言葉の森新聞2009年8月3週号 通算第1091号
文責 中根克明(森川林)
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■■読書感想文の書き方
これは、昨年の夏に掲載した記事と同じものです。
なお、ホームページに、感想文の書き方のページがあります。感想文を書く前にお読みいただくと参考になると思います。
▼読書感想文の書き方―小学校低・中学年の感想文
http://www.mori7.com/as/537.html
▼読書感想文の書き方―小学校高学年の感想文
http://www.mori7.com/as/538.html
▼読書感想文の書き方―中学生年の感想文
http://www.mori7.com/as/539.html
●いまの感想文指導には無理がある
感想文が楽に書けるようになるのは、年齢的には小学5年生からです。小学1〜4年生は、全体の構成を考えて書くという能力がまだ育っていませんから、大人が全体の方向づけをしなければ自分で本の流れに合わせて感想文の流れを考えていくという書き方はできません。
また、小学1〜4年生の場合、似た話がうまく見つかる場合と見つからない場合とでは、作品の出来に大きな差が出てきます。大人(親や先生)が近くにいて、「この次はこんなことを書いたらいいよ」とときどきアドバイスをしてあげなければまとまった作品を書くことはできません。
なぜ学校のふだんの授業で感想文を指導せずに、夏休みの宿題というかたちで感想文を書かせるかというと、感想文は(特に低中学年の場合は)、一人ひとり別のアドバイスをしなければならないからで、30人から40人を相手にした一斉指導ではそういうアドバイスはできないからです。
感想文の宿題を書かせる時間があれば、その時間を読書に充てた方がずっと子供のためになります。
●子供まかせでは書けない
「なんでもいいから自分で好きな本を選んで、自分で好きなように書いてごらん」ということでは、感想文は書けません。小学生の場合は、大人がなんのアドバイスもせずに感想文を書かせるぐらいなら、感想文を書くことそのものをしない方がいいのです。単に字数を埋めるだけの感想文は、何の勉強にもなりません。
●じょうずな感想文を書くコツはあるが
書くからには、じょうずな感想文を書いて、コンクールなどに入選したいとはだれもが思うことです。作品の出来具合の半分は、似た話などの題材の部分に支えられています。また、もう半分は、感想の部分の一般化の深まりに支えられています。ですから、感動のある似た話が連想できるような本を選び、感想の部分で大人の人が一般化の手助けをしてあげれば、じょうずな感想文が書けます。
しかし、こういうかたちで親や先生がアドバイスをすることは、子供にとってはあまりうれしいことではありません。また、親や先生に支えられてじょうずな作文を書いても、教育的な意義はありません。ですから、感想文の目標はじょうずな作品を書くことにではなく、ひとまとまりの本を読み、ひとまとまりの文章を書く練習をするということに置くべきです。
●書き方の手順「まず本選び」
まず本選びですが、子供が「この本、おもしろいから書きたい」と言うような本が必ずしも書きやすい本であるとは限りません。子供が自分なりに似た話を見つけることができたり、想像をふくらませたりできるような本が書きやすい本です。この本選びは、大人がアドバイスをした方がいいようです。少なくとも、子供には「似た話や想像した話が書けるような本が、感想文の本としては書きやすいよ」と言ってあげるといいと思います。
書きたいテーマが決まっているときは、インターネットの書店を利用して関連する図書を数冊用意すると話題が広がって書きやすくなります。
●書き方の手順「次に字数配分」
感想文の宿題は、原稿用紙3枚程度(400字詰めで1200字)の分量で指定されることが多いようです。これだけの分量を1日で書くというのは大変です。無理のない字数配分は、1日1枚(400字)です。感想文の宿題をするために、4日間の予定を立てて、1日目に400字以上、2日目も400字以上、3日目も400字以上と書いていって、4日目に全体を通して要らないところを削り、清書するという予定を立てれば無理なく書くことができます。
●書き方の手順「1日目の400字」
本のはじめの方から一ヶ所、似た話や想像した話の書けそうな場所を選び、そこを引用し、自分の似た話を書き、最後に「たぶん」「きっと」「もしかしたら」などという言葉を利用しながら、自分の感想を書きます。
本の引用(1)→似た話(1)(もし…だったらと想像してもよい)(たとえも入れる)→感想(1)(たぶん、きっと、もしかしたらなどと考えてみる)
●書き方の手順「2日目の400字」
2日目も同じです。本の中ほどから一ヶ所、似た話の書けそうな場所を選び、そこを引用し、似た話を書き、感想を書いていきます。
本の引用(2)→似た話(2)→感想(2)
●書き方の手順「3日目の400字」
3日目も同じように、本の終わりのほうから一ヶ所選んで書いていきますが、最後の感想のところがちょっと違います。1日目、2日目は、引用した小さな箇所の感想でしたが、3日目は本全体についての感想を書いていきます。
小学5・6年生の生徒の場合、この感想は、「○○は(人間にとって)……である」というような一般化した大きな感想を書いてまとめます。この感想の部分は、お母さんやお父さんと話し合いをして、子供自身の考えを深めていくといいと思います。そして、「私はこれから」などという言葉を使い、この本から得たことを自分のこれからの生き方にどうつなげていくかを考えてまとめます。中学生の場合は、結びの5行に「光る表現」を入れていくとよいでしょう。
本の引用(3)→似た話(3)→大きな感想(○○は人間にとって……。私はこれから)
●書き方の手順「4日目の清書」
4日目は清書です。お母さんやお父さんが全体を通して読んであげると、要らないところが見つかると思います(書いた人自身には、要らない部分というものはなかなかわかりません。これは大人でも同じです)。この要らない部分を削ります。次に、書き出しの部分に本の引用として情景描写の部分を入れられれば、書き出しの工夫ができます。これは無理のない範囲でやっていくといいでしょう。
●書き方の手順「できたらほめる」
書いている途中でも、書き終えたあとでも、親や先生が「これは、おもしろいね」「それは、いいね」と、子供の書いた内容のいいところやおもしろいところをどんどん認めてあげることが大切です。多少おかしいところや変なところがあっても、子供が書いた内容をできるだけ尊重してあげてください。これと反対に「これは、こうした方がいいんじゃない?」「そこは、ちょっとおかしいんじゃない?」などという否定的なアドバイスをすると、勉強でいちばん大事な子供の意欲をそぐことになります。大事なことは、いい作品を仕上げることではなく、手順にそってできるだけ自力で書く力をつけることです。
●教室では宿題の感想文の個別指導はしません
感想文の指導には、生徒ひとりずつ異なるアドバイスが要求されます。更に作品として完成させるためには、書いている途中にも頻繁にアドバイスをする必要が出てきます。このような対応は、普段の勉強の中ではできませんので、夏休みの宿題のための感想文指導は、教室では行ないません。
宿題として感想文を提出しなければならないという事情のある方は、教室で練習した長文の感想文で似た話のよく書けたものをベースにして、ご家庭で書き直していかれるといいと思います。
また、どうしても書いた作品を見てアドバイスをしてほしいという場合は、担当の先生ではなく、言葉の森の本部に直接ファクスでお送りください。折り返しファクスとお電話で説明します。
■■作文コンクールいろいろ
夏休みの作文コンクールを紹介します。詳しくは、該当するページをごらんください。
▽河川愛護月間絵手紙(国土交通省)
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▽ハリーポッター感想文(朝日小学生新聞・ワーナーブラザーズ映画)
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▽いつもありがとう作文コンクール(朝日学生新聞社・シナネングループ)
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▽こども環境大賞(朝日新聞社・東京会場日動)
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▽木の家・こんな家に住みたい(社団法人日本木造住宅産業協会)
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▽ぼくのわたしの、すきなもの(第一生命・朝日学生新聞社)
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■■自由研究に暗唱
暗唱の仕方をホームページに掲載しています。夏休みの自由研究にも使えます。
http://www.mori7.com/mori/mori/annsyou.php
◆表はウェブでごらんください。
https://www.mori7.com/mori/mori_web.php?ki=20090803#13973
◆表はウェブでごらんください。
https://www.mori7.com/mori/mori_web.php?ki=20090803#13975
300字暗唱まではできるが、900字まではなかなか暗唱できないというときは、記憶術を使うと楽に暗唱できるようになります。しかし、できるだけそういうテクニックを使わずに丸ごと暗唱することに挑戦してみましょう。
記憶術というのは、例えば、自分の体などに順番をつけておきます。頭→おでこ→左目→右目→鼻→左耳→右耳→口→喉→左肩→左ひじ→左手→右肩→右ひじ→右手→左胸→右胸→おへそ→……(以下省略)
そして、覚えた文の書き出しや中身をイメージ化して順番に結び付けます。
例えば、最初の文が、「現代文明は……」で始まるとすると、「現代→ゲンダイ→ゲンゴロウ」などとイメージ化できるものを連想し、ゲンゴロウが頭をカリカリりかじっているという場面を思い浮かべます。思い浮かべるイメージはできるだけ極端で驚くようなものの方が効果があります。
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