えておく方が勉強が充実します。
先日、通学教室で、高校生の人たち何人かにセンター試験の国語を解いてもらいました。1回目は平均点と同じ60点ぐらいの人が多かったので、そのあと数十分解き方の説明をしました。翌週、別の年度のセンター試験の国語を同じように解いてもらうと、今度はすぐに80点から90点になりました。間違えたところも、なぜ間違えたかがわかるので、もうほとんどの子は満点を取ることも可能だと考えていると思います。
ただし、記憶術のノウハウをマスターするということは、子供の場合でも日常生活に大いに役立ちます。例えば、1から100までの数字を語呂とイメージで覚えるような方法は、単に数字を数字のまま記憶するよりもはるかに効率のよい記憶の仕方になります。ですからこのような方法は、九九と同じように、社会の共有の財産として、将来は学校などで教えていくものになると思います
言葉の森では今後、記憶術のノウハウを、小学校高学年又は中学生あたりから教えていく予定です。しかし、幼児や小学校低学年の時期は、そのようなテクニックは教えずに、むしろ単純な記憶力を育てるということで勉強をすすめていきたいと思っています。
記憶術を使った覚え方は、料理の作り方を教えるのではなく、料理そのものを出してくるような方法です。何かが暗唱できるのはよいことですが、記憶術を使うのであれば、暗唱の結果そのものを目的とするのではなく、暗唱の仕方を覚えることを目的とした方が応用力がつくと思います
問題点の第二は、暗唱の目的が記憶となっているために、教育と文化が混同されがちだということです。これは世間一般の音読の学習でもしばしば見られたことです。
例えば、平家物語や寿限無(じゅげむ)や枕草子を覚えるということは、決して否定されることでありませんが、暗唱というとすぐにそのような古典や有名な文章にこだわるところに問題があります。
現在は、科学の成果が生活のすみずみにまで浸透している時期です。そのような科学の発達を考慮すれば、むしろ子供には、知的な感動のある文章をもっと読ませるべきではないかと思います。ファラデーの「ろうそくの科学」や寺田寅彦の物理学の随筆を読んで科学の面白さに目覚めたという人の話をよく聞きます。現代の子供が覚える文章は、論語や孟子のようなものももちろんいいのですが、やはり現代の文化を反映した文章であるべきです。 (つづく)
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