言葉の森新聞2009年3月2週号 通算第1070号
文責 中根克明(森川林)
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■■【重要】3.4週の作文検定模試の日程
3月4週に、日本語作文小論文研究会による作文検定模試が行われます。課題は、3.4週の言葉の森新聞に掲載します。
通常の作文と同様、自宅で書いていただく形になります。このため、時間制限などができませんので、正式の作文検定ではなく作文検定模試という扱いになります。
通学教室の生徒の場合は、時間制限のもとで行いますので、正式の作文検定となります。(課題は、通信教室とは異なるものを当日配布)
通信の生徒でも、港南台(横浜市)の通学教室に来られる方は、正式の作文検定として受検できます。人数に制限がありますので、ホームページから事前に予約をしていただきます。予約のページは、言葉の森新聞3月3週号でお知らせします。
通学の生徒は、予約をする必要はありませんが、通常の曜日と異なる曜日に出席する場合は予約ページで予約をしてください。
通学教室の作文検定の日程は、3月23日(月)−3月28日(土)(平日は午後4時から6時の間に入室。土曜は午前9時半から10時半の間に入室。作文を書く時間は75分程度です)
なお、作文検定も作文検定模試も、今回は費用はかかりません。
検定結果の返却は4月下旬になる予定です。したがって、4月1週から退会される予定の生徒の場合は、検定試験ではなく通常の作文として添削したものを4月1週に返却します。
小1以下 12級 自由課題
小2 11級 〃
小3 10級 題名課題
小4 9級 〃
小5 8級 〃
小6 7級 〃
中1 6級 感想文課題
中2 5級 〃
中3 4級 〃
高1以上 3級 〃
■■3月20日(金)は休み宿題
3月20日(金)は、休み宿題です。先生からの電話はありませんが、その週の課題を自宅で書いて提出してください。先生からの説明を聞いてから書きたいという場合は、別の日に教室までお電話をして説明をお聞きください。(平日午前9時〜午後7時50分。電話0120-22-3987)
電話の説明を聞かずに自分で作文を書く人は、ホームページの「授業の渚」か課題フォルダの「解説集」を参考にしてください。
「授業の渚」 http://www.mori7.com/nagisa/index.php
「ヒントの池」 http://www.mori7.com/mine/ike.php
■■2.4週読解問題は難しくなりました
低学年の2.4週読解問題は、選択の範囲が増え、かなり難しくなりました。
点数が悪くても、気にしないでください。
■■PISA型読解力が要求されるようになった背景
英語や数学は、たとえ苦手であっても、必要性を感じてから本気でやれば、数ヶ月で得意になるというレベルまでの勉強ができます。
しかし、国語の差は、いったんつくと埋めがたい差になります。ところが、点数の差でいうと国語の点数の差は小さく、英語や数学の差は大きいというのが普通です。そこで、多くの人は国語の点数の差を過小評価しがちです。
国語は点数の差があると思ったときには、もうすでにかなり重症の状態になっています。国語力は、現在の日本では、小説の読み方のような教科と考えられている面がありますが、実は思考力そのものです。
わかりやすい想像をしてみましょう。例えば、イエス・キリストと釈迦と聖徳太子が、現代の中学か高校の受験生になったとします。かなり想像しにくい話ですが。
それらの偉人たちが準備なしに英数国理社のテストをすると、結果はどうなるでしょうか。まず英語は0点でしょう。数学もかなり0点に近い点です。理科も社会もほとんど0点です。ところが、国語の読解問題だけは満点に近い成績なのではないでしょうか。もちろんその国の言語で書かれている国語という意味です。しかし、イエスと釈迦と聖徳太子がそれから本格的に1年間勉強すれば、英語数学理科社会もたぶん高得点を取れるようになるはずです。
このように、勉強で何か一ついちばん大事なものを挙げるとすればそれはやはり国語力なのです。ところが、国語力の差は、表面にはあまり大きく出てこないので、多くの人は、表面に差の出やすい教科の勉強を優先してしまうのです。
2006年のOECDの調査で、日本の生徒は読解力表現力の得点が低く、クイズの番組に出るような知識問題の得点は低くなかったということが明らかになりました。この結果は、きわめて重要な問題を示しています。つまり、日本の子供たちの本当の学力が低下しているのではないかということです。
国語力の本質は考える力ですから、あらゆる勉強の基礎になっています。読解力、つまり読む力というものは、多様なものできるだけ早く理解し読み取る力です。表現力、つまり書く力というものは、様々に異なるものの関連性を見つけそれらを創造的に結びつける力です。
国語の力をつけるためには、書く勉強としての作文の勉強が欠かせません。現在の国語の勉強は、選択式の読解の問題が中心になっています。それは、その方が採点しやすいからという理由によるものです。子供たちの国語力を本当につけるためには、もっと書く時間を増やしていく必要があります。書く力の評価をすべて人間が行うのは時間がかかるので、文章の自動採点ソフトなどを活用しながら書く勉強を学校で増やしていく必要があると思います。
■■対話の大切さ
国語力というのは、もともとは日本語力です。日本語を駆使する力は、生活の中で育ちます。これに対して勉強中で育つ国語力は、漢字の書き取りや熟語やことわざを覚えるような知識的な日本語力です。
日常生活の中で、日本語に接する機会はいくつかに分けられます。一つは、対話です。もう一つはテレビです。三つめは読書です。そして、もう一つ毎日の暗唱というのも、これからは生活の中での日本語の機会に含まれるようになると思います。
家族との対話は、手軽で効果が極めて高い日本語の学習機会です。これは幼児期から中学生高校生になるまで活用できます。なぜかというと、話をしながら相手の反応に合わせて手加減ができるからです。
学力のある子に共通している生活習慣は、親子の対話が豊富だということです。親が知的で面白い話をすることによって子供の思考力や知的好奇心が育っていきます。逆に、親が断片的なこと、例えば「○○しなさい」というようなことしか言わなかったり、あまり話をしなかったりすると、子供の考える力は育ちません。
では、親子の対話を充実させるためにはどうしたらいいのでしょうか。
対話のきっかけになるものは、親子共通の話題にできるものです。それには、親子で読む本、親子で見るテレビ、親子で取り組むイベントなどがあります。
我が家では、長文を親子の共通の話題にしていました。言葉の森の長文は、科学的な内容のものが多いので、読むだけでも面白いものですが、ここに更に対話によって、お父さんやお母さんが話を発展させていきます。
例えば、ほかに似たような例は世の中にあるのだろうかとか、こういう仕組みが何に使えるだろうか、というような話です。
ここで創造性が必要になってきます。単なる知識を伝達するだけでなく、創造性を発揮できるという点で、対話は親自身も楽しめる機会になります。
大事なことは、子供に答えさせるというのではなく、親がたっぷり話をしてあげるということです。即興で創造する対話というのが大事なので、単に大人が知っている知識を子供に伝えておしまいというようなやり方ではありません。
また、子供は面白いことが好きなので、対話の中ではできるだけ面白い話をするように心がけます。茶の間にホワイトボードを置いておき、学校のようにホワイトボードで説明をしながら対話をしていくというのも子供は喜びます。
対話の結果、何か調べたいことが出てきたら、日曜日に実験をする計画を立てます。
このように、日常生活の中で知的な対話をふくらませていくと、知識だけでなく、子供の日本語力=思考力が育っていきます。
いったん知的な対話のある家庭ができれば、将来、子供が大きくなったときに、自分も親としてそういう家庭を築いていくでしょう。対話のある家庭では、テレビは主役にはなりません。テレビの話題をもとに、みんながわいわい話し合うのが茶の間の過ごし方の中心になります。テレビではなく家族一人ひとりが主役になるのが、本来の家族の過ごし方なのです。
しかし、親が子に話をするといっても、やはり何かの手助けがある方がやりやすいものです。
その一つは、生き物です。できれば、人間とコミュニケーションをとれる生き物の方がいいので、植物よりも動物です。犬や猫が難しいのであれば、手乗りの文鳥などでもいいと思います。家族の対話に文鳥も参加して、あっちの頭にとまったり、こっちの肩にとまったりして話題を盛り上げます。そして、その生き物自体が、またいろいろな研究のテーマを提供してくれます。
もう一つは、大人向けに書かれた理科や社会の本です。ナツメ社で出ている「図解雑学」シリーズは、雑学という名前がついていますが中身は大人でも十分に楽しめる本格的なものです。こういう本で科学的な土台を作って、子供に話をするのです。ただし、知識を伝えるだけの話ではなく、そこに自分の体験などを結びつけて独自なものを付け加えていきます。
■■小学生の作文を添削する際のチェックポイント
小学生の作文をチェックする場合、大切なことはチェックつまり評価と、指導を対応させることです。作文指導では多くの場合、事前にどのように作文を書いたらいいかという指導がなく、書かれたものを事後的に評価する形になっています。事前指導なしの事後評価だけでは、褒められても子供はなぜ褒められたのかはわからないので進歩しません。また、直すところを指摘されても、自分がいいと思って書いたことを注意されるのですから、がっかりしてしまうだけです。事前の指導があることによって、褒めることと注意することが生きてくるのです。
では、どういうところをポイントに事前の指導していたらいいのでしょうか。
まずいちばんわかりやすいのは、字数です。大体1時間から1時間半を目安にします。小学生は、学年の100倍から200倍の字数を書く力があります。例えば、1年生は100字から200字、2年生は200字から400字、そして6年生は600字から1200字です。中学生、高校生も600字から1200字を1時間から1時間半かけて書くこと目標にするといいでしょう。
小学校1、2年生の作文の目標は、書く習慣をつけること正しい表記を身につけることです。この時期は作文の指導として、わかりやすい項目を指示していくといいでしょう。例えば、会話を思い出して書く、名前や数字を思い出して書く、自分の思ったことを書く、というような項目です。
小学校3、4年生は、表現を工夫して面白い作文を書くことを目標にしていきます。この時期は、「まるで……のよう」というたとえの表現を工夫させると子供は喜んで取り組みます。さらに、書き出しを会話や景色の様子で工夫したり、似た話を家族に取材して書いたりするというような書き方もしていきます。
小学校5、6年生は、構成を考えて書く力のついていく時期です。作文の大まかな構成として、最初の段落に説明、2番目の段落に出来事、3番目の段落に似た話や取材した話の出来事を書いて立体的にし、最後の4番目の段落で感想を書く、というような大きな流れを指示していくといいでしょう。またこの時期は感想をできるだけ自分らしく書く、または人間や社会の問題に視野を広げて書く、などということも目標にしていきます。似た話や取材した話は、身近な人に聞くだけでなく、資料を調べて書くというようなことも工夫していける時期です。
しかし、作文の指導をする場合、大事なことは、書く指導するだけで上手になるのではないということです。文章表現力は、読む力によって伸びます。従って、読書や暗唱に力を入れていくということが勉強の基本になります。
■■テスト力
まず、テストと関係ないようですが、絵をかくときの技術について話します。上手に手をかく人は、細部までしっかり見てかきます。
例えば、人の顔を書くときに、顔とはこういうものだろうという先入観でかくのではなく、実際に細かいところを見ながらかいていきます。
小さい子供が立体図形をかくときに、見えない裏側をかいてしまうことがあります。同じように、大人でも見てかくのではなくて、こう見えるだろうという先入観でかいてしまうことが多いのです。
この絵をかくときと、テストで答えを書くときの人間の心理に共通性があります。
中学生高校生のテスト問題の取り組み方を見ていると、絵をかくときと同じように、厳密に細部まで見る子と、そうでない子との差があることがわかります。
この厳密に細部まで見る力がテスト力です。したがって、テスト力は実力そのものではなく、実力を100%発揮するための力です。しかし、このテスト力があるかないかで、テストの成績は大きく上下します。
生徒の多くは、だいたいこっちの方があっていそうだということで答えを書きます。8割ぐらいの確信で答えを書いてしまうのです。すると、その答えが合っていたら、「ああ、よかった」でおしまいになり、その後の蓄積に結びつきません。
大事なのは、絵をかくときと同じように、細部まで厳密に見て判断するということです。そして、その判断の過程を記録に残しておくことです。記録に残さないと、何日かあとにテストが返ってきたときに、自分がなぜその答えを書いたのかを忘れているので、やはり蓄積にならないからです。また厳密性を高めるためには、理詰めで判断できないものは空欄にして、×にしてもらうというようなことも必要です。
テスト力をつけるためには、ある程度マンツーマンのチェックが必要です。つまり、その子供がどこで厳密性を放棄しているかを見る必要があるからです。ですから、テスト力をつける勉強は、家庭で親がやっていくのがいちばんです。
そのためにもちろん、親の姿勢も大事になります。一つはテストの点数だけで一喜一憂せずに、必ずその内容を見ていくということです。もう一つは、100%理詰めに説明するように心がけることです。そして、大人が理詰めに説明できない問題はできなくてもよい問題だと割り切るぐらいの厳密性が必要になります。
数学や理科や社会の問題は、もともとそれらの分野にあいまいさが少ないので、実力とテスト力の間の差は大きくありません。しかし、国語の問題と、国語力が必要とされる大学入試の英語の問題は、テスト力と実力の差が大きく出てきます。
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